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3/30の緊急安全対策では、周辺住民の被曝、地域の汚染を小さくするものではない [AM-非常用電源]

 7月13日に原子力安全委員会が公表した外部電源と非常用発電機を喪失する全交流電源喪失(Stasion Black Out 、SBO)の検討では、格納容器の温度の経過も検討しています。

BWR-3(福島第一・1号、島根-1)のIC(隔離時復水器系)では、崩壊熱により発生する水蒸気が導かれ胴側の水が蒸気のもつエネルギーを奪って沸騰し、蒸発した蒸気はベント管を通って大気に放出されます。それで格納容器のサプレッションブール・圧力抑制室の温度は、ICの胴側に水がある限り上昇しません。IC(隔離時復水器系)の容積は約100?で、約6時間持つとされています。ろ過水タンクから電動及びディーゼルポンプで消火系配管から給水が可能です。それで検討では、サプレッションブールの温度上昇はないと結論しています。

 BWR-4、BWR-5の沸騰水型原子炉では、崩壊熱により発生する水蒸気で原子炉圧力が上昇し、SR弁(主蒸気逃がし安全弁、作動設定値約7.5MPa)が開いて、原子炉蒸気が格納容器のサプレッションブール・圧力抑制室ヘ排出されます。プール内の水で蒸気が水に戻ります。それで、格納容器の圧力が上げないのです。格納容器のドライウエル内にある原子炉・圧力容器は、高温ですから、その熱もあります。この熱を格納容器から除く冷却系がSBOで稼動しません。崩壊熱が格納容器内に籠ります。それで、格納容器からの漏洩、容器の破損、爆発が起こります。

 サプレッションブール・圧力抑制室ヘ圧力容器から高温高圧の水蒸気、BWRですから放射能を含んだ水蒸気が入るので、水温が上がります。水温が100℃を超えると大気圧条件(1気圧)では、水蒸気が水に凝縮しなくなります。ここを境に崩壊熱で生じた水蒸気が格納容器内に出る格好になり、格納容器の圧力が上がっていきます。

 マーク-1型格納容器の設計の最高使用圧力は4.35kg/cm2、約4.3気圧で全体の内容積が約7,700m3。
Mark-II型は3.16kg/cm2、約3気圧。
柏崎刈羽 6、7 号のRCCV(鋼板内張り鉄筋コンクリート製)は3.16kg/cm2、約3気圧。
設計では、常温条件で最高使用圧力の0.9倍の圧力で格納容器内空間容積の0.5%/日が漏洩です。

 検討では、8時間以降にBWR-3、BWR-4のマーク-Ⅰ型格納容器は138℃に、BWR-4,BWR-5のマーク-Ⅱでは104℃になるとしています。138℃は約3気圧での沸点です。
 
全交流電源喪失SBOから約30分から1時間以内に復旧の目処が立たなければ、行われるCVCF等の直流電源負荷の一部切り離しで、延長された蓄電池が切れるのが約8時間後、その前後にサプレッションブール・圧力抑制室が圧力抑制機能を失うというのが原子力安全委員会の小委員会の検討結果です。

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電力が回復しなければ、原子炉から崩壊熱で発生する水蒸気がサプレッションブールが出る一方、RCIC等が電力切れ止まりますから注水が失われます。その結果、①原子炉内の冷却水がなくなり水面が下がり続けます、②格納容器の圧力が上がります。

 ①の水面低下は、注水がなくなって核燃料が水面から顔を出と崩壊熱で核燃料の損傷が始まります。核燃料を被覆するジルコニウム金属と水蒸気が反応して大量の水素が発生します。また核燃料から放射性ヨウ素やセシウムなど放射能が大量に出てきます。試算では約2時間で顔を出します。

 ②の格納容器の圧力上昇は2段階に分けられます。(2-1)核燃料が冷却水の潜っている間は水蒸気、BWRですから放射能混じりの水蒸気が上昇させます。(2-2)核燃料の損傷が始まると、放射能+水素ガス+水蒸気になります。水素ガスはほとんど水に溶けませんから、圧力上昇が加速します。

 それで設計基準では、マーク-Ⅰでは約3.9気圧、マーク‐Ⅱでは約2.7気圧を超えると漏洩が格納容器内空間容積の0.5%/日になります。内部の温度は100℃を超えているので、漏洩量は大きくなると思います。

(2-1)の段階なら、漏れ出るのは、BWRでは封入されている窒素ガス+水蒸気+揮発性の放射能。(2-2)の段階なら窒素ガス+水蒸気+揮発性の放射能+水素ガスになり、漏洩先の建屋での水素爆発の危険性が出てきます。
 また、格納容器の圧力が大きくなれば、容器の破損、爆発の危険性が出てきますから、防ぐためにベントが必然になります。
 緊急安全対策で配備される電源車をつなげると、RCIC等の電力切れが起こりませんから注水が継続します。(2-1)の段階が続きます。電源車で電源が回復しても、格納容器の圧力は上昇し続けますから、漏洩やベントは必然です。

 ベントで大量の放射性ヨウ素などの放射能が放出されるのですから、室内退避や避難が必要となります。避難順位や避難方向を決めるには原発から放射能雲が、どの方向に、どれ位の速さで流れるのかという情報が重要です。3/30の緊急安全対策では、全交流電源喪失(Stasion Blackouto 、SBO)時には、約30分から1時間以内に復旧の目処が立たなければ、・各種放射線モニタ測定値・風向、風速、大気安定度などを測る機器への電力は絶たれます。蓄電池を長持ちさせ注水を継続するためです。それでSPEEDIは働けません。電源車で電源が回復するまで、放射能雲の流れる方向や速度、汚染の拡散模様は予測できません。避難には時間がかかります。被曝を最小にする避難が可能でしょうか?

