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原発事故は市民の生命、身体、安全な生活、財産が脅かされ、さらには家族、地域社会を破壊。 函館市の認識 大間原発訴訟訴状抜き書き [被曝管理・将来世代]

函館市の大間原発訴訟の情報公開ページ
http://www.city.hakodate.hokkaido.jp/docs/2014031100330/

 福島第一原発の事故
・福島第一原発の事故が原因で、周辺自治体の市域は放射能によって汚染され、町民の散逸による家族の離散が生じ、公共機関も機能できなくなり、周辺自治体の崩壊が生じている。 
以上 第10章-第2-6
fukushima1_town.jpg
 
 ・放射性物質が多く降り注いだ地区は浪江町のように、帰還困難な地区となり、長期にわたって住民は元の居住地に戻ることができず、その地域に住んでいた住民は仕事と住居を奪われるだろう。自治体は主要な機能を停止し、支援のための情報の発信と帰還の準備を続けるしかないこととなるだろう。

仮に放射性物質がそれほど降り注がなくとも、南相馬市の小高区のように、一定期間の避難を余儀なくされた地域は生活インフラが破壊され、人々が帰還して通常の市民生活に戻ることには深刻な困難が生ずるだろう。自治体は除染や町の機能の回復のため、長い闘いを強いられることとなるだろう。

原発事故は生きている町そのものを破壊してしまう。
 以上 第5章
 
 
 
過酷事故に至らなくても函館市の被害は甚大

1 放射性物質による被害

・大間原発において事故が発生すれば、そこで放出されるヨウ素131などの放射性物質は函館市周辺に生息するコンブ等の海草類に蓄積される。万が一日本全国に出荷されることになれば、函館のみならず日本全国に被害をもたらす可能性がある。

・さらに、放射性物質は、海藻類を主食とするウニ、アワビ等のほかプランクトンに取り込まれ、食物連鎖を通じて拡散し、その被害は数十年、数百年に及ぶ。

こうした被害は農産物においても同様であり、被害は一定期間の「風評被害」に留まらず、長期間に亘って函館市の水産業、農業に壊滅的な被害を与え続けることになる。

2 風評被害

・函館の産業は観光に支えられており、他の原発立地地域とはその規模も異なるのであって、さらに、函館市周辺海域は、豊富な海の幸に恵まれ、道南の海産物は観光客を引きつける一つの要素となっている。

・仮に、大間原発でトラブルが発生し、一定期間多くの観光客を失うことになれば、函館市及びその周辺の地域経済全体に回復しがたいダメージを与えることになることは容易に予想できる。

・また、海産物、農産物は「放射能汚染」のおそれが疑われるだけで、需要は激減し、価格が暴落するという事態に常に追い込まれる。

・道南の水産業は地域経済の柱とも言える産業であり、その品質・ブランド力に支えられているにもかかわらず、原発の事故による風評被害により打撃をうければ、その売上高は激減し、漁業経営体に与える被害の深刻さは計り知れないものとなる。農業においても、同様である。

・以上のとおり、道南の産業構造は、観光や漁業・農業に支えられており、風評被害に極めて弱い産業体質を持っているという特性があることを銘記すべきである。
 
以上 第10章-第3 
おおまー函館20140313145319.jpg 
大間から函館を望む 
 

 大間原発で過酷事故が発生した場合の函館市の被害

原発においては炉心溶融などの過酷事故が万が一にもあってはならないものであるが、福島第一原発の事故をみても明らかなように、過酷事故が発生しないと言う保証は全くない。とりわけ、世界で初めてのフルMOX燃料による実験的とも言うべき大間原発の操業は、函館市の住民にとって、常に「死の恐怖」を抱えての日常生活を余儀なくされることになる。

1 大間原発が抱える「死の灰」とその毒性の強さ

・100万キロワットの原発は、年間1000キログラムのウランを燃やすとされ、計算上は年間広島型原爆の1250倍の死の灰を発生させることになる。
・これを大間原発についてみると、同原発は138.3万キロワットであるから、同様に計算上は1年間で同原爆の1700倍の死の灰を抱えることになる。
・一方、計算上プルトニウムの毒性はウラン235の4万倍にも当たることになり、ウランとプルトニウムとの混合燃料を基本とする大間原発が抱える「死の灰」の毒性が如何に強いものであるかを先ず知る必要がある。

