SSブログ
原発 冷却注水の確保 ブログトップ
前の5件 | -

水位・・リテラシー養成 [原発 冷却注水の確保]

BWR沸騰水型原子炉の水位

水位基準  原子炉圧力容器の汽水分離器の位置
水位計
 シャットダウン水位計 原子炉の運転停止中、起動中の水位の計測用、水位基準から上の水位を測る
 
 狭帯域水位計 運転中の水位を計測、水位基準から上の1500mmの範囲を計測
 広帯域水位計 運転中、通常の変動状態を超える異常状態すなわち過渡変化時の水位の測定
、水位基準の上の1500mmと下方に4000mm(-4000mmと表記)が計測範囲、これは上方は狭帯域と同じ、下方は核燃料の有効燃料頂部TAFまであと160mmの高さで核燃料棒のプレナムの途中の高さ。
 燃料域水位計 事故時、炉心冠水確認のための水位計。水位基準の上方は553mm、下方は8143mm。これをTAFを基準では、上方は炉水位低(原子炉が自動スクラムする水位)より275mm高い範囲、下方は有効燃料底部BAFの範囲。
 
H240626s-5b.jpg


消防車注水の漏水・バイパス流・・東電の人たちは本当に技術者?? [原発 冷却注水の確保]

東電フクシマ核災害では、消防車による代替注水がおこなわれました。
 東京電力は「仮に、消防車による代替注水が全て炉心に注水されれば、核燃料は冠水し十分な冷却がなされることになったと考えます。」東電の事故解析では、消防車で原子炉に向けて送った水の1~4割程度しか原子炉に届いていないのです。大半が東電の解析では、経由するMUWC・復水補給(移送)系から、復水器や復水貯蔵タンクに大半がもれた、バイパスしたとしています。
 復水補給・MUWC系や消火用の送水機能(FP・消化系)を原子炉への注水にも使えるようにする配管や手順は2000~2002年に整備されています。消防車から消火配管に送水できる送水口、ビルの外壁に設置してある装置、をつけたは核災害発災の約半年前の2010年。
東電は「消防車による注水は想定していなかった。」としていますが、漏れた、バイパスしたのは2002年に整備された箇所ですから、消防車使用は漏水の原因ではありません。
1392645705.jpg

 東電は「バイパス流を防ぐ対策や消防車のような可搬型設備を活用して注水を行うといった安全対策まで考えが及びませんでした。」消防車はさておいて、漏水・バイパス流は2002(2000)年に整備した時点から有った問題です。実際に注水試験をしてみればすぐに判った問題です。

東電は実機の注水試験が必要との考えに至らなかった理由として
(0)原子炉注水方法として、非常用炉心冷却系(ECCS)は多重性・多様性を有していたこと、それに加え、アクシデントマネジメント対策として、復水移送(MUWC)系や消火(FP)系による代替注水を想定・整備

(1)バイパス流量はそれほど大きい流量ではないと考えていたこと

(2)復水補給(移送)MUWCポンプは流量が多く、漏洩など気にせずどんどん送り込めばよい

(3)原子炉代替注水時には原子炉水位や注水流量等のパラメータを計器によってバイパス流等により必要な流量が確保できない場合は、異常があると認識されるため、当該注水手段の異常要因(ポンプ・水源等の異常の有無、他系統への流れ込み等)の有無を確認し、要因の除去もしくは他の注水手段に移行することができると考えていたこと

「過信し、継続的なリスク低減の努力が不足した」復水補給・MUWC系やFP・消化系など「代替注水を使用することについて当時、真剣さが足りなかったというのが正直なところ」と東電は県技術委員会に答えています。

復水補給(移送)MUWCポンプは流量が多いから漏洩など気にせずどんどん送り込んでも、足りなかっただろう福島第一原発

 福島第一原発の2号機、3号機のMUWC・復水補給ポンプは1時間に68.2トン(㎥)を約0.69Mpaで送水できる能力のものが2台ついていました。発災時には1割程度しか消防車注水は原子炉に届いていません。この復水補給ポンプが無傷で動いても1台で1時間に7トン程度、2台がフル稼働でも14トン程度しか原子炉に送水できなかったといえます。約9割、120トン余りは横に廻って、バイパス流となってどこかへ行ってしまったでしょう。

ご参照  東京電力 「シビアアクシデント対策」疑問点への回答 補足説明資料 平成26年1月25日 http://www.pref.niigata.lg.jp/HTML_Article/113/936/140125_siryou2.pdf

 2、3号機に必要だった原子炉注水量は、発災日の3月11日は1時間に約40トンで徐々に減っていって日付が変わる頃は約25トン、12日には徐々に減っていって23時ごろでは1時間に15トン程度と東電は推定しています。漏洩など気にせずどんどん送り込んでも、1時間に14トン程度しか送水できないのです。全く足りない。

 大半は漏水・バイパス流で横にそれていく。それがどれ位の量なのか、確かめもしないで「バイパス流量はそれほど大きい流量ではないと考えていた」のです。技術は実用性が第一義です。それが何の根拠もなく「考えていた」。東京電力の原子力発電関係の技術者は、ネジが2、3本抜けているのではないでしょうか。

高圧の原子炉に入るか?

