SSブログ
放射能検査、空間、全般 ブログトップ
前の5件 | -

放射線はなぜ生じる ウラン236を糸口に① [放射能検査、空間、全般]

天然ウランにはないウラン236

回収ウランには天然ウランには無いウラン236が0.3~0.4%くらい含まれています。ウラン236は回収ウランで核燃料を作ろうとすると、「炉心に装荷した場合に炉心の反応度を低下させる」ATOMICA「中性子吸収して反応度損失を発生する」原燃ため問題となっています。

核燃料中のウラン235は秒速2.2km位の熱中性子(エネルギー0.025eV)が当る、照射されると、それを吸収しそのエネルギーで不安定・励起され、中性子が1個増えたウラン236の複合核になります。この不安定な複合核のウラン236は約85%の確率で約千兆分の1秒以内に核分裂を起こし、約15%の確率で約千万分の1秒後にγ線で余分なエネルギーを出してウラン236で安定化します。これを中性子捕獲といいます。ウラン236は崩壊してしまうですが、半減期は約 2340万年ですから安定化したと記しました。

ウラン235の核分裂でエネルギー、セシウム137のような核分裂生成物と平均2.4個の中性子がでます。この中性子は平均で秒速2万 km(約2MeV)の高速中性子です。これが核分裂をしないウラン238に当ると、プルトニウム239に変ります。このプルトニウム239に速度の遅い熱中性子(秒速2.2km)が当ると約73%の確率で核分裂を起こし約27%の確率でプルトニウム240に変ります。このプルトニウム240がα線を出して崩壊(半減期6561年)するとウラン236ができます。

このように生成したウラン236は使用済核燃料に0.3~0.4%くらい含まれています。再処理で他の核分裂生成物は、化学的性質の違いから取り除きますが、ウラン236は除けません。この0.3~0.4%くらいのウラン236は回収ウランで核燃料を作ろうとすると、「炉心に装荷した場合に中性子吸収して炉心の(核分裂)反応度を低下させる」ため問題となっています。

中性子吸収って?

核分裂は、ウラン235の原子に秒速2.2km位の熱中性子をぶつけて起こします。このように原子に中性子が当ると、中性子が1個が出てくる場合、1個も中性子が出てこないで吸い込まれてしまう場合と吸い込まれてから間をおいて2個以上の中性子が出てくる場合があります。2個以上の中性子が出てくる場合が核分裂で、ウラン235では平均2.4個、その内の1個が新たに核分裂を起こせば核分裂が続く連鎖反応になります。ウラン235の例でもわかるように、各々の反応をある確率で元素は返します。

1366583675.jpg原子は真ん中に中性子と陽子からなる原子核があり、周りを太陽を囲んで回る惑星のように様に電子が回っている構造と習いました。特に軽い原子を除くと、原子の大きさはほぼ一定で半径2×1億分の1cm。中心にある電気的にプラスの原子核の大きさは、その10万分の1(10兆分の1cm)の単位のfm(フェムト・メーター)であらわす大きさです。

原子核をつくる電気的にプラスの陽子と中性の中性子の核子の大きさは約1fm(フェムト・メーター)。水素Hの原子核は陽子一個、酸素Oは陽子8個と中性子8個できていていますから原子核の大きさは違います。
電子一個に陽子も一個で電気的に釣り合い、原子は電気的中性になります。陽子の数=電子の数とその軌道が化学的性質を決めています。

太陽と地球など惑星を結んでいるのは万有引力(重力)ですが、原子では中心の原子核と10万倍も離れた電子を結んでいるのは原子核の陽子が電気的にプラス、周りの電子がマイナスの電荷で電気的に引き合う力です。原子核では電気的にはプラスの陽子同士ではお互いに反発・排斥する力が働きます。それを弱めるように間に電気的に中性の中性子が入っているのですが、10万倍も離れた電子をひきつけておく力が中性子1個の約1fm(フェムト・メーター、10兆分の1cm)の距離でそんなに弱まりません。陽子・中性子の核子を結び付けている何らかの力、核力が働いていると考えられました。

