再臨界が起こるかも!日本のデブリ対策(事前水張)・高浜原発パブコメ回答から② [AM-メルトスルー、CCI]
また再臨界は「崩壊熱に比べて十分小さい」としています。崩壊熱は緊急停止直後は出力の約7%、停止からの時間経過に従って減っていきます。比較の物差しになっている崩壊熱は、何時の時点の崩壊熱量なのかを示さなければ意味のある文にはならない。これも言葉を巧みに用いて、意味がない文に意味が有る気に見せる修辞です。
東電の福島原発では、溶融物が何処にあるのかもわかりません。微粒子化したら一層見つけ難い。取り出すのも難しい。粒子化した溶融核燃料は、どのように集めるのでしょうか?
東電の福島原発での汚染水から放射能を取り除く装置の稼働状況をみると、微粒子状のデブリを含んだ汚染水からの、微粒子状のデブリの除去はどうやると上手く取り除けるのだろうか。
規制委は「適切な対応は検討できる体制を整備する方針であることを確認しています。」としています。つまり、微粒子状のデブリを含んだ汚染水の始末は何も考えていない。これが発生する対策を採っているのに、発生を予定しているのに、事故が起きたらその時になって考える、検討する。正に泥縄。(泥縄とは、泥棒を捕らえてから縄を綯う、⦅なう⦆を略したもの。泥棒を捕まえてから、慌てて泥棒を縛るための縄を作ることで、事が起きてから慌てて準備すること)
資料1 関西電力株式会社高浜発電所3号炉及び4号炉の審査書案に対する意見募集の結果等及び発電用原子炉設置変更許可について(案)【PDF:4MB】
奇異な日本のデブリ冷却策(事前水張)を正当化する規制委・高浜原発パブコメ回答から① [AM-メルトスルー、CCI]
「第五十一条 発電用原子炉施設には、炉心の著しい損傷が発生した場合において原子炉格納容器の破損を防止するため、溶融し、原子炉格納容器の下部に落下した炉心を冷却するために必要な設備を設けなければならない。」
より具体的に原規技発第 1407092 号「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則の解釈」で次のように定めている。
第51条(原子炉格納容器下部の溶融炉心を冷却するための設備)
「1 第51条に規定する「溶融し、原子炉格納容器の下部に落下した炉心を冷却するために必要な設備」とは、以下に掲げる措置又はこれらと同等以上の効果を有する措置を行うための設備をいう。なお、原子炉格納容器下部に落下した溶融炉心の冷却は、溶融炉心・コンクリート相互作用(MCCI)を抑制すること及び溶融炉心が拡がり原子炉格納容器バウンダリに接触することを防止するために行われるものである。
a)原子炉格納容器下部注水設備を設置すること。原子炉格納容器下部注水設備とは、以下に掲げる措置又はこれらと同等以上の効果を有する措置を行うための設備をいう。
ⅰ)原子炉格納容器下部注水設備(ポンプ車及び耐圧ホース等)を整備すること。(可搬型の原子炉格納容器下部注水設備の場合は、接続する建屋内の流路をあらかじめ敷設すること。)
ⅱ)原子炉格納容器下部注水設備は、多重性又は多様性及び独立性を有し、位置的分散を図ること。(ただし、建屋内の構造上の流路及び配管を除く。)
b)これらの設備は、交流又は直流電源が必要な場合は代替電源設備からの給電を可能とすること。」
参照・・事前水張・・奇異な日本のデブリ冷却策・高浜原発パブコメ
http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2015-01-14
資料1 関西電力株式会社高浜発電所3号炉及び4号炉の審査書案に対する意見募集の結果等及び発電用原子炉設置変更許可について(案)【PDF:4MB】
(A)「水蒸気爆発は除外」するために「水蒸気爆発の可能性は低い」ことを示したい。しかし数値計算ができないので「極めて低い」ことにする。
(B)そのために都合よく実験データを取り上げ、解釈した。
その疑問への規制委の回答・考え方は、次の問答に現われている。
逆に、コアキャッチャー設置をバックフィットで義務付ける。資源エネルギー庁の薄型コアキャッチャーの開発、既設炉への導入を前提に置き、施工性の高い薄型のコアキャッチャーの開発(発電用原子炉等安全対策高度化技術基盤整備事業)が、東芝を受託業者に選定して進んでいる。コアキャッチャー設置をバックフィットで義務付けることで、こうした更に開発が進む。既設炉に設置、後付できるコアキャッチャーができれば、世界の480余りの原発の危険性を低くすることも可能だ。
日本だけでない、世界に影響する。再稼働されるにしても出来るだけのことはしなくては。
東電核災害の経験を無視・・高浜原発パブコメ [AM-メルトスルー、CCI]
東京電力福島第一原発1号機では、ペデスタル床の機器ドレンサンプピットに推定約80㎝と厚くデブリが堆積した。そして、デブリによってピットに設置された原子炉補機冷却系RCWが溶融損傷したと見られる。1号機の原子炉建屋では、各所の放射線量を測定したところ、RCW配管で高い線量が測定されているからである。
このような原子炉から溶融貫通し落下したデブリがドレンサンプピットに厚く堆積すること、それによる配管の溶融損傷の可能性、それが格納容器外への放射能の拡散ルートになる可能性は以前から指摘されている。ゼネラル・エレクトリック・カンパニイの1994年に出願した特許(特許登録番号3510670)の「コリウム遮蔽体」、(株)東芝の2009年出願の特許(特許登録番号5306074)の「原子炉格納容器ドレンサンプ」は、その対策の技術である。