 さてこの約14トンが原子炉に核燃料に届いたかも、不明です。私が東京電力にだした質問への回答で、「一般的に電動ポンプによる注水は注入先の原子炉圧力が低いほど注水量は増加します。従って,MUWCを用いて注水する場合には原子炉圧力を逃し安全弁により減圧する手順としており」返答くださいました。

(東電からの回答はこちら http://pub.ne.jp/hatakenotayori/?entry_id=5059748

 東電核災害時は、逃し安全弁の開操作に必要な直流電源、圧縮空気などが無い、不足でした。減圧する手順は踏めません。消防車の注水が安定的行えるようになったのは、熔融核燃料が原子炉圧力容器を突き抜けて、メルトスルーした後になって圧力容器の高圧が抜けてからです。

 MUWC・復水補給ポンプが全力で水を送り出し、その9割が横に漏れて、1割の約14トンが原子炉までやってきた。しかし圧力容器の圧力が高くて入れない、核燃料には届かない。約0.69Mpa以下に下がるまで入らないのです。そして「注水は注入先の原子炉圧力が低いほど注水量は増加」するのですから、約14トンが丸々原子炉の核燃料に届くには、原子炉圧力がどれ位まで下がってからでしょうか。

石橋を叩いて渡る慎重な緊急手順は作れないのか

 原子炉への緊急注水は設計設備では、原子炉圧が1Mpa・約10気圧以上の場合はRCICが主役です。10気圧以下では低圧炉心スプレイ系(LPCS)や低圧注水系(LPCI)などです。運用手順は1Mpa程度に原子炉の圧力が下がった時点で、低圧系も立ち上げ、RCICと並行して注水をします。

 そして、RCICで炉注水を確保しておいて、原子炉水位や注水流量等のパラメータを計器によって調べ、異常、例えばポンプ・水源等の異常の有無、他系統への流れ込み、バイパス流等の有無を確認します。異常が認めたら、要因の除去もしくは他の注水手段に移行することになっています。RCICで炉注水は確保されているので、そうした余裕のある手順です。

 これらが使えない場合の代替注水の手段では、東電福島第一原発2、3号機は原子炉圧が0.98Mpaから注水可能な手段が準備され、事故時手順書では0.69MPaから使用とされています。柏崎刈羽原発では、同じ種類の装置が注水可能になる原子炉圧は0.75Mpaで事故時手順書では0.49MPaから使用とされています。柏崎刈羽原発は1Mpa・10気圧以下で注水可能な代替注水設備がない炉圧域が1.0~0.75Mpaと福島第一原発の10倍以上もあります。

 このようにRCICと低圧の代替注水手段が、並行して注水する原子炉圧帯が、もともとありません。
つまり、RCICで炉注水は確保しておいて、代替注水系が使えるか、特に復水補給(移送)MUWC系が使えるか調べることができないのです。原子炉水位や注水流量等のパラメータを計器によって調べ、異常の有無を確認し、直す余裕、手順が、元々ないのです。調べてOKとわかってから使う慎重な手順ではない。一か八かの一発勝負が代替注水手段運用の手順にはあります。

 それなのに「(3)原子炉代替注水時には原子炉水位や注水流量等のパラメータを計器によってバイパス流等により必要な流量が確保できない場合は、異常があると認識されるため、当該注水手段の異常要因(ポンプ・水源等の異常の有無、他系統への流れ込み等)の有無を確認し、要因の除去もしくは他の注水手段に移行することができると考えていたこと」とは・・、「真剣さが足りなかった」と今頃言われても。

 東京電力は「なお原子炉圧力が 1MPa以下であっても、(原子炉隔離時冷却系・RCICで)注水できないわけではなく、定格流量以下にはなるが注水することは可能である。 」としています。そりゃ「可能」でしょう。しかし、その注水可能量が原子炉の冷却に必要な量に十分か否か問題です。「真剣さが足りなかった」と反省しているのです。新潟では真剣に気持ちで取り組んで、「可能である」などといい加減なことでは、0.9MPa時は何トン注水可能とデータで示していただきたい。