その核力は、何か?湯川秀樹博士は、電子と核子の中間の大きさ・質量のパイ中間子を核子同士でやり取りすることで生じている力だと理論的に考察しました。それは後に宇宙線の観測と実験で実証され、湯川博士は日本で始めてノーベル賞を受賞しました。

原子核はイルミネーション状態

マイナスの電荷のパイ中間子を中性子から陽子に与える(与えた中性子は陽子に、もらった陽子は中性子に変る)、
プラスの電荷のパイ中間子を陽子から中性子に与える(与えた陽子は中性子に、もらった中性子は陽子に変る)、
中性子同士は電荷をもたない中間子をやり取りするという3つのパターンが間をおかずほぼ同時に二つ行われ核力が生まれます。原子核の模型では陽子は赤玉、中性子は白玉で表されて模型ですから固定していますが、実際にはそれが目まぐるしく入れ替わっている、クリスマスの飾りのように入れ替わっているイメージです。

1366579210.gif
この図はここからお借りしました


核力は短い距離、約10兆分の2cmでは陽子同士でお互いに排斥する斥力より約10倍強い引力です。その距離は、原子核内の核子(陽子・中性子)間の平均の距離に相当します。それで陽子同士が離反して、つまり核が壊れるのを押さえ込んでいます。この平均の距離の約2倍を超えると排斥する斥力より小さくなります。逆に、核子同志が 極端に近づくと(0.4~0.5fm 以下) 強い斥力 (反発力) がでてきます。

1366580550.jpg
クリックで拡大

原子核外からの力・エネルギーが加わり、核子の運動が大きくなって離れる、極端に近づいて壊れるなど外力破壊が考えられます。原発は原子炉でウラン原子核を中性子で壊してエネルギーを得ています。また、陽子が偏ってしまう、例えば数個が集まった状態になれば斥力が核力より大きくなって壊れるなどの内部崩壊が考えられます。

1万種中の252種

現在、理論的には陽子と中性子の数のさまざまな組み合わせにより約1万種類の原子核がありえます。このうち、我々人類が、自らは壊れない無限に安定した原子核で発見しているのは252、無限に近いものをあわせて約300・3%です。これまでに人類は約3000種の原子核を発見・合成していますが、自らは壊れない安定した原子核(安定核)は252種で陽子が82個以下で、陽子と中性子がほぼ同数です。ほとんどは、自ら壊れてしまう不安定な原子核(不安定核)です。

1366581478.jpg

クリックで拡大 この図はここからお借りしました


この核物理的には極少数派の安定核=元素が様々に化学結合して多種の物質を創り、その物質界から極少種の生きる物で生物界が生まれました。安定核は陽子が82個以下、陽子と中性子がほぼ同数です。酸素は陽子8個と中性子8、9、10個の3種の安定核、中性子が多い10種、少ない4種の不安定核は放射線を出しフッ素か窒素に壊変します。不安定核の酸素では化学的にも不安定で、その上に建つ生命活動も不安定化します。出す放射線のエネルギーは数百万eV(メガ・M)もあり、化学反応に関わるエネルギー(ほぼ数eV)の100万倍以上もあるため多数の化学結合を壊します。

不安定核の壊れ方は次々と別の不安定核に変身(壊変)して安定核になるまで壊変を続ける、壊変の際に余分なエネルギーや核子を出す=放射線をだす崩壊と、分裂してしまう核分裂です。できた分裂核は大概は別の不安定核なので崩壊の過程に入ります。安定核は陽子と中性子がほぼ同数、数比は1~1.5です。不安定核は、陽子や中性子の数が偏っています。原子炉内で中性子を吸収し増えると不安定化、放射能化します。 
 続く




放射線の正体かな?-1 ウラン236を糸口に② [放射能検査、空間、全般]

放射線は元素の原子核が不安定核で壊れる時に出ます。壊れ方は、次々と別の不安定核に変身して安定核になるまで壊れ続ける崩壊と分裂してしまう核分裂です。核分裂でできた核種が安定核であれば、そこで停止しますが、大概は別の不安定核なので崩壊がはじまります。

