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放射能検査と摘発、食品、水 ブログトップ
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流砂=その②ーヘニング・マンケル/著 -- 東京創元社 -- 2016.10 [放射能検査と摘発、食品、水]

流砂  原タイトル:Kvicksand
ヘニング・マンケル /著 
  柳沢 由実子 /訳 
出版者 東京創元社
新潟市図書館収蔵 中央・ホンポート館 1階文学 /949.8/マン/

内容紹介
2 意に反して影の世界に引き込まれる子どもたち より抜粋
 29 闇に光る歯  《》は他書からの補遺

その続き
プルトニウムファイルのp40、41より
『ニューヨークのセオドア・ブラムという口腔外科医が何かがおしいと気付く。1914年、時計の文字盤に夜光塗料を塗っていた若い女性が診察に来て、歯の治療のあと顎がなんだかおかしいという。口を開けさせたブラムは、見たこともない光景を目にする。ブラム歯医者は、あごの骨がボロボロになってしまった患者がいる、原因は時計の針に夜光塗料を塗る彼女の仕事にあるのではないかという疑い・所見「患者の顎は放射線にやられた、というよりも蹂躙されたのだ。」を医学雑誌に書き、この疾患を「ラジウム顎」と名付けた。その報告がニュージャージー州のオレンジの監察医ハリソン・マートランドの目にとまる。かねがねオレンジでも、若い女性が原因不明の病気で死んでいた。』『マートランドが最初に見た35歳の女性は、急進性の貧血に苦しんでいた。文字盤塗装の仕事は6年前に始め、体調はいたってよかったのに1925年、体に挫傷のようなものが現れた。間もなく歯ぐきの出血が始まり、口蓋と喉の組織がくずれた。マートランドはラジウムが犯人だと確信する。体にガイガーカウンターを近づけたらガリガリ言った。死の間ぎわ、ゴム管に吐かせた息を分析したらラドンガスが見つかる。
ウラン(238U)壊変系列04.gif
ラドンRnはラジウムがアルファα放射線を出して崩壊して出来る核種・娘核種である。α線の大半は塗料成分に吸収され、そのエネルギーで直ぐに蛍光を発光する。Uウラン238からUウラン234やThトリウム230を経てRaラジウム226が壊変で生成する。それがアルファα線を出してRnラドン222に壊変する。Rnラドン222は、半減期3.823日でラドン同位体34種類で最も長い。化学的には気体・ガスの希ガス類であり、水≒血液へのラドンの溶解度は他の貴ガスのキセノンの約2倍、クリプトンの約4倍、アルゴンの約8倍、ネオンやヘリウムの約20倍である。

 Raラジウム226は化学的には周期表でIIa族のアルカリ土類金属で、同族元素にはMgマグネシウムやCaカルシウムがある。ラジウムもMgやCaと似たような化学的挙動、性質を示し、体内では骨や歯にに集まりやすい。
それで、体内に入った「半年で4グラムのラジウム」が骨や歯で、希ガス類のRnラドン222に壊変する。だから、骨や歯がカスカスになってしまい、あごの骨がボロボロになってしまったり骨折が起きてもおかしくない
続く

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流砂ーヘニング・マンケル/著 -- 東京創元社 -- 2016.10 [放射能検査と摘発、食品、水]

71sFVlnQnlL.jpg流砂  原タイトル:Kvicksand
ヘニング・マンケル /著  
  柳沢 由実子 /訳  
出版者 東京創元社
ページ数 360p
ISBN 978-4-488-01065-2
出版年 2016/10/29
新潟市図書館収蔵 中央・ホンポート館 1階文学 /949.8/マン/
内容紹介
流砂は地獄への穴だが、私はなんとかそれに嵌らなくて済んだ-。がんの告知を受けた北欧ミステリの帝王は絶望といかに闘ったのか。著者の闘病記であり、遺言でもある魂の書。

