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柏崎刈羽原子力発電所、東京電力の核物質防護、2022/04/27の規制委員会よりー大島堅一教授 [柏崎刈羽原発、施設設備]

2022-04-27

大島堅一 @kenichioshima

今日の規制委員会で公表された「東京電力柏崎刈羽原子力発電所におけるIDカード不正使用事案及び 核物質防護設備の機能の一部喪失事案に対する 追加検査の中間とりまとめ」の内容は、大変な内容が含まれていました。コンパクトなので読むことをおすすめします。



  

2022-04-27 15:17:12

大島堅一 @kenichioshima

ごく簡単にいうと、例えば「防護組織」については、柏崎刈羽原発で、核物質防護管理者が他の業務を兼務していたり、核物質に関する不適合管理等を審議する会議体に参加していなかったり、本社や柏崎刈羽原発の経営層による防護本部への立ち会いもほとんどなかったと書かれています。


  

2022-04-27 15:18:31

大島堅一 @kenichioshima

さらに、「防護設備の仕様」「保全方式」「代替措置」「出入り管理や監視の方法」でも、およそ核物質を大量に扱う原発とは思われないずさんな状況が明らかにされています。まさに、東京電力は、原子力事業者失格で、こんなところを動かすなんてあり得ないです。


  

2022-04-27 15:19:22

大島堅一 @kenichioshima

「中間取りまとめ」が示した一つ一つの内容はとてもよいのですが、問題は、その解釈にあります。


  

2022-04-27 15:20:13

大島堅一 @kenichioshima

なぜか、「2事案の発生については、他電力に共通する問題や東京電力の全社的な問題ではなく、柏崎刈羽原子力発電所に固有の問題であると判断される。」としています。しかし、先に引用したように、「本社や柏崎刈羽原発の経営層による防護本部への立ち会いもほとんどなかった」わけです。


  

2022-04-27 15:21:34

大島堅一 @kenichioshima

このことからすれば、今回の事案が、単に一事業所たる柏崎刈羽原発固有の問題でないことは明らかで、東京電力ホールディングスの経営陣が、核物質防護を軽視していたとみるのがむしろ自然だと思います。


  

2022-04-27 15:22:05

大島堅一 @kenichioshima

東京電力ホールディングス本社の核物質防護に関する認識が十分であったのか、具体的措置を講じていたのか、といった点に関し、原子力規制委員会は具体的調査を行っていません。具体的調査を行わずして、「東京電力の全社的な問題ではなく」と断ずることはできないはずです。


  

2022-04-27 15:22:39

大島堅一 @kenichioshima

東京電力ホールディングス本体の問題を明らかにしなければ、今回の問題のようなことは今後も起こる可能性があります。というか、東京電力はこの手の問題がありすぎな会社です。原子力規制委員会は、より本質に迫った分析を行う必要があります。


  

2022-04-27 15:23:35

大島堅一 @kenichioshima

具体的調査は、いかにも技術者らしくてよいのですが、東京電力本体と柏崎刈羽原発を切り離しているところがトンデモ報告書になっています。柏崎刈羽原発は、東京電力の事業所です。一事業所がやらかした問題です、ということですませてよいものではないでしょう。


  

2022-04-27 15:28:31

大島堅一 @kenichioshima

核物質防護という、原子力事業者としては基本のキができていないのですから、東京電力は原発を動かす資格がないですし、今後も、核セキュリティーでとんでもないことをやらかす可能性があると考えていいと思います。


 



タグ:核物質防護
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柏崎刈羽原発にある使用済み核燃料、平成28年度現在 [柏崎刈羽原発、施設設備]

1~7号機の使用済燃料保管状況 平成28年度末 単位は核燃料集合体の体数

柏崎市の【1~7号機の燃料輸送・使用済燃料保管状況】のWebページ に依り作成


flow部分.jpg

プラント 貯蔵容量・体 炉心容量 管理容量・体 度末保管量 空きの容量・体
1号機 2,790 764 2,026 1,835・・90% 191・・炉心の四分の一
2号機 3,239 764 2,475 1,759・・71% 716・・炉心の93%
3号機 3,212 764 2,448 1,695・・69% 753・・炉心の1個分
4号機 3,209 764 2,445 1,660・・67% 785・・炉心の3分の一
5号機 3,175 764 2,411 1,934・・80% 474・・炉心の六割
6号機 3,410 872 2,538 2,362・・93% 226・・炉心の四分の一
7号機 3,444 872 2,572 2,489・・97% 83・・炉心の一割
合計 22,479 5564 16,915 13,734・・81% 3181・・炉心の六割

