SSブログ

放射線の正体かな?-1 ウラン236を糸口に② [放射能検査、空間、全般]

放射線は元素の原子核が不安定核で壊れる時に出ます。壊れ方は、次々と別の不安定核に変身して安定核になるまで壊れ続ける崩壊と分裂してしまう核分裂です。核分裂でできた核種が安定核であれば、そこで停止しますが、大概は別の不安定核なので崩壊がはじまります。

核分裂生成物に放射能の不安定核が多い訳

原子核でのプラスの電荷の陽子同士の電気的反発力と中間子で発生する核子同士を引きつける核力の攻めぎ合いで、原子核の安定性が決まります。原子核内の核子の平均的距離は約2fm(フェムト・メーター、10兆分の1cm)で、この距離では引力の核力が電気的反発力の約10倍あります。

私たちの環境を作っている安定核では、陽子が一つの水素H、陽子1個に中性子1個が捕獲され2.2MeVのγ線が放出されてできる重水素D、陽子2個に中性子2個のヘリウム、陽子3個に中性子3個のリチウムと陽子と中性子が同じ1対1です。

陽子同士の電気的反発力は、クーロンの法則から原子核では近似的に陽子の個数(原子番号)の二乗になります。核力は核子同士のパイ中間子のやり取りで発生する力ですから、陽子と中性子の数の合計(質量数)に比例します。

原子核内の核子の平均的距離は約2fm(フェムト・メーター、10兆分の1cm)で、この距離では引力の核力が電気的反発力の約10倍あります。陽子数の増加での反発力は二乗で増えるのに、核力は足し算で増えるので、約2fmで安定が保てるのは、陽子数で20(カルシウム)中性子数で20までです。

陽子数21(スカンジウム)になると電気的反発力は441倍になりますが、陽子と中性子が同数だとすると核力は10×42=420で不足します。中性子がもう3個増えて中性子数24でスカンジウムの安定核を作ります。核力の不足を電気的反発力を増やさない核子、つまり中性子を多くすることで解消します。この結果、陽子数(原子番号)が多くなると中性子数が相対的により多くなります。

1367251678.jpg
クリックで拡大

ウラン235は陽子が92ヶ中性子が143ヶです。そこに中性子が照射され1個吸収されて二つに核分裂すると、陽子が45ヶ前後で中性子が70前後の質量数は115前後の原子核(核分裂生成物)が2つできると予想できます。陽子が40~50ヶの安定核では、中性子数は50~62ヶですから、中性子が過剰の核と考えられます

実際には質量数がほぼ100と130程度の2つの原子核(核分裂生成物)と複数の中性子(即発中性子)が放出されることが多いのです。分かっている約1000種の核分裂生成物で安定核は60。陽子数が同じ安定核に較べて、中性子が5、6ヶ多い不安定核が多いのです。この過剰な中性子を減らす方向の変化が起きます。

1367251916.jpg
クリックで拡大

①過剰な中性子を捨てる・・遅発中性子

核子、(中性子と陽子)は、パイ中間子を交換し合う核力から陽子同士の電気的反発力を差し引いた力で結合しています。この力を打ち破るエネルギーが中性子を捨てるには必要です。

これを原子核から中性子を1つ取り出すのに必要な中性子分離エネルギーといいます。同様に陽子分離エネルギーがあります。この二つは核種ごとで違います。セシウム134の中性子分離エネルギーは7.04MeV(メガ・100万電子ボルト)、陽子分離エネルギーは6.65MeV。セシウム137の中性子分離エネルギーは8.52MeV、陽子分離エネルギーは7.35MeV。

この分離エネルギーは中性子や陽子を原子核に束縛し結合しているエネルギーとも言えます。原子核の外を飛んでいる束縛されていない核子は、原子核内の核子より束縛・結合エネルギー分の多くのエネルギーを持っている。原子核・元素同士でも束縛・結合エネルギーが100MeVの元素は、150MeVの元素より50MeV多くエネルギーを持っていると言えます。

それで、束縛されていない陽子、中性子の質量を基にして算出される陽子がZヶ、中性子がNヶの原子核の質量(Z×非束縛の陽子の質量とN×非束縛の中性子の質量の合計)よりも、その原子核の実測質量が小さいという質量欠損が顕われます。エネルギーは質量×光速×光速と等しいという有名なアインシュタインの公式から束縛・結合エネルギー分だけ非束縛の陽子と中性子の質量が大きいからです。(燃焼など化学反応では、反応の前後のエネルギー差による質量の変化が100億分の1程度なので観測できず、発見できなかった。)

1367253757.jpg


元素・安定原子核全体での束縛・結合エネルギーを測り核子平均値をだすと陽子が26ヶ中性子が30ヶの鉄56の8.8 MeVなど鉄が最大です。陽子1ヶの水素Hは束縛・結合されていませんからゼロ、陽子1ヶで中性子1ヶの重水素は原子核全体では2.2MeVで核子平均では1.1MeV、そこから26ヶの鉄の約8.8 MeVまで急激に増え、陽子92ヶのウラン235の7.8MeV(原子核全体では7.8×235=1833)までダラダラと減っていきます。

1367253935.jpg
ハイゼンベルグの谷

大きな図はここから 
仁科加速器研究センターの核図表


原子核の外を飛んでいる束縛されていない核子は、原子核内の核子より束縛・結合エネルギー分の多くのエネルギーを持っています。それではウラン235の約7.8MeVの核子は、約8.8 MeVの鉄の核子よりも約1MeV多くエネルギーを持っています。ウラン235の約7.8MeVの核子は、核分裂生成物の核子数(質量数)がほぼ100と130程度の約8.6~8.4MeVの核子より多くのエネルギーを持っています。原子核全体では核分裂生成物の二つの原子核より、約200MeV多く持っています。

核分裂の際に、この余剰なエネルギーは高速で中性子を出したり、核分裂生成物の運動エネルギー(熱)で放出されます。(それでお湯を沸かす装置が原子炉)核分裂生成物の2つの原子核と即発中性子の合計質量は、元のウランよりも1000分の1ほど軽くなります。(鉄より陽子数の少ない軽い元素、例えば水素は分裂ではなく融合でエネルギーが出ます。これが核融合)

1367255046.jpg
クリックで拡大

核分裂生成物の多くは、次に述べるベータ・β崩壊して非常にエネルギー状態が高い励起状態の原子核に変ります。励起状態のエネルギーレベルよりも、その原子核の中性子分離エネルギーが低い場合があり、その場合に中性子が核分裂時より遅い速度で放出=中性子線がでます。この核分裂生成物は半減期が1000秒以内の約270種類が分かっています。
中性子線は、生体・人体に多大な影響、被害をもたらします。速度にもよりますが他の放射線の5~20倍。ただこの核分裂生成物の大半は半減期が60秒以内ですから、原発事故で環境放出されても直ぐに崩壊して消失します。 参照

1367269618.jpg
クリックで拡大

この中性子は核分裂後に出るので遅発中性子といわれ量的にはウラン235の核分裂での即発中性子の152分の1程度です。量的には少ないですが、原子炉のコントロールには極めて重要です。原子力爆弾は極めて短時間(1000万分の1秒以下)に連鎖核分裂を起こさせますので遅発中性子は何の役にも立ちません。原子炉では長時間定常的に連鎖核分裂を起こさせますから、遅発中性子は核分裂を起こします。遅発中性子数の制御がポイントになります。
過剰な中性子を減らす方向の変化、その②は「中性子を陽子に変える」  続く


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0