2 意に反して影の世界に引き込まれる子どもたち より抜粋
 29 闇に光る歯  《》は他書からの補遺
サビン・アーノルド・フォン・ソチョキーというアメリカの科学者が1915年に、当時は”アンダーク(暗くない)”と云う名の放射性物質ラジウムを使った夜光塗料を発明した。《外部からの光・電磁波の刺激で発光する物質に放射性物質を混ぜ、放出される放射線の刺激で持続的に発光するようにした塗料》
《1916年、”ラジウム”を使った発光塗料がイギリスとフランスでは特許が登録。フランスは「ラジオミール」という名で登録されました。イタリア特殊潜水部隊の任務の多くは海中の暗闇で行われていた為、チューブ状の物に発光塗料を流し込み作業をする計器を照らし暗所での任務にあたっていました。当時では画期的な使い方となり、それでイタリア海軍が発注した。 https://www.jw-oomiya.co.jp/blog/wakayama/24350 》
フォン・ソチョキーは会社を設立し、若い娘たち――中にはまだ十二歳にも満たないような子どもや文字も読めない 少女もいた―を雇い入れ、暗闇で光る夜光塗料を時計の文字盤やロザリア十字架に塗る仕事をさせた。少女たちは細かな点や線に夜光塗料を正確に塗るために、筆の穂先をなめて整えていた。
 少女たちは唇や爪にこの夜光塗料を塗ったこともあったという。暗い部屋で光る口や手を動かしてふざけて遊んだ。
それどころか一九一六年に発行された医学誌『レントゲン』は「レントゲン線にはまったく毒性がない。人間にとってのレントゲン線は植物にとっての太陽光線と同じくらい無害有用なものである」と記している。
《1900年には生物組織に影響を与えるという報告。ピエール・キュリーがラジウムを腕に貼り付け、火傷のような損傷を確認。医学教授らとの協同研究の結果、細胞を破壊する効果を確認》

1914年7月からの第一次世界大戦の最中、様々な器具に夜光塗料を塗って暗闇の中で発光させた。
《 夜光塗料を使ったものは、ブンカー(軍用の特殊防空壕)や潜水艦、塹壕で非常に好まれた。放射性物質が人体に悪影響を及ぼす性質も併せ持つとは、誰も思っていなかったのだ。 https://www.webchronos.net/features/38270/ 》
戦争後の1918年、その工場ではおよそ2000人の工員がフルタイムで夜光塗料を使う仕事についていた。
プルトニウムファイルのp40、41より
『ニュージャージー州オレンジの町には米国最大の文字盤塗装会社「合衆国ラジウム社」がある。同業の会社はコネチカット州、イリノイ州、ニューヨーク市にもあった。文字盤塗装工業は4000人ほどの女工がいて、うち800人がオレンジの工場で働いていた。』『出来高払いなので仕事は速く、日に250個から300個も仕上げる。女工はブラシを舐めて先をとがらせた(ティッピング)。そうすると文字の輪郭をうまくなぞれる。「半年で4000ミリグラムのラジウムを体内に入れる」と1933年の論文では推計されている。』『女工たちは、塗料のはねた服を着て帰宅し、暗がりできらきら輝くのを家族に見せた。唇や瞼や歯に塗料を塗ってデートに出かける女性もいた。』
『ニューヨークのセオドア・ブラムという口腔外科医が何かがおしいと気付く。』 続く

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プルトニウムファイル―アイリーン・ウェルサム/著 -- 翔泳社 -- 2013.1 [放射能検査と摘発、食品、水]

71KyLLw5z1L.jpgプルトニウムファイル 原タイトル:The plutonium filesの抄訳
副書名 いま明かされる放射能人体実験の全貌
著者名1 アイリーン・ウェルサム /著  
著者名2 渡辺 正 /訳  

出版者 翔泳社
出版年 2013.1
ページ数 16,549,6,2p 図版16p
版注記 2000年刊の新装版
ISBN 978-4-7981-3088-0
新潟市図書館収蔵 巻館 /559/ウ/ 