核分裂生成物に放射能の不安定核が多い訳

原子核でのプラスの電荷の陽子同士の電気的反発力と中間子で発生する核子同士を引きつける核力の攻めぎ合いで、原子核の安定性が決まります。原子核内の核子の平均的距離は約2fm(フェムト・メーター、10兆分の1cm)で、この距離では引力の核力が電気的反発力の約10倍あります。

私たちの環境を作っている安定核では、陽子が一つの水素H、陽子1個に中性子1個が捕獲され2.2MeVのγ線が放出されてできる重水素D、陽子2個に中性子2個のヘリウム、陽子3個に中性子3個のリチウムと陽子と中性子が同じ1対1です。

陽子同士の電気的反発力は、クーロンの法則から原子核では近似的に陽子の個数(原子番号)の二乗になります。核力は核子同士のパイ中間子のやり取りで発生する力ですから、陽子と中性子の数の合計(質量数)に比例します。

原子核内の核子の平均的距離は約2fm(フェムト・メーター、10兆分の1cm)で、この距離では引力の核力が電気的反発力の約10倍あります。陽子数の増加での反発力は二乗で増えるのに、核力は足し算で増えるので、約2fmで安定が保てるのは、陽子数で20(カルシウム)中性子数で20までです。

陽子数21(スカンジウム)になると電気的反発力は441倍になりますが、陽子と中性子が同数だとすると核力は10×42=420で不足します。中性子がもう3個増えて中性子数24でスカンジウムの安定核を作ります。核力の不足を電気的反発力を増やさない核子、つまり中性子を多くすることで解消します。この結果、陽子数(原子番号)が多くなると中性子数が相対的により多くなります。

1367251678.jpg
クリックで拡大

ウラン235は陽子が92ヶ中性子が143ヶです。そこに中性子が照射され1個吸収されて二つに核分裂すると、陽子が45ヶ前後で中性子が70前後の質量数は115前後の原子核(核分裂生成物)が2つできると予想できます。陽子が40~50ヶの安定核では、中性子数は50~62ヶですから、中性子が過剰の核と考えられます

実際には質量数がほぼ100と130程度の2つの原子核(核分裂生成物)と複数の中性子(即発中性子)が放出されることが多いのです。分かっている約1000種の核分裂生成物で安定核は60。陽子数が同じ安定核に較べて、中性子が5、6ヶ多い不安定核が多いのです。この過剰な中性子を減らす方向の変化が起きます。

1367251916.jpg
クリックで拡大

①過剰な中性子を捨てる・・遅発中性子

核子、(中性子と陽子)は、パイ中間子を交換し合う核力から陽子同士の電気的反発力を差し引いた力で結合しています。この力を打ち破るエネルギーが中性子を捨てるには必要です。

これを原子核から中性子を1つ取り出すのに必要な中性子分離エネルギーといいます。同様に陽子分離エネルギーがあります。この二つは核種ごとで違います。セシウム134の中性子分離エネルギーは7.04MeV(メガ・100万電子ボルト)、陽子分離エネルギーは6.65MeV。セシウム137の中性子分離エネルギーは8.52MeV、陽子分離エネルギーは7.35MeV。

この分離エネルギーは中性子や陽子を原子核に束縛し結合しているエネルギーとも言えます。原子核の外を飛んでいる束縛されていない核子は、原子核内の核子より束縛・結合エネルギー分の多くのエネルギーを持っている。原子核・元素同士でも束縛・結合エネルギーが100MeVの元素は、150MeVの元素より50MeV多くエネルギーを持っていると言えます。

それで、束縛されていない陽子、中性子の質量を基にして算出される陽子がZヶ、中性子がNヶの原子核の質量(Z×非束縛の陽子の質量とN×非束縛の中性子の質量の合計)よりも、その原子核の実測質量が小さいという質量欠損が顕われます。エネルギーは質量×光速×光速と等しいという有名なアインシュタインの公式から束縛・結合エネルギー分だけ非束縛の陽子と中性子の質量が大きいからです。(燃焼など化学反応では、反応の前後のエネルギー差による質量の変化が100億分の1程度なので観測できず、発見できなかった。)