 その一方、東電回答書では「MUWCを用いる場合には原子炉圧力は 0.49MPa[gage]以下としています。ただし,実際は逃し安全弁を『開』操作して下げられるまで下げ,注水量を確保することとしています。」これは、「原子炉圧力が 1MPa以下であっても、(原子炉隔離時冷却系・RCICで)注水できないわけではなく、定格流量以下にはなるが注水することは可能である。 」あるが、それで注水量が不足でも、逃し安全弁を開けて、一気に原子炉圧を下げて、MUWC・復水補給系で大量注水すると読めます。

 しかし東電フクシマ核災害では、逃し安全弁を『開』操作できませんでした。様々な対策を採っていますが、それでもなお開操作できなくなった場合に備えておく必要があります。

注水模擬試験

 まず、原子炉圧が0.75Mpaと0.49MPaの2条件で、MUWC(復水移送)系とFP(消火)系、消防車で原子炉にどれ位の注水できるのか、6号機、7号機の実機の注水試験を行って、漏洩・バイパス流の有無や注水量を実際に確かめておく必要があります。

 東京電力は「柏崎刈羽原子力発電所では、まずは復水移送系にて、バイパス流など系外への流出が生じないことを確認しております。今後、消防車による原子炉代替注水について注水模擬試験にて確認する予定です。」その復水補給(移送)系の結果資料を見ると、原子炉圧力の設定がありません。

 仮に大気圧・1気圧・0.1Mpaでやったのなら、意義が小さいと思います。実際には0.75Mpaや0.49Mpaと7倍から5倍の水圧がかかるのですから、漏れ出す箇所が顕れることが十分にあり得ます。

 また、消防車の注水では、原発で火事がおきて、火災への消防水送水と原子炉への注水が同時に求められる場合、複合災害を想定した実験も必要だと思います。

 東電は今後に注水模擬試験を予定しているとしています。その実験で、こうした条件を設定して行うことを東電に求めてください。その試験結果を技術委員会で検討してください。

東電回答から・・柏崎刈羽6、7号機は福島第一3号機より長時間の全交流電源喪失・SBOにもろい?? [原発 冷却注水の確保]

東京電力から9月に出した問合せに回答がありました。それを見ると柏崎刈羽原発の6、7号機は福島第一原発の3、2号機よりも安全性が低いこととなり、唖然としました。ご存知のように柏崎刈羽原発の6、7号機を東電は再稼動を狙っています。しかし、今も放射能を撒き散らしている福島第一原発よりもイザという時の安全性が低いのです。原子炉へ緊急に注水が設計設備で必要量確保されていない範囲、原子炉圧の範囲が大きいのです。それを放置したままです。

東電福島第一原発は3.11の地震と津波で、外部からの交流電力の送電と非常用発電機を失ってしまいました。これを全交流電源喪失・ステーションブラックアウト・SBOといいますが、1、2号機は原子炉・原発の状態を知るための計測機器や弁を開閉するための直流電源・蓄電池も津波を被って失っています。3号機は直流電源が制御系が生き残ったのです。ですから、3号機は一番、メルトダウンやシビアアクシデント・過酷事故を避け得たのです。しかし原子炉への注水が途絶え、核燃料の溶融と原子炉圧力容器から漏出(メルトスルー)し、水素ガスが大量発生し水素爆発して放射能を出し続けています。
 
1383934243.jpg
 
全交流電源喪失・SBO時には、冷温停止できるのか?東電は福島第一3号機では失敗しているが、柏崎刈羽6、7号機ではできるようにしたのか?

事故対策で柏崎刈羽原発は直流電源など制御系を補強・強化しています。ですから、事故時には福島第一の1、2号機ではなく3号機の状況に近くなると思います。そして、東京電力は外部電源が無くても3台ある非常用発電機のうち1台でも発電すれば、約1時間半で収束できる、原子炉を100℃以下の冷温停止にもっていけると豪語しています。中越沖地震の原発影響の検証、新潟県の技術委員会の検討会で、2007年に説明しています。
 
非常用発電機も止まる全交流電源喪失・SBO時には、冷温停止できるのか?東電は福島第一3号機では失敗しているが、柏崎刈羽6、7号機ではできるようにしたのか?できるなら時間はどれ位、約1時間半?そうしたことを知りたいわけです。
 
運転時の原子炉給水

東京電力の原発は沸騰水型というタイプです。原子炉で核分裂などで発生した熱で、水を沸かしその高温(約290℃)高圧(約70気圧)の水蒸気で蒸気タービンを廻す。その蒸気タービンで作られた回転力で発電機を廻して発電する。一方原子炉からの高温高圧の水蒸気は、エネルギーを約三分の一失って圧力や温度は下がるけれど依然水蒸気です。それも放射能の混じった水蒸気です。それを復水器という装置で水にします。水は水蒸気発生で水がなくなっていく原子炉へ戻す。

