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事前水張・・奇異な日本のデブリ冷却策・高浜原発パブコメ [AM-メルトスルー、CCI]

メルトスルー前に水張・・日本だけの特異な奇異な対策 
平成二十五年原子力規制委員会規則第五号(以下「設置許可基準規則」という)の第51条で格納容器下部の溶融炉心を冷却するための設備について、次のように定めている。
「第五十一条 発電用原子炉施設には、炉心の著しい損傷が発生した場合において原子炉格納容器の破損を防止するため、溶融し、原子炉格納容器の下部に落下した炉心を冷却するために必要な設備を設けなければならない。」
より具体的に原規技発第 1407092 号「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則の解釈」で次のように定めている。
第51条(原子炉格納容器下部の溶融炉心を冷却するための設備)
「1 第51条に規定する「溶融し、原子炉格納容器の下部に落下した炉心を冷却するために必要な設備」とは、以下に掲げる措置又はこれらと同等以上の効果を有する措置を行うための設備をいう。なお、原子炉格納容器下部に落下した溶融炉心の冷却は、溶融炉心・コンクリート相互作用(MCCI)を抑制すること及び溶融炉心が拡がり原子炉格納容器バウンダリに接触することを防止するために行われるものである。
a)原子炉格納容器下部注水設備を設置すること。原子炉格納容器下部注水設備とは、以下に掲げる措置又はこれらと同等以上の効果を有する措置を行うための設備をいう。
ⅰ)原子炉格納容器下部注水設備(ポンプ車及び耐圧ホース等)を整備すること。(可搬型の原子炉格納容器下部注水設備の場合は、接続する建屋内の流路をあらかじめ敷設すること。)
ⅱ)原子炉格納容器下部注水設備は、多重性又は多様性及び独立性を有し、位置的分散を図ること。(ただし、建屋内の構造上の流路及び配管を除く。)
b)これらの設備は、交流又は直流電源が必要な場合は代替電源設備からの給電を可能とすること。」
注水設備だけでは冷却が不十分な場合がある。
核燃料溶融物・デブリの上からの注水だけでは、デブリ・溶融物上面の水の沸騰による冷却のみであり、デブリの堆積厚さが厚いとデブリ底部まで十分に冷却できない可能性がある。したがって、床面積を広くとり、デブリの堆積厚さを冷却可能な厚さ以下にする必要があった。しかし、十分大きな床面積を確保することは格納容器構造上困難である原発がある。

 たとえば、典型的なデブリの崩壊熱は、定格熱出力の約1%程度であり、定格熱出力4000MWの炉の場合には、40MW程度の発熱量になる。上面の沸騰熱伝達量にはデブリ上面の状態により幅があるが、すくなくとも0.4MW/m²程度の熱流束が想定される。この場合には、デブリの発熱量を上面の熱伝達のみで取るとすると、100m²程度(円直径で11.3m)の床面積が必要になる。「これまでの格納容器の構造を考慮すると、この面積を確保することは困難であった。」(株式会社東芝の特許№4828963での説明、公開番号2007-232529)

 米国は、上面の沸騰熱伝達で冷却可能な厚さ以下にするために床面積を広くとること、数値としては定格出力当たり落下する格納容器床面積が0.02m²/MWt以上を要求している。(URD :米国電力要求文書 Utilities Requirements Document )これを満たさない場合は、対策設備を要求する。このURD基準を満たしているのはABWRだけだと言われている。
 日本の原子力規制委員会の実際の運用を見ると、この点について高浜原発3、4号炉の規制適合の審査書などで全く触れていない。全く問題意識が無いようである。
 また米国のURD基準はデブリの粘性が低く水の様に一様に拡がること前提としているが、三菱重工業株式会社は「溶融物が山状に堆積した場合には、溶融物を十分に冷却することができず溶融物が再臨界を引き起こす危険性」を指摘している。(特許出願の出願公開での記載 出願番号 PCT/JP2010/064233)東電核災害では東京電力福島第一原発では、機器ドレンサンプピットに推定約80㎝と厚く堆積したデブリで格納容器の床が深く浸食されている。
 この点も日本の原子力規制委員会は全く触れていない。審査していない。
コアキャッチャー、炉心溶融物冷却装置、溶融局所化装置
各国で原子炉格納容器の下部に落下した炉心を冷却するため装置が開発されている。チェルノブイリ事故を経験したロシアは、RV原子炉直下に溶けた炉心を受け止める鉄の容器、その容器の外面から水で冷却する装置MLD:Melt Localizing Device 溶融局所化装置、core melt trap 溶融炉心捕獲器を開発している。中国の田灣核電站Tianwan nuclear power plant の1号機(1999年着工、2006年営業運転)、2号機(2000年着工、2007年営業運転)に装備され、実働している。
 フランスのアレバAREVAは、原子炉直下に落下してくる溶融物を一旦直下で受け止め、溶融物の流動性と重力による移動で薄く拡がる冷却装置に導き、冷却水で冷やす装置、コアキャッチャー Core Catcher と呼ばれる装置を開発している。これはフランスのフラマンヴィル原子力発電所の実証EPR炉FA3で実証試験されて、フィンランドのオルキルオトー3号炉で設計装備されて建設中である。

 米国のGE日立ニュークリア・エナジーは、BiMAC(Basemat-internal Melt Arrest Coolability 基盤内部溶融阻止冷却装置)である。水平方向に対して5度以上で且つ10度未満の傾きを有する冷却底面とその上にある冷却底面をデブリからの浸食から護る融除シールドが主要な構造である。この装置は米国政府(米国エネルギー省)の支援を得て開発されている。「BiMACの最終目的は、最も発生の確率が高い重大な原子力プラント事故後に少なくとも24時間格納容器の完全性を維持し、炉心とコンクリートの相互作用を伴う既知の事故シナリオにおいて0.1%又はそれ未満に格納容器破損の可能性を低減することである」(特許出願の公開番号2011-128142)

