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牛から魚へ、放射能検査の重点を移そう [放射能検査と摘発、食品、水]

放射能の検出・検査は、検査器に検体を入れたら直ぐにはわかりません。放射能の濃度の単位は1kg(単位重量)に何Bqベクレルあると示されます。1ベクレルは、1秒間に放射線を出して核崩壊する放射能が一つあることです。核崩壊が何時起こるかわかりませんし、変動します。25、32、21、39・・と変動します。それで一定時間計って、例えば5分300秒で出た放射線の数が9000回なら9000÷300で30ベクレル。体重計とは違い直ぐにはわかりません。

 体重でも、服を着て乗ったら正しい体重は分かりませんが、放射能の検査では衣服になるのが環境中の放射線です。宇宙から太陽からやってくる宇宙線やそれが大気に当たって出る放射線、地球の誕生時から残っている放射性カリウムなどの放射能の出す放射線、大気内核実験で降下した人工の放射能・死の灰からの放射線などです。測定のバックグラウンドといわれますが、真の体重が衣服の重さを引いて出すように、計測値からバックグラウンドを引かなければ、知りたい食品の放射線量は分かりません。

バックグラウンドも変動します。950、1100、860、1150・・ 。食品などの汚染検査では、週一で24時間バックグランドを測っています。調べる食品など検体からの放射線とバックグラウンドの放射線の合わさった放射線の数、量が測られます。975、1132、881、1189・・。

汚染が数ベクレルとバックグラウンドに比べて小さいと、バックグラウンドの変動に隠されてしまい見つけにくいことがわかります。対策は、堅牢な建物に設置するとか鉛などで環境中から放射線の計測部への入量を減らす遮蔽を施してバックグラウンドの水準を低くする。測定時間を長くして、バックグランドの変動の中に隠れないようにして分かれて見れるようにします。

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 放射能検査では、検査時間を概ね4倍にすると、検査の下限値、検出限界・定量下限を半分にできます。厚労省の緊急時測定マニュアルではセシウム137の定量可能レベルは、野菜では10分では80Bq/kgで、30分間では48となっています。海草・魚・穀物・肉・卵では10分間では40で30分では24です。

役にたったのか?緊急時測定マニュアル

 この測定マニュアルは、3.11東電フクイチ核事故では余り役に立っていません。原子力災害対策特別措置法(原災法)に基づき事前に策定されていた事故対策マニュアルでは、原発の核事故で出て問題とされているのは希ガスと放射性ヨウ素です。放射性セシウムなどは出ても微量とされ重要視されていません。これが大量に出るメルトダウン・核燃料溶融になるシビアアクシデントは、日本の原発では起こり得ない、隕石に当たって死ぬよりも確率が低いとされていたからです。

メルトダウンで発生した水素による1号機の爆発を聞き茫然自失した班目(まだらめ)原子力安全委員会委員長が象徴するように、原災法の事故対処体制はメルトダウンで機能を喪失しました。事前に危機を想定して繰り返し対処法をシュミレーションすることが個人がパニックを防ぐ最良の方法ですが、組織でも同じです。メルトダウンを想定してこなかった官僚の事故対処体制は機能喪失、それで官邸もパニック。対策が場当たり的で後手後手になります。


原子力災害マニュアルの食品放射能検査では、希ガスは大気中に拡散し食品には付着しませんから対象外。放射性ヨウ素は、乳児、子供、妊婦の方は厳重に対処する必要がありますが、半減期8日で崩壊しますから3ヶ月で千分の一、半年で420万分の一になりますから、検査期間は長くて半年。携帯用のヨウ化ナトリウム(NaI)検査器をつかう手順です。遮蔽がないし過大評価しやすいのですが、短時間に数多く検査できます。何よりも検査器が安価で入手し易く数がそろえられる。

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放射性セシウムは半減期30年で長期に検査・規制が必要ですが、微量しか出ない想定ですから、検査の対象数や汚染量は少ないので、計測時間が長い=検査数が少ないが精度のよい据え置き型のゲルマニウム(Ge)半導体検出器を使う手順です。稲ワラや砕石などの放射能汚染は、事故対策マニュアルでは眼中に入っていません。

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ところが3.11ではメルトダウンして大量の放射性セシウムが広範囲に降下しました。ですから降下した地域の汚染を測り、産物を検査すべきでした。調べる数が膨大になりますから、マニュアルにはない迅速に多数調べられる検査方法とそれによる検査体制の構築が必要になります。実際には汚染された稲ワラを食べた牛から高濃度の汚染が7月に見つかってからです。場当たり的で後手後手。

