SSブログ
被曝影響、非発がん、全般 ブログトップ

短期の保養で効果が出るわけ!? 崎山比早子さんの講演 [被曝影響、非発がん、全般]

4月20日、「いのち・原発を考える新潟女性の会」の学習交流会に出かけた。
崎山比早子さんの「チェルノブイリ原発事故における健康被害 被ばくがもたらすがん以外の病気」という講演会。崎山さんは、元放射線医学総合研究所主任研究官(医学博士)、元国会事故調査委員会委員。
参照・・IWJの録画

一番興味深かったのは、ミトコンドリアの話。
ミトコンドリアは酸素呼吸の細胞内器官・オルガネルで、ウン億年前から細胞内で共生を始めたいわれる微生物で独自の遺伝子をもつ。「パラサイト・イブ」というホラー小説で一般には知られるようになった。

崎山さんの話のポイントは、細胞核内にあるDNA、遺伝子に比べ、ミトコンドリアの独自遺伝子、ミトコンドリアDNA(mtDNA)が放射線感受性が高い、変異を起こしやすい点だと思う。

調べたら、mtDNAは酸化的損傷を受けやすく、核内DNAの10から20倍以上変異率が高いと言われてる。老化した細胞のミトコンドリアには変異が多い。
ただ「培養細胞で検討したところ、ミトコンドリアDNAの特定の欠失(common deletion)はX線照射によって誘発されるが、CDを生じた細胞は細胞死によって 排除される」「放射線被ばくに特異的に誘発される新規欠失を見出した」「この 欠失は極めて鋭敏であるため、細胞が放射線被ばくしたことの指標になると考えられる。」との研究もある。このCD・特定の欠失とは「特定の欠失または点突然変異型mtDNAが蓄積することでミトコンドリアの呼吸機能が低下し、ミトコンドリア病と総称される多様な病態を引き起こす」変異のこと。老化細胞の変異とは、一応、別物と考えてよさそうだ。
20121026-3.jpg

参照・・東北大学、病態臓器構築研究分野 2007年公表論文

ミトコンドリアDNAは、ヒトを含む高等動物では比較的似通っており、大きさ16 kb前後の単一の環状DNAで遺伝子は37。TFAMというタンパク質と結びついて、相互作用で凝縮してヌクレオチドを構成すると機能を発揮する。

参照・・九州大学大学院医学研究院臨床検査医学

mtDNAが変異して、酸素呼吸でのATPの産出が減り、活性酸素の産出が増えた不良ミトコンドリアは、細胞によって分解され、アミノ酸など分解物は再利用される。オートファジー(Autophagy)というそうだ。
general4.jpg 
参照・・大阪大学、遺伝学教室、吉森研究室

不良ミトコンドリアは、Atgというタンパク質で見つけられ(認識され)、オートファジーが始まるそうで、約10分?ほどで分解されるようだ。

参照・・東京大学、水島研究室

3つのケース
崎山さんの講演を聞いて考えてみた。起こるケースの確率は、被曝の線量の高い順に
(1)核内DNAの損傷、遺伝子の変異が起きて細胞自死 and mtDNAの損傷の確率も大
→細胞自死、アポトーシスするので不良ミトコンドリアは残らない

(2)核内DNAの損傷、遺伝子の変異が起きてもアポトーシスに至らずかつ不良ミトコンドリアを分解・排除するオートファジーが起きない and mtDNAの損傷も大 →不良ミトコンドリアが残る。老化現象が発現。
オートファジーは生体でのタンパク質のリサイクルで重要だから、その機能不全は、それ自体問題ではないか?


(3)核内DNAの損傷、遺伝子の変異がほとんど生じない and mtDNAは高感受性なので損傷して、不良ミトコンドリアが生じる→(3a)被曝が一過性なら不良ミトコンドリアの出現も一過性で、オートファジーで排除され消滅。
(3b)被曝が慢性的である場合は、不良ミトコンドリアの出現も慢性的継続的で、出現と排除がエンドレスで繰り返される。被爆状況から解放されるまで続く。現象的には細胞内に不良ミトコンドリアが常在する老化細胞に似る。

この(3b)は、福島の高線量の地域の子供たちが、低線量の地域、例えば新潟に保養に来るとか移住すると元気になることを説明してはいないか?