 日本も次世代沸騰水型軽水炉HP-ABWRでは、デブリ接触部分に高融点の耐熱材を張るとともに、静的な注水手段による静的デブリ冷却設備を設けるとして開発を進めている。

 (株)東芝は、2006年2月22日にコアキャッチャーの特許出願して特許を取得している。特許登録番号4612558の「コアキャッチャーおよび原子炉格納容器」である。6日後、2006年2月28日にも特許出願して特許を取得している。この装置は東芝によれば「既設の格納容器に新たに炉心溶融物冷却装置を設置する場合など、大きな物をペデスタルに搬入することが困難なときであっても、別途製造した各構成部材をペデスタルの内部に持ち込んで、現場で組み立て施工が可能であり、施工性が優れている。」もので、特許登録番号4828963「炉心溶融物冷却装置、原子炉格納容器および炉心溶融物冷却装置の設置方法」である。

 三菱重工業(株)は、2010年2月25日に特許出願している。「原子炉から流出した溶融物やデブリを小分けに堆積させて、高温の溶融物やデブリを十分に冷却することができる溶融物冷却構造、これを備えた原子炉格納容器およびこれを備えた原子力プラントを提供することを目的とする。」とする特許出願番号2010⁻064233である。

 東電核災害後、資源エネルギー庁は国内すべての原発、既存炉、新設炉へのコアキャッチャー設置を目指している。2012年平成24年度発電用原子炉等安全対策高度化技術基盤整備事業(薄型コアキャッチャーの開発に向けた基盤整備)である。報道によれば東芝が請け負って、直径約6m規模で開発が進んでいる。東芝の特許(登録番号4828963)では、直径約10mあれば、例えば東電柏崎刈羽6号機、7号機のABWRでは既に後付で設置が可能である。

メルトスルー前の事前水張・・「電力共同研究にて得られた最新知見」 
 このように日本や世界各国で原子炉から流出した溶融物やデブリとコンクリート相互作用(MCCI)を抑制など目的にした技術開発が行われている。これらは、原子炉から溶融物やデブリの流出の後に冷却を行う。日本の東京電力や関西電力などのように流出前に予め原子炉下部(BWRはペデスタル、PWRではキャビティと呼称される部分)に冷却水を張ることはしない。それは、溶融物やデブリが冷却水に触れて水蒸気爆発を避けるためである。この日本の電力会社独自の事前水張が水蒸気爆発を起こさずにデブリを冷却する方法なら、わざわざ世界各国、メーカーが上記のようなコアキャッチャー、炉心溶融物冷却装置、溶融局所化装置を開発したのだろうか?

 電力会社が水蒸気爆発は起きない根拠にしている一連の実験は、公知の周知の実験である。世界各国の規制当局も熟知している。そして彼らはコアキャッチャーなどの設置を要求しているのである。米国は「最も発生の確率が高い重大な原子力プラント事故後に少なくとも24時間格納容器の完全性を維持し、炉心とコンクリートの相互作用を伴う既知の事故シナリオにおいて0.1%又はそれ未満に格納容器破損の可能性を低減する」ことを要求し、それに応えてBiMACが開発されている。

 日本の原子力規制委員会は、電力会社の事前水張のやり方を認めるならば、日本国民のみならず世界各国、ロシア、フランス、EU、米国、中国などの規制当局にもその理由を、根拠を明らかにするべきである。

 この事前水張は、2011年の東電核災害前に導入さている。東電核災害後に公開された東京電力福島第一原発1号機、2号機、3号機の事故時手順書をみると、2011年1月14日、18日付で「電力共同研究にて得られた最新知見」に基づいて事前水張が導入されている。保安運営委員会247回付議済みと記されている。手順書の「注水―3a:RPV破損前のペデスタル初期注水」である。東電核災害の2か月前である。
 

 当時はシビアアクシデント対策に規制当局(原子力保安院、原子力安全委員会)の直接的関与、事前の同意は必要なかった。東京電力が勝手におこなったのであろう。恐らく同時期に関西電力などでも導入されたのであろう。
 そして、東電核災害時には1号炉でも2号炉でも3号炉でも、このペデスタル初期注水は行われていない。何故かは知られていないが、吉田所長は行っていない。現場では机上の空論扱いである。

 その「事前の水張」策を「 発電用原子炉施設には、炉心の著しい損傷が発生した場合において原子炉格納容器の破損を防止するため・・下部に落下した炉心を冷却する」(設置許可基準規則51条)のに、適合した対策であると原子力規制委員会が審査で認めるならば、こうした経過を踏まえて審査、論議をして日本国民、世界の規制当局を納得させる論理を提示しなければならない。ところが、関西電力高浜原発の再稼働での審査書(案)にはない。

 原子力規制委員会の審査、論議は不十分であり、審査をやり直すべきである。
続く

多様性
受動的と能動的

メモ 日本のPWRのメルトスルー後のデブリ冷却策  [AM-メルトスルー、CCI]