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 この検査は遮蔽のついた据え置き型「NaI」(測定の下限値を50Bq/kg)でスクリーニング(篩い分け)をして、250を超えると「Ge」で検査です。そして狂牛病BSEの全頭検査体制に便乗して全頭検査を始めたました。本当は、降下した地域の産物をもれなく検査すべきを牛だけ全頭にすりかえました。
それで昨年12月時点で、国と都道府県が使っている検査機器は「Ge」216台で「NaI」227台。例えば、茨城県生活衛生課は今、「Ge」1台で週15~20検体の水道水、「NaI」5台で週500~600頭の牛肉を検査するといった使い方がされています。

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 昨年3月から今年1月までに飲料水をのぞき全国で10万738件の検査が実施され、内訳は「Ge」5万7381件、「NaI」4万3357件。品目では牛肉が6万5964件(65%)、野菜類1万7012件(17%)、水産物6156件(6%)、コメなど穀類5379件(5%)など。暫定基準を超えたものは1087件、うち牛肉は147件で13%。牛肉の検査能力を使いすぎたことが一目瞭然です。汚染稲ワラを食べた牛は全頭、ほかはサンプル検査にしていれば「NaI」を野菜や海産物の検査に使え、もっと多くの濃厚汚染食品を摘発・排除できたと思います。

 汚染稲ワラを排除し、飼育法や餌を管理している現在の値は検出限界の50以下です。内部被曝を下げるために濃厚汚染食品を摘発、排除が検査の目的なら、生産段階での規制で50以上の汚染が滅多に出ないだろう牛を全頭検査する必要が食生活での牛肉の比重からあるでしょうか?海産物は、食物連鎖でこれから大型の食用魚の汚染が顕在化します。牛から魚へ検査の重点を移すべきだと思います。

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このような汚染の拡大や生産段階での規制とその効果をふまえ、高濃度汚染食品の摘発・排除という検査の目的にあう検査体制を放射線審議会では余り論議されませんでした。規制値を下げると「測定できるサンプル数が少なくなり、つまりは、高い数値の食品を見逃す恐れが上がるのでは」との論議が行われています。規制値下げに連動して厚労省は、測定の下限値を50Bq/kgから25に下げる予定です。そうなると検査時間は4倍になり、検査する数が減り、ザルになるというのです。

しかし求められてるのは内部被曝を下げるための汚染食品の摘発・排除できる検査体制と基準の論議、例えば牛も抽出検査、「NaI」を使い50Bq/kgでスクリーニングで検査総数を確保、超えたら「Ge」で検査し摘発・排除、50以下から点検のため抽出で「Ge」検査で実数を出すで有効か?といった論議ではないでしょうか。


被曝は「合理的に達成できる限り低く」というアララの原則は何処へ行った? 食品のセシウム新基準案 [放射能検査と摘発、食品、水]

先週、厚労省が食品のセシウム新基準案を決定しました。「規制値厳しく」などと伝えられていますが、実際の食物での内部被曝を増やす可能性のあるとんでもない基準案だと思います。




 この案は22日の厚生労働省・薬事・食品衛生審議会の放射性物質対策部会で決められました。その会合に出された食品からの放射性物質の一日摂取量の推定では、1日の食生活から摂取される放射性セシウムは福島県でも3.39ベクレルBq/人で0.0193ミリシーベルトmSv/年、宮城県は3.11Bq/人で0.0178mSv/年、東京都で0.45Bq/人で0.0026mSv/年です。基準案は、その新規制値の上限の食品を1年食べ続けると約0.7mSv/年と厚労省は試算していますから、調査の35倍以上緩い基準です。そんな緩い規制をしたら、来年、再来年には実際に約0.7mSv/年に成ってはいないでしょうか?