復水器の構造は瞬間湯沸かし器や車の水冷ラジエターと同じです。復水器では海から電動の循環水ポンプで取り込んだ冷たい海水が通った管の間を蒸気タービンを経た水蒸気が通ります。瞬間湯沸かし器ではつめたい水道水を通した管の間を高温の燃焼ガスを通してお湯にしますが、復水器は名の通り高温の水蒸気を水に戻す、凝縮します。これを復水といいます。凝縮で体積がグュグッと減ります。
 
さらに蒸気式空気抽出系(SJAE)という装置で水素ガスなどを抜き出します。この水素ガスは、放射線で炉水が分解されて生じたものです。柏崎刈羽6、7号機では復水器では大気圧・1気圧より低くなります。取り込む海水は発電容量100万kWに対し原子力発電(BWR)で70立方メートル程度。火力発電で毎秒40立方メートル程度ですから、原発の効率の悪さがよくわかります。

この凝縮の復水が復水器の下部に溜まります。それを低圧復水ポンプでくみ出し、高圧復水ポンプポンプ、給水ポンプとへて原子炉へ戻し給水します。この間に190~225℃程度まで加熱加温します。お湯を入れて熱くなったコップに冷水を注いだら割れます。これと同じで、水温が違いすぎると原子炉が傷むのでそれを避けるためです。 
 
1383936721.jpg
 
通常の停止手順

原子炉を止める時は制御棒の挿入、再循環ポンプの流量の減少で核分裂反応を減少していきます。当然、水蒸気の発生量が減りますが原子炉からの発電タービンへの搬出量を加減して、圧力は保ちます。発電タービンの出力が落ちていきます。運転時の定格出力の約10%程度で発電タービンを止めます。(電力の送電の系統から外すので解列といいます。)原子炉で発生する水蒸気は、復水器に直接にいくようにします。タービンバイパス弁を開けて送り込みます。

発電タービン、発電機を止めた後に原子炉の核分裂を完全に停止させて「未臨界」にし「高温停止」状態にします。その後も崩壊熱が出続けるので蒸気発生が続きます。この水蒸気を復水器にタービンバイパス弁を開けて送り込み続け、水に戻し給水を続けます。水素ガスなどを抜き出す蒸気式空気抽出系(SJAE)には、補助ボイラーで蒸気を供給します。
 
減圧と炉温度の低下
原子炉の温度を下げるには原子炉の圧力を下げます。原子炉の圧力を下げる減圧すると、冷却水の沸点が下がります。運転時の約70気圧・7MPaメガパスカルから約30気圧・3MPaまで減圧すると沸点は約290℃から約235℃まで下がります。冷却水が最高でもその温度になりますから、水温が炉心の温度が下がります。そのためにはドンドン復水器に水蒸気を送ります。最終的に大気圧まで減圧すると100℃です。

運転時の約70気圧・7MPaメガパスカルから2時間かけて約30気圧・3MPaまで下げるとします。その間にはその2時間に崩壊熱で発生する水蒸気と減圧沸騰で発生する蒸気がでます。約290℃水の持っている熱量は3MPaメガパスカルの沸点約235℃水の熱量よりも25%も大きいので、この余分な熱で冷却水が約14%沸騰します。これらの水蒸気を復水器に送ります。電動の循環水ポンプで取り込んだ冷たい海水が通った管の間を水蒸気を通し、水に凝縮させて、その水を電動の低圧復水ポンプでくみ出し、高圧復水ポンプポンプ、給水ポンプと加圧して原子炉へ戻して、水面が核燃料の上に常にあるように水位を保ちます。

このように補助ボイラーと電動ポンプ4台で減圧と給水を行います。この電動ポンプの電力は、原子炉の発電機は止っていますから、他の発電所から送電、外部電源に頼ります。このようにして約1MPaメガパスカル・約10気圧まで下げます。下がるにつれて炉に給水しているポンプをとめ最終的には低圧復水ポンプ1台にします。

原子炉圧力が0.93MPa以下で残留熱除去系(RHR)を立ち上げウォーミングアップを行いいます。0.75MPa・約173℃で残留熱除去系(RHR)を使います。原子炉-残留熱除去系熱交換器-原子炉と炉水を循環する停止時冷却モードで運転を行います。残留熱除去系熱交換器には海水で冷された真水が送られていて、その原子炉の炉水が冷やされます。直接的な冷却、崩壊熱の除去を開始します。減圧を続行し、まだ発生する水蒸気は復水器に送ります。原子炉圧力が大気圧に、冷却水温度が100℃未満になると「冷温停止」です。 
原子炉が大気圧で水温度80℃以下までは復水器も使います。その後原子炉系と切り離し、残留熱除去系(RHR)停止時冷却モードで崩壊熱の除去を継続します。