メルトスルー前に水張・・日本だけの特異な奇異な対策 
平成二十五年原子力規制委員会規則第五号(以下「設置許可基準規則」という)の第51条で格納容器下部の溶融炉心を冷却するための設備について、次のように定めている。
「第五十一条 発電用原子炉施設には、炉心の著しい損傷が発生した場合において原子炉格納容器の破損を防止するため、溶融し、原子炉格納容器の下部に落下した炉心を冷却するために必要な設備を設けなければならない。」
より具体的に原規技発第 1407092 号「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則の解釈」で次のように定めている。
第51条(原子炉格納容器下部の溶融炉心を冷却するための設備)
「1 第51条に規定する「溶融し、原子炉格納容器の下部に落下した炉心を冷却するために必要な設備」とは、以下に掲げる措置又はこれらと同等以上の効果を有する措置を行うための設備をいう。なお、原子炉格納容器下部に落下した溶融炉心の冷却は、溶融炉心・コンクリート相互作用(MCCI)を抑制すること及び溶融炉心が拡がり原子炉格納容器バウンダリに接触することを防止するために行われるものである。
a)原子炉格納容器下部注水設備を設置すること。原子炉格納容器下部注水設備とは、以下に掲げる措置又はこれらと同等以上の効果を有する措置を行うための設備をいう。
ⅰ)原子炉格納容器下部注水設備(ポンプ車及び耐圧ホース等)を整備すること。(可搬型の原子炉格納容器下部注水設備の場合は、接続する建屋内の流路をあらかじめ敷設すること。)
ⅱ)原子炉格納容器下部注水設備は、多重性又は多様性及び独立性を有し、位置的分散を図ること。(ただし、建屋内の構造上の流路及び配管を除く。)
b)これらの設備は、交流又は直流電源が必要な場合は代替電源設備からの給電を可能とすること。」

注水設備だけでは冷却が不十分な場合がある。
核燃料溶融物・デブリの上からの注水だけでは、デブリ・溶融物上面の水の沸騰による冷却のみであり、デブリの堆積厚さが厚いとデブリ底部まで十分に冷却できない可能性がある。したがって、床面積を広くとり、デブリの堆積厚さを冷却可能な厚さ以下にする必要があった。しかし、十分大きな床面積を確保することは格納容器構造上困難である原発がある。
 たとえば、典型的なデブリの崩壊熱は、定格熱出力の約1%程度であり、定格熱出力4000MWの炉の場合には、40MW程度の発熱量になる。上面の沸騰熱伝達量にはデブリ上面の状態により幅があるが、すくなくとも0.4MW/m²程度の熱流束が想定される。この場合には、デブリの発熱量を上面の熱伝達のみで取るとすると、100m²程度(円直径で11.3m)の床面積が必要になる。「これまでの格納容器の構造を考慮すると、この面積を確保することは困難であった。」(株式会社東芝の特許№4828963での説明、公開番号2007-232529)
 米国は、冷却可能な厚さ以下にするために床面積を広くとること、数値としては定格出力当たり落下する格納容器床面積が0.02m²/MWt以上を要求している。(URD :米国電力要求文書 Utilities Requirements Document )これを満たさない場合は、対策設備を要求する。このURD基準を満たしているのはABWRだけだと言われている。
 日本の原子力規制委員会の実際の運用を見ると、この点について高浜原発3、4号炉の規制適合の審査書などで全く触れていない。全く問題意識が無いようである。
 また米国のURD基準はデブリの粘性が低く水の様に一様に拡がること前提としているが、三菱重工業株式会社は「溶融物が山状に堆積した場合には、溶融物を十分に冷却することができず溶融物が再臨界を引き起こす危険性」を指摘している。(特許出願の出願公開での記載 出願番号 PCT/JP2010/064233)東電核災害では東京電力福島第一原発では、機器ドレンサンプピットに推定約80㎝と厚く堆積したデブリで格納容器の床が深く浸食されている。
この点も日本の原子力規制委員会は全く触れていない。審査していない。
コアキャッチャー、炉心溶融物冷却装置、溶融局所化装置
各国で原子炉格納容器の下部に落下した炉心を冷却するため装置が開発されている。チェルノブイリ事故を経験したロシアは、RV原子炉直下に溶けた炉心を受け止める鉄の容器、その容器の外面から水で冷却する装置MLD:Melt Localizing Device 溶融局所化装置、core melt trap 溶融炉心捕獲器を開発している。中国の田灣核電站Tianwan nuclear power plant の1号機(1999年着工、2006年営業運転)、2号機(2000年着工、2007年営業運転)に装備され、実働している。
 フランスのアレバAREVAは、原子炉直下に落下してくる溶融物を一旦直下で受け止め、溶融物の流動性と重力による移動で薄く拡がる冷却装置に導き、冷却水で冷やす装置、コアキャッチャー Core Catcher と呼ばれる装置を開発している。これはフランスのフラマンヴィル原子力発電所の実証EPR炉FA3で実証試験されて、フィンランドのオルキルオトー3号炉で設計装備されて建設中である。

米国のGE日立ニュークリア・エナジーは、BiMAC(Basemat-internal Melt Arrest Coolability 基盤内部溶融阻止冷却装置)である。水平方向に対して5度以上で且つ10度未満の傾きを有する冷却底面とその上にある冷却底面をデブリからの浸食から護る融除シールドが主要な構造である。この装置は米国政府(米国エネルギー省)の支援を得て開発されている。「BiMACの最終目的は、最も発生の確率が高い重大な原子力プラント事故後に少なくとも24時間格納容器の完全性を維持し、炉心とコンクリートの相互作用を伴う既知の事故シナリオにおいて0.1%又はそれ未満に格納容器破損の可能性を低減することである」(特許出願の公開番号2011-128142)

日本も次世代沸騰水型軽水炉HP-では、デブリ接触部分に高融点の耐熱材を張るとともに、静的な注水手段による静的デブリ冷却設備を設けるとして開発を進めている。

 (株)東芝は、2006年2月22日にコアキャッチャーの特許出願して特許を取得している。特許登録番号4612558の「コアキャッチャーおよび原子炉格納容器」である。6日後、2006年2月28日にも特許出願して特許を取得している。この装置は東芝によれば「既設の格納容器に新たに炉心溶融物冷却装置を設置する場合など、大きな物をペデスタルに搬入することが困難なときであっても、別途製造した各構成部材をペデスタルの内部に持ち込んで、現場で組み立て施工が可能であり、施工性が優れている。」もので、特許登録番号4828963「炉心溶融物冷却装置、原子炉格納容器および炉心溶融物冷却装置の設置方法」である。