内容紹介プルトニウム原子の誕生から4年半、マンハッタン計画が正式に発足し、放射能の人体への影響を調査するためにアメリカは国費で放射能人体実験に着手していた…。当事者たちを取材し、国家ぐるみの人体実験の全貌に迫る。
ピューリツァー賞受賞ジャーナリストの大著、新装版で登場!「プルトニウムの人体投与」 本書は2000年8月に翔泳社より刊行された『プルトニウムファイル』上下巻を合本にしたうえで、若干の加筆・修正をし、訳者あとがきを一部新しくした新装版です。 プルトニウム原子の誕生からわずか四年半、マンハッタン計画が正式に発足し、放射能の人体への影響を知りたいがために、アメリカは国費をつかって放射能「人体実験」をはじめた。その厚い国家秘密の壁は、半世紀を経て一人の女性記者によって崩れはじめたのだった。そして「人体実験」の機密のヴェールは開かれ、コードネームだけの被害者たちは、ようやく生身の人間と変わった。 しかし、汚染されてしまった被害者の体は?実験によって亡くなった人は?秘密主義の名残りが、実験にかかわった医師たちの秘密隠蔽や言い逃れに変わるのか……?
ラジウム [ドア・ブラムという口腔外科医がそれに気づく。何かがおしい・・・・・・。一九一四年、時計の文字盤に夜光塗料を塗っていた若い女性が診察に来て、歯の治療のあと顎がなんだかおかしいという。口を開けさせたブラムは、見たこともない光景を目にする。歯医者は、あごの骨がボロボロになってしまった患者がいる、原因は時計の針に夜光塗料を塗る彼女の仕事にあるのではないかという疑いを報告。患者はまもなく死んだ。だが、なんの対策も取られず、]
目次
第1部 「産物」(プルトニウムは酸の味;カリフォルニア大学・放射線研究所 ほか)
第2部 核のユートピア(十字路にて;来る人去る人 ほか)
第3部 核実験のモルモット(スターリンの果たし状;兵士のモルモット第一号 ほか)
第4部 合衆国版・ナチ収容所(「マウスかヒトか?」;ヒューストンの「クリップ」軍医 ほか)
第5部 清算(「真実を言おう」;暴露と痛み ほか)
著者等紹介
ウェルサム,アイリーン[Welsome,Eileen]
1951年ニューヨーク市生まれ。テキサス大学オースチン校卒業。87年より『アルバカーキ・トリビューン』紙の記者(94年退社)。プルトニウム注射の報道記事で受賞したピューリツァー賞(94年)のほか、多方面の報道活動によりジャーナリスト協会公共部門賞、ジョン・ハンコック賞、全国ヘッドライナー賞、シュルデン・リング取材報道賞、新聞協会ヘイウッド・ブラウン賞、ジョージ・ポーク国内報道賞、スクリプス・ハワード公共部門賞などを受賞
渡辺正[ワタナベタダシ]
1948年鳥取県生まれ。東京大学大学院博士課程修了、工博。同大学助手・助教授・教授(生産技術研究所)を経て定年退職。2012年より東京理科大学教授(東京大学名誉教授)。生体機能化学、環境科学などを専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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食品で内部被曝を生涯で100mSvも受忍できない [放射能検査と摘発、食品、水]

10月27日に食品安全委員会は、放射能汚染食品の管理・基準値の設定について基本的見解を正式決定しました。日本は狂牛病・BSEの侵入を防げなかった反省から、取り締まる農水省、厚労省と、その取り締まり策を科学的客観的に評価する食品安全委員会の分かれた枠組みで食品の汚染などを管理しています。放射能汚染への取締りを科学的に裏付ける見解を食品安全委員会が厚労省に示したのです。