1367253757.jpg


元素・安定原子核全体での束縛・結合エネルギーを測り核子平均値をだすと陽子が26ヶ中性子が30ヶの鉄56の8.8 MeVなど鉄が最大です。陽子1ヶの水素Hは束縛・結合されていませんからゼロ、陽子1ヶで中性子1ヶの重水素は原子核全体では2.2MeVで核子平均では1.1MeV、そこから26ヶの鉄の約8.8 MeVまで急激に増え、陽子92ヶのウラン235の7.8MeV(原子核全体では7.8×235=1833)までダラダラと減っていきます。

1367253935.jpg
ハイゼンベルグの谷

大きな図はここから 
仁科加速器研究センターの核図表


原子核の外を飛んでいる束縛されていない核子は、原子核内の核子より束縛・結合エネルギー分の多くのエネルギーを持っています。それではウラン235の約7.8MeVの核子は、約8.8 MeVの鉄の核子よりも約1MeV多くエネルギーを持っています。ウラン235の約7.8MeVの核子は、核分裂生成物の核子数(質量数)がほぼ100と130程度の約8.6~8.4MeVの核子より多くのエネルギーを持っています。原子核全体では核分裂生成物の二つの原子核より、約200MeV多く持っています。

核分裂の際に、この余剰なエネルギーは高速で中性子を出したり、核分裂生成物の運動エネルギー(熱)で放出されます。(それでお湯を沸かす装置が原子炉)核分裂生成物の2つの原子核と即発中性子の合計質量は、元のウランよりも1000分の1ほど軽くなります。(鉄より陽子数の少ない軽い元素、例えば水素は分裂ではなく融合でエネルギーが出ます。これが核融合)

1367255046.jpg
クリックで拡大

核分裂生成物の多くは、次に述べるベータ・β崩壊して非常にエネルギー状態が高い励起状態の原子核に変ります。励起状態のエネルギーレベルよりも、その原子核の中性子分離エネルギーが低い場合があり、その場合に中性子が核分裂時より遅い速度で放出=中性子線がでます。この核分裂生成物は半減期が1000秒以内の約270種類が分かっています。
中性子線は、生体・人体に多大な影響、被害をもたらします。速度にもよりますが他の放射線の5~20倍。ただこの核分裂生成物の大半は半減期が60秒以内ですから、原発事故で環境放出されても直ぐに崩壊して消失します。 参照

1367269618.jpg
クリックで拡大

この中性子は核分裂後に出るので遅発中性子といわれ量的にはウラン235の核分裂での即発中性子の152分の1程度です。量的には少ないですが、原子炉のコントロールには極めて重要です。原子力爆弾は極めて短時間(1000万分の1秒以下)に連鎖核分裂を起こさせますので遅発中性子は何の役にも立ちません。原子炉では長時間定常的に連鎖核分裂を起こさせますから、遅発中性子は核分裂を起こします。遅発中性子数の制御がポイントになります。
過剰な中性子を減らす方向の変化、その②は「中性子を陽子に変える」  続く


「放射性物質の常時監視に関する検討会の報告書(素案)等」に対するパブリックコメント [放射能検査、空間、全般]

「放射性物質の常時監視に関する検討会の報告書(素案)等」に対する意見の募集(パブリックコメント)


測定結果の公表について

測定・常時監視は都道府県知事が行い、知事は「常時監視の結果を環境大臣に報告しなければならない。」とされている。そして「『大気汚染防止法施行規則及び水質汚濁防止法施行規則の一部を改正する省令案の概要』の概要」によれば、「測定結果の公表については、インターネットの利用その他の適切な方法により行うものとする」となっている。

これを「都道府県知事は、前項の常時監視の結果を都道府県民に公表すると共に環境大臣に報告しなければならない。」と改めて欲しい。

理由
中越沖地震では柏崎刈羽原発の発電所のモニタリングポストの測定データは、途絶えてしまった。しかし新潟県の設置したモニタリングポストの測定データは、県がインターネットの県のサイトで常時公表しており、新潟県民はこれを閲覧して状況を知ることが出来た。柏崎刈羽原発では地震直後に火災が発生したが、それによって原子炉、原発から放射能が漏れていないことを、この県の常時公表のモニタリングポストの測定結果からしることができた。