(注意)
定期検査・燃料交換時には原子炉の炉心の核燃料を一時、使用済燃料保管プールに移動する。そして、核分裂量が多くなった燃料棒をプールに残し・除き未使用の新燃料を加えて、プールから再移動して新炉心を構成する。約三分の一から四分の一が残置・交換される。この炉心からの移動の必要があるから、1炉心分の空きスペースが必要。置ける、残置できる使用済み核燃料量を、管理容量と云う。貯蔵容量-炉心容量=管理容量。

考察
再稼働したら1年3か月後には、定期検査・燃料交換の時を迎える
。その際に交換用の新燃料棒が、予め保管プールに入れてあれば作業はスムーズに進む。そうでなくとも作業時間をかければ良い。そういった意味ではどのプラント・号機も再稼働は可能。


ただし、その燃料交換後に管理容量がゼロ以下になれば、炉心の核燃料を使用済燃料保管プールに一時移動も出来なくなるから、燃料交換できず再々稼働は無理に無理になる。その視点からは、1号機、6号機、7号機は燃料交換の2度目、二回目はない。つまり再稼働しても、その号機プラントの運転期間は1年3ヶ月×1+1年3か月・炉心に入れっ放しにする最終運転分≒2年6か月ほど

1~7号機全体で検討すると、全炉心容量は5564体。全空き容量は、3181体・全炉心容量の57%。一回の定期検査・燃料交換で約三分の一から四分の一炉心が交換、残置される。1670から1390体の使用済み核燃料が出て、空きを埋める。2回の定期検査・燃料交換で管理容量がゼロ程度になる。だから、運転期間は1年3ヶ月×2+1年3か月・炉心から取り出さない最終分≒3年9か月ほど。


仮に、再稼働は6、7号機だけならば、全空き容量は3.6炉心分。2機でこれを埋め合うことになり、全部で11回の燃料交換で埋まることになる。管理容量がゼロ以下になる。6、7号機で合わせて11×1年3か月+1年3か月・6号機最終+1年3か月・7号機最終で延べ2機で11年39ヶ月≒14年3か月ほど見込まれる


 全空き容量は、1026体が一気に埋まる、塞がる可能性がある。柏崎市は【専用船で青森県六ヶ所村の日本原燃株式会社六ヶ所再処理工場へ2002平成14年から輸送。】と記載している。それは2012平成224年までに1026体。これが、帰ってくる可能性がある。


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TIP配管、TIPボール弁は隔離弁になるのか [柏崎刈羽原発、施設設備]

TIP 原子炉核計装系:reactor neutron monitoring system(原子炉の中性子監視システム): nuclear instrumentation system(核計装)の移動式炉心内計装・トラバース式中性子検出器:Traversing Incore Probing System(TIP)
原子炉状態を核分裂で発生する中性子で監視するための装置。
中性子を数える
一定の断面積を一定の時間に通過する中性子の数で核分裂の様子を知ることができる。一定の断面積を、一定の時間に通過する中性子の数は、中性子の速度が一定ならば、その一定の時間の速度の長さで底面が1平方センチメートルの柱体の空間にある中性子の数である。一定の時間に流れゆく中性子流、中性子の束とイメージされる。それで中性子束(ちゅうせいしそく、Neutron flux)と名付け、定義は1平方センチメートル、1秒としている。単位は cm -2 ・sec -1。
設計性能
原子炉停止状態から定格出力の125%までの原子炉出力を適切な中性子束検出装置によって測定する。
TIP測定原理03.gif原子炉の監視の他に、運転時の異常な過大な原子炉出力の発生によって、燃料被覆管が損傷するおそれのあるときに、これを未然に検出して、原子炉をスクラムさせ燃料被覆管の損傷を防止する機能。
あらかじめ定めた出力以上では制御棒引抜監視装置により燃料の許容設計限界を超える前に制御棒の引き抜きを阻止する機能を持たされている。