7月26日に原案を決定しました。生涯に100mSv・ミリシーベルト以下です。食品では放射能が体内に入っておきる内部被曝ですが、「これは低線量における過去のばく露データをみた場合、食品だけの影響をとらえて評価をしている論文がほとんど見当たらなかった」「現時点では(外部被曝と内部被曝)両者を区別して判断する必要は無い」などの理由から「食品健康影響評価を超えて外部被曝を含めて全体の数値」で生涯に100mSv・ミリシーベルト以下を出しました。 参照

そして、一般国民や関係機関からの意見を聴取をおこないました。学校教育を管轄する文科省は、「学校給食に関してとられることが期待される措置があれば、あわせて御教示下さい。」とか生涯での乳幼児期、少年期などでの「累積線量の振り分けにリスク管理機関は何をもとにどのように判断すべきと考えていらっしゃるのでしょうか。」などを出しています。3000件余りのコメントが寄せられました。

 食品の放射能汚染対策を、日本政府は1998年(平成10年3月6日)に立案しています。ICRPのPubl.40「放射線緊急時における公衆の防護のための介入に関する諸原則」に従った対策です。1984年のPubl.40は主として事故発生後短期問の、かつ事故地点の近傍における対策の勧告集で、事故から最初の1年間で50~5mSv/年を出しています。それで、日本政府は放射性セシウムでの内部被曝は5mSv/年で規制値案をまとめています。

 1984年のPubl.40から3年後の1987年11月の「食物連鎖中の放射性核種に関する国際会議」で報告された国際連合食糧農業機関(FAO)の案では、飲食物の国際貿易に適用する暫定的な放射能対策レベル(IRALF)では、最初の1年間では5mSv/年で2年目後以降を1mSv/年間としています。

 先の98年放射能汚染食品基準値案は、事故当初に焦点を当てています。それ以降には触れていません。しかし4年後に出された「緊急時における食品の放射能測定マニュアル(平成14年3月)」ではセシウムでは「事故状態の予測が確実になり、放射性物質又は放射線の放出が減少する」第2段階では「1年間での食物摂取による被ばくを実効線量で1mSv/年」としています。

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 規制当局の厚労省は、最初から東電フクイチ核事故はまず放射性セシウムでは5mSv/年で、事故状態が固定化し放射性物質の放出が減少する段階、2年目以降は1mSv/年で規制値などを設定し直すつもりでいたのでしょう。その厚労省からみれば「内部被曝、外部被曝をあわせて生涯に100mSv以下」は、手足を縛る見解です。

 福島県、東日本を中心に東電フクイチ核事故による放射能で、外部被曝だけで1mSv/年以上の地帯が広くあります。原子力安全委員会は、日本では平均して自然放射線量が毎時0.05μSv、年間約0.44mSvあるとします。ですから、毎時0.05μSv以上計測される地域の人々の食物摂取による内部被曝を1mSv/年以下にしなくては、国民を護らないことになるからです。日本政府は福島県を除いた地域では、地表から高さ1メートルの地点が1μSv以上となったら除染対象にしています。除染で0.7μSvになっても、内部被曝は受忍できないことになります。政府全体で、放射線から国民をどのように護るのか?それがないのです。
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 そして10月27日に食品安全委員会が厚労省に渡したリスク評価の答申は、答申文面は7月26日の原案と変わりません。しかし委員長談話で「今回の評価は食品安全委員会が国の健康影響評価機関として『内部と外部とを合計して生涯100mSvでリスクがある』と評価したわけではなく、外部被ばくなどの食品以外からの被ばくについては、しかるべき機関において適切な措置を講ずべきものと考えている。」と”内部被曝で生涯100mSv”と根本的変更しています。7月の「内部被ばくと外部被ばくを合計して生涯100mSvでリスクがある」という報道は、委員会の説明が悪く、記者が勝手に勘違いして報道したからだそうです。 記者会見模様