 三菱重工業(株)は、2010年2月25日に特許出願している。「原子炉から流出した溶融物やデブリを小分けに堆積させて、高温の溶融物やデブリを十分に冷却することができる溶融物冷却構造、これを備えた原子炉格納容器およびこれを備えた原子力プラントを提供することを目的とする。」とする特許出願番号2010⁻064233である。

 東電核災害後、資源エネルギー庁は国内すべての原発、既存炉、新設炉へのコアキャッチャー設置を目指している。2012年平成24年度発電用原子炉等安全対策高度化技術基盤整備事業(薄型コアキャッチャーの開発に向けた基盤整備)である。報道によれば東芝が請け負って、直径約6m規模で開発が進んでいる。

 このように日本や世界各国で原子炉から流出した溶融物やデブリとコンクリート相互作用(MCCI)を抑制など目的にした技術開発が行われている。これらは、原子炉から溶融物やデブリの流出の後に冷却を行う。日本の東京電力や関西電力などのように流出前に予め原子炉下部(BWRはペデスタル、PWRではキャビティと呼称される部分)に冷却水を張ることはしない。それは、溶融物やデブリが冷却水に触れて水蒸気爆発を避けるためである。この日本の電力会社独自の事前水張が水蒸気爆発を起こさずにデブリを冷却する方法なら、わざわざ世界各国、メーカーが上記のようなコアキャッチャー、炉心溶融物冷却装置、溶融局所化装置を開発したのだろうか?

 電力会社が水蒸気爆発は起きない根拠にしている一連の実験は、公知の周知の実験である。世界各国の規制当局も熟知している。そして彼らはコアキャッチャーなどの設置を要求しているのである。米国は「最も発生の確率が高い重大な原子力プラント事故後に少なくとも24時間格納容器の完全性を維持し、炉心とコンクリートの相互作用を伴う既知の事故シナリオにおいて0.1%又はそれ未満に格納容器破損の可能性を低減する」ことを要求し、それに応えてBiMACが開発されている。

 日本の原子力規制委員会は、電力会社の事前水張のやり方を認めるならば、日本国民のみならず世界各国、ロシア、フランス、EU、米国、中国などの規制当局にもその理由を、根拠を明らかにするべきである。

 この事前水張は、2011年の東電核災害前に導入さている。東電核災害後に公開された東京電力福島第一原発1号機、2号機、3号機の事故時手順書をみると、2011年1月14日、18日付で「電力共同研究にて得られた最新知見」に基づいて事前水張が導入されている。保安運営委員会247回付議済みと記されている。手順書の「注水―3a:RPV破損前のペデスタル初期注水」である。東電核災害の2か月前である。
 

 当時はシビアアクシデント対策に規制当局(原子力保安院、原子力安全委員会)の直接的関与、事前の同意は必要なかった。東京電力が勝手におこなったのであろう。恐らく同時期に関西電力などでも導入されたのであろう。
 そして、東電核災害時には1号炉でも2号炉でも3号炉でも、このペデスタル初期注水は行われていない。何故かは知られていないが、吉田所長は行っていない。現場では机上の空論扱いである。
 その「事前の水張」策を「 発電用原子炉施設には、炉心の著しい損傷が発生した場合において原子炉格納容器の破損を防止するため・・下部に落下した炉心を冷却する」(設置許可基準規則51条)のに、適合した対策であると原子力規制委員会が審査で認めるならば、こうした経過を踏まえて審査、論議をして日本国民、世界の規制当局を納得させる論理を提示しなければならない。ところが、関西電力高浜原発の再稼働での審査書(案)にはない。

 原子力規制委員会の審査、論議は不十分であり、審査をやり直すべきである。
多様性
1985年から米国がTMI事故の教訓を踏まえて改良型軽水炉(ALWR Advanced Light Water Reactor)開発計画を実施した。それでは、電力やデーゼルエンジンなどの動的なポンプ、モータなど機器を制御系で能動的に動かすシステムに代って重力等の自然力を用いたタンク、熱交換器、弁等で構成される安全系「受動的安全系」の採用設計が柱の一つであった。これは重力移動や自然循環、大気の自然対流のような基本的な物理法則を機能に採用した受動的安全性(passive safety 静的安全性とも訳される)を持った「受動的安全系」の採用設計が柱の一つであった。重力等の自然力を用いた受動的(静的)安全系は、原理的に電力等の動力供給途絶による不稼働の確率はゼロ、弁など機械的故障に不稼働の確率が極めて少ない。これはシステム・機器の単純化による大幅な建設費低減と運転性、保守性の向上という目標達成のためでもあった。開発計画で採り上げられたBWRのSBWR(Simplified BWR、簡易化したBWR)は静的安全設計の全面採用している。この設計を基にしたESBWR(Economic Simplified Boiling Water Reactor )が開発設計され、NRCの認証を受けている。Economic Simplified BWR との命名が、それを顕している。なおESBWRを自然循環冷却式受動安全沸騰水型原子炉と訳する場合がある。
 「受動的安全系」は停電・電力途絶や故障の問題が少ないため信頼性の向上する利点があるが、駆動力が弱いため計画通りの注水ができない場合が想定される。非常用炉心冷却設備(ECCS)のように主として能動的安全機能と併用する。能動的・受動的安全系を組み合わせたハイブリッドな安全系に防護設計思想は進化している。
 原子炉格納容器下部注水設備は、原子炉格納容器の破損を防止するための重要な設備である。ところが、高浜原発の審査書(案)では、passive safety 受動的静的安全性をもったシステムではない。審査書(案)では、表4-4.8-1(p344)に一覧される諸設備で多様性を拡充したと認めているが、これらは  active  safety 能動的動的な安全系であって、passive safety 受動的静的安全性をもった安全系が一つもない。原子力規制委員会の審査、論議は不十分であり、審査をやり直すべきである。
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審査書案  4-1.2.2.1 のp.182[格納容器破損防止対策]について
高浜原発の重大事故想定(審査会合:2013.10.24資料1-1, p.12-29, p.12-3)では、事故発生から、
・炉心損傷(メルトダウン)開始が約19分後
・原子炉容器破損(メルトスルー開始)が約1.5時間(90分)後となっている。
これは、避難計画をどうするかという以前の問題である。住民は避難にとりかかるより相当前に放射能に襲われることになる。
それゆえ、このような事故が起こることを想定していながら、再稼働を認めることは絶対に許されることではない。
まずは炉心損傷(メルトダウン)開始、原子炉容器破損(メルトスルー開始)を遅らせる策を考えるべきである。福井県の原子力防災訓練では7時間に避難を開始している。1時間の余裕を見込んで、8時間は遅らせるべきである。避難計画と整合性を持つべきである。