ところが、現在、この県の常時公表がなくなっている。国、原子力規制委員会に県が報告し、規制委が全国の常時監視の結果・データを公表することになったからである。これには大きな不安がある。東京電力福島第一原発の核災害時のSPPEDIの予測結果が未公表になっていた。それで隠蔽と国民には見える結果になっている。国は、都合が悪いデータ、測定結果を隠蔽すると大多数の国民から思われている。

測定・常時監視の結果を、都道府県知事段階でも公表し、国・環境大臣は全国規模での集約と公表を行うこととすべきである。こうすることに拠って、国・環境大臣の公表に隠蔽がないことがあきらかになり、その信頼性を担保することができる。有識者による評価検討結果は、測定結果に関する解説として、後日取りまとめ次第公表する。

測定について

核種別の分析の頻度を上げる

原案の測定では放射能の核種の分析は、大気浮遊じんについては4半期に1回、降下物については月1回、公共用水域の水、地下水は年1回以上が測定頻度の基本とされている。常時継続的に測定されるのは空間線量率である。空間線量率の測定に、常温にて高分解能・高検出効率でガンマ線を測定することができる検出器、CdZnTe/CdTe(テルル化カドミウム亜鉛/テルル化カドミウム)半導体検出器などをこれまでの測定器と併用して測定して欲しい。その結果、例えば環境中の核種別の放射能の移動、挙動を精度はゲルマニウム半導体での分析に比べれば落ちるが、常時継続的に知ることができる。放射能の核種別の分析の頻度を上げて欲しい。

測定の対象の拡大
○公共用水域については、放射性物質が検出されやすい底質に加えて、生物濃縮の実態を把握するため、底生生物などの生物試料も測定対象とする。
○一般・産業廃棄物処理施設(中間処理施設、最終処分場)、下水処理場等は一般環境に拡散した放射性物質が混入、濃縮するリスクを抱えている。これらの施設が新たな汚染源とならないように、排出ガス、排出水及び廃棄物を常時監視の対象とする。
○農林業系廃棄物のバイオマス資源としての再利用、除染廃棄物の減容化処理施設などは放射性物質による汚染物を取り扱うことから、廃棄物処理施設と同様に監視対象とする必要がある。




中性子が陽子に変る場合にセットでβ線・γ線  ウラン236を糸口に③ [放射能検査、空間、全般]

原子炉でできる約1000種の核分裂生成物で安定核は60。陽子数が同じ安定核に較べて、中性子が5、6ヶ多い不安定核が多い。この過剰な中性子を減らす方向の変化が起きます。ひとつは、先週の中性子を排出(中性子線)、もう一つが中性子の陽子に変身です。

原子核内ではパイ中間子のやり取りで中性子と陽子は目まぐるしく交代しています。原子核外にある中性子は、半減期約10分でエネルギーを放出し陽子と電子および反ニュートリノに崩壊します。これが、原子核内でおきて中性子が1個減り陽子が1個増える。質量数は変りませんが中性子と陽子の比は改善されます。これをベータマイナス・β-崩壊といいます。もう一つの核子、陽子が中性子に変る反応がありベータプラス・β+崩壊といいます。β+崩壊は少数なので、ただβ崩壊と言うとβ-崩壊を指します。

1367849340.jpg


放出エネルギーは電子と反ニュートリノの運動エネルギーになります。反ニュートリノは反中性微子ともいい、質量は電子の千分の1よりも小さいので万有引力作用もほとんど無く、電荷もないので物質との相互作用は殆どありません。これを被爆しても通過するだけで影響ゼロ。これに対して高速で飛ぶエネルギーの高い電子は、影響します。それで、β-崩壊で発生する高速の電子をβ線と名づけ被爆では重視します。

1367851158.jpg

セシウム137は94.7%の確率で0.512MeV(メガ・エレクトロンボルト、100万電子ボルト)のβ線を出します。生体を作る物質の化学的結合は数eVですから、0.512MeV=51.2万eVなら数万の化学的結合を壊す力があります。β線は電子なので電気的力でも相互作用します。例えば、化学結合を仲介している電子に直接衝突しなくても⊖と⊖の電気的斥力で弾き飛ばす(電離)。反作用でβ線はエネルギーを少し失いますが、このエネルギーを受け取り弾き飛ばされた電子が新たな電子線、ミニβ線ともいえるデルタδ線になります。デルタδ線も電離を起こします。