インドのケララ州は、線量が高いことで知られているが、高線量地域のケララ州の母から子供へのmtDNAの595個の伝達の内22個の突然変異を検出したのに対し、近接している低線量地域では200個の伝達の内たった1個の突然変異しか検出できなかったそうです。

参照・・自然放射線とヒトミトコンドリア遺伝子の突然変異 Lucy Forster ミュンスター大学 2002年

東北大学、病態臓器構築研究分野 2007年公表論文にあるmtDNAの新規欠失「放射線被ばくに特異的に誘発される新規欠失を見出した」「この 欠失は極めて鋭敏であるため、細胞が放射線被ばくしたことの指標になると考えられる。」

この被曝で特異的に出現する変異、欠失がケララ州や東電核災害被災地で検出されないか、調べてくれないかな。


福島県双葉町・宮城県丸森町ともに特に多かったのは鼻血・・双葉町民の健康調査(2012年11月) 報告書本文で追記② [被曝影響、非発がん、全般]

双葉町民の健康調査の中間報告
 
 
双葉町の町民の健康状態を把握するため、福島県の県民健康管理調査ではカバーされていないと思われる様々な症状や疾患の罹患を把握すること、比較対照地域の設定をしっかりと行うことを通して、どのような健康状態が被ばくや避難生活によるものかを評価・検証することを目的とした疫学調査 
 
201308_S.jpg
調査対象地域 3か所
福島県双葉町、対象人数7,056 名、回答割合 54.9%

宮城県丸森町筆甫地区・・福島県伊達市・福島県相馬市に接しており、福島第一原発からは直線距離で約50km、福島原発事故による放射能汚染地域 733 名、86.9%
滋賀県長浜市木之本町・・対照地域 6,730 名 56.1%

2012年11月に質問票調査
医師による診断や健診を行ったわけではなく、対象者による自記式の質問票を用いた。質問票を用いて健康状態を把握することは臨床の現場においても通常行われる有効な方法であり、このような調査では質問票がしばしば使われている。

所属する自治体を一つの曝露指標、質問票で集めた健康状態を結果指標として扱い、木之本町の住民を基準とし、双葉町や丸森町の住民の健康状態を、性・年齢・喫煙・放射性業務従事経験の有無・福島第一原子力発電所での作業経験の有無を調整したうえで、比較検討した。
 

多重ロジスティック解析を用いた分析
2012年11月時点で、主観的健康観(self-rated health)に関しては、滋賀県長浜市木之本町に比べて、双葉町で有意に悪く、逆に宮城県丸森町では有意に良かった。
更に、調査当時の体の具合の悪い所に関しては、様々な症状で双葉町の症状の割合が高くなっていた。

症状・・双葉町、丸森町両地区で、多変量解析において木之本町よりも有意に多かったのは、体がだるい、頭痛、めまい、目のかすみ、鼻血、吐き気、疲れやすいなどの症状であり、鼻血に関して両地区とも高いオッズ比を示した(丸森町でオッズ比3.5(95%信頼区間:1.2、10.5)、双葉町でオッズ比3.8(95%信頼区間:1.8、8.1))。

2011年3月11日以降発症した病気も双葉町では多く、オッズ比3以上では、肥満、うつ病やその他のこころの病気、パーキンソン病、その他の神経の病気、耳の病気、急性鼻咽頭炎、胃・十二指腸の病気、その他の消化器の病気、その他の皮膚の病気、閉経期又は閉経後障害、貧血などがある。
両地区とも木之本町より多かったのは、その他の消化器系の病気であった。

更に、神経精神的症状を訴える住民が、木之本町に比べ、丸森町・双葉町において多く見られた。
 
被曝防護措置(避難)の影響
今回の調査の第一段階の解析では、所属する自治体を一つの曝露指標として利用した。自治体への所属が避難生活によるストレスや被ばくなどに関連していると考えた。双葉町では、避難生活によるストレスや初期の高濃度な被ばく(注:継続的に被ばくを受けている住民もいると思われる)、丸森町では避難生活はないが長期的な低濃度の被ばくの可能性が考えられる。今回、木之本町に比べて、双葉町において調査当時の主観的健康観が悪く、体の具合の悪い所が多く、平成 23 年 3 月 11 日以降発症した疾患・治療中の疾患が多いことなどは、原子力発電所の事故により避難生活を強いられたこと、又は被ばくの影響、どちらか片方だけの影響に説明を求めることは難しいと思われる。しかしながら、避難生活を強いられていない丸森町でも、調査当時に体がだるい、頭痛、めまい、目のかすみ、鼻血、吐き気、疲れやすいなどの症状が増加していること、表8で有意な結果を示す循環系疾患やアレルギー性疾患、痛風や腰痛のような代謝性・筋骨格系疾患など、様々な病気の発症が木之本町に比べ丸森・双葉両町でも発症していることを鑑みると、被ばくとの関連性を否定できない。特に、鼻血は今回の調査だけでなく、被ばくを受けた住民の訴えとしてよく聞かれており、被ばくによる何らかの粘膜障害もしくは微細血管障害が考えられるのではないかと思われる。 
 
