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文芸春秋9月号の木村俊雄氏論文について=⑰漏えい面積に変動が起こる [東電核災害の検証]

新潟県の技術委員会で木村氏の主張が取り上げらた。新潟県の技術委員会では、福島事故検証課題別ディスカッションの【地震動による重要機器の影響】で、1号機非常用復水器(IC)の小破口LOCAの可能性を論じている。田中三彦委員から問題提起された。

⑰漏えい面積に変動が起こる

11日の午後18時ごろ、津波来襲から約2時間20分後に「当直は、中央制御室において、制御盤上、IC(A 系)の供給配管隔離弁(MO-2A)、戻り配管隔離弁(MO-3A)の『全閉』を示す緑色表示ランプが点灯していることに気付」いている。津波浸水で分電盤や電源盤が海水水没したので、弁を開閉駆動する電流や弁を制御し表示ランプ用の電流が流れなくなった。
当直等は、2時間余りたち「乾いて表示ランプが点灯した可能性があると考えた。」(政府事故調)。配管に微弱な直流電流を流し、それが切れたり弱くなると「配管破断」信号が発信される仕組みがあったから、「一部が乾いて」直流電流が復活すると、直ぐに「配管破断」信号が発信され、その結果として「非常用復水器のすべての隔離弁が閉動作した」と当直・運転員等は考えたそうだ。(東電事故調最終報告126頁)
PCV格納容器内の弁は交流電源で弁駆動するから、閉鎖指示の信号電流がきても弁は作動できない。1A弁、1B弁、4A弁、4B弁は開いている。直流で弁駆動されている残りの弁は、信号電流で閉鎖作動する。3B弁は15時02分から、3A・戻り復水隔離弁は34分から閉止されている。だから「配管破断信号」に反応して閉鎖しうるのは2A弁と2B弁。これらの弁から復水器タンクに寄った箇所から蒸気管ベントラインが分岐している。これらの弁が閉止すると、ベントラインからの漏えいが止まる。
「一部が乾いて」直流電流が復活し「配管破断」信号が発信されたのは、何時だろう。乾くには時間がかかるだろう。仮に復活17時50分頃で、2A弁と2B弁は閉鎖。弁閉鎖でベントラインからの200㎟×2管の漏えいがなくなった。当直・運転員等は午後18時18分、中央制御室で2A、3Aを開く操作をしている。これで漏えい200㎟復活。
 この30分間の炉圧の動きは?解析図では17時15分頃までは、逃し安全弁PCVの弁体が炉圧・水上などで押し上げられているし、ベントラインの漏えいと合わせて、PCV弁が閉鎖する炉圧付近にある。解析は漏えい面積変動はない前提だが、この稿では炉圧低下はPCV弁体を押し上げる力の減少、漏えい面積に減少になる。面積減少は漏えい量減少だから炉圧が上昇する輪が廻る。PCVからの漏えいがなくても、ICベントラインの400㎟からの漏えいだけで、炉圧が上がらなくなるまで、PCV弁が閉鎖する炉圧付近を上下するのだろう。そうなっているうちに、17時45分頃の直流電流復活[→]ICベントラインの400㎟からの漏えい停止になったとしよう。炉圧が上昇しPCV弁体を押し上げる力が強くなり、PCV漏えい面積が400㎟増えて、その炉圧と漏えい面積付近を上下する事になるのだろう。


私はSRVとSVの弁座が、2時間余り仕様温度の倍以上高温の過熱蒸気に曝され、炉圧上昇を契機に損傷を起こしたと考えている。最初は1㎟程の微小なものだろうが、通過する過熱水蒸気による高温クリープで徐々に拡大していく。


18時18分の2A、3Aの開操作でICベントラインA系の200㎟の漏えいが復活。そしてIC非常用復水器の本水蒸気管に炉の水蒸気が流れ込む。東電の解析では、A系の復水器タンクの約160トンの水は《A 系は B 系と同様に自動起動後に一旦停止するが、その後A 系のみで原子炉圧力制御を実施(3回起動停止実施)しており、評価の結果、津波到達頃に冷却水温度が約 100℃に到達する結果となった。実際、IC の冷却水温度を示す記録計によれば、A 系は一旦 70℃程度で停滞したものの、その後の操作により津波到達頃には 100℃に到達しており、》としている。
http://www.tepco.co.jp/decommission/information/submission/pdf/131113.pdf


それから2時間半たっているから冷えて、流れ込む水蒸気に応じて大量の水蒸気が直ちには出ないだろう。運転員は[中央制御室の非常扉を開けて外に出てIC排気口「豚の鼻」の方向を見た。その方向から、少量の蒸気が発生しているのを確認した。]という。

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また東京電力の解析では、18時10分頃に原子炉の水位が、詰まった核燃料ペレットの上部、有効燃料頂部TAF・タフにまで下がっている。下部の有効燃料底部BAFに19時30分頃に到達している評価だ。その間の水位が下がり露出した燃料部分の温度が、生成する崩壊熱で上がる。崩壊熱は、下部から挙がっているくる水蒸気を過熱して持って行く蒸気冷却があるだけだ。それは、水素ガス生成と表裏一体にある。蒸気冷却を勘案しても、炉心の温度は上昇し18時50分頃には、燃料被覆管が1200℃程度、20時ころには核燃料ペレット・焼結UO₂の融点、2700~2800℃と評価している。東京電力の解析には、18時18~25分の7分のIC再稼働は織り込まれていない。それによる復水生成と原子炉への戻り復水などは評価で考慮されていない。だからその分、イベントの時刻が遅れるが、全体的な動きは変わらないとなるだろう。

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