「低線量における過去のばく露データをみた場合、食品だけの影響(内部被曝)をとらえて評価をしている論文がほとんど見当たらなかった」のに、内部被曝だけでのリスク評価ができるはずもなく、食品安全委員会のリスク評価は全く科学的根拠が無いものになってしまいました。厚労省官僚は当初の予定通り、核事故から1年後の来年春から1mSv/年で規制、500ベクレルBq/kgを100に下げることできますから万々歳です。小宮山厚生労働大臣には、「より一層、食品の安全と安心を確保するため、来年4月をめどに許容できる線量を年間1ミリシーベルトに引き下げる」と手柄顔で会見できます。大臣に花を持たせられるから、この点でも官僚には好都合。

実際には10分の一、20分の一に下げられる

 厚労省は「食品中の放射性セシウムの濃度が時間の経過とともに低くなってきたことから、この上限を1ミリシーベルトに引き下げる方針を固めました。」そうですが、実際は違います。
 福島県産米、検査の結果は、以下。
500ベクレル以上 0    (0.0%)
100ベクレル以上 5    (0.4%)
100ベクレル未満 203  (17.3%)
検出限界(セシウム137が10、134で10)以下    964  (82.3%)

一番土壌汚染されている福島県ですら100Bq/kgではほとんど不合格にならない。5mSv/年を0.25、500Bq/kgを25に下げても80%強のお米は合格します。25Bq/kg以上のお米は買い上げて補償すればよいし、お米も不足しない。内部被曝も低く抑えられる。政府の原発対策本部は、8月に厚生労働省の現在の測定データを基に食品からの内部被ばくを、試算値として約0.11ミリシーベルと評価しています。

1mSv/年・100Bq/kgで規制は世界の原子力村での村の常識だから、これを破って国民の健康の損傷をへらすために現状で食糧経済的にも十分可能な0.25mSv/年・25Bq/kgで規制すると、世界の原子力村の村民、米国やフランスやICRPやIAEAなどの関係者や補償費をだす東電や財務省から陰に陽に厚労省官僚は袋叩きに遭う。
 東電フクイチ核事故で放出されたセシウムは、その核種構成から物理的に約6年後のは半分のベクレルにへります。それ以降は、減り方が遅くなります。作物への移行の程度が同じなら、時間の経過と共に食品中の放射性セシウムの濃度が低くなりますから、0.25mSv/年・25Bq/kgからさらに規制値は下げられます。

 しかし、今回の食品安全委員会のリスク評価答申が実質的に変更された力学を考えると、できるだけ内部被曝を下げ国民を護るために食品汚染の実態にあわせて実行可能な規制が行われることは、このままでは期待できません。

自殺した食品安全委員会

 また、食品安全委員会としては自殺行為です。日本は英国からのBSE・狂牛病の侵入を、飼料規制を十全に行わなかったので防げませんでした。その理由として、規制当局の農水省は飼料規制の妥当性について、農水省の審議会にかけて答申を得て行っています。飼料規制だけでなく、様々な規制は学識経験者などの審議会での審議、答申を得て、お墨付きを得て行われます。

 1996年4月、世界保健機構(WHO)の勧告を受けて、牛への肉骨粉の使用を行政指導で禁止。併せて法的規制の必要性について、専門家で作る農業資材審議会飼料部会で検討を始めました。複数の委員が「勧告は明らかに(肉骨粉の)使用禁止をうたっている」などと法規制を求めました。「次回以降の検討事項」として結論が見送られたが、結局、具体的な検討はされず、同部会の議論は同年9/18を最後に立ち消えとなりました。EUで狂牛病問題が再燃した後の2001年3月まで5年間も凍結状態。国内初の感染牛が見つかった直後の9月中旬になって、泥縄で法制化しました。