PWRの非常用炉心冷却設備は、蓄圧注入系、高圧注入系、低圧注入系および燃料取替用水タンクで構成されている。事故想定は、能動的動的 active  safety な安全系の高圧注入系、低圧注入系の不作動を想定ている。水タンクはこれら二つの系の水源であり、注水は蓄圧注入系による。
 蓄圧注入系は蓄圧タンク(ホウ酸水)、逆止弁などで構成されている。一次冷却材の喪失などで、一次冷却系の圧力が蓄圧タンクの保持圧力以下に低下すると、逆止弁が自動的に開きホウ酸水が炉心に注入される。蓄圧タンクの気相部にある加圧された窒素ガスがホウ酸水を押し出す。外部電源等の駆動源は必要としない受動的静的安全性を具えた系である。関西電力の解析想定は蓄圧タンクの保有水量、注水量を29立方メートル(1基当り、最低保有水量)としている。それで、約19分後にメルトダウン開始である。この注水がなければもっと早まる。
 これは、蓄圧タンクを大容量化や増設して保有水量、注水量を増やせば、メルトダウンが遅くなるということである。高圧注水用のポンプ、低圧注水用のポンプは格納容器外に設置してある。同様に蓄圧タンクを格納容器外に増設も可能である。
 このようにして、炉心損傷(メルトダウン)開始、原子炉容器破損(メルトスルー開始)を8時間は遅らせるべきである。機械の都合に人が合わせるのではなく、人の都合、周囲の避難計画に機械、原子炉、原発が合わせるべきである。それが出来ないのなら、深層防護の第5層目が成立しえない、約19分後に炉心損傷(メルトダウン)開始が約19分後、原子炉容器破損(メルトスルー開始)が約1.5時間(90分)後になると想定される原発は、再稼働を絶対に認めることはできない。
 原子力規制委員会の審査、論議は不十分であり、審査をやり直すべきである。

 4-1.2.2 格納容器破損防止策(p178~209) について

 東京電力福島第一原発1号機では、ペデスタル床の機器ドレンサンプピットに推定約80㎝と厚くデブリが堆積した。そして、デブリによってピットに設置された原子炉補機冷却系RCWが溶融損傷したと見られる。1号機の原子炉建屋では、各所の放射線量を測定したところ、RCW配管で高い線量が測定されているからである。

 このような原子炉から溶融貫通し落下したデブリがドレンサンプピットに厚く堆積すること、それによる配管の溶融損傷の可能性、それが格納容器外への放射能の拡散ルートになる可能性は以前から指摘されている。ゼネラル・エレクトリック・カンパニイの1994年に出願した特許(特許登録番号3510670)の「コリウム遮蔽体」、(株)東芝の2009年出願の特許(特許登録番号5306074)の「原子炉格納容器ドレンサンプ」は、その対策の技術である。

高浜原発などPWRは、格納容器再循環サンプが原子炉格納容器内最底部にある。流出した冷却水と非常用炉心冷却設備及び格納容器スプレイからの水を溜める。注入水源(燃料取替用水タンク)が空になった後にここに溜まった水を使うので、格納容器外の注水ポンプへ通じる配管がある。東京電力福島第一原発1号機で実際に起きたであろうデブリがドレンサンプピットに厚く堆積することが、格納容器再循環サンプで起きるであろう。

 1979 年に米国のスリーマイル島(TMI)原発でおこた核災害、TMI事故では希ガスとヨウ素が環境に放出された。主な経路の一つに補助建屋内に通じる配管、汚染水ドレンをピットから補助建屋内のタンクへ送る配管がある。隔離が不完全で汚染水ドレンタンクからオーバーフローして放射能が環境に放出された。

 デブリの再循環サンプでの堆積、そのデブリによる配管の溶融損傷、次に不完全な隔離の段階を経て環境汚染が生じる。先ず、再循環サンプでの堆積配管の溶融損傷を防止する策を講じることが必要である。東京電力福島第一原発1号機では実際に起きているのだから、無策は許しがたい怠慢である。次に不完全な隔離を検出して隔離を完全なのにする対策である。

 高浜原発の審査書(案)では、特にデブリの再循環サンプでの堆積と配管の溶融損傷を防止する策を審査していない。対処する技術は既にある。原子力規制委員会の審査、論議は不十分であり、審査をやり直すべきである。

炉心状態、東電_111130_09-j.jpg

02マーク付.gif
この点も
多様性
受動的と能動的

融けた炉心の行方 2006年の東芝の予測 [AM-メルトスルー、CCI]