2 チェルノブイリ原発事故及び福島第一原発事故との比較

・仮に、大間原発においてチェルノブイリ原発事故級又は福島第一原発事故級の重大事故が発生したと仮定した場合、地元大間町・下北地域はもちろんのこと、毎秒10メートルの風速で、約30分前後に死の灰が道南地域に到達する危険がある。
その場合、27万余の函館市は短時間に壊滅的な被害に遭い、廃墟と化すであろうことは言うまでもない。

3 小出裕章氏による大間原発重大事故発生時のシミュレーション
・京都大学原子炉実験所研究員小出裕章氏が行った大間原発の事故の想定では、大間原発から函館市方向へ風速2メートルの風が吹き、約4時間後に放射能の雲が約30キロメートル先の函館市に到達した場合、函館市民の約8000人が急性死に至り、100%の人間が何らかの癌により死亡するとされた。

・風向きによって青森市はもちろんのこと、札幌市、仙台市、東京都、大阪府などの大都市圏にも「死の灰」が襲うとされ、この場合は上記を遥かに超えるガン死亡者が出ることになり、大間原発の重大事故による被害の大きさは、既設の原発の比ではないことを明らかにしている。
 
以上 第10章-第2
 
・大間原発で過酷事故が発生した場合、函館市の市域が汚染され、住民の土地は奪われることとなる。そして、函館市民の離散が生じ、公共機関も機能を果たすことができなくなり、函館市の有形固定資産は、無価値となる。函館市の地方自治体としての機能は、著しく損なわれることとなり、函館市は壊滅状態となる。
以上 第10章-第2-6
 
・フルMOXを採用する大間原発に事故が起きた場合には、炉心に大量のプルトニウムを内蔵することから、福島第一原発事故と比較にならないほど深刻に、函館市民の生命、身体、安全な生活、財産が脅かされ、さらには家族、地域社会(近隣住民同士のコミュニティのほかに、生産者と消費者との間の食の安全に裏付けられたコミュニティ)が破壊される。そして、自治体としての機能を喪失させられるなど、途方もなく甚大な被害を生ずることは明らかである。
 以上 第4章
 
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自治体の役割 
函館市が自治体の生存を賭けて、大間原発の建設差し止めを求めることは住民の生命と生活を守ることを任務とする地方自治体として当然のことであり、また正当な要求である。
以上 第5章 

このように、大間原発で過酷事故が発生した場合、函館市の地方自治体としての機能は、著しく損なわれることとなり、函館市は壊滅状態となる。大間原発の設置許可は無効であり、国は電源開発に対し、(函館市が同意するまでの間)大間原発の建設の停止を命じなければならない。また、原告函館市は被告電源開発に対して自らの所有権と自治体としての存立を守り、函館市民の生命と安全を守るため、大間原発の建設停止の判決を求めるものである。
以上 第11章 結論
 
・大間原発の建設工事を停止してほしいという声は、函館市だけでなく北海道南部の自治体と住民の総意となっているといえる。本件訴訟はこのような総意に基づいて提起されたものであり、裁判所は地方自治体と地域住民総体の意思を十分認識し、これを尊重しつつ慎重に審理に臨むべきである。
以上  第1章
 
 

私が将来世代の被曝にこだわる理由・・新潟水俣病と福島県の現状 [被曝管理・将来世代]

私の住む新潟には水俣病があります。発見当初、胎児性水俣病に対する対策を行政が行いました。患者発生地区の妊娠可能な78人の方の毛髪水銀検査と妊娠指導です。妊娠中の方には妊娠中絶、ほかの方への約2年間の妊娠規制などです。29歳の方に不妊手術が施されていた例が、裁判で明らかになっています。
 当時は阿賀野川河口付近の集落に発生が限られていました。検査など公的措置はこれら集落に限られます。その後、県が中下流域の約6万9千人を対象に調査が行われています。この人たちには行政の妊娠指導は行われていません。この指導を、当時小学生であった私でさえNHKや新聞などの報道で知っていたのですから、この人たちが知らないはずはありません。現在、公式には胎児性は1人だけです。昭和50年代、川沿いの地蔵堂でみた多くの水子供養の人形が忘れられません。
 また原田正純医師は、「胎芽期(妊娠初期)に汚染を受ければ流産・死産の可能性が高い」と指摘しています。
 