 この経過から、英国などに範を取り、お墨付きを出す審議会を規制当局から切り離し独立させることが事態の再発を防ぐために有効ではないかとして作られたのが食品安全委員会です。米国産牛肉の輸入再開の審議で、その独立性、中立性には大きな疑問符がつきました。それでも、そのリスク評価は論理的整合性を保とうとする努力がみられ、それなりの体裁はありました。

 今回の食品放射能汚染のリスク評価では、体裁さえ取り繕っていません。7月26日に原案を、10月27日の正式決定で委員長談話で全く科学的根拠が無いものにしてしまいました。管理当局の都合意向に迎合する高名な学者らをみると、独立委員会方式が日本では権力の暴走を制止するものならないことが歴然としています。この国の権力・統治機構に、どのようなスタビライザーを組み込めばよいのか?そうした課題も出てきたと思います。

放射能検査器の進化、検査体制の再編を [放射能検査と摘発、食品、水]

食品の放射能の検査器で使われているのは、主に2種類。(1)据え置き型のゲルマニウム(Ge)半導体検査器(2)据え置き型のヨウ化ナトリウム(NaI)シンチレーション検査器の2種類。この2種の検出器は、調べる食品をフードプロセッサーなどで細かく切り刻み測定用容器に隙間なく入れます。重さは秤で壊すことなく測れますが、放射能は野菜、魚などを粉砕してから測ります。ですから、貴方が粉砕された野菜や魚を食べるのでなければ、口にする野菜や魚を直接測ることはできず、抽出されたサンプルで検査するしかありません。

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食品を粉砕しないで放射能を測る

原子力災害マニュアルでは、放射性ヨウ素の食品検査で携帯型のヨウ化ナトリウム(NaI)検査器、サーベイメーターという種類の検出器をつかい遮蔽無しで測る手順が定められています。過大評価しやすいのですが、短時間に数多く検査できます。これをまねた手順で、次のようなやり方で牛舎で出荷前の生きた牛の汚染レベルを計測する方法を、農研機構・畜産草地研究所と福島県畜産研究所などが開発しています。

道具は携帯型の「NaI」と約7kgのリング状の鉛。牛の腰角後方に約7kgのリング状の鉛を載せて、鉛で囲いの中に検出部をいれ環境からの放射線を遮蔽します。5分の計測を3回繰り返します。1キロ当たりでほぼ50ベクレル以上の放射性セシウムが含まれていればわかるそうです。この計測法のポイントは、約7kgのリング状の鉛による遮蔽です。

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検出器には、宇宙線や自然界にもともと存在するカリウム40などの自然放射線と、地面や土壌など環境中の放射性セシウムから発生する放射線という2つのバックグラウンド放射線が降り注いできます。これは“計測の雑音”、低くするほど、低濃度、短時間で測れます。牛も、もっと遮蔽すれば検出の下限の値を下げたり短時間にできますが、牛の腰が鉛の重さに耐えられない。食品検査に使うゲルマニウム(Ge)やヨウ化ナトリウム(NaI)の検査器は、鉛の容器内部に検出部を設置してあります。

精密型のWBC

人体内の放射性物質・死の灰を、人体の外部に置いた検出器で検出して体内量を測定する装置(全身カウンター、ホールボディカウンターWBC)でも遮蔽は重要です。放出されるγ線の検出器とその放射線数の計測部、放射能量を計算する処理部と遮蔽から構成されます。簡易型は遮蔽した椅子、寝台と、遮蔽を施した検出器(直径20cm厚さ10cmのNaI検出器など)と計測部で、10分間の測定時間で400Bq程度のセシウム137体内量を検出可能です。(検出器の種類と大きさ、遮蔽の程度によって変ります)

精密型は、17分弱・千秒でセシウム137の20Bq以程度の体内量を検出することができます。厚さ10~36cmの鉛、鉄で遮蔽された室に寝台と検出器(直径20cm厚さ10cmのNaI検出器が標準)を使用しています。厚さ10cmの鉛はセシウム137の放射線を約100分の一遮蔽するので精密に計測できるのです。