原子核はプラスに電気を帯びているのでβ線やデルタδ線は引き寄せられます。速度が大きいのでエネルギーをX線(弱いγ線)で放出し曲がりながら通り過ぎます。このようにβ線の飛跡はくねくねと曲がったものになります。皮膚から入っても皮下2~3mm.程度をぐるぐる回って電離をおこしエネルギーを失います。環境中には大気などがありますから、それらとも相互作用を行いエネルギーを失えば、危険度はおちます。従って、距離をおくこと、間にβ線と相互作用するもの、金属などを置くことがβ線被爆防護の鉄則になります。

1367852130.jpg
クリックで拡大


セシウム137がβ-崩壊をすると陽子が一つ増え化学的にはバリウムに質量数は変りませんから安定核のバリウム137になります。全結合エネルギーではバリウム137よりセシウム137は1.174MeVの余分なエネルギーを持っています。セシウム137は5.4%の確率でその1.174MeVをβ線でだしバリウム137になり、94.7%は最大で0.512MeVのβ線で出来たバリウム137は0.6617MeVの余分なエネルギーをもっています。この余分なエネルギーをもった状態を励起状態。持たない状態を基底状態といいます。この励起バリウム137は半減期2.6分で余分なエネルギーをガンマ・γ線という電磁波で放出します。これをガンマ・γ崩壊といいます。

1367853709.jpg
クリックで拡大

γ線はエネルギーの高いつまり周波数の高い波長が短い電磁波です。電磁波の屈折、回折といった波の性質より粒子、光子の性質が強く出ます。建物や生体など物体に当ると原子核や電子に当る、接触しなければ、そのまま通過します。電気を帯びていないので、β線のように電気的な力で曲がることがなく遠くまで到達します。遮蔽するには高密度の重たい物質でその原子核や電子に当る、接触する確率を高くするしか方法がありません。原子核や電子に当る、接触すると回折で回り込んだりせずに直接的にエネルギーを与えます。エネルギーが減少したγ線は、波長が長く周波数が小さいγ線や電磁波に変ります。エネルギーを与えられた原子核は、余分なエネルギーを持った励起状態になりますし、電子は跳ね飛ばされてミニβ線というべきデルタδ線になります。(コンプトン錯乱)

1367854733.jpg

放出エネルギーを陽子と電子と反ニュートリノで山分けするので、出てくる電子のエネルギー量=β線の強さは、其々の核種に固有な上限値を持った連続分布(スペクトル)になります。反ニュートリノが持っていく分が減って連続に分布します。β線では核種の区別がつけにくい。しかしβ-崩壊に続く励起状態からのγ崩壊のγ線は核種固有のエネルギー値を示すので、区別がつけやすい。それで例えばセシウム137固有の0.6617MeVのγ線が105本でバックグラウンドが10なら、(105-10)÷94.7%で約100㏃のセシウム137があると割り出します。

1367854857.gif

1367854937.jpg
クリックで拡大


セシウム134は、確率99.9997%でβ-崩壊しバリウム134になります。全結合エネルギーでバリウム134より約2MeVの余分なエネルギーがあります。β-崩壊ではバリウム134の3種の励起状態のどれかになります。この3種の励起バリウム134がγ崩壊して、さらに別の2種の励起バリウム134になり、またγ崩壊して余計なエネルギーを持たない基底状態のバリウム134になります。崩壊経路で出るγ線は12種、1個のセシウム134の崩壊で約2.2個のγ線が出ます。確率97.62%の0.6047MeV、確率85.46%の0.7959MeVのγ線などで検出します。
1367855015.jpg
クリックで拡大
セシウム134の崩壊図