参照 ATOMICA BWRの起動・停止方法 (02-02-03-01)

さて地震時は次のようになります。(続く) 
 
 

東電回答から・・柏崎刈羽6、7号機は福島第一3号機より長時間の全交流電源喪失・SBOにもろい?? [原発 冷却注水の確保]

東京電力から9月に出した問合せに回答がありました。それを見ると柏崎刈羽原発の6、7号機は福島第一原発の3、2号機よりも安全性が低いこととなり、唖然としました。ご存知のように柏崎刈羽原発の6、7号機を東電は再稼動を狙っています。しかし、今も放射能を撒き散らしている福島第一原発よりもイザという時の安全性が低いのです。原子炉へ緊急に注水が設計設備で必要量確保されていない範囲、原子炉圧の範囲が大きいのです。それを放置したままです。



東電福島第一原発は3.11の地震と津波で、外部からの交流電力の送電と非常用発電機を失ってしまいました。これを全交流電源喪失・ステーションブラックアウト・SBOといいますが、1、2号機は原子炉・原発の状態を知るための計測機器や弁を開閉するための直流電源・蓄電池も津波を被って失っています。3号機は直流電源が制御系が生き残ったのです。ですから、3号機は一番、メルトダウンやシビアアクシデント・過酷事故を避け得たのです。しかし原子炉への注水が途絶え、核燃料の溶融と原子炉圧力容器から漏出(メルトスルー)し、水素ガスが大量発生し水素爆発して放射能を出し続けています。

1383934243.jpg
全交流電源喪失・SBO時には、冷温停止できるのか?東電は福島第一3号機では失敗しているが、柏崎刈羽6、7号機ではできるようにしたのか?
 事故対策で柏崎刈羽原発は直流電源など制御系を補強・強化しています。ですから、事故時には福島第一の1、2号機ではなく3号機の状況に近くなると思います。そして、東京電力は外部電源が無くても3台ある非常用発電機のうち1台でも発電すれば、約1時間半で収束できる、原子炉を100℃以下の冷温停止にもっていけると豪語しています。中越沖地震の原発影響の検証、新潟県の技術委員会の検討会で、2007年に説明しています。
 非常用発電機も止まる全交流電源喪失・SBO時には、冷温停止できるのか?東電は福島第一3号機では失敗しているが、柏崎刈羽6、7号機ではできるようにしたのか?できるなら時間はどれ位、約1時間半?そうしたことを知りたいわけです。

運転時の原子炉給水
 東京電力の原発は沸騰水型というタイプです。原子炉で核分裂などで発生した熱で、水を沸かしその高温(約290℃)高圧(約70気圧)の水蒸気で蒸気タービンを廻す。その蒸気タービンで作られた回転力で発電機を廻して発電する。一方原子炉からの高温高圧の水蒸気は、エネルギーを約三分の一失って圧力や温度は下がるけれど依然水蒸気です。それも放射能の混じった水蒸気です。それを復水器という装置で水にします。水は水蒸気発生で水がなくなっていく原子炉へ戻す。
 復水器の構造は瞬間湯沸かし器や車の水冷ラジエターと同じです。復水器では海から電動の循環水ポンプで取り込んだ冷たい海水が通った管の間を蒸気タービンを経た水蒸気が通ります。瞬間湯沸かし器ではつめたい水道水を通した管の間を高温の燃焼ガスを通してお湯にしますが、復水器は名の通り高温の水蒸気を水に戻す、凝縮します。これを復水といいます。凝縮で体積がグュグッと減ります。
 さらに蒸気式空気抽出系(SJAE)という装置で水素ガスなどを抜き出します。この水素ガスは、放射線で炉水が分解されて生じたものです。柏崎刈羽6、7号機では復水器では大気圧・1気圧より低くなります。取り込む海水は発電容量100万kWに対し原子力発電(BWR)で70立方メートル程度。火力発電で毎秒40立方メートル程度ですから、原発の効率の悪さがよくわかります。
 この凝縮の復水が復水器の下部に溜まります。それを低圧復水ポンプでくみ出し、高圧復水ポンプポンプ、給水ポンプとへて原子炉へ戻し給水します。この間に190~225℃程度まで加熱加温します。お湯を入れて熱くなったコップに冷水を注いだら割れます。これと同じで、水温が違いすぎると原子炉が傷むのでそれを避けるためです。
1383936721.jpg