日本での食品による内部被曝

 先ほどの調査は、平成19年度国民健康・栄養調査の食品別の平均摂取量と今年9月及び11月に宮城県及び福島県で購入した食品、両県では生鮮食品は可能な限り地元県産、あるいは近隣県産品、東京都で購入した食品で検出されたセシウムなどの濃度から推計した値です。このやり方はマーケットバスケット方式といわれ残留農薬などの摂取量の調査で使われる方法です。厚労省資料

 10月の部会に出された食事による内部被曝線量の暫定的な推計では、今年8月までデータと収穫時期を迎えていない作物等のデータのない食品について推計値を用いて0.099mSv/年(多めにみて0.244)と線量推計しています。収穫後の今の時期では、推測値ではなく実測値を用いて、同じ手法でより現実に近い、日本で平均的な食による内部被曝の線量推計値がだせますが、その値は公表されていません。厚労省資料

 10月公表の暫定推計では、データのないものは0Bq/kgと検出限界以下(ND表記)はセシウム134、137ともに一律に10Bq/kg合わせて20との推計値を用いています。9月以降に収穫時期を迎えた作物などが、ゼロ扱いから実測値または検出限界以下ならセシウム134、137で20Bq/kgという濃度が用いられますから、同じ手法で求めた年間被曝線量の推定値は高くなると見込まれます。10月公表数値では、3~8月が0.051ですから、9月以降に収穫時期を迎えた作物などデータから9~2月までが倍になり、それが1年間続くとしても約0.2mSv/年と私は見込んでます。

先ほどの12月22日公表のマーケットバスケット調査では、検出限界以下はセシウム134、137ともに一律に0.025Bq/kgと400分の一にしています。これは検出方法(測定時間)を変え、より精密に測定した結果です。だだし、購入し測定した品目、数が不明で測定値が偏っている可能性が、全国のデータを使った10月公表の暫定推計の手法よりあります。

 何れにしろ、0.099mSv/年、約0.2mSv/年、0.0193mSv/年のどの値も新規制値案で想定している約0.7mSv/年より小さな値です。

アララの原則

 被曝防護の基本的考え方にアララの原則があります。「As Low As Reasonably Achievable・合理的に達成できる限り低く」という意味の英語の頭文字ALARAから「アララ」と読まれる原則で、1977年にICRPが提唱し日本も様々な規制に取り入れている被曝防護の考え方です。先ほどの調査結果等はこのアララの原則にそった経済的にも社会的にも無理なく合理的に達成できる内部被曝の線量です。




 厚生労働省は、日本国内の規制の根本でもあるアララの原則に沿って、自らが国立医薬品食品衛生研究所に調査させた結果などを元に内部被曝線量の目標を設定し、それを達成するための基準案を用意しなかったのでしょうか?文科省が給食を40Bq/kgで規制しようとしたら、厚労省は横槍を入れました。基準案では「乳児用食品」が50Bq/kgですから学童の給食40Bq/kgでは厚労省の面子がつぶれます。縄張り争い本能からも横槍はお役人様の当然の行動ですが、被曝を「合理的に達成できる限り低く」ことは縄張り争いや面子よりも優先順位が厚労省では低いのでしょうか?

 部会長の山本茂貴・国立医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部長ら11名の先生方は、この案をなぜ認めたのでしょうか?11名中9人は、国の厚労省や文科省から経費(給与や研究費など)をいただく立場の方です。被曝を「合理的に達成できる限り低く」するという防護の考えはないのでしょうか?


 
 放射線・放射能の検出器の概ね10Bq/kgが検出限界なことが多いので、食品の検査での被曝低減は、セシウム137、134であわせて20で約0.2mSv/年が限界だと思います。ここから更に「合理的に達成できる限り低く」には、チェルノブイリで行われる田畑パスポートが有効だと思います。

チェルノブイリでは、農地や森林は除染していません。除染したら作物や木を育む土壌が失われます。ただの土くれの大地で、除染して金を使っても食べられる農作物が作れない。山地の除染をするなら、枝を全部払い、葉を落とし、下草を刈り取り、落ち葉や腐葉土を全部掘り下げて除去せねばなりません。つまり「ほぼ禿げ山」にするということです。放射能で生態系を痛めつけ、除染で森を殺すからです。

ある線量以上は耕作放棄。それ以下でも田畑一枚一圃場ごとに土壌の放射能の種類や量、土壌の性質を調べ、その土地で放射能(主にセシウム)の移行(吸収)が少ない作物、栽培法などを選定して営農を許可しています。、汚染が激しいとウォッカ専門(加工でセシウムが減る)、バイオディーゼル用油脂作物(口に入らない)にするそうです。そして4年ごとに更新してる。それを現地ではパスポートと呼び慣らしているそうです。 報告