高浜原発などPWRは、格納容器再循環サンプが原子炉格納容器内最底部にある。流出した冷却水と非常用炉心冷却設備及び格納容器スプレイからの水を溜める。注入水源(燃料取替用水タンク)が空になった後にここに溜まった水を使うので、格納容器外の注水ポンプへ通じる配管がある。東京電力福島第一原発1号機で実際に起きたであろうデブリがドレンサンプピットに厚く堆積することが、格納容器再循環サンプで起きるであろう。
1979 年に米国のスリーマイル島(TMI)原発でおこた核災害、TMI事故では希ガスとヨウ素が環境に放出された。主な経路の一つに補助建屋内に通じる配管、汚染水ドレンをピットから補助建屋内のタンクへ送る配管がある。隔離が不完全で汚染水ドレンタンクからオーバーフローして放射能が環境に放出された。
デブリの再循環サンプでの堆積、そのデブリによる配管の溶融損傷、次に不完全な隔離の段階を経て環境汚染が生じる。先ず、再循環サンプでの堆積配管の溶融損傷を防止する策を講じることが必要である。東京電力福島第一原発1号機では実際に起きているのだから、無策は許しがたい怠慢である。次に不完全な隔離を検出して隔離を完全なのにする対策である。
高浜原発の審査書(案)では、特にデブリの再循環サンプでの堆積と配管の溶融損傷を防止する策を審査していない。対処する技術は既にある。原子力規制委員会の審査、論議は不十分であり、審査をやり直すべきである。
多様性
受動的と能動的
人の都合、周囲の避難計画に機械、原子炉、原発が合わせるべきである・高浜原発パブコメ [AM-メルトスルー、CCI]
高浜原発の重大事故想定(審査会合:2013.10.24資料1-1, p.12-29, p.12-3)では、事故発生から、
・炉心損傷(メルトダウン)開始が約19分後
・原子炉容器破損(メルトスルー開始)が約1.5時間(90分)後となっている。
これは、避難計画をどうするかという以前の問題である。住民は避難にとりかかるより相当前に放射能に襲われることになる。
それゆえ、このような事故が起こることを想定していながら、再稼働を認めることは絶対に許されることではない。
まずは炉心損傷(メルトダウン)開始、原子炉容器破損(メルトスルー開始)を遅らせる策を考えるべきである。福井県の原子力防災訓練では7時間に避難を開始している。1時間の余裕を見込んで、8時間は遅らせるべきである。避難計画と整合性を持つべきである。
PWRの非常用炉心冷却設備は、蓄圧注入系、高圧注入系、低圧注入系および燃料取替用水タンクで構成されている。事故想定は、能動的動的 active safety な安全系の高圧注入系、低圧注入系の不作動を想定ている。水タンクはこれら二つの系の水源であり、注水は蓄圧注入系による。
蓄圧注入系は蓄圧タンク(ホウ酸水)、逆止弁などで構成されている。一次冷却材の喪失などで、一次冷却系の圧力が蓄圧タンクの保持圧力以下に低下すると、逆止弁が自動的に開きホウ酸水が炉心に注入される。蓄圧タンクの気相部にある加圧された窒素ガスがホウ酸水を押し出す。外部電源等の駆動源は必要としない受動的静的安全性を具えた系である。関西電力の解析想定は蓄圧タンクの保有水量、注水量を29立方メートル(1基当り、最低保有水量)としている。それで、約19分後にメルトダウン開始である。この注水がなければもっと早まる。
これは、蓄圧タンクを大容量化や増設して保有水量、注水量を増やせば、メルトダウンが遅くなるということである。高圧注水用のポンプ、低圧注水用のポンプは格納容器外に設置してある。同様に蓄圧タンクを格納容器外に増設も可能である。
このようにして、炉心損傷(メルトダウン)開始、原子炉容器破損(メルトスルー開始)を8時間は遅らせるべきである。機械の都合に人が合わせるのではなく、人の都合、周囲の避難計画に機械、原子炉、原発が合わせるべきである。それが出来ないのなら、深層防護の第5層目が成立しえない、約19分後に炉心損傷(メルトダウン)開始が約19分後、原子炉容器破損(メルトスルー開始)が約1.5時間(90分)後になると想定される原発は、再稼働を絶対に認めることはできない。
原子力規制委員会の審査、論議は不十分であり、審査をやり直すべきである。
passive safety 受動的静的安全性に欠ける遅れたデブリ冷却策・高浜原発パブコメ [AM-メルトスルー、CCI]
「受動的安全系」は停電・電力途絶や故障の問題が少ないため信頼性の向上する利点があるが、駆動力が弱いため計画通りの注水ができない場合が想定される。非常用炉心冷却設備(ECCS)のように主として能動的安全機能と併用する。能動的・受動的安全系を組み合わせたハイブリッドな安全系に防護設計思想は進化している。
原子炉格納容器下部注水設備は、原子炉格納容器の破損を防止するための重要な設備である。ところが、高浜原発の審査書(案)では、passive safety 受動的静的安全性をもったシステムではない。審査書(案)では、表4-4.8-1(p344)に一覧される諸設備で多様性を拡充したと認めているが、これらは active safety 能動的動的な安全系であって、passive safety 受動的静的安全性をもった安全系が一つもない。原子力規制委員会の審査、論議は不十分であり、審査をやり直すべきである。