 
中性子束モニタリングには、起動領域での核分裂電離箱方式モニタ及び出力領域での核分裂電離箱方式モニタをもちいる。計測電流は通常、非常に微弱であり、これをプリアンプで0~10V程度に増幅する。この増幅の方法により、モニタはに分類されます。この2種類のモニタ・計測器は、使用と共に中性子やガンマ線を浴びて感度が減衰する。その感度の変化具合を調べ、測定値を正す(ゲイン校正)が必要になる。原子炉運転時においても保守、調整及び校正を行うことができる設計がされている。
配置
東通TIP-59bsiryo5.jpg
起動領域モニタ(SRNM) Start-up Range Neutron Monitor
モニタは炉内固定
出力領域モニタ(PRM):Power Range Monitor
TIP-LPRM.jpg(a) 局部出力領域モニタ(LPRM):Local Power Range Monitor
A,B.C,Dの4個の独立した検出器を軸方向(上下)に等間隔に配置し、炉心の局部出力の連続測定を行う。あらかじめ設定した値になった場合に警報を出す
(b) 平均出力領域モニタ(APRM)Average Power Range Monitor
平均出力領域モニタは、あらかじめグループ分けした局部出力領域モニタの、各増幅器からの出力信号を平均化する機器で構成
原子炉定格出力の125%までの原子炉平均出力を連続して測定し、指示及び記録を行う。

(c) 移動式炉心内計測装置(TIP)
測定値を正す(ゲイン校正)が必要になる。感度が既に分かっている測定器を原子炉外から原子炉内に送り込んで、局部出力領域モニタと同じ場所を同じ時刻に測って、両方の測定値を較べてみる。その装置が Traversing in-Core Probe 移動式炉心内計装装置、略してTIP。その計測器を炉心内の各位置に設置された校正用導管(案内管)までの移動を導く管を案内管という。導管は、炉心内からドライウェル内の校正用導管選択装置まで延びており、校正用導管を、3グループに分割し、グループごとに検出器駆動装置を設ける。
検出器の炉心内への挿入及び引き抜き操作は、らせん状巻線のついた同軸ケーブルを駆動装置の歯車によって駆動し、検出器を移動させることによって行う。
 
TIP-LPRM8.jpg
 
ボール弁は隔離できるか
2004平成16年10月20日のKK6号機(ABWR)のTIPの保安規定違反の件の報告書(12月17日付)より
http://www.tepco.co.jp/kk-np/nuclear/pdf/16121701.pdf
10月20日15時頃からTIPを操作
10月20日17時頃に作業終了
TIP検出器を原子炉格納容器に出し入れする際に開閉するTIPボール弁の一つ、3弁のうちの一つが「閉」表示にならなかった。
 
TIP-KK6.jpg
翌10月21日午前中の調査で、当該ボール弁は手動操作で全閉しない場合に格納容器隔離信号が発生しても自動的に全閉しないことが判明。
TIP系に付属する、TIP検出器がボール弁より後方にある遮蔽容器内にある事を検知する近接スイッチが有るとする信号を送らないと動作不良では閉まらない。切り離したところ13時37分にボール弁を全閉できた。
17時の作業終了時には、TIP検出器はらせん状巻線のついた信号同軸ケーブルを駆動装置の歯車によって駆動して遮蔽容器に回収されていたのであろう。だから、近接スイッチの動作不良と当直長(運転責任者)の「万一格納容器隔離信号が発生した場合には当該(ボール弁の隔離弁)は自動的に『閉』するものと考え、翌日(10月21日)の対応で問題ない」の判断の適否検討で報告は納めている。

校正作業中に起きたら
 しかし、格納容器隔離弁が目的とする格納容器バイパスを防ぐという視点での評価がない。15~17時の間に校正作業中に格納容器隔離信号が発生した場合にボール弁が全閉して隔離できたかという評価がない。
 らせん状巻線のついた信号同軸ケーブルがボール状の弁に挟まって、全閉はしないだろう。それともケーブルを切断できるのか?炉心溶融すれば原子炉内に漏洩口ができる。全閉してなければ、格納容器の外に漏出口があるのだから格納容器をバイパスして放射能が漏えいする。

TIP_image2387-2.jpg



次世代炉HP-ABWRのパクリ?東芝のEU-ABWR、日立のLT-ABWR(転) update2 [柏崎刈羽原発、施設設備]