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3.11後、福島県に新たに設置されたホールボディカウンターWBCは簡易型の椅子型です。精密型が遮蔽室だけで30~60トンで設置場所が限定されること、短時間に緊急で内部被曝量をスクリーニング(篩い分け)する必要があったためです。簡易型は検出の下限が高いのに、東電核事故でバックグラウンドの放射線量が高くなっているため、さらに下限が高くなっています。それで、福島市の市民測定所では2月にレントゲン室用の鉛合板で測定室の遮蔽工事を行ってバックグラウンド放射線量を下げています。

検査器の進化、検査体制の再編

精密機器、計測器、医療機器の島津製作所は、30kgの米袋に含まれる放射性セシウムを高速・高精度で測定できる「食品放射能検査装置FOODSEYE(フーズアイ)」を昨年から開発しました。これは、ガンの検診などに用いられる医用画像診断用PET装置の技術を応用したもの。PET装置に用いられるゲルマニウム酸ビスマス(BGO)シンチレータと光電子増倍管を組み合わせた高感度の検出器を用いてます。
検出器の周りを鉛で遮蔽して環境からの放射線の影響を最小限に抑えています。それで、本体で約1.4トンもあります。大量の米袋をそのままベルトコンベアーに載せて、検査器を通し流れ作業で検査します。

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4/1からの新基準値では一般食品の100 Bq/kg用のスクリーニング検査法の測定下限値25 Bq/kg以下、乳幼児用食品の50Bq/kgでは10を検査器の性能要件としています。二本松市で行われた実証実験からベルトコンベアに米袋を載せて下ろす手間をいれても、一袋あたり5秒で測定下限値20 Bq/kg以下、15秒では測定下限値10 Bq/kg以下の測定が可能。実用的には、1日8時間の作業で5秒で測定で約2000袋以上、15秒の測定で約1200袋以上を検査できるとしています。

このスクリーニング検査で高濃度汚染を摘発、排除し、さらに合格品から抽出で1ベクレル単位での汚染量を測定します。その細密測定データから、スクリーニングで検出の下限以下の品物の汚染度の見当がつけられます。

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ND(Not Detected)とか<25Bqと表記される下限以下は、学術的な扱いは3通りあります。一つは、「0」とみなす、一つは下限値のぎりぎり下の値、<25Bqなら24Bqとみなす、一つは中間の値、<25Bqなら12Bqとみなす。細密測定データからスクリーニングで下限以下の場合を客観的に解釈できます。例えば、○○JAは5Bq程度とか××村は限界値ギリギリだから農法を改善しようとかできます。

二本松市での実証実験からの数値は、測定室内でバックグラウンド値が0.4μSv/h以下です。これが4分の一の0.1μSv/h以下なら5秒で測定下限値10 Bq/kg以下、15秒では5 Bq/kg以下、16分の一なら5秒で測定下限値5 Bq/kg以下に、15秒では2.5 Bq/kg以下にできます。規制値を下げたり、検査数を増やせます。

環境中の放射性セシウムからの放射線は、半減期・約2年のセシウム134の崩壊で減衰しますが、精密型WBCと同様に測定室に遮蔽を施せば直ぐに大幅に下げられます。約20cmの厚さの普通コンクリートで10分の一、重量コンクリートで15分の一が遮蔽効果とされています。

セシウム134の崩壊減少で汚染レベルは下がります。また将来的に検査で撥ね出す汚染レベル・規制値を下げて、日本人の摂取量・内部被曝を減らしていくことを考えれば、最初に測定室自体に遮蔽を施した方がよいと思います。

この検査装置・フーズアイの予定価格は、2000万円。この機器での米以外の食品での検査法は“今後の検討課題”、品目が増えると検査数が劇的に増え、検体当り費用が減少します。こうした検査機器、体制の整備に反対の専門家もいます。放射線審議会長の丹羽太貫氏もその一人です。反対の理由は? 続く


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