被ばく量推定が今後必要
 一方、双葉町民内での検討においては、調査時点での避難先が埼玉県加須以外の関東地方や福島県内の住民において主観的健康観がやや悪かった。疾病の発症に関しては(埼玉県加須に避難している住民で腰痛などの発症が認められたが)さほど大きな違いを認めなかった。また、2011 年 3 月 12 日当日の住所地における SPEEDI により推定された外部被ばく線量や尿中セシウムより見積もった合計預託実効線量別でも比較検討したが、主観的健康観や疾病の発症など大きな差を認めなかった。また、表としては示していないが、(上の段落で注目した)調査当時数日間の鼻血に関しても、避難先別や SPEEDI・合計預託実効線量の線量別に検討しても大きな差は認められなかった。動向調査の資料なども利用したより詳細な外部被ばく量推定が今後必要になると思われる。 


結論は、震災後1年半を経過した2012年11月時点でも様々な症状が双葉町住民では多く、双葉町・丸森町ともに特に多かったのは鼻血であった。特に双葉町では様々な疾患の多発が認められ、治療中の疾患も多く医療的サポートが必要であると思われた。主観的健康観は双葉町で悪く、精神神経学的症状も双葉町・丸森町で悪くなっており、精神的なサポートも必要であると思われた。これら症状や疾病の増加が、原子力発電所の事故による避難生活又は放射線被ばくによって起きたものだと思われる。
 
福島県の県民健康管理調査においても、比較資料はないが、小児に肥満や高血圧などが高い割合で観測されたという報告がある。今回の調査結果でも、肥満や高血圧だけでなく、様々な疾患の発症が双葉町で高いことが示唆された。また、疾患だけでなく、様々な自覚症状を訴える方が双葉町や丸森町で多く見られた。
 これら症状の多発や疾病の多発を、避難生活に関連する要因又は放射線被ばくに関する要因のどちらかに説明を求める(整理ができる)ものばかりではないが、どちらにせよ原子力発電所の事故に起因していると思われる。

本年5月28日に、双葉町のほぼ全域が「帰還困難区域」に指定され、町民は、自宅に5年以上戻れないという宣告を受けた。避難生活が長引く中で、健康管理をどのように進めていくのか、継続して調査したり、町への支援を続けていく予定である。

調査方法によるバイアスについて
曝露を受けた住民が症状を積極的に報告しそのため過大評価し、このように上昇したオッズ比が生じているという指摘もされる可能性もあるが、それならば、全健康状況のオッズ比が上昇してくるはずであり、今回の結果(症状や疾病罹患のオッズ比の相違)を説明するものとならないと思われる。また、今回聞き取りを行った症状の中には、鼻血のように自覚症状でありながら客観的に判断できる症状がある。このような症状も有意に上昇しているということは、過大評価という理由だけでは説明されないと思われる。
 
 追記
 
全双葉町民にアンケート用紙を配って調査 
 
 中地重晴教授は、取材に対し、「調査結果は、昨年8月に双葉町に報告しています。町側は、そのことを忘れているのではないですか」
 
 双葉町の健康福祉課では、町が岡山大などに調査を依頼し、調査結果の報告も受けたことは認めた。報告を受けたのは、現職の伊澤史朗町長のときになってからだが、「担当者が退職するなどしており、詳しくは当時の書類を調べないと分からない」とし、5月16日夕までに双葉町が2014年5月7日、「現在、原因不明の鼻血等の症状を町役場に訴える町民が大勢いるという事実はありません」と小学館に抗議した経緯には回答はなかった。
 
 秘書広報課では、「鼻血を出す人がそんなに大勢いないことは、保健所の聞き取り調査で分かっています。岡山大などからの報告を受けたわけではありませんが、町民の健康管理については今後検討していきます」
 
 


ノート 放射線環境への適応 [被曝影響、非発がん、全般]

