柏崎市防災ガイドブック(原子力災害編) 2023年10月改訂版発行 [防災ー発災直後、ヨウ素剤、短期避難・退避]
原発 避難計画の検証 上岡直見/著 [防災ー発災直後、ヨウ素剤、短期避難・退避]
技術士(化学部門)。法政大学非常勤講師(環境政策)。著書に「日本を壊す国土強靱化」など。
その結果、住民の被ばくを避ける現実的な時間内で
原発避難はできるか 上岡 直見 /著 [防災ー発災直後、ヨウ素剤、短期避難・退避]
原子力発電所で大事故が起きた場合、周辺住民は速やかに避難しなければならない。そのために国・原子力規制委員会の定めた原子力災害対策指針があり、この指針に基づき道府県・市町村の原発避難計画が策定されている。2014年にこの指針の方針転換があり、国の避難政策が「できるだけ住民を逃がさない」施策になった。これはいったいどういうことか?
県に送付意見20190925、避難委員会の検証に関する [防災ー発災直後、ヨウ素剤、短期避難・退避]
報道 https://www.afpbb.com/articles/-/3245100 フランス通信社 2019年9月18日 18:48
第6回の避難方法に関する検証委員会に出された山澤委員提供資料「屋内退避に期待する効果とそのための要件」をみると、【通常は屋内濃度は屋外濃度の影響を強く受ける。5頁】とあります。。また【プルーム通過後換気ができれば、屋内退避の効果は大きい。プルーム通過の情報提供が必要。そうでないと、効果なし。10頁】とありますが、プルームが何処を何時通過したかの情報が提供されるかは不確実です。
こうした事やフランス原子力安全局(ASN)の決定を参考して、避難方法に関する検証委員会で、屋内退避における安定ヨウ素剤の服用を論議・検討して下さい。
フランスの19の原子力発電所を中心とする
検証 3,11でのPBSの予測の実力は? 原子力災害対策指針(2015年4月改定)新潟県vs原子力規制委員会(8)検証 予測手法 [防災ー発災直後、ヨウ素剤、短期避難・退避]
ERSS・緊急時対策支援システムは、4つのサブシステムから成る。その内の解析予測システム・APSとプラント事故挙動データシステム・PBSが放出源情報を受け出し、SPEEDIへの入力データとして使う。APSは原発プラントから伝送されるプラントデータを基に、それらの推移グラフや放射性物質の放出量を予測する。東電核災害では地震で3月11日午後2時47分ごろに国へのデータ伝送が途絶えた。東電・柏崎刈羽原発で中越沖地震(2007年)から続く2度目の途絶。途絶で解析予測システム・APSは事故の進展予測解析には使えない。どのみち、この時途絶しなくてもSBOに15時45分頃なっているから、1時間後16時45分頃には電源を外されて途絶する。
参照・・事故進展解析結果について http://www.meti.go.jp/press/2011/09/20110902005/20110902005-6.pdf
11日15時46分頃 津波来襲
PBS/1F-2解析結果、11日21時30分頃 緊急時対応センター・ERCのプラント班へ、2号機のPBS解析結果送信
PBS/1F-2解析結果
図(グラフ)が1枚が20時30分時点のもの。この図での予測では、RCIC・原子炉隔離時冷却系は約4時間稼働して止まり、原子炉圧力が上昇しっぱなしになる。そして原子炉停止(スクラム)から約8時間後に炉心溶融(メルトダウン)、約11時間半後に原子炉容器破損(メルトスルー)、約23時間半後に格納容器が過温破損し放射能の環境へ大量放出が始まる。約2時間続く。と予測している。
それから30分後の21時01分のものが画面の図。放射能の放出が炉心から(時間当り)と環境中へ(累積量)で、デジタルな値でわかる。予測条件がSBO。
ベント、22時に言及 これらの他に、あと2回のPBS予測がある。
一つは、22時00分に官邸の緊急対策本部への連絡の元になったもの。21時50分の水位の実績値が前提条件として書かれている。文書を作成する時間を考慮すると、21時50分から数分でPBS解析が出たことが判る。「早い段階で、おおよその事故進展を把握する」という目的でPBSは開発されたが、PBSシステムが立ち上げてあれば前提条件を設定し入力すれば約数分でおおよその事故進展の予測を出すことできた。
原子炉隔離時冷却系・RCICの停止が原子炉停止(スクラム)から約5時間半後の20時30分の実績が書かれている。21時01分予測では約4時間だから、約1時間半も長い。炉内に水の供給がそれだけ長くなり、水面低下が遅くなる。炉心露出が遅くなり、炉心溶融(メルトダウン)も遅くなる。22時連絡ではスクラムから約10時間後と2時間遅くなり、24時50分(12日00時50分)と予測されてる。
そして、ベントが登場している。11日22時の時点で政府の官邸対策本部では、ベントが俎上に上がっていた。格納容器が損傷する前の、人為的な放射能の放出。PBS解析では、格納容器の圧力はメルトスルーと同時刻に設計最高使用圧力に達する。それから上昇して約11時間後に2倍に達している。破壊実験から、2倍以上では何時、過圧破損がおきてもおかしくない状態である。2倍になってから約1時間後、メルトスルーから約12時間後に過温破損している。過温破損にベントは効果がない事は周知の事実だ。ベントをして過圧破損を防いでも、過温破損は起きる。過圧破損をしても過温破損は起きる。この2種類の格納容器の以前に、人為的な放射能の放出を格納容器が設計最高圧≒メルトスルーに行うとしている。
11日24時(12日00時00分)は津波来襲時刻にSBOになったとすると、設計では非常用蓄電池が8時間分だから23時40分頃に直流電源もなくなるから、いよいよ危険に成って不思議ない時刻である。RCICが止まれば2、3号機の水位が下る。そうして炉心露出するから、それから4時間半後に格納容器が設計最高圧と予測=ベント予定するという内容だ。SPEEDIの拡散予想はどうなった。これも、SPEEDIが使われたのか否かすらも公表されていない。
避難をどの地域から優先に行うか、どのルートを採ると良いかという判断に役立つ予測だ。これは予防的に行う避難だから、被曝線量の値は概ね正しければ良い。この程度の予測は、厳密な量のデータがいるのだろうか。単位放出での予測で十分ではないか。SPEEDIの6時間予測計算の時間は15~20分だから、炉心露出のタイミングでSPEEDIの拡散予測を始めたら燃料被覆管破損前に予測結果が出てる。これでも遅いのだろうか。
PBSの設定条件が合っていない
本稿は、ERSSとSPEEDIがどれ位の時間で、時刻的に稼働できたを検討しているので、詳しく検討しないが、1号機、3号機でも解析での設定条件はSBO全交流電源喪失であった。これは東電核災害では津波来襲時に直流電源を全部または一部無くしており、それを入れた条件での解析ではなかった。