再稼働が目論まれている柏崎刈羽原発6、7号機はABWRという炉型です。この日本版ABWR、JP-ABWRをほかの国々のABWRと比べてみようと思います。
 1回 リトアニア版ABWR LT-ABWR http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2014-04-10
  3回 EU-ABWR、US-ABWR  フェーズⅠAMで比較検討
 4回 フェーズⅡAMで比較検討 EU-ABWR、US-ABWR  
さて、IC・非常用復水器は福島第一原発1号機(1966年12月着工)に設置されていました。昔からある技術です。溶融弁付き導水管やPCCS・受動的(静的)格納容器冷却システムを、東芝は何時から技術開発していたのでしょうか。
 受動安全性システムによるペデスタル域での溶融デブリの保持・冷却

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東芝は溶融弁に関する特許を出願しています。それは、平成5年(1993)11月12日に出願され出願番号は1993-283078。内容は米国GE社が提案する溶融弁よりも優れた形状記憶合金を使った弁を作りましたです。平成7年(1995)5月23日に公開されてます。まだ未審査で結論が出ていません。

JP-ABWRの柏崎刈羽6号機は1991年9月着工・原子炉系の元請は東芝、7号機は92年2月・日立、浜岡5号は99年3月・東芝、志賀2号は99年8月・日立、島根3号は2005年7月・日立、大間は2008年・日立、どれにも付いていない。何故でしょう?

日立の方が原子炉の設計・建設を多く手掛けています。
GEは1993年以前に溶融弁付き導水管の特許を持っていたことは、東芝の特許出願文書からわかります。ABWRはBWRの基本的特許を持つGEと日立と東芝が共同で開発しました。東芝が知っていて、日立が知らなかったのでしょうか?日立は有効性を認めていないのでしょうか?
GEは溶融弁付き導水管による「下部ドライウエル注水」the lower drywell flooder (LDF)のシステムを付けた設計で、NRC・米国原子力規制員会の審査をうけ、1997年に型式認定を得ています。その有効性は、このように認められています。
そして日立とGEは合弁で、2007年に米国のGE日立、日本の日立GEという会社で原発では一体化してやっています。2013年のIAEAの原子炉技術に関する会議、INPROの対話フォーラムでABWR陣営を代表してGE日立の 安田健一氏が発表しています。その資料では過酷事故対策としてこのシステムが載っています。

このように日立は、GE日立(GEが60%株主)という下位の立場では、「下部ドライウエル注水」the lower drywell flooder (LDF)のシステムの有効性を認めています。しかし、日立GE(日立が80%株主)という主導権を持つ立場では、英国版ABWR、UK-ABWRとリトアニア版LT-ABWRやJP-ABWRでは設計提案していません。何故でしょう?
日本独自の横型熱交換器PCCS 

さて、PCCS・受動的(静的)格納容器冷却システムは、熱交換器から凝縮した復水と窒素ガスなど非凝縮性のガスの2相で扱いが難しい形態で出てきます。東芝はEU-ABWRに設置設計しているのですから、当然技術開発済です。日立はどうなのでしょうか。
日立から2014年3月25日付で「日立と日立GEでは現在、大規模自然災害などによりポンプなどを駆動する電源が喪失した場合でも、原子炉を冷却可能なシステム」「原子炉自然冷却システムの開発を進めています。」「開発を進めている原子炉自然冷却システムは、崩壊熱が大きい初期はポンプなどを駆動する電源を用いない水冷システムで除熱し、崩壊熱の減衰後は空気の自然循環力を用いた空冷システムのみで原子炉を冷却するものです。」。空冷システムの「詳細は、3月26日から28日まで、東京都市大学で開催される「日本原子力学会2014年春の年会」にて発表する予定です。」とニュースリリースが出ました。
14-0415日立空冷0325b.png
それでは、IC・非常用復水器、PCCS・受動的(静的)格納容器冷却システムも付いています。東芝にはない圧力抑制プールに復水を戻すIC・非常用復水器が付いています。
東芝、日立、日立GEのIC、PCCSは、GE、GE日立のそれと違います。GEは熱交換器が縦型ですが、日立と東芝は横型です。
縦熱交換器のIC、PCCSは、米国の改良型軽水炉計画に由来します。1985年、米国政府は10年間で設計開発、確証試験およびNRC米国原子力規制委員会からの設計証明取得までの改良型軽水炉計画を発足させます。その開発目標の一つは、大事故から運転中の極小リークまで一定期間(3日間)運転員の操作を期待しない安全系の開発です。
 この計画で、PWRではWH社のAP600、BWRではGEのSBWRが開発されます。設計証明取得までは到達しませんでしたが、AP600はAP1000の基礎となって、今日、中国で建設中です。SBWRはESBWRとなっています。受動安全性のシステムの効果で炉心損傷事故は5900万年に1度の頻度、これで売込み中です。