 私は、この生まれることができなかった人達が昭和電工の水銀で最も加害された人々だと考えています。
 
 日本政府は、東電核災害で放出された放射能での外部被曝が20mSv/年未満の地域への帰還、定住政策をとっています。チェルノブイリ事故では5mSv/年以上の地域は強制移住です。その無人化地帯の生態系で、鳥類、例えばツバメはその地域では生存率や出生率が低く自然増加率がマイナスです。他所から途切れなく渡ってやってくる移住者たちで個体数を維持していると報告されてます。ヒト・ホモサピエンスで自然増加率がマイナスになるかは、種が違うので不明です。
 ただウクライナでは、子供が病弱化していると報告されています。これは、ツバメのように野生状態なら生存率の低下になります。20mSv/年未満の被曝線量では、影響は個々人では確率的におきます。生存率や出生率が低くなっていれば、集団、地域社会でみれば影響が見えてくる性質の問題です。仮に検出されれば、外部被曝が20mSv/年未満の地域への帰還、定住政策がおこしたものであり、それで生まれることができなかった人達が東電核災害で最も加害された人々だと考えます。
 
そして福島県では下表のようになっています。
 
出産の減少 8601⇒6758は気になる。
 また、妊娠中の方が116⇒39と激減している。これは① 妊娠を控えた結果なのか、②受精できない、着床までの胚芽期での異常で着床できない、着床から自覚する2、3か月までに消失したのか??この報告の次回妊娠の項では、妊娠を希望する割合が58%から52.7%に減っている。①の妊娠を控えている影響があるのは間違いない。それだけで約75%の減少を説明できるだろうか?
 
 


将来世代の被曝被害は、放射能汚染地の人口的アリ地獄・墓場効果 加筆5/14 [被曝管理・将来世代]

東電核災害の後、その損害の性質特徴を加藤尚武氏(カトウヒサタケ、環境倫理、生命倫理など哲学者、原子力委員会専門委員を歴任)は、2011年10月刊行の「災害論 安全性工学への疑問」で次のように記している。

=どうしてそのような過失責任制と無過失責任制という区別が必要なのか。過失責任制は、行為が反復されることを想定している。たとえば、自動車のスピード違反はあとを絶たないので、サンクション(罰金、刑罰)となる罰金額を増やすことで、スピード違反の件数を減らすようにする。近代の法体系では、違法行為に対してサンクションを科すことで、違法行為の発生件数を一定の確率以下にしようとする。違法行為を根絶しようとすれば、個人に対する干渉(自由の侵害)を避けられなくなるが、警察官の数を限りなく増やすことはできないなどの理由で、犯罪を一定限度以下に保つという原則が維持されている。
 自動車事故による交通事故の場合は、「異常な危険」ではなく、通常の過失責任として扱われてきた。それは、個々の災害の規模がタンカーや原子炉の事故に比べて小さく、個人にとっては立ち直りが不可能になるような不幸な事故が起こっても、社会全体としては、事故予防のためのきめ細かい努力を積み重ねることによって、立ち直りが可能な限度内に抑えられてきたからである。
 大型タンカーの事故、油田の事故、原子力発電所の事故は、偶発的に発生する多数の事例をサンクション等によって一定の水準以下に抑えていくという政策では対処できない。
 一回の事故の実質的な被害(人命、個人の財産、自然環境の被害)がたとえ法的に賠償を受けたとしても、永続的な影響が残り、人間社会はそういう事故の反復に耐えられない。ランダムに発生する多数の犯罪や事故に対し、サンクションによってその被害を一定以下に保つという確率論的安全確保政策の有効範囲をこれらの大事故は超えているからである。=p.102~103
 =「異常な危険」(abnormal danger)には無過失責任を適用するという法律論は、過度の損失はそれを反復すると人間の生活が成り立たなくなるので、「事実上リスク・ゼロ」にしなさいという含意である。原子力発電所の事故は、当然、無過失責任の適用を受ける。=

参照・・想定外はなぜ起きた 原発事故を哲学で斬る フジテレビ2012年1月13日http://www.bsfuji.tv/primenews/text/txt120113.html