通常の停止手順
 原子炉を止める時は制御棒の挿入、再循環ポンプの流量の減少で核分裂反応を減少していきます。当然、水蒸気の発生量が減りますが原子炉からの発電タービンへの搬出量を加減して、圧力は保ちます。発電タービンの出力が落ちていきます。運転時の定格出力の約10%程度で発電タービンを止めます。(電力の送電の系統から外すので解列といいます。)原子炉で発生する水蒸気は、復水器に直接にいくようにします。タービンバイパス弁を開けて送り込みます。
 発電タービン、発電機を止めた後に原子炉の核分裂を完全に停止させて「未臨界」にし「高温停止」状態にします。その後も崩壊熱が出続けるので蒸気発生が続きます。この水蒸気を復水器にタービンバイパス弁を開けて送り込み続け、水に戻し給水を続けます。水素ガスなどを抜き出す蒸気式空気抽出系(SJAE)には、補助ボイラーで蒸気を供給します。
減圧と炉温度の低下
 原子炉の温度を下げるには原子炉の圧力を下げます。原子炉の圧力を下げる減圧すると、冷却水の沸点が下がります。運転時の約70気圧・7MPaメガパスカルから約30気圧・3MPaまで減圧すると沸点は約290℃から約235℃まで下がります。冷却水が最高でもその温度になりますから、水温が炉心の温度が下がります。そのためにはドンドン復水器に水蒸気を送ります。最終的に大気圧まで減圧すると100℃です。
 運転時の約70気圧・7MPaメガパスカルから2時間かけて約30気圧・3MPaまで下げるとします。その間にはその2時間に崩壊熱で発生する水蒸気と減圧沸騰で発生する蒸気がでます。約290℃水の持っている熱量は3MPaメガパスカルの沸点約235℃水の熱量よりも25%も大きいので、この余分な熱で冷却水が約14%沸騰します。これらの水蒸気を復水器に送ります。電動の循環水ポンプで取り込んだ冷たい海水が通った管の間を水蒸気を通し、水に凝縮させて、その水を電動の低圧復水ポンプでくみ出し、高圧復水ポンプポンプ、給水ポンプと加圧して原子炉へ戻して、水面が核燃料の上に常にあるように水位を保ちます。
 このように補助ボイラーと電動ポンプ4台で減圧と給水を行います。この電動ポンプの電力は、原子炉の発電機は止っていますから、他の発電所から送電、外部電源に頼ります。このようにして約1MPaメガパスカル・約10気圧まで下げます。下がるにつれて炉に給水しているポンプをとめ最終的には低圧復水ポンプ1台にします。
 原子炉圧力が0.93MPa以下で残留熱除去系(RHR)を立ち上げウォーミングアップを行いいます。0.75MPa・約173℃で残留熱除去系(RHR)を使います。原子炉-残留熱除去系熱交換器-原子炉と炉水を循環する停止時冷却モードで運転を行います。残留熱除去系熱交換器には海水で冷された真水が送られていて、その原子炉の炉水が冷やされます。直接的な冷却、崩壊熱の除去を開始します。減圧を続行し、まだ発生する水蒸気は復水器に送ります。原子炉圧力が大気圧に、冷却水温度が100℃未満になると「冷温停止」です。 
 原子炉が大気圧で水温度80℃以下までは復水器も使います。その後原子炉系と切り離し、残留熱除去系(RHR)停止時冷却モードで崩壊熱の除去を継続します。
参照 ATOMICA BWRの起動・停止方法 (02-02-03-01)

さて地震時は次のようになります。(続く)

東京電力から回答が来ました。 [原発 冷却注水の確保]

 旧「畑のたより」で2013年10月28日に掲載したものの再録
 
東京電力に9月26日に出した問い合わせに、10月24日付で回答がありました。

質問書とあわせた形で公表します。


東京電力㈱ お客様相談室 〇間 様 

2013年9月26日

案件

「《参考資料1》福島第一原子力発電所事故の教訓と対策」の問合せ


お手数をかけますが、下記の点にお答えください。(全2枚)

(1) 24、25ページの下記の数字は、柏崎刈羽原発六、7号機の数字でしょうか?