甲状腺被爆で問題になるヨウ素131は、β-崩壊を100%して陽子が一つ増えてキセノン131(安定核)になります。全結合エネルギーで約1MeVのエネルギーが余分です。β-崩壊では7種の励起状態のキセノン131になり、別の励起状態を経るか、直接にγ崩壊で基底状態のキセノン131になります。崩壊経路で出るγ線は20種、確率81.5%の0.3645MeV、確率7.16%の0.637MeVのγ線で検出します。

1367855487.jpg
クリックで拡大

海洋汚染で問題になるストロンチウム90は100%の確率でβ-崩壊しイットリウム90、イットリウム90は確率99.88%で最大で2.28MeVのベータ線を出しジルコニウム90(安定核)に確率0.02%で励起状態のジルコニウム90になりγ崩壊します。0.02%ですから固有ガンマ線の直接測定による分析は事実上不可能。それでストロンチウム90は、試料から一ヶ月ほどかけて化学的に分離してからβ線を測定します。そのため、直ぐには汚染量などがわかりません。 

1367856082.jpg

ベータ・プラスβ+崩壊と太陽、PET検査に 続く


細野・環境大臣、福島県の警戒区域から放射能で汚染された産廃を全国へ拡散・埋め立て廃棄するよう法改正を目論む [放射能検査、空間、全般]

放射能で汚染された福島県のゴミ(廃棄物)の処理は、話題にされませんでした。政府は福島県内で処理するといい続けました。新築マンションを高放射線にした汚染砕石は、福島第1原発から約20キロ、計画的避難区域だが警戒区域にごく近い採石場で採掘されたものでした。こうしたものも含め、高い汚染のものは福島県内で処理「放射性廃棄物は集中管理」の原則にしたがって処理されると考えられ、説明されてきました。宮城県や岩手県の被災瓦礫は、汚染がない、低いから全国各地で処理をお願いした、福島県内の汚染の高いものは、福島県内で処理すると政府は説明していました。
1333978400.jpg

1333978440.jpg

4月3日にこっそりと
ところが、4月3日に細野大臣率いる環境省は、ゴミ(廃棄物)のうち事業系ごみ(産廃)は事実上全国で処理する、つまり放射能を全国にばら撒く方針を明らかにしました。産廃は、各地で山野や耕作放棄地への不法投棄、それによる水源などの汚染をひきおこしています。東電フクイチ核事故の放射能を全国に、放射能被曝を全国民にというべき方針です。

 この方針は、「平成23年12月26日の原子力災害対策本部決定に基づき、警戒区域・計画的避難区域(以下「警戒区域等」という。)の避難指示が見直される」ことから、」出されたものです。形式的には、放射性物質汚染対処特措法の施行規則改正であり、行政手続法に基づきパブリックコメントの手続を踏まなければなりません。それで4/3~4/9と1週間でコメント募集しています。行政手続法では「意見提出期間は、同項の公示の日から起算して三十日以上でなければならない。」(第39条第3項)30日未満なら「案の公示の際その理由を明らかにしなければならない。」(第40条)。昨年の12月には規則改正が必要ならわかっていますから、放射性廃棄物の処理行政が場当たり的な泥縄で行われているのです。

昨年3月16日、東電フクイチの爆発などによる放射能放出に備え東電フクイチから半径20kmを警戒区域を設定し4月11日に高濃度に汚染された飯館村などを計画的避難区域にしました。この区域またはこれらの対象区域であった地域などを放射性廃棄物対策を行う「汚染廃棄物対策地域」としてきました。先ほどの汚染砕石が示すように、この地域で野外にあったものは高濃度に放射能汚染されています。山などから高濃度に汚染されたチリが移動してくるので、これからも汚染が続きます。国は、これらの地域で、住民帰還を勧めています。それで、出るゴミ(廃棄物)は当初は高濃度に汚染されているだろうし、その後も放射性のチリなどで汚染されているだろうと見込まれます。