このように加藤氏は損害を二つに大きく分ける。一つは 「個人にとっては立ち直りが不可能になるような不幸な事故が起こっても、社会全体としては、事故予防のためのきめ細かい努力を積み重ねることによって、立ち直りが可能な限度内に抑えられ」る損害、社会全体では受容できる損害。もう一つは「一回の事故の実質的な被害(人命、個人の財産、自然環境の被害)がたとえ法的に賠償を受けたとしても、永続的な影響が残り、人間社会はそういう事故の反復に耐えられない」、社会全体でも受容できない損害、異常な危険(abnormal danger)である。

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この二つの発生確率・頻度では、受容できる損害は「行為が反復される」が「事故予防のためのきめ細かい努力を積み重ね」ることで社会全体で受容できる損害になる。左図の第一領域から第3領域へ移行できる損害です。
 被害の程度の大きい第2領域と第4領域。人為行為、原発運転や大型タンカー運行、油田操業などは事故発生頻度と被害程度小さくする、「事実上リスク・ゼロ」にしなさいとする無過失責任を適用するという法的な規制で社会的には管理すると加藤氏は説いている。

今回の東北地方太平洋沖地震でこの地域は地震津波で人命、個人の財産、自然環境に大きな被害を受けた。この東日本大震災などの天災が第2領域にある地域では社会が永続的に存在できない。 
 この地域では歴史的に869年(貞観11年)の貞観地震、1611年(慶長16年)の慶長三陸地震、1896年(明治29年)の明治三陸地震などで、壊滅的被害を受けている。しかし、加藤氏がいう永続的影響が社会に残ったであろうか。その後に、被害を受けた地域社会は復旧復興しています。
image004.jpg 慶長三陸地震後に仙台藩(伊達政宗)は、津波が及んだ地域を外して街道や宿場を整備しています。いまでいう減災を行っています。
 岩手県釜石市唐丹(とうに)町本郷は、明治三陸津波(1896)当時は166戸人口873人の漁村でしたが「出漁者數十名を除く外僅かに4人生き殘れりと云ふ。」この104人たちの一部は、高台に移り住んだのです。津波の襲来後、3、4年にわたりイカの大漁が続き、生き残った人、他所から転入した人は、不便な高台ではなくて元屋敷に居を構え地域社会を再建。1913年には戸数75戸、人口378人になっています。この年に近隣の牧場で行っていた野焼きの火が延焼。唐丹村は集落の9割を焼失、本郷でも70戸の家屋が焼失した。焼死者はなし。1933年に明治三陸津波で全滅した地に102戸、613人の集落になっています。戸当たりの6人を超えています。この1933年に昭和8年の三陸大津波があります。それで明治三陸津波と同じく家屋は1戸を残して全滅、人は126人亡くなられましたが80%は無事でした。この約500人は高台、明治の時に移転したところに国や岩手県の援助で全戸移転します。その後1969、1980年に防波堤が築かれ、海岸部に転入者、分家の人たちが約50戸を建てます。今回の東日本大震災では、この海岸部50戸は津波にのみ込まれますが、住民たちは高台に避難し、犠牲者は漁船を沖に出そうとして津波に襲われた1人だけでした。

 このように津波では、その地域社会が明治三陸津波のように壊滅的打撃を受けます。明治三陸津波では人も家財もやられますが、転入者や新たに子が生まれ育ち本郷の地域社会は復旧しています。昭和の三陸津波では、家財は明治と同じく全滅ですが、人は明治の経験で逃げて、生死の率が逆転しています。今回は、家財は海岸部は全滅、人は1人となって、減災されています。

 このように津波では、その地域社会が明治三陸津波のように壊滅的打撃を受けます。明治三陸津波では人も家財もやられますが、転入者や新たに子が生まれ育ち本郷の地域社会は復旧しています。昭和の三陸津波では、家財は明治と同じく全滅ですが、人は明治の経験で逃げて、生死の率が逆転しています。今回は、家財は海岸部は全滅、人は1人となって、減災されています。