 3/30の緊急安全対策では、原子炉の燃料損傷の危険性は小さくなっていますが、周辺住民の被曝、地域の汚染を小さくするものになっていません。


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地震で電気がなくなったら、隣の原子炉から電気をもらう? [AM-非常用電源]

地震で電気がなくなったら、隣の原子炉から電気をもらう?


今回は、地震とそれによる津波で外部電源と非常用発電機が失われました。それで電源供給機能の強化を見てみます。

原子炉の電源は、発電所外の電力系統や主発電機からの電力の外部電源
非常用ディーゼル発電機などの非常用交流電源
バッテリ(蓄電池)などの非常用直流電源に大別されます。

平成13年3月29日付けの安全委員会の安全設計審査指針では、
指針27.電源喪失に対する設計上の考慮として「原子炉施設は、短時間の全交流動力電源喪失に対して、原子炉を安全に停止し、かつ、停止後の冷却を確保できる設計であること。」を求めています。

今回、問題になっている原子炉の冷却での電源喪失に対する設計上の考慮は「長期間にわたる全交流動力電源喪失は、送電線の復旧又は非常用交流電源設備の修復が期待できるので考慮する必要はない。
非常用交流電源設備の信頼度が、系統構成又は運用(常に稼働状態にしておくことなど)により、十分高い場合においては、設計上全交流動力電源喪失を想定しなくてもよい。」

 送電線の復旧又は非常用交流電源設備が短時間で修復するというハッピー・アサンプション/おめでたい仮定がおかれています。

アクシデントマネジメント・AMでは、どのような対策が採られたでしょうか?
整備されたAMでは「複数基立地のメリットを活かして隣接原子炉施設間に低圧の交流電源 (460v又は480v)のタイラインを設置し、電源融通を可能にすることで、電源供給能力を向上させる」

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地震に襲われたら、原子力発電所内の全ての原子炉が損傷するのではないでしょうか?隣の原子炉の非常用発電機が無事で、電力を融通できるというのは、お祈り思考やハッピー・アサンプション/おめでたい仮定といわざるを得ない。

福島第一原発では、津波で14~15m浸水しています。5、6号機の敷地の高さは13mで作られていました。そして6号機の空冷式非常用発電機が生き残り、5号機に供給しています。ですから、まったくの無駄ではありませんでしたが、事前の準備、アクシデントマネジメント・AMとしては欠陥品の対策です。斑目流の「非常用発電機が失われることを考慮したら原発は運転できないから、考えない」というお祈り思考です。

このお祈り思考、おめでたい仮定で作られたアクシデントマネジメント・AMの結果は? 続く


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日本のアクシデントマネジト・AMは絵空事 [AM-非常用電源]

日本のアクシデントマネジト・AMは絵空事

「非常時に冷やすマニュアルを作っていなかった東電」で取り上げた東電の非常時マニュアルは、アクシデントマネジト・AMというもので、2002年に作られたものです。


1979年の米国のスリーマイルアイランド事故や、1986年の旧ソ連のチェルノブイリ事故のように、原子力発電所の設計で事故想定している事態を大幅に超えて、核燃料が重大な損傷を受けるような大事故のことを「シビアアクシデント」(過酷事故)といいます。それへの対策をアクシデントマネジメント・AMといいます。

1992年7月に国が各電力会社にアクシデントマネジメントの自主的整備を要請しました。
それは原子力安全委員会の勧告、「日本の原子力発電所が現在の安全対策によって十分に確保されており、これらの諸対策によってシビアアクシデントは工学的には現実に起こるとは考えられないほど発生の可能性は十分小さいものとなっており、さらなる安全規制は必要ないことを認めたうえで、さらに事故に対するリスクを低減させる電力会社は自主的な努力を強く奨励」を受けてだされたものです。
この安全委員会の勧告には、考えたくない最悪の事態「シビアアクシデント」(過酷事故)を「ないことにする」ようなお祈り思考やハッピー・アサンプション/おめでたい仮定が色濃くあります。

これを受けて、東電は大きく二つの設備を追加しています。
 一つは、核燃料に冷却水を送り込むために、火災消火用の系統からで炉心に注水できるようにした配管の増設、一つは事故時に格納容器にたまる高温高圧の水蒸気を大量のベント(排気)ができる耐圧ベント設備です。

これは、国の要請・依頼(指示?)により作成され、毎年更新されているアクシデントマネジメント整備報告書に書かれていたものです。この報告書、毎年、その妥当性を国・保安院が評価しています。それに合格したものですが「IAEAは原発を運営する事業者に対し『原発の大部分にダメージを与える可能性がある火災、洪水、地震、異常気象など特別な外的事象にも適切に対応するよう』求めている。福島第1原発の文書はこのような事象がどのように原発を損なう可能性があるかについて特に言及していない。」

この点は、2009年に「将来的な課題としては、大地震(火災、溢水)など外的事象による影響も考慮したAMの検討が必要であろう。」として安全委員会は認識していました。
(平成21年1月19日、アクシデントマネジメントの整備に関する今後の課題、原子力安全委員会事務局)

世界中でおきる地震の30%は日本でおきています。その日本列島で地震時の対策は今後の課題とは!!
今回は、地震とそれによる津波で外部電源と非常用発電機が失われました。それで電源供給機能の強化を見てみます。 続く


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