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中性子が陽子に変る場合にセットでβ線・γ線  ウラン236を糸口に③ [放射能検査、空間、全般]

原子炉でできる約1000種の核分裂生成物で安定核は60。陽子数が同じ安定核に較べて、中性子が5、6ヶ多い不安定核が多い。この過剰な中性子を減らす方向の変化が起きます。ひとつは、先週の中性子を排出(中性子線)、もう一つが中性子の陽子に変身です。

原子核内ではパイ中間子のやり取りで中性子と陽子は目まぐるしく交代しています。原子核外にある中性子は、半減期約10分でエネルギーを放出し陽子と電子および反ニュートリノに崩壊します。これが、原子核内でおきて中性子が1個減り陽子が1個増える。質量数は変りませんが中性子と陽子の比は改善されます。これをベータマイナス・β-崩壊といいます。もう一つの核子、陽子が中性子に変る反応がありベータプラス・β+崩壊といいます。β+崩壊は少数なので、ただβ崩壊と言うとβ-崩壊を指します。

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放出エネルギーは電子と反ニュートリノの運動エネルギーになります。反ニュートリノは反中性微子ともいい、質量は電子の千分の1よりも小さいので万有引力作用もほとんど無く、電荷もないので物質との相互作用は殆どありません。これを被爆しても通過するだけで影響ゼロ。これに対して高速で飛ぶエネルギーの高い電子は、影響します。それで、β-崩壊で発生する高速の電子をβ線と名づけ被爆では重視します。

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セシウム137は94.7%の確率で0.512MeV(メガ・エレクトロンボルト、100万電子ボルト)のβ線を出します。生体を作る物質の化学的結合は数eVですから、0.512MeV=51.2万eVなら数万の化学的結合を壊す力があります。β線は電子なので電気的力でも相互作用します。例えば、化学結合を仲介している電子に直接衝突しなくても⊖と⊖の電気的斥力で弾き飛ばす(電離)。反作用でβ線はエネルギーを少し失いますが、このエネルギーを受け取り弾き飛ばされた電子が新たな電子線、ミニβ線ともいえるデルタδ線になります。デルタδ線も電離を起こします。

原子核はプラスに電気を帯びているのでβ線やデルタδ線は引き寄せられます。速度が大きいのでエネルギーをX線(弱いγ線)で放出し曲がりながら通り過ぎます。このようにβ線の飛跡はくねくねと曲がったものになります。皮膚から入っても皮下2~3mm.程度をぐるぐる回って電離をおこしエネルギーを失います。環境中には大気などがありますから、それらとも相互作用を行いエネルギーを失えば、危険度はおちます。従って、距離をおくこと、間にβ線と相互作用するもの、金属などを置くことがβ線被爆防護の鉄則になります。

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セシウム137がβ-崩壊をすると陽子が一つ増え化学的にはバリウムに質量数は変りませんから安定核のバリウム137になります。全結合エネルギーではバリウム137よりセシウム137は1.174MeVの余分なエネルギーを持っています。セシウム137は5.4%の確率でその1.174MeVをβ線でだしバリウム137になり、94.7%は最大で0.512MeVのβ線で出来たバリウム137は0.6617MeVの余分なエネルギーをもっています。この余分なエネルギーをもった状態を励起状態。持たない状態を基底状態といいます。この励起バリウム137は半減期2.6分で余分なエネルギーをガンマ・γ線という電磁波で放出します。これをガンマ・γ崩壊といいます。

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γ線はエネルギーの高いつまり周波数の高い波長が短い電磁波です。電磁波の屈折、回折といった波の性質より粒子、光子の性質が強く出ます。建物や生体など物体に当ると原子核や電子に当る、接触しなければ、そのまま通過します。電気を帯びていないので、β線のように電気的な力で曲がることがなく遠くまで到達します。遮蔽するには高密度の重たい物質でその原子核や電子に当る、接触する確率を高くするしか方法がありません。原子核や電子に当る、接触すると回折で回り込んだりせずに直接的にエネルギーを与えます。エネルギーが減少したγ線は、波長が長く周波数が小さいγ線や電磁波に変ります。エネルギーを与えられた原子核は、余分なエネルギーを持った励起状態になりますし、電子は跳ね飛ばされてミニβ線というべきデルタδ線になります。(コンプトン錯乱)

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放出エネルギーを陽子と電子と反ニュートリノで山分けするので、出てくる電子のエネルギー量=β線の強さは、其々の核種に固有な上限値を持った連続分布(スペクトル)になります。反ニュートリノが持っていく分が減って連続に分布します。β線では核種の区別がつけにくい。しかしβ-崩壊に続く励起状態からのγ崩壊のγ線は核種固有のエネルギー値を示すので、区別がつけやすい。それで例えばセシウム137固有の0.6617MeVのγ線が105本でバックグラウンドが10なら、(105-10)÷94.7%で約100㏃のセシウム137があると割り出します。

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セシウム134は、確率99.9997%でβ-崩壊しバリウム134になります。全結合エネルギーでバリウム134より約2MeVの余分なエネルギーがあります。β-崩壊ではバリウム134の3種の励起状態のどれかになります。この3種の励起バリウム134がγ崩壊して、さらに別の2種の励起バリウム134になり、またγ崩壊して余計なエネルギーを持たない基底状態のバリウム134になります。崩壊経路で出るγ線は12種、1個のセシウム134の崩壊で約2.2個のγ線が出ます。確率97.62%の0.6047MeV、確率85.46%の0.7959MeVのγ線などで検出します。
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セシウム134の崩壊図


甲状腺被爆で問題になるヨウ素131は、β-崩壊を100%して陽子が一つ増えてキセノン131(安定核)になります。全結合エネルギーで約1MeVのエネルギーが余分です。β-崩壊では7種の励起状態のキセノン131になり、別の励起状態を経るか、直接にγ崩壊で基底状態のキセノン131になります。崩壊経路で出るγ線は20種、確率81.5%の0.3645MeV、確率7.16%の0.637MeVのγ線で検出します。

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海洋汚染で問題になるストロンチウム90は100%の確率でβ-崩壊しイットリウム90、イットリウム90は確率99.88%で最大で2.28MeVのベータ線を出しジルコニウム90(安定核)に確率0.02%で励起状態のジルコニウム90になりγ崩壊します。0.02%ですから固有ガンマ線の直接測定による分析は事実上不可能。それでストロンチウム90は、試料から一ヶ月ほどかけて化学的に分離してからβ線を測定します。そのため、直ぐには汚染量などがわかりません。 

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ベータ・プラスβ+崩壊と太陽、PET検査に 続く


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