 津波を受けて、明治のように壊滅打撃を受けても、転入ができる、新たに子が次世代を生み育てられる環境であれば回復します。居住地域に家屋を超える津波を受ける点は同じでも、減災はできてます。地震がおきたら避難するというソフト面での減災で昭和の津波では人的損害が大幅に減っています。今回は、昭和の津波を契機に取られた高台居住というハード面の減災対策も功を奏して、人的家財的損害が明治三陸津波に比べ大幅に減少しています。

加藤氏は、異常な危険(abnormal danger)の特徴の一つに「永続的な影響」が残ることを挙げています。タンカーや油田の事故で原油や重油が流した海域では、流出油によって生態系が回復しない永続的影響が顕れています。その汚染地域
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では、野生生物が他所から流入し、子孫、次世代を生み育つ環境が流出油で損なわれているのです。
参照・・タンカー事故
メキシコ湾油田事故 
 
 津波で大損害を受けても、転入者や新たに子が生まれ育つ環境であれば、回復します。釜石市唐丹町本郷の地域社会は明治三陸津波でも復旧しています。左の写真は、2011年4月1日にとられました。海岸部はご覧のように家財は壊滅状態ですが、人は生き残っています。津波被害だけなら高台にのこる地域社会を起点にして、その力や他所の社会からの援助で回復可能です。
 釜石市にも東電核災害の放射能が降下しています。 釜石市WEB それによる被曝量は、避難など特別な減災措置をとる基準量に達していませんから、これまで通り暮らしています。仮に、降下量が多くて避難しなけばならい放射線量になったら、津波では無事な高台からも逃げ出さなくては。降下放射能の出す放射線で被曝する次世代での影響で人口の自然増加率がマイナスで、その本郷の地域社会の人口を減るならば、本郷の地域社会は先細りし、いずれ消滅。本郷の再建はあり得ません。増加率がゼロ付近なら停滞です。
 
降下放射能での被曝により次世代の出生率低下や生存率低下がおきて人口の自然増加率が低下、マイナスやゼロ付近になることが、核災害の人間での「永続的影響」の一つと考えられます。無過失責任を適用する「異常な危険」(abnormal danger)に、核災害が位置づけられる根拠と考えます。
 
 生き物の個体数、人口の変動は、その集団・社会への転入・定住化人数と出生人数による増加と、転出人数と死亡人数による減少のバランスで変動します。
 チェルノブイリ事故で人が住まなくなった地域では、鳥類、例えばツバメはその地域では生存率や出生率が低く自然増加率がマイナのです。他所から途切れなく渡ってやってくる移住者たちで個体数を維持しています。 
参照・・チェルノブイリのいま – 死の森か、エデンの園か
  これは、江戸時代中後期の大阪、京都や江戸、同時期のロンドンなどで検出されている”都市墓場効果””都市蟻地獄効果”(参照)と同類の効果です。密集しての居住が感染症のパンデミックや飢饉の起こり易さを高めています。それに加えて独身率の高さ、居住の不安定性などが成人死亡率や乳児死亡率を上げ、出生率を下げ、大都市では死亡率が出生率を上回り自然増加率は負になる。減る分を周囲の農村部からの食い詰め者の流入で穴埋めしています。そして徳川幕府の人口調査から「享保6年(1721)から弘化3年(1846)全体から災害年(享保17・18、天明3・6、天保7・8)を引いた平常年では、ほとんどの国で人口は増大しているが、江戸を中心とする関東地方、京都・大坂を含む近畿地方で減少している」。
 
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 原発からの放射能で汚染された地域で人口的に”アリ地獄効果”がおきると、その当該地域社会の衰退、消滅だけでなくより広い地域社会でも人口的には衰退する可能性があります。これは、当該地域を無住化することで予防できます。その当該地域の集落など地域社会を人為的に消滅し、以後の定住を禁止するのです。
 ツバメと違い人はその地域では生存率や出生率が低く、子供が産めない、育てられないという情報を得れば転入しようとしないでしょう。”アリ地獄”とわかっていて、近寄る人はいない。子供がなかなか生まれない、生まれても生存率が低いという状況下で、自然増加率がマイナスなら何れ消滅する。ゼロ付近では停滞します。地域社会を人為的に消滅させることは、それによって現在の構成員やその子孫を”アリ地獄”から脱出させることです。
 