そのSBWRでは、大事故から運転中の極小リークまで一定期間(3日間)運転員の操作を期待しない安全系、ポンプなど動的機器に代わって重力等の自然力を用いた受動的静的システムの開発が行われました。それは、IC・非常用復水器、PCCS・受動的(静的)格納容器冷却システム、GDCS・Gravity-Driven(重力ー駆動) Cooling(冷却) System(システム)・重力落下式炉心冷却系です。
 
=重力落下式炉心冷却系は格納容器内上部に設置された GDCS プールと原子炉圧力容器が逆止弁を介して直接配管で結ばれており、自動減圧系により原子炉圧力が十分小さくなると、プールと圧力容器に接続されたノズルの高低差・約13㍍で炉心へ注水できるシステム。柏崎刈羽原発では、淡水貯水池(標高45㍍)と格納容器頂部は20㍍の高度差がありますから、減圧のシステムと配管を整えれば、重力落下式で炉心に注水冷却が可能だと思います。
GDCSは、減圧システムの故障か配管の故障があると注水できません。注水できない確率は、減圧システム故障の確率と配管故障の確率を足した和になります。重力落下ではなく電動ポンプによる送水で注水するように能動的システムに組む変えもできます。その能動的システムでは、電動ポンプの故障か電力関係の故障でも注水できなきなります。能動的システムの注水できない確率は、減圧システム故障の確率と配管故障の確率に、さらに電動ポンプ故障の確率と電力関係の故障確率を足した和になります。つまり、受動的システムは能動的システムより故障、作動しない確率が低くなります。
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閑話休題 SBWRでは、IC、PCCSの熱交換器は縦型です。日立と東芝は横型です。
 福島第一原発1号機のICでは、
福島第一原発1号機に設置されていたICは横型です。横型熱交換器は構造的に耐震性や保守性に優れているからです。東電核災害では1号機のICは、津波到達後稼働してません。そして18時半ごろに、それにようやく気付いて、弁を開操作しました。運転員がICから作動時に出る水蒸気を確認し停止操作。その後に再度、起動操作しましたが作動しませんでした。その理由として水素ガスが挙げられました。
メルトダウンすると水素ガスが大量に発生します。核燃料からは放射性希ガスも出てきます。メルトダウン後にICに入る炉(圧力容器)からのガスは、非凝縮性の水素ガスと放射性希ガス、水蒸気が混合したものになります。水蒸気は凝縮して水に戻り、その復水は管を下り落ちます。水素ガスや放射性希ガスは凝縮しません。管に滞留して塞ぐことになり、管に炉のガスが流入しなくなった。そのように説明されました。
 横型熱交換器を用いたJP-PCCSの開発

PCCSは、格納容器内のガスが熱交換器に流れ込みます。格納容器には運転時には窒素ガスが封入してあります。大気中には酸素がありますが、爆発を避けるために、窒素ガスを送り込んで酸素を追い出してます。ですから、最初から多くの非凝縮性の窒素ガスがあるガスがPCCSでは熱交換器に流れ込みます。きちんと作動するのでしょうか?
 14-04145-17.jpg
平成11、1999年から日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)で研究されたそうです。それでは「凝縮水と非凝縮性ガスがともに円滑に排水・排気されることが明らかとなり、U字伝熱管を用いた横型熱交換器を静的格納容器冷却系に適用できることが確認できた。」