 チェルノブイリ事故当時は、ソ連でしたから私有財産がなく、耕作放棄地に賠償の問題がありませんでしたが、日本では所得補償や農地の買い上げが必要だと思います。
 日本の福島の土壌での放射性セシウムの挙動が、この1年で随分わかってきています。こうした知見を生かして営農を考えるべきです。チェルノブイリのように国が分析センターをつくり作付ける前の田畑の検査を実施して、まず、キメ細かい汚染マップをつくり、栽培できる作物や栽培法などを選定するのです。そうした上で、汚染量を確認するために収穫されたものを検査するのです。
 そうして、日本の土壌での放射性セシウムの挙動を解明し、営農法の改善を図っていくのです。

土壌の性質でセシウムの稲への移行が16倍も違う 核災害への備え⑫ [放射能検査と摘発、食品、水]

東電フクイチ核事故の第一義的加害者は東電と国です。しかし、現在のままでは、農家・生産者は、被害者でありながら生産物が更なる被害をもたらす加害者になりうる立場におかれています。
消費者は、汚染された食べ物を食べ被害をこうむる被害者の立場でありながら、正確な情報が出されないために、むやみに食品を拒否し言われなく生産者の生活を破壊する加害者になりうる立場におかれています。
 農家と消費者が相互に無理解で不信を持ち、いがみ合えば、この先の見えない閉塞状況を変える力は生まれません。東電が漁夫の利を得るだけです。今回は生産に関する情報です。

セシウムを農地土壌の粘土が固定

土壌の種類で放射性セシウムの吸着力で最高で10倍の違いがあるそうです。強く吸着したセシウムは、植物の根からもほとんど吸収されなくなり、農産物への移行・汚染も少なくなります。東大の研究グループが19日に発表しました。東京大学大学院農学生命科学研究科の研究者が福島県農業総合センターと共同で4月から進めている研究の中間報告です。

東電フクイチでは汚染水の放射性セシウム除去にゼオライト粘土を使っていますが、農地では、セシウムは土壌中の粘土粒子に強く固定され土壌中でほとんど移動しないと予想されました。

水中で陽イオンとなったセシウムは、粘土粒子および土壌有機物の陰電荷(負電荷)に引っ張られ静電引力(クーロン力)で表面に固定される(弱い固定)そして、特定の粘土鉱物(2:1 型層状珪酸塩)の結晶表面に分子間力で強く固定されるそうです。弱い固定は短時間におきますが、強い固定は時間を要します。また土壌中にゆるく引き付けておくことのできる有機物有機物が少ないと強い固定で粘土鉱物に吸着する量が減ります。

福島県の各地での実測では、3 月中~下旬に土壌表面に降下したセシウムは6月上~中旬までの 2~3 ヶ月間は降雨の浸透によって1.5~3cmと速く移動し、その後、移動速度が著しく低下しています(3ヶ月間で 2~6mm)。

この実測結果からは、この強い固定が6月中旬以降おきている、弱い固定から強い固定への移行が時間をかけて進行していると考えられます。「今後、時間の経過によって強い固定がさらに進んでセシウムの移動は事実上停止し植物による吸収も低下すると予想される。(東大・塩沢昌ら)」

栽培学教室の根元教授は、福島県内の多くの水田が粘土量の多い灰色低地土であることに着目し、山間部の粘土量の少ない褐色森林土と比較しました。灰色低地土の水田は約50%です。実験室で褐色森林土と灰色低地土に試薬の放射性セシウムを混ぜてみて、どれだけのスピードで吸着されるのか、実験を行いました。すると驚くべきことに、どちらも放射性セシウムは土壌と混ぜた瞬間に98-99%が吸着したのです。実際の農地ではどうなのか調べてみました。




その結果は、灰色低地土は褐色森林土の10倍から8倍のセシウムを固着することがわかりました。

福島県は前知事の時代に有機農業を推進しています。平地の水田に多い灰色低地土も山間部の田の褐色森林土も、有機物を多く含んでいたため、土壌有機物の陰電荷(負電荷)の静電引力で、セシウムは直ちに表面に固定された(弱い固定)。しかし、褐色森林土は粘土が少ないため強い固定への移行がすくなく、実際の農地では土壌に固着する量で差がでたのです。