消滅する当該地域の集落など地域社会を、他の地域で再現、移植できれば原状回復という意味で、被害が償われた言えます。しかし、当該地域の集落など地域社会には、その地域の自然に根差した暮らし、漁や農という生業、季節の移ろいでの情趣、祭りなど行事などの文化、その中で築かれる人間関係など、その地域固有のものがあり、他の地域で再現、移植は原状回復という意味では無理です。
 
賠償 
交通事故で人命が損なわれると賠償金が支払われます。それで亡くなった方が生き返るはずもなく原状回復の原資ではありません。賠償金には懲罰という意味も込められています。原発・核発電所事故では、原発からの放射能で汚染された地域で消滅させないと 人口的”アリ地獄”化してしまう地域社会が作り出されてしまいます。社会消滅への賠償は、懲罰金という意味合い、色あいを持ちます。
 


将来世代の被曝被害 全体像の試論 [被曝管理・将来世代]

 将来世代とは、まだ生まれ来ぬ子供らです。その時点、たとえば東電核災害発災時点で胎児でもなかった将来に生まれてくる世代です。私はこの将来世代での被曝影響は、東電核災害のような放射能の広域汚染被害の本質的特徴であると思います。

14-0505a.jpg 東電核災害では同時に大津波で東北太平洋沿岸地域が甚大な壊滅的被害を受けています。それは、沿岸地域の社会、コミュニティーでは壊滅と言ってもおかしくない被害を受けたところもあります。しかし、そうした地域に他の地域から人が移り住むなどして、再建できます。869年(貞観11年)の貞観地震、1611年(慶長16年)の慶長三陸地震、1896年(明治29年)の明治三陸地震で、壊滅的被害を受けた地域社会は、そうして再建されてきました。
 東電核災害の被災地域にも、津波でそうした壊滅的被害を受けた地域社会があります。そうした地域に他の地域から人が移り住むなどされるでしょうか?今も放射線量で立ち入り禁止になっている地域には?それは、立ち入り禁止などの社会的規制が解かれれば、社会が再建されるでしょうか?規制が解かれても、被曝する線量が核災害以前や他地域に比べ高い状態です。
 チェルノブイリ事故で人が住まなくなった地域に野生動物が多数生息して、楽園、エデンの園のようになっていると伝えられています。しかし、種によっては「魅惑の森などではなく、いわば放射能によるごきぶりホイホイのようなものであり、動物たちは入ったが最後、出てこないのだと。」ツバメの「生存率と出生率の低さを考えると、この個体数は途切れなくやってくる移住者たちによって支えられていた」 出典・・チェルノブイリのいま – 死の森か、エデンの園か
「人間と細胞がよく似たハタネズミでは遺伝子の突然変異が22世代目にまで受け継がれていることが確認された。遺伝子が変異を起こすとハタネズミの胎児は普通、生まれて来ないが、まれに生まれたネズミは体が弱い。ハタネズミの生存率は非常に低いが、ネズミは多産であるので多く死んでも子孫を残すことには問題がない」 出典・・チェルノブイリから9000日後 低線量被曝が遺伝子に与える影響 参照・・世代を超えて蓄積される放射線損傷:チェルノブイリ降下物に慢性的に曝露された小動物
 この現象が、人間、ホモ・サピエンスに起こるかは判りません。元々出生率が人間は低いので、ハタネズミに見られる長期的影響をそのまま人間に当てはめて考えることはできません。 ただ、はっきりしているのは、誰も自分の子供や子孫でそれを試そう、解明しようとはしない事です。ツバメのように他の地域から人が移り住んで再建、社会維持はできない。