 国は、この地域の放射能汚染された、されるだろうゴミを当初「対策地域内の廃棄物はすべて国が処理する」としていました。それを今回次のようにしました。
1.地震津波による災害廃棄物(放射能汚染あり)・・本来は市町村に処理責任ですが、市町村では対応出来ないので、県や国に委託され、現時点でこれは広域処理対象外です。
2.除染瓦礫(高濃度汚染)・・この地域では国の直轄で除染工事が行われ、ガレキがでます。これは中間貯蔵施設でH27から貯蔵され、30年後に「他県で」処理される計画です。
帰還した住民が生活すると当然、3.一般廃棄物(結果として汚染)が出ます。この一般廃棄物は市町村が処理しますが焼却で濃縮されます。この高濃度焼却灰の処理は、国か市町村がするのか不明です。

生活の糧が必要なので何らかの事業を行います。商店も再開、農業や町工場等の製造業を再開させるでしょう。その事業からゴミが出ます。書類の紙ゴミやコンビニの前のごみ箱のごみなど家庭から出るのと同じ種類の事業系一般ごみ。農業を再開すれば、作物以外にも籾殻やし尿等が出ます。作物も出荷停止になればゴミです。こうした廃材などの事業系産廃が発生します。

環境省は「事業活動に伴い生ずる廃棄物を対策地域内廃棄物として国が処理を行った場合、汚染廃棄物対策地域外の事業者との競争上の不公平が生ずることが考えられます。このため、このような不公平が生ずることのないよう・・対策地域内廃棄物から除外し、当該廃棄物を排出した事業者が、事業系一般廃棄物又は産業廃棄物として、(国・東電が処理経費を負担しないで事業者)自ら処理を行うこととする。」つまり出事業者自身で処理するか処理業者への委託して、自費で処分しなさいとしました。

1333978970.jpg


福島以外で混ぜて薄めればOK

商店や農家などに放射能汚染されてるだろうゴミを処理する能力はありません。3.11前は放射能の核種毎に放射性廃棄物は厳重管理されていましたから、普通の産廃業者には適正処理のノウハウはありません。これまでも、事業系のゴミ、特に産廃は広域処理で、全国で処理されてきました。特措法の制定で100Bq/kg以下なら廃棄できます。ですから他の地域へ運び、汚染されていない、少ない産廃と混ぜて濃度を薄めれば合法的に廃棄できます。そして産廃は人目につかない山野に不法投棄が多い。耕作放棄地に野積にされ、業者は”偽装”倒産も多い。

1333980138.jpg

福島県は、提案を受けて稲のもみ殻を使って農業用水路の水から放射性セシウムを取り除く実証試験を行いました。放射性セシウムを水稲が吸収する量は、土壌からよりも水からの方が多いとされており、身近にあるもみ殻で水の除染に活用できれば、助かります。放射性物質が検出されなかったもみ殻を、ごみなどが混入しないよう木綿袋で包んでから、市販の洗濯ネットに入れ、流されないようにブロックなどの重しを載せて水に漬けます。

1333980351.jpg

 結果は、水路を流れる水をかき混ぜて濁らせ、放射性セシウム濃度を高くし5万2500㏃/kg(㍑)。その高濃度汚染水が、もみ殻を通過すると同3590㏃と93%低減。10㏃以下の水ではほぼ100%除去しました。試験で使ったもみ殻のセシウム濃度は、18日間で1万7337㏃/kg。この籾殻を焼却すれば、かさが約10分の一に減らせます。

1333980416.jpg

「放射性廃棄物は集中管理」原則は何処へ?

福島県や他の県の農家がこの方法で農業用水を除染すれば、田や稲(米)、流れ下って海を汚染する放射能が減らせます。そして放射能を集め濃縮した籾殻産廃が大量に出ます。飯館村などの「汚染廃棄物対策地域」のものはもちろん、それ以外の二本松市などの地域で出た籾殻も、他県ででたものも集めて、放射能が外へ環境中に再び出ないように集中管理するのが上策です。放射性廃棄物管理の原則です。

国、細野大臣率いる環境省は、この放射能を集め濃縮した籾殻は広域処理が可能な産廃であるから、東電や国の負担ではなく被災農家の負担で、全国に埋め立てようという方針を示しています。東電フクイチ核事故による放射能・放射線被曝から国民を守ることより、排出者負担の公平性という名目での国・東電の負担軽減という銭勘定が、現在の国・政府では優先しているのです。

続きを読む


前の5件 | - 放射能検査、空間、全般 ブログトップ