東芝は2006年以降も次々と特許を出願している。特許出願は、特許法64条で原則として出願後1年6月で自動的に公開される。公開されている出願文書をみると、3.11東電核災害があたかも予見されているようだ。予見というより東電核災害は教科書的な経過をたどったのだろう。前は、建屋での水素爆発を取り上げた。今回は、融けた溶融燃料は何処へ。
2009年6月に出願した特許№5306074「原子炉格納容器ドレンサンプ」。出願番号2009-151117、公開番号2011-007613である。現在も特許維持している。
http://astamuse.com/ja/granted/JP/No/5306074
「溶融コリウムに対し、・・ドレンサンプ内への流入を防止し、適切に冷却できる原子炉格納容器ドレンサンプを提供する」発明である。類似の特許が1994年に出願されたGEの特許№3510670の「コリウム遮蔽体」である。出願番号1994-145209、公開番号1995-140288である。現在は特許の権利は破棄されている。http://astamuse.com/ja/published/JP/No/1995140288  東芝はこのGEの「コリウム遮蔽体」を引用して特許を説明している。
背景技術
コリウム遮蔽体の公開情報より
「格納容器は、通例、事故の発生時に予想される高い圧力を内部に閉込めかつそれの結果として多量の核放射線が放出されるのを防止し得るように設計された鋼製ライナを内側に有するコンクリート構造物である。また、圧力容器の下方に位置する下部ドライウェルは1つ以上の水溜めを含むのが通例である。かかる水溜めは漏れ出た水を集めるために役立つものであって、こうして集められた水は次いでポンプによって除去される。炉心が融解して(コリウムとして知られる)高温の溶融炉心残骸を生じるような重大な事故が発生した場合には、格納容器およびペデスタルに顕著な損害を及ぼすことなしにコリウムを格納容器の内部に適宜に閉込めることが必要である。液状のコリウムは格納容器の床面に沿って広がるから、障害物が存在せずかつ床面が一様に平坦であれば、それの流れはかなり一様な厚さを有することになる。そうすれば、液状のコリウムを一様に冷却凝固させることができるわけである。なお、液状のコリウムは原子炉の運転停止後にも熱を発生する溶融炉心を含んでいるから、適当な冷却が維持されなければそれは再び液化することがある。」
圧力容器の下方には水溜めが配置されているから、水溜め内に流入して蓄積した液状のコリウムは下部ドライウェル内の床面の残部に存在するものよりも実質的に大きい厚さを有することになる。水溜め内に存在する液状のコリウムの厚さが大きいことは、それの冷却可能性を低下させる。その結果、液状のコリウムを凝固させ、それの内部で発生する熱による再液化を防止し、かつ床材との反応による放射性物質および非凝縮性ガスの放出を防止することが益々不確実になるのである。」
以上、
原子炉格納容器ドレンサンプの公開情報より
「溶融コリウム(炉心溶融物)は、・・格納容器に流出し、・・床上に堆積した溶融コリウムは、格納容器床を構成するライナーやコンクリートを溶融浸食し、格納容器バウンダリを破損させる虞がある。また、溶融コリウムとコンクリートとの化学反応によって生成される二酸化炭素や水素等の不凝縮性ガスが、格納容器内を加圧し、格納容器バウンダリを破損させる虞がある。このため、これらの影響を緩和する手段として、溶融コリウムの堆積した格納容器領域に冷却水を導くことによって溶融コリウムを冷却し、格納容器コンクリートとの反応を抑制する方策が従来から提案されている。」
「原子炉圧力容器からの溶融コリウムの流出先である格納容器床には、1つ以上のドレンサンプが設置されている。このドレンサンプは、原子炉の運転中に生じる可能性のある漏洩水を集水し、原子炉からの漏洩を検知するためのものであって、サンプ内に集水された水(ドレン水)は、サンプ上蓋の上に備えられたポンプによって配管を介して格納容器外へ移送される構成となっている。」
「炉心が溶融するような事態が万一生じ、更に、溶融コリウムが格納容器に流出するような事態に至った場合、溶融コリウムは格納容器床上を拡がり、ドレンサンプ内へ流入・堆積する可能性がある。すなわち、サンプ上蓋の上に設置されているドレン水移送ポンプ及びサンプ内からドレン水移送ポンプへの吸水配管が、原子炉圧力容器から流下する溶融コリウムと接触する可能性も完全には否定できない。このため、流下する溶融コリウムによってサンプ内からの吸水構造部分が溶融破損すると、溶融コリウムが容易にサンプ内へ流入することになる。この場合、サンプ内の溶融コリウムは、格納容器床面に存在する溶融コリウムよりも実質的に大きい厚さを有することになるため、その冷却可能性が低下し、格納容器の防護が困難になる虞がある。」
以上 

東電核災害
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炉心状態、東電_111130_09-j.jpg


タグ:格納容器

東芝が2009年出願特許で予見していた水素爆発 [AM-メルトスルー、CCI]

 東芝は2006年以降も次々と特許を出願している。特許出願は、特許法64条で原則として出願後1年6月で自動的に公開される。公開されている出願文書をみると、3.11東電核災害があたかも予見されているようだ。予見というより東電核災害は教科書的な経過をたどったのだろう。何点か採り上げてみる。
原子炉建屋での水素爆発・・2009年出願、特許№ 5238649
000002a.jpg 2009年9月に出願し、特許を取得した「原子炉格納容器およびそれを用いた原子力プラント」。出願番号2009-206761、公開番号2011-058866、登録番号5238649で特許維持状態にある。http://astamuse.com/ja/granted/
JP/No/5238649

 この発明は「長期化した全交流電源喪失(SBO)により苛酷事故が発生しても、その影響がプラントの外部に及ぶことがなく、周辺住民の退避が不要なほど安全な次世代炉」を提供するとして東芝は出願している。

