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回収ウラン① 核燃料サイクルの経済的検討-2  [使用済核燃料、再処理、廃棄]

電気事業会計規則では「第二十五条  核燃料勘定に整理される核燃料(以下「核燃料」という。)の帳簿原価(核燃料の取得に際して核燃料勘定に計上する価額をいう。)は、取得原価によるものとする。
2  前項の取得原価は、当該核燃料を購入したときはその購入価額、加工したときはその加工価額とする。
3  前項の規定にかかわらず、使用済及び再処理中の核燃料の取得原価は、実用発電用原子炉から取り出された使用済燃料価額に、分離有用物質の取得価額を加算したものとする。」となっています。

「核燃料資産」勘定で扱う「核燃料」は、ウラン精鉱、天然六弗化ウラン、濃縮六弗化ウラン、濃縮二酸化ウラン、成型加工中核燃料、完成核燃料、装荷核燃料、一部照射済核燃料、使用済核燃料、再処理中核燃料及び再処理によって回収された減損ウラン及びプルトニウムと経産省は規定しています。この合計金額の3%額が「事業報酬」として電力原価に組み込まれ、電気料金で消費者から取られています。

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核燃料サイクルでは、図のようになります。減損ウランは回収ウランとも言います。

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国、原子力委員会では、「1000kgの使用済燃料を再処理すると、約130kgのMOX燃料と約130kgの回収ウラン燃料を再生」として使用済核燃料の再処理を正当化しています。
使用済及び再処理中の核燃料の取得原価は、実用発電用原子炉から取り出された使用済燃料価額に、分離有用物質の取得価額を加算したもの(電気事業会計規則)ですから、取り出された使用済燃料価額(一体あたり千円)に分離有用物質の回収(減損)ウランやプルトニウムの「取得価額」を加えた額が使用済核燃料の簿価になります。

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kg当りなど単位「取得価額」は、英国などで再処理で取り出された量やそのための再処理費用から概算値は得られます。理論的には、使用済核燃料に含まれるプルトニウム、回収(減損)ウランの量に「取得原価」を掛け算すると全体の分離有用物質の取得価額は算出できる。これに使用済燃料価額(一体あたり千円)を加算すると使用済及び再処理中の核燃料の帳簿原価が得られる。

分離有用物質の価値が日本原燃のいう約15兆円なら、3%事業報酬で年間4500億円を電力会社全体で得ることができる。東京電力は1800億円得る事ができる試算があります。しかし発表では、「回収されたプルトニウムのうち、引き取ることが確実であるものの、まだ現に引渡しを受けていないプルトニウムは、再処理関係の核燃料資産に見積計上している。なお、今後、当社への引渡完了をもって数量が確定すると、装荷以前の核燃料資産に振り替えられる。」という会計処理で、78億円を計上しているだけです。回収(減損)ウランは費目すらない、ゼロ円です。つまり、2400万円しか得ていない。
これは、株主の立場からは、得ることのできる利潤を放棄している重大な背任です。

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その一方、国(資源エネルギー庁)は1981年には「現在すでに再処理費用は回収されるウラン及びプルトニウムの価値を大幅に上まわることは明らかとなっている。」

「このため、再処理費用のうち、回収されるウラン及びプルトニウムの価値を上まわる部分については、現行の取扱いを改め、しかるべき時点で費用扱いすることが必要である」(電気事業審議会料金制度部会中間報告・昭和56年12月2日)

それで、引当金や積立の制度を作っています。積立金が約2兆4千億円あるそうです。それで国債が買われている。国債で蓄えられてます。うがった見方をすれば、事業報酬で電力会社が得られる利益を、難癖をつけて国が積立制度で吸い上げて国債に変えている錬金術です。電力会社は当然不満をもちます。それには、本来は積立金と同じ性格の再処理費用の前払いである日本原燃への前払金を資産計上=3%事業報酬を国が認めてやる。前払い金は、無利子・無利息の融資ですから、本来的には利潤を生まない性格のお金です。それに対し3%の利子を認め、消費者から回収することを国が認める。東京電力は、本来入ってこないはずの63億円を電気料金で得ています。飴をしゃぶっているのです。

原燃の言うとおり回収されるウラン及びプルトニウムには約15兆円の価値があるが、それを得るための再処理にそれ以上の、例えば20兆円かかるなら経済的には意味がない。それどころか再処理は避けなければならない。回収されるウラン及びプルトニウムの価値は、この再処理のための積立額が十分か検討するためにも必要になります。

「再処理費用は回収されるウラン及びプルトニウムの価値を大幅に上まわることは明らか」という認識が公に共有になってから、30年余りも再処理をしようとしている事実は、経済合理性=損得が再処理の推進力ではないことを明白に示しています。



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電気事業審議会料金制度部会中間報告・昭和56年12月2日
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続く


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