CRD 約30㎥/h ⇒原子炉停止16時間後の崩壊熱に相当

RCIC 約140㎥/h ⇒ 原子炉停止15分後の崩壊熱に相当

SLC 約10㎥/h

解説 東電・柏崎刈羽原発 1~5号機の電気出力110万kw.、6、7号機は137万kw。当然熱出力や崩壊熱の発生量が違います。

CRD・・制御棒駆動水ポンプ

SLC ・・ホウ酸水注入系ポンプ

RCIC・・原子炉隔離時冷却系 ABWRの定格流量は約180㎥/時との資料もあります。

回答

当該資料は柏崎刈羽1号機のデータです。 

6/7号機の数字は下記の通りです。(6号機、7号機ともに同じ) 

CRD約30㎥/h⇒原子炉停止16時間後の崩壊熱に相当(※) 

RCIC約180㎥/h⇒原子炉停止15分後の崩壊熱による蒸気量

相当に余裕を持たせた値 

SLC約10㎥/h

(※)CRD流量は1号機より6/7号機の方が若干大きいですが、有効数字一桁で表記すると30㎥/hとなります。崩壊熱相当の値は対数グラフからの読み取り値です。 
 1382964755.jpg
 

(2)原子炉隔離時冷却系(RCIC)と代替高圧注水設備(TWL)について

(a)この二つの高圧注水設備は共に蒸気駆動なので、その駆動する蒸気圧の範囲、

(b)注水可能な原子炉圧力容器の炉圧の範囲

(c)注水可能量

(d)両者の性能的違い

解説 
 1380553551.jpg

回答

(a)RCIC、HPACは共に蒸気タービン駆動ポンプによる高圧注水設備であり、いずれも、ポンプが定格運転できる蒸気圧範囲は、原子炉圧力が高圧状態(約 8MPa)から低圧状態(約 1MPa)である。 

[虹屋注 この質問は2012年12月14日付の東京電力の資料に基づいているが、2013年に入って代替高圧注水設備(TWL)を高圧代替注水系(HPAC)と呼称を変えている。 http://www.tepco.co.jp/cc/direct/images/130125a.pdf の13ページ]

(b)上記(a)の通り、原子炉圧力が約 8~1MPaで、定格流量を注水することが可能。なお原子炉圧力が1MPa以下であっても、注水できないわけではなく、定格流量以下にはなるが注水することは可能である。 

(c)RCIC、HPACともに、注水可能量は同じになるよう設計しており、上記(a)、(b)の蒸気範囲で、注水量は約 180㎥/hである 

(d)RCIC,HPACは前述の通り注水能力等の注水性能はほとんど同じである。大きな違いとしては、ポンプ駆動に必要な電源容量でありHPACポンプの方が必要電源容量が少なくて済むことである。(RCICポンプは電気制御、グランドシール装置のような電気設備が必要であるが、HPACポンプはそれらが不要な構造であり、必要電気容量が少なくて済む)。 

従って、HPACは電源にあまり頼らずに高圧注水が期待できる設備である。 

また、HPACポンプは運転に電気制御が不要なため、ポンプ自体が水没してもポンプが停止しない設計になっている。従ってRCICよりも耐浸水性に優れたポンプとも言える。 

以上 
 
1382965026.jpg1382965074.jpg

(3) 6、7号機のRHR(LPFL機能)について 26ページ、39ページ 

(a)注水可能な原子炉圧力容器の炉圧の上限と下限、上限まで減圧することになるがその炉圧は、どれくらいか。

(b)注水可能量

(c)「1号機の場合、津波等による全電源停止から24時間以内に代替海水熱交換器設備のインサービスを完了することにより、48時間以内に冷温停止が可能」とあるが、6、7号機では冷温停止到達時間は? 

6、7号機はABWRであり、ABWRのRHRは設計基準事故である冷却材喪失事故時に、炉心及び原子炉格納容器の冷却に必要とされる除熱量に対して、1系統で50%の冷却能力である。BWRの1号機は100%であるから、当然に到達時刻は違うと思われるが、全電源停止から24時間以内に代替海水熱交換器設備のインサービスを完了した場合の冷温停止の到達時刻は48時間以内か?

解説
 
1379751165.jpg

回答

(a)RHR(LPFL系)の注水可能圧力の範囲は、下記の通り。 

6号機: 0~2.07 MPa[gage]

7号機: 0~2.16 MPa[gage]

(b)6/7号機ともに下記の通り 

注水可能量:定格流量 954[m3/h] 

(定格揚程 125[m]) 

(c)6/7号機の場合も1号機同様に、全電源停止から24時間以内に代替海水熱交換器設備のインサービスを完了することにより、48時間以内の冷温停止が可能となるよう設計しております。

(RHR系1系統での除熱) 

なお、1号機のものと比較すると、代替熱交換器設備の交換熱量が大きなものとなっています。 

以上 
 
1382965335.jpg1382965936.jpg


(4) 6、7号機のMUWCについて 26ページ

「早期の原子炉注水に必要な注水量が不足しており不可、約1時間後の崩壊熱除去には有効」との記載がある。

(a)MUWCで注水可能量と吐水圧力はどれくらいか?

(b)MUWCで注水が可能になる原子炉圧力は、どれくらいか? 