背景技術
 ①
苛酷事故時に大量水素が発生すると、原子炉一次格納容器の圧力は設計圧力の約2倍に達する。
[]は虹屋の書き込み
「一般的に、沸騰水型軽水炉(BWR)は、圧力抑制型の原子炉一次格納容器を採用し、・・一次格納容器内の雰囲気を窒素ガスで置換し、通常の空気よりも酸素濃度を低くして運転を行なっている。このため、事故時に炉心燃料が高温になり冷却材と反応して水素が発生しても、原子炉一次格納容器内で爆轟ないしは爆燃するおそれがない。また、沸騰水型軽水炉は原子炉一次格納容器が小さいため、外部を原子炉建屋で完全に二重に覆い設計基準事故の場合には、放射性物質の二重の閉じ込め機能を有している。」
「苛酷事故時には、高温化した炉心燃料と冷却材との金属水反応により大量の水素が発生し、原子炉一次格納容器の圧力が設計圧力を超えて上昇する場合がある。例えば、新型沸騰水型軽水炉(ABWR)の場合は、原子炉一次格納容器の設計圧力は310kPa(45psig)であるが、苛酷事故時に大量水素が発生すると、原子炉一次格納容器の圧力は設計圧力の約2倍に達する。」
「苛酷事故時に原子炉一次格納容器の圧力が長時間設計圧力を超えた状態が継続することは安全上好ましくない。原子炉一次格納容器の圧力が設計圧力を超えると、内部の放射性ガスが設計漏洩率よりも大きな漏洩率で漏洩するおそれがある。」
「苛酷事故の際には、電源喪失等により動的な排気ファンが故障している可能性があり、原子炉建屋の二重閉じ込め機能は喪失するおそれがある。」
② 原子炉建屋で水素爆轟・ばくごう
「苛酷事故時の原子炉一次格納容器の圧力上昇を制限するためには、原子炉二次格納容器である原子炉建屋に原子炉一次格納容器内の雰囲気をベント[排気]することが有効である。
 しかし、原子炉建屋は設計圧力が低く、かつ、雰囲気は通常の空気であるため、苛酷事故時に発生した大量の水素を含む原子炉一次格納容器内の高圧ガスを原子炉建屋内に放出すると、原子炉建屋内で爆轟し、原子炉建屋が損壊し、放射性ガスが大気中に管理されずに放出されるおそれがある。この状況は、チェルノビル原子力発電所の苛酷事故時の状況と近い。
 したがって、この方法は、従来、提案されてはいるものの、・・このような危険な方法を採用している沸騰水型軽水炉は実在しない。」
事故前の水素爆発の予想 
 このように東芝は事故前に建屋での水素爆発を予見していた。米国の原子力規制委員会NRCが2005年から"the State-of-the-Art Reactor Consequence Analyses (SOARCA)"(最先端技術に基づく原子力災害解析)の研究をスタートさせた。2010年10月にそのドラフトを発行した。それではSBO・全交流電源喪失でBWRでは、格納容器PCVから原子炉建屋に漏れた水素が爆燃を起こし、最上階のブローアウト・パネルと天井が爆圧で壊され、大物搬入口の扉がこじ開けられるとの解析結果が記されている。

 この経過を見ると2005年以降には格納容器から原子炉建屋に漏れた水素が爆燃を起こすという見解が、専門家レベルでは常識化したと言える。しかし、ご存知のように原子力安全委員会の班目春樹委員長は考えもつかなかった。東電福島第一原発1号機の水素爆発を知って、頭を抱えた。暫くして、爆発のメカニズム、水素生成の経路の推定を滔々と官邸対策本部で説明したそうである。(下村健一 内閣広報室内閣審議官 談)
 結果(爆発)がわかっていると正しい答案が書ける頭脳が、官僚や日本の専門家なのだろうか。メーカーの技術者は、頭は下げていたが腹の中ではどうだったか?
提案されている対策の問題点
③ フィルターベントの問題
 「また、技術的成立性のあるものとして、苛酷事故時の原子炉一次格納容器内の雰囲気をフィルターを通し環境に放出する設計があるが、放射性希ガスと有機ヨウ素については、フィルターでは除去されずに環境に放出されるので、周辺公衆の被曝が発生する。また、周辺公衆の被曝を極力低く抑えるため、事前に一定距離内の周辺公衆を一人残らず完全に退避させる必要がある。」
④ 静的格納容器冷却系(PCCS) の限界
「最近では、ESBWRにおいて、事故時に原子炉一次格納容器内に放出される水蒸気を静的格納容器冷却系(PCCS)で凝縮し、原子炉一次格納容器の崩壊熱による圧力上昇を抑制する優れた方法が採用されている。しかし、苛酷事故時に放出される大量の水素は静的格納容器冷却系では凝縮されず、また、ESBWRの原子炉一次格納容器の体積は小さいため、苛酷事故時の原子炉一次格納容器の圧力はやはり設計圧力の2倍から3倍程度に維持されてしまう。すなわち、静的格納容器冷却系を従来の体積の小さい原子炉格納容器に設置しても、苛酷事故時の原子炉格納容器の圧力を設計圧力以下に制限することはできないという問題があった。なお、ESBWRの原子炉一次格納容器の設計圧力も310kPa(45psig)である。」
次世代炉
「次世代炉の場合、設計寿命は60年から80年と長く、プラントを建設した後、周辺住民の人数が増大する可能性がある。周辺住民の人数が増大すると、苛酷事故時の緊急時対策として全ての人の退避を完全に行なうことが困難となる。また、周辺住民の人口を制限した場合、人口が密集する大都市に近接して原子力プラントを建設することが困難となる。次世代炉の安全性は、人口が密集する大都市に近接して建設された場合であっても、プラント本来の設計によって十分に安全性を保証できるものでなければならない。