福島県では多くの水田が灰色低地土のため、降り注いだ放射性セシウムは土壌に固定し稲への移行がきわめて少なかった。

二本松市の予備検査で高濃度のセシウムが米から検出された水田は、褐色森林土でした。一旦、土壌有機物により土壌に固定化したセシウムは、他の陽イオンによって容易に置き換えられ(イオン交換反応)、土壌中の水分に溶け出します。水耕栽培したイネはあっと言う間にセシウムを吸い上げてしまうことが田野井さんの研究でわかりました。褐色森林土の水田ではイオン交換反応で水に溶け出したセシウムをイネは無駄なく吸収するのです。ポッド栽培実験で灰色低地土と褐色森林土でイネを植えて調べると、粘土質が少ない褐色森林土は灰色低地土の8~16倍も放射性セシウムを稲は吸収しました。

また「森林から雨水に移行したセシウムが灌水とともに水田に移行した可能性がある」ということです。この点は、新潟大学農学部土壌研究室・野中昌法教授研究室が、9月16日、24日に行った調査結果で裏付けられます。 
森林から沢水が流入する水口(みなくち)、取水口付近の土壌・・4500Bq/㎏
水田・中央・・・・1900
水田の終末部分の水尻・・・・1200

福島市の規制値超のお米の育った土壌

先日、福島市大波地区(旧小国村)で生産された玄米から暫定規制値を超える630Bq/kgの放射性セシウムが検出されました。今回の暫定規制値を超えた水田は、土質が粘土質ではなく砂地だったそうです。土壌的にセシウムを吸着・固定する力が弱い水田です。

 セシウムを固定する粘土(2:1 型層状珪酸塩)の層間の負電荷がある場所は、セシウムイオンを閉じ込めるのにちょうどいい大きさの穴のようになっています。この穴は、カリウムイオンやアンモニウムイオンを閉じ込めるのにもちょうどいい大きさで、通常はこれらの中で最も存在量が豊富なカリウムイオンがこの場所を埋めています。



この場所との結合力はカリウムイオン<アンモニウムイオン<<セシウムイオンの順に大きくなるため、セシウムイオンはカリウムイオンを追い出してこの場所を埋めることができる。

セシウムイオンがこの場所に一度固定されると引き剥がすことは容易ではないですが、上に述べた競合イオン(アンモニウムイオンやカリウムイオン)が土壌に高い濃度で添加された場合、セシウムイオンが追い出されます。追い出されたセシウムは、根から吸収、移行しやすい。

これは、化学肥料で窒素を与えると容易に短時間でアンモニウムイオンが高濃度になりますから窒素化学肥料に頼るのは危険だということです。

カリウムが不足すると植物はセシウムを吸収しますから、カリウム肥料は必要です。作物の必要量に応じて適時にカリウム施肥した方が放射性セシウムの作物への移行が少ないことが知られています。(1989年・京大・小出裕章)

また東電フクイチからセシウムの約6%に相当する量の放射性のストロンチウムが出ています。検出に手間と時間がかかるため検査はすくないですが、セシウムがあればストロンチウムがあります。ストロンチウムは人体内ではカルシウムと間違えられ骨などに沈着しますが、土壌中でも同様でカルシウムが少ないと植物・作物に吸収されます。日本の土壌は元来カルシウムが少ないので、移行も多くなると思われます。石灰などカルシウム施肥で抑制できます。

今後の営農と全数検査

こうしたことから、東電フクイチからの放射性セシウムなどが降下沈着した福島県、栃木県、群馬県などでは、今後の営農・作付けには
調査密度の髙い土壌の放射性セシウム濃度調査とともに、土性の調査が必要
粘土を入れる土壌改良、水口改善といった農地改良
③粘土からのセシウムを追い出さない施肥などの栽培法改良
④生産物を全数、お米なら30kg袋毎に検査する。基準値を超えるものは東電に買い取らせる。検査結果を表示Bq/kgする。
が求められると思います。

宮城県の村井知事は、風評被害を招く知事 [放射能検査と摘発、食品、水]

放射性物質は少なければ少ないほど危険性はなくなりませんが小さくなるのですから、少ないものを選好するのは当然の消費者の行動です。
村井・宮城県知事は「詳細な(牛肉のセシウム汚染の)数値を出したところで消費者の皆さんは理解ができないわけでありますから、安全か安全でないかということだけはっきりと証明すれば十分だ・・その証明書がついていれば500ベクレル・Bq以下で、どれだけ食べても全く問題がないということであります。」(22日の記者会見
これでは10Bqも499Bqも区別できません。宮城県産牛肉全体への忌避「風評被害」を招くもです。