ホモサピエンスは「知恵のある人」という意味です。将来世代の被曝影響は、その知恵ではどのように扱われているでしょう。

  放射能、放射線は我々の五感では感知できません。、専用の検知器を調え、その観測データから放射能の種類や量、被曝量を評価する知的組織、研究・専門家集団を社会的に準備する必要があります。そして、放射線被曝の長期的影響は確率的に起こります。同じ空間放射線量の場所にいても、健康障害を不幸にして受けてしまう人と、そうでない人がでます。低い線量環境では、影響を受けてしまう人は数少なく、多くの人は影響を受けずに「放射能の放射線の影響なんて本当にあるの?」と考えてしまいます。
 各個人に関して健康被害が実際に起こるかどうかはわからない。しかし、集団、社会全体では確実に健康障害が発生します。それで、被曝管理も集団的に行う公衆衛生的なアプローチが必要で有効です。その健康を害する人の数はその地域の線量に依存しますから、退避や一時的避難、長期的避難、移住、食物制限などの低減手段を、線量値を目安にトリガーに設定して行う手法になります。
 その健康を害する可能性のある集団に将来世代が含まれているでしょうか?特に長期的避難、移住で問題になります。移住などしなかった場合は、トリガー値以下の線量を被曝しながら、将来世代は生まれ、育まれるからです。現在の移住のトリガー値の設定方法、その思想を検討すると、将来世代は視野に入っていません。

 


被曝線量の年間1~20mSv引き上げと除染・帰宅計画 [被曝管理・将来世代]

国が8月26日に決定した放射能の除染方針では、「効果的な除染を実施し、推定年間被ばく線量が1mSv・ミリシーベルトに近づくことを目指します。」となっています。

年間1mSvミリシーベルトの被曝の健康影響について、原子力安全委員会は「線量限度、年間1mSv を生涯被ばくし続けた場合、及び、放射線業務従事者の線量限度、平均値として年間20mSv(5 年間で100mSv かつどの1 年間でも50mSv)であり、18 歳から65 歳まで被ばくし続けた場合では、ICRP1990 年勧告によれば、確率的影響に関して寄与生涯致死確率(放射線によって加算される確率)がそれぞれ0.4%及び3.6%と予測されます。これらの値は、今日の全死因に占めるがん死亡の割合31%と比べて十分に小さいといえます。
確定的影響に関しては、1 回の被ばくで現れる影響が対象となりますが、これらの線量限度は、知られている全ての確定的影響の現れる線量(例えばもっとも低い線量で現れる確定的影響としては、男性の一時的不妊の150mSv のしきい値が知られています。)に対しても十分に低いものです。」としています。


ガン死0.4%には様々な考えがあると思いますが、それ以上の影響を与えないように日本国民を護る義務と責任を日本国は負っています。我々国民は、0.4%までの影響を我慢する義務とそれ以上の影響を受けないように放射線被曝からの防護を国に求める権利があります。

 東電フクイチ核事故によって福島県、群馬県、栃木県、茨城県、千葉県、山形県、宮城県などの地域の多数の国民が、1mSv/年以上の外部被曝を強いられる状況になっています。食物などによる内部被曝は、規制の基準が暫定的にセシウムで5mSvなどで設定されて、これも線量限度1mSv/年が守られない、国民が十分に防護されない状況になっています。

 そこで国は基準を緩和する、国内の被曝線量の基準を検討する文部科学省の放射線審議会を使って”専門家”に「年間1~20mSv」を線量の目安にするという方針を出させようとしています。8月22日に文科省が諮問し、8月30日に4時間余り審議し、10月6日の午前に2時間余り事務局作成案の文面を審議、駆け足で答申されています。後は本決定の手続きだけ。 放射線審議会基本部会 第39回、第40回、第41回

除染・帰宅には引き上げが必要??

仮に20mSvなら被曝によって発ガン16%増え、癌による生涯致死確率が8%ふえ、総計で39%ガン死を我慢です。政府は除染などで1mSvに近づくことを目指すロードマップ・道筋の途中の目安線量が必要で、核事故被災地限定で「年間1~20mSv」を諮問したとしています。

除染方針などでは政府対策「本部が実施した試算によれば、・・2年を経過した時点における推定年間被ばく線量は、現時点での推定年間被ばく線量と比較して約40%減少します。
今後、住宅地などは除染で約10%を削減することで50%減少を、学校、公園など子どもの生活環境を徹底的に除染することによって、少なくとも約20%を削減することで2 年後までに、子どもの推定年間被ばく線量がおおむね60%減少した状態を実現することを目指す」です。

2年後に現在20mSv地帯の学校などだけ8、住宅地は10、田畑・山林は12、10mSv地帯は学校など4、住宅地は5、田畑・山林は6です。
 現在の東電フクイチ核事故からの死の灰は、放射性セシウムがほとんどで、核種組成から10年後の2021年には約80%減衰しますが、この後は、減り方が著しく遅くなります。20mSv地帯は、地域一帯が1mSvになるのは約80年後で、除染で8mSvになった学校は約60年後、住宅地は約70年後。10mSv地帯は約50年後で学校は約30年後、住宅地は約38年後。これで、安心して子供らを産み育てられるでしょうか?地域社会が持続可能でしょうか?