福島第一3号機の事故時運転操作手順書にはMUWは「原子炉圧力が0.69MPa以下であること」と記載されているが、柏崎刈羽の6、7号機では、原子炉圧力の上限、つまり減圧操作で下げる目標の原子炉圧力は、どれくらいか? 

解説
 1379706807.jpg
 
回答

(a)MUWCの注水可能量と吐水(吐出)圧力ですが,6号機及び7号機ともに以下の通りです。 

注水可能量:定格流量 125m3/h 

定格揚程:85m(参考)台数:3台 

(b)MUWCで注水が可能になる原子炉圧力については,原子炉圧力容器の圧力が約 0.85MPa[gage]から MUWCにより注水が可能となります。 

一般的に電動ポンプによる注水は注入先の原子炉圧力が低いほど注水量は増加します。従って,MUWCを用いて注水する場合には原子炉圧力を逃し安全弁(※)により減圧する手順としておりMUWCを用いる場合には原子炉圧力はる0.49MPa[gage]以下としています。 

ただし,実際は逃し安全弁を「開」操作して下げられるまで下げ,注水量を確保することとしています。 

※:逃し安全弁は 18弁設置されており,原子炉を減圧する際には 18弁のうち,自動減圧機能(ADS)が付いている 8弁を「開」操作する手順としています。 

以上 
 
1382966275.jpg1382966306.jpg

(5)  6、7号機のD/DFPについて 26ページ、36ページ

「早期の原子炉注水に必要な注水量が不足しており不可」との記載がある。

(a) 現在設置されているD/DFPの注水能力はどれくらいか?それは、原子炉停止からどれ位の時間の崩壊熱に相当するのか? 

36ページの記載では、給水建屋(5~7号機用大湊側)に 1台あり、定格容量177 ㎥/h、全揚程75 m、締切揚程81mとある。この定格容量で6、7号機で、原子炉注水に必要な注水量が不足している原子炉停止からの時間は何時までなのか?1時間後といった具体的時間で示して欲しい。

(b) 全揚程75 m、締切揚程81 mとの性能で、注水可能な原子炉圧力はいくらか?

(c) 福島第一3号機の事故時運転操作手順書には消火系・FPの使用には「原子炉圧力が0.69MPa以下であること」と記載されているが、柏崎刈羽の6、7号機では、原子炉圧力の上限、つまり減圧操作で下げる目標の原子炉圧力は、どれくらいか? 

回答

(a)D/D FPの注水能力ですが,以下の通りです。 

注水可能量:定格流量 117m3/h 

定格揚程:75m(参考)台数:1台 

崩壊熱による原子炉の冷却材の蒸発が約 117m3/hとなるまでの時間は,燃焼時間等によって影響するため一意には定まりませんが,停止数十分後の崩壊熱による蒸発量に相当します。 

ただし,原子炉を減圧する際に逃し安全弁を「開」操作するため,冷却材が原子炉圧力容器からサプレッション・プールに流出します。従って,実際には崩壊熱による蒸発分に加え,減圧時に冷却材がサプレッション・プールに流出する分も加えて注水する必要があります。 

(b)揚程が 75mのときは原子炉圧力容器の圧力が約 0.75MPa[gage]から注水可能となります。 

(c)基本的には Q(4)の(b)と同様で,原子炉圧力は 0.49 MPa [gage]以下を確認します。 

以上 
 
1382967126.jpg

本文

From:〇●◎@tepco.co.jp 

Sent: Thursday, October 24, 2013 10:50 AM 

To: nijiya@sky.plala.or.jp 

Subject: 【東京電力】お問い合わせへの回答 

弦巻 英市 様

私どもの福島第一原子力発電所の事故により、今なお、発電所周辺地域をはじめとした福島県のみなさま、広く社会のみなさまに大変なご迷惑とご心配をおかけしておりますことを、改めて心より深くお詫び申し上げます。

さてこのたび、弦巻様よりFAXにてお問い合わせいただきましたご質問に対しまして、当該メールにて別添の資料のとおりご回答させていただきます。ご査収くださいますようお願い申し上げます。何かご不明な点がございましたら、恐れ入りますが当該メールへお問い合わせくださいますようお願いいたします。

なお、ご回答に際しまして、大変お時間が掛かりましたことをお詫び申し上げます。

弊社といたしましては、引き続き、原子力事故の早期収束・安定化、被災者のみなさま方に対する賠償、あわせて電気の安定供給の確保などの重要課題に、全社一丸となって取り組んで参ります。ご理解を賜れれば幸いでございます。

**********

東京電力株式会社

お客さま相談室

電話:050-3066-3033

**********


前の5件 | - 原発 冷却注水の確保 ブログトップ