平成12、2000年度には「受動的安全性を具備した低減速軽水炉に関する技術開発」で横型熱交換器を用いたPCCSを組み込んだ原子炉システムの概念設計が研究されてます。
「縦型PCCSに比べて、横型PCCSは、プール水量の低減、保守性、耐震性等の向上が図れ、プール水深による制限が少ないため熱力学的に最適な設計を行うことができる。」
「熱交換器入口配管の吸入口を格納容器上部に配置し、格納容器上部に蓄積する傾向のある蒸気を優先的に熱交換器に導き凝縮させる」
「格納容器頂部より低い場所に設置可能な低位設置型PCCSプールの使用により耐震性にも優れたシステム概念を構築」
平成13年度研究では20%のコスト低減との結果です。
「本システムでは、安全系においてコスト比率の高い高圧ECCS ならびに崩壊熱除去系(RHR)を受動的システムに置き換えることで物量低減を図っている。この結果、安全上必須となる非常用DG(デーゼル発電機) 容量を大幅に低減でき、必要な非常用電源を保安用DG から供給することで、非常用電源のコストを大幅に低減できる見込みを得た。これにより、炉廻り機器・据付コストは、単位出力当たりのコストで先行ABWR と比較して約20%の低減が可能であることがわかった。」
2006年、JP-PCCS技術的完成、次世代炉開発計画へ
平成18、2006年には原研は「PCCS用横型熱交換器が所定の要求性能を持つことを確認しました。横型熱交換器を用いたPCCSは、現在、出番を待っています。」と技術的完成を宣言しています。

平成20、2008年から次世代軽水炉等技術開発にPCCS、ICが取り入れられています。この計画は「2030年前後から見込まれる原子力発電所の代替炉建設需要をにらみ、また、世界市場も視野に入れ、平成20年度より国の支援の下、エネルギー総合工学研究所を中核機関とし、メーカー、電気事業者と連携し、学識経験者などの協力も得て、官民一体となった取り組み」です。

その中間報告書・2010年ではBWRの次世代HP-ABWRは
シビアアクシデント対応・・静的デブリ冷却設備、静的格納容器冷却系(PCCS)によりPCV ノーベント
地震・・免震(原子炉建屋単独またはタービン建屋一体)
航空機落下・・航空機落下対策建屋
そして
「■ 安全性-世界最高水準の達成

設計基準事故に対しては、実績のある動的3区分構成の安全系により早期に事故収束を図る。過渡事象対応として、高圧注水系を削除し静的機器である非常用復水器を採用し、信頼性の向上を図った。さらに、地震などの外部事象や航空機落下及び、二次被害として火災や溢水等への対応力強化策として、安全系設備を系統毎に物理的障壁を設置して完全分離配置とした。また、航空機落下対策については原子炉格納容器や燃料プール等、冗長性を有しない安全系設備を構造強化により防護する。

また、シビアアクシデントに対しては、炉心溶融時の原子炉格納容器の耐性を強化する観点から、静的システムを活用して下部ペデスタル領域での溶融デブリの保持・冷却及び静的格納容器冷却系を用いて崩壊熱除去することで、事故時の原子炉格納容器閉じ込め機能を維持し、放射性物質の環境放出を抑制した。」

その完成予想図をみると、日立がリトアニアに提案したLT-ABWRの図です。
14-0415zisedai_BWR.png 14-0409hitachi_22.png

このように、東芝がフィンランドに提案したEU-ABWR、日立GEがリトアニアに提案したLT-ABWRや原子炉自然冷却システムの水冷システムは、日本の次世代炉開発の研究、技術開発の成果をベースにしたものです。既に実用化段階に達している横型熱交換器を使った最適な設計を行うことができるPCCS・受動的(静的)格納容器冷却システム、IC・非常用復水器を取り入れています。
現在に段階では次世代炉で目鼻がついていない静的システムを活用した下部ペデスタル領域での溶融デブリの保持・冷却。これは、それの特許技術を持つ東芝は設計に取り入れている。圧力抑制プールの水を形状記憶合金を使った弁の導水管で注水する設計にしている。日立GEは、特許を持たない。GEか東芝から買うしかない。そして、UK-ABWR、JP-ABWRにはない。
14-0415lw4-4s.jpg 

日本の次世代炉開発の研究、技術開発の費用は、経産省予算から出ています。その予算は国民が納めた税金が原資です。研究・開発のスポンサー、パトロンが、その成果を享受できてない。何故でしょう?

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