「さらに、次世代炉は世界中のあらゆる地域に建設される可能性があり、巨大地震、巨大津波、巨大ハリケーン等の自然災害に遭遇する可能性がある。巨大自然災害を原因として苛酷事故が発生した場合は、周辺住民の退避を完全に行なうことは困難である。世界の次世代炉の立地条件としては、非常に厳しい自然災害が想定される。例えば、巨大サイクロンや巨大地震、大津波などがある。巨大サイクロン等の厳しい自然災害が発生し、全交流電源喪失(SBO)が起きると、長期間にわたって復旧作業ができないおそれがある。そのような長期化した全交流電源喪失(SBO)により苛酷事故が発生しても、その影響がプラントの外部に及ぶことがなく、周辺住民の退避が不要なほど安全な次世代炉を提供する必要がある。」

東芝のアイデア・・風船・エアバッグに入れる
「原子炉一次格納容器の内部で原子炉の事故が発生すると、原子炉圧力容器から冷却材が流出し、大量の水蒸000003b.jpg気が発生する。また、炉心燃料の重大な損傷を伴う苛酷事故が発生した場合には、さらに、炉心燃料と冷却材の水との金属—水反応によって、大量の水素が発生する。これらの水蒸気と水素により原子炉一次格納容器の圧力が上昇し、あらかじめ設定された圧力に達すると、隔離連通切替え装置が自動的に連通状態になる。これにより、原子炉一次格納容器内の高圧ガスが気相ベント管を通ってエアバッグの内部放出され、エアバッグが拡張を開始する。」
「エアバッグは、原子炉一次格納容器から放出される高圧ガスの放出速度に応じて拡張する。原子炉一次格納容器の圧力が設計圧力を超える原因は、苛酷事故時に発生する大量の水素である。大量の水素を発生させる炉心燃料と冷却材の水との金属−水反応は、少なくとも数分から数十分の時間をかけて進行する。」
「エアバッグから原子炉二次格納容器内へ漏洩しなくなる。また、原子炉一次格納容器の圧力と原子炉二次格納容器の圧力も均圧化されるため、原子炉一次格納容器からも雰囲気が原子炉二次格納容器に漏洩しなくなる。」


タグ:格納容器

既設炉へのコアキャッチャー設置のバックフィット [AM-メルトスルー、CCI]

 既にある原発への設置
GEヒタチのコアキャッチャーのBiMAC( Basemat-internal Melt Arrest Coolability 基盤内部溶融阻止冷却装置)、東芝の①特許№4612558「コアキャッチャーおよび原子炉格納容器」はESBWR以外の原子炉にも使えるとしてある。しかし、既に建設され運転されている原発に後から設置できるとはなっていない。
 しかし②特許№4828963「炉心溶融物冷却装置、原子炉格納容器および炉心溶融物冷却装置の設置方法」は可能とされている。「本実施の形態では、水チャンネル、耐熱材、給水チェンバー、および、給水配管などの配管の組み合わせで構成されているため、大型の容器などを製造する必要が無い。このため、既設の格納容器に新たに炉心溶融物冷却装置を設置する場合など、大きな物をペデスタルに搬入することが困難なときであっても、別途製造した各構成部材をペデスタルの内部に持ち込んで、現場で組み立て施工が可能」と記載されている。
 この特許では、「直径10mのペデスタル場合でも、水チャンネル壁の合計伝熱面積は82m²程度となるため、水チャンネルだけで最大41MW程度の除熱が可能である。」とされている。柏崎刈羽原発6、7号機のABWRはペデスタルの直径は10.6mだから、東芝の言う通りなら設置可能である。だが、設置は検討すらされていない。
 東電核災害後、資源エネルギー庁は、国内すべての原発へのコアキャッチャー設置を目指している。2012年平成24年度発電用原子炉等安全対策高度化技術基盤整備事業(薄型コアキャッチャーの開発に向けた基盤整備)である。報道によれば東芝が請け負って、直径約6m規模で開発が進んでいる。(テレビ朝日2014年7月12日
http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000030550.html
 
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バックフィット制度 
 この薄型の開発完了を待たなくとも、炉直下のBWRならペデスタル、PWRならキャビティという箇所の直径が約10mあれば特許№4828963のコアキャッチャーが後付できるか、検討すべきではないか。原子力規制委員会は「追加の工事が現実的に不可能」としていると報じられている。委員会は、きちんと検討しているのか。
BiMACは「最も発生の確率が高い重大な原子力プラント事故後に少なくとも24時間格納容器の完全性を維持し、炉心とコンクリートの相互作用を伴う既知の事故シナリオにおいて0.1%又はそれ未満に格納容器破損の可能性を低減すること」を最終目的に、米国エネルギー省DOEから政府資金の支援をうけて開発されている。この目標を達成しているだろう。東芝の特許№4828963「炉心溶融物冷却装置」の事故リスクの低減効果は、「0.1%又はそれ未満に格納容器破損の可能性を低減」など数値的には明示されていない。が、BiMACに対抗して開発されたのだから同程度はあるだろう。こうしたリスク低減は積極的に追及すべきだ。
 東電核災害をみても核災害は壊滅的損害・ハザードを顕す。だから、建設後に開発されたリスク低減技術で後からでも適用可能なものは積極的に取り入れるべきである。法律的には、原子炉等規制法に導入された、既存の原発に新基準を適用する「バックフィット」制度によることになる。

「仮に再稼働するというならば,さまざまな工夫と研究開発によって設置を実現すべきである。技術的に可能な対策はすべて実施することを規制委員会は基本方針とすべきであり,それができない原発は廃炉にするしかない。」(井野博満、滝谷紘一)


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