お米、
9月1日に角田市や大河原町など県南部でとれたコメについて、8月下旬から始めた放射性物質の予備調査結果を初めて公表した。

丸森町小斎の農業大内喜一郎さん(59)は「予備調査で検出されず、よかった。少しでも検出されると販売に影響が出る。10日ごろに刈り取りをするつもりだが、本調査でも検出されないでほしい」と願っていた。
コメの作付面積が県内最大の登米市のJAみやぎ登米の榊原勇組合長は「県南で不検出ならば、少なくとも私どもの稲も大丈夫だろう」と安堵(あんど)の表情を浮かべる。「県南であろうと県北であろうと、消費者は同じ宮城米と見るので、どの場所でも(値が)出ないことを願うばかり」と話していた。


*「不検出」とは、放射性物質が存在しない、又は定量下限値(20ベクレル/kg)未満であることを示す。

他自治体では、放射性セシウムを134と137の2核種で発表している。
分析機関の(財)日本食品分析センターのHPでも2核種を別々に計測とある。
ところが、宮城県の公式発表では、2核種を別々にせず、一括して放射性セシウムとしている。
検査データを、県当局が加工・編集している。それは村井知事の「数値を出したところで消費者の皆さんは理解ができないわけでありますから、安全か安全でないかということだけはっきりと証明すれば十分だ」との意図に沿ったものだろう。


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消費者の不信「風評被害」を招く福島県政 [放射能検査と摘発、食品、水]

福島県の早場米、会津坂下町の旧若宮村の4地点で収穫されたお米のセシウム汚染の結果が公表されました。
結果は、検出せずでした。
時事通信によれば「使用した測定器で検出可能な最小量を示す検出限界(1キロ当たり5~10ベクレル)以下」

会津坂下町の土壌では、放射性セシウムは県の調査では751、250、445。町の調査では140~410でした。土壌からお米(玄米)への移行率0.1~0.01ですから、予想される汚染度は0.14~70Bq/kg。測定の検出限界の設定は報道通りなら悪くありません。

ところが、福島県庁のHPにある公式発表は、計測方法は記載がなく、ND(no date)つまり「検出せず」で、出荷・販売の規制値の「500Bq/Kgを超えるものは0品」と書かれています。検出限界は書かれていません。
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福島県内の土壌汚染の程度は、4600~9まで幅広いのです。したがって、お米の汚染度も幅広くなります。現在の福島県庁の公表のフォーマットでは計測方法や記載基準は書かれていませんから、記載の基準を検出限界の約3.3倍の定量下限に変更されてもわかりません。今回の測定法と同じにして測って15とか出ても、記載基準を定量下限に変更すれば、ND「検出せず」と記載できます。

 測定器の検出限界は、計測時間を短くする、一検体の計測回数を減らすなどのすれば高くなります。現在の福島県庁の公表のフォーマットでは、検出限界や定量下限の値は記載されませんから、そうやって高くされてもわかりません。そうすると、ND「検出せず」とかける汚染度がたかくなります。
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 福島県内の土壌汚染の程度をみれば県北や県央のお米の検査が始まると、検査方法、検出限界などが同じなら検出事例が続出すると予想されます。数値は高いでしょうが、それでも、規制値の500Bq/Kgを超えるものは少ない。また、会津、南会津は「検出せず」か値は低い。そうなった時には、消費者は会津や南会津のお米を選好すると思います。放射性物質は少なければ少ないほど危険性が小さくなるのですから当然の消費者の行動です。

 逆に、検査方法や検出基準を明らかにしないまま、土壌汚染値から見て検出例が少なかったり、出なかったり、「500Bq/Kgを超えるものは0品」と測定データを出さないようになると、消費者は福島県政の正直さに疑いを持ち、福島産全体を忌避するようになると思います。また、福島県の農協、全農が会津も県北も県央も区別表示をしなかったり、ブレンドしても同様に忌避行動が起きると思います。

 こうした忌避行動は「風評被害」と非難されますが、放射性物質は少なければ少ないほど危険性が小さくなるのですから当然の消費者の行動です。信頼できる汚染値が得られず、汚染値の大小で選択できないのであれば、福島産全体を忌避することが最も合理的な危機回避です。

 佐藤雄平知事が率いる福島県庁は、こうした風評被害を招き寄せる行政、汚染値の公表のやり方をやめるべきだと思います。


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