耐性進化による放射線環境への適応

大瀧丈二 「原発事故の生物への影響をチョウで調査する」より抜粋
科学  2013 Vol.83 No.9

ここで重要な未発表データについて触れておきたい。現地におけるサンプリング個体の異常率、その子世代の異常率を眺めてみると、2011年 9月をピークにして減少し、現在では 2011年5月以下のレベルとなっている。ヤマトシジミは世代時間が 1カ月と早いため、年間 6世代ほど、2013年 7月現在では15 世代ほどが経過している。この程度の世代を経れば、自然選択(ややこしいが、もともとの環境汚染が人為的な行為であることを考えると「人為選択」の一種)が働き、十分に放射線環境にも適応できるようになることを示している。

このことは野外調査の結果を評価するうえで重要である。「何も影響が検出できなかった」あるいはそれを拡大解釈して「安全である」という生物学的調査結果が発表された場合、調査開始時がいつなのか、また、その対象となっている生物の世代時間はどのくらいなのかに注目してみるとよい。世代交代の早い生物種に関する調査を2012年から始めた場合、原発由来の影響は何も検出されないであろう。その生物はすでにその環境に適応しているのであるから。

今回の原発事故のように、放射性物質が環境中にふりまかれると、おそらく以下のようなことが起こるのであろう。放射性物質が突然変異を誘導し、生物にとって大きな脅威となる。多くの個体は突然変異の悪影響で死亡する。しかしながら、多くの突然変異が短時間で誘発されるため、放射線耐性を強化する突然変異も出現する。たとえば、DNA修復酵素の活性が高いものや HSP蛋白質(熱ショック蛋白質)の発現量が多いものなどが出現し、徐々に集団内に広まっていくのである。また、新しい突然変異体でなくても、もともと高い放射線耐性を示すゲノムをもって生まれた個体は生き残り、次世代に遺伝子を残していくことになる。

しかし、人類はこのような道を歩んではいけない。自然選択とは、死ぬものは死んで、生き残るものだけが生き残る過程のことである。人間社会は、人為的な環境(放射能汚染環境)における「選択」に人類の未来をゆだねるわけにはいかない。それに抗する社会をつくっていくべきである。ヤマトシジミの研究が人間にどの程度当てはまるかはまったくわからないが、多少でも当てはまった場合、現状のままでは、将来的にはヤマトシジミのように自然選択(つまり「人為選択」)が起こってしまう可能性があることは現時点で認識しておくべきである。

その意味でも、人の被曝量の「安全基準」を一律に政治家や科学者もどきの人々が決めてしまい、結果としてそれを人々に強要してしまうようなことは、現代の福祉社会で行われるべきことではない。安全基準は各個人の放射線耐性度や健康度によって異なってくるものであり、また、個人の意思によって被曝の許容量は決定されるべきであろう。放射線耐性や放射線許容量についても、各個人の多様な耐性度や価値観を尊重する社会体制を目指すべきである。

一つ一つの生きものを見つめる眼差し:鷲谷いづみ×中村桂子
抜粋
生命誌ジャーナル 2009年 春号

(鷲谷)
 植物が個体として唯一移動できるのがタネの段階で、風に乗って移動する方法もありますが、有効なのは動物に運んでもらう方法です。泥と一緒に足の裏にくっつくなんてとても成功している例で、動物はみな水に依存しますから、湿地の泥に混ざってくっついたタネは、動物が次の湿地に行くまでくっついたまま移動できるのです。子供の頃、泥んこで遊ぶと足の裏にべったりついた泥がつき、乾くと中々剥がれなくて、水で濡らさないと取れませんでしたでしょ。直立しているヒトは足裏の面積が広く、しかもよく動く動物なのでタネの運び手としての役割は非常に大きい。マンモスもかなり有効だったと思いますよ
(中村)
 動物は居住域が決まっているけれど、ヒトはわずか10万年ほどでアフリカ大陸から世界中に広がりました。こんな動物は他にいませんね。それと一緒にタネも動いたでしょうか。
(鷲谷)
 他にも被食分散と言って、果実とともに動物に食べられて、吐き出されたり消化管に入って運ばれることもあります。私たちは果実が好きですよね。イチジクやイチゴのような小さなタネは皆ヒトの消化管に入ります。それから貯食と言って、冬に向けて食料を貯める行動もとります。
(中村)
 リスのようにですね。
(鷲谷)
 そうです。今の人類の在り方はさておき、5万年遡っての生物としてのヒトは植物にさまざまな淘汰圧を加えてその多様性を作ったと思います。今は違う意味で大きく生物多様性を変えていますが。



被曝影響、非発がん、全般 ブログトップ