 それで「最初の段階で、50%、60%減らすというのはいいと思うが、これはセシウム134が減衰するから比較的容易である。あとは、セシウム137が(半減期が30年と長いから)なかなか減っていかない。その次の段階の方策として、何か考えはあるのか。・・地元の住民の人に、ロードマップを示しながら、『どうしても技術的に2年後にはこれだけにしかならない、しかし、何年か先にはこうしていく。それは技術的にも可能である。』といった説明と説得をしながら進めることが非常に大事。【審議会・石榑委員】」
 これに政府、対策本部の原子力被災者生活支援チームは、「住宅地を中心に除染を当面の2年間行いながら、考えるということになる。」1mSvになる時期・ロードマップを示せないのです。

20mSvでも18mSvが放射性ヨウ素・半減期8日、2mSvが放射性セシウムなら、半年も経てば放射性ヨウ素は崩壊してほとんど無くなっています。こうした汚染状況なら、復旧、復興期の目安で20mSvもありだと思います。しかし汚染状況が違います。IAEA、ICRPの基準を鵜呑みにせず、実情に合せた基準が必要です。

次世代、次々世代への加害

長期間、1mSvに下がらない地帯は移転移住で放射線から人々を防護すべきではないでしょうか?IAEAなどは防護措置は被曝がもたらす害と関連する経済的、社会的要素とのバランスを考慮して決めるとしています。移住移転では、
移住移転をしない場合に受ける被曝線量に応じて発生する不利益・費用から移住費用を引いた金額を正味便益として算出します。対象人数に応じて総移住費用が決まり、対象人数と一人当たりの被曝線量で総不利益が決まります。移住移転は、その差の正味便益がプラスになる被曝線量を目安に採用する防護対策。IAEAやEU、英国は帰ってこない移転・移住は生涯での予測被曝線量が1000mSvが目安としています。
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 東電フクイチ核災害の20~10mSv地帯、1mSv以下に50年~80年という長期では、移住移転をさせない、しない場合には次世代、次々世代が高線量環境で産まれ、育ちます。人数が増えるので総不利益も増額しますが、未定数ですので額は評価推定できません。それで、正味便益は算出できません。総移住費用は移住人数に生まれていない彼らは入りませんから、金額は同じ。長期的に見ると総不利益が増額し、正味便益がプラスになる移住移転の目安の被曝線量値は下がることはわかりますが、デジタルな値の算出はできません。

 それに次世代、次々世代を、避けれるのに生誕前から高線量の被曝させる、放射線で傷害するのは、不正義、不道徳です。地域社会を移住移転をさせない、人々を汚染地域に帰し住み続けさせる決定をした政府は、次世代、次々世代を生誕前から放射線で傷害するという不正義を、民主主義なら、そうした政府・政策を許した国民・住民は不道徳なのです。
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 こうした不正義や不道徳をどう受け止めるのかは、個々の人、社会や集団、経験などでちがいます。自治体・地方政府にとって、住民の地域からの移住移転は、彼らを首長に議員にしている自治体がなくなり、身分を失うこと。国・中央政府は、失政で広大な国土を事実上失うなど政治的面目を失い、また多大な移転費用を支出しなければなりません。中央、地方、いずれの政府にも、政府組織には移転移住させまいとする動機があり、後の世代への加害を軽く見よう、見させようとすると思います。正せるのは国民、住民です。

1986年のチェルノブイリ事故での移転は86年は100mSv/年以上の地帯でしたが、子供らに被曝被害が顕在化し、ソ連が崩壊したあとの95-97年に5mSv/年。この地域の平均寿命などを考慮すると、移住の目安5mSv/年は86年生まれで生涯被曝は約270mSv/70年です。IAEAやEU、英国の目安は生涯1000 mSvです。1mSvになるのに長期間かかる核被災地では、IAEAなど考え方は、住民を土地に縛り付け高線量被曝させ、社会や国家に不正義と不道徳を蔓延させる欺瞞です。日本は、私たちはどうしますか?    続く


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