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土壌の性質でセシウムの稲への移行が16倍も違う 核災害への備え⑫ [放射能検査と摘発、食品、水]

東電フクイチ核事故の第一義的加害者は東電と国です。しかし、現在のままでは、農家・生産者は、被害者でありながら生産物が更なる被害をもたらす加害者になりうる立場におかれています。
消費者は、汚染された食べ物を食べ被害をこうむる被害者の立場でありながら、正確な情報が出されないために、むやみに食品を拒否し言われなく生産者の生活を破壊する加害者になりうる立場におかれています。
 農家と消費者が相互に無理解で不信を持ち、いがみ合えば、この先の見えない閉塞状況を変える力は生まれません。東電が漁夫の利を得るだけです。今回は生産に関する情報です。

セシウムを農地土壌の粘土が固定

土壌の種類で放射性セシウムの吸着力で最高で10倍の違いがあるそうです。強く吸着したセシウムは、植物の根からもほとんど吸収されなくなり、農産物への移行・汚染も少なくなります。東大の研究グループが19日に発表しました。東京大学大学院農学生命科学研究科の研究者が福島県農業総合センターと共同で4月から進めている研究の中間報告です。

東電フクイチでは汚染水の放射性セシウム除去にゼオライト粘土を使っていますが、農地では、セシウムは土壌中の粘土粒子に強く固定され土壌中でほとんど移動しないと予想されました。

水中で陽イオンとなったセシウムは、粘土粒子および土壌有機物の陰電荷(負電荷)に引っ張られ静電引力(クーロン力)で表面に固定される(弱い固定)そして、特定の粘土鉱物(2:1 型層状珪酸塩)の結晶表面に分子間力で強く固定されるそうです。弱い固定は短時間におきますが、強い固定は時間を要します。また土壌中にゆるく引き付けておくことのできる有機物有機物が少ないと強い固定で粘土鉱物に吸着する量が減ります。

福島県の各地での実測では、3 月中~下旬に土壌表面に降下したセシウムは6月上~中旬までの 2~3 ヶ月間は降雨の浸透によって1.5~3cmと速く移動し、その後、移動速度が著しく低下しています(3ヶ月間で 2~6mm)。

この実測結果からは、この強い固定が6月中旬以降おきている、弱い固定から強い固定への移行が時間をかけて進行していると考えられます。「今後、時間の経過によって強い固定がさらに進んでセシウムの移動は事実上停止し植物による吸収も低下すると予想される。(東大・塩沢昌ら)」

栽培学教室の根元教授は、福島県内の多くの水田が粘土量の多い灰色低地土であることに着目し、山間部の粘土量の少ない褐色森林土と比較しました。灰色低地土の水田は約50%です。実験室で褐色森林土と灰色低地土に試薬の放射性セシウムを混ぜてみて、どれだけのスピードで吸着されるのか、実験を行いました。すると驚くべきことに、どちらも放射性セシウムは土壌と混ぜた瞬間に98-99%が吸着したのです。実際の農地ではどうなのか調べてみました。




その結果は、灰色低地土は褐色森林土の10倍から8倍のセシウムを固着することがわかりました。

福島県は前知事の時代に有機農業を推進しています。平地の水田に多い灰色低地土も山間部の田の褐色森林土も、有機物を多く含んでいたため、土壌有機物の陰電荷(負電荷)の静電引力で、セシウムは直ちに表面に固定された(弱い固定)。しかし、褐色森林土は粘土が少ないため強い固定への移行がすくなく、実際の農地では土壌に固着する量で差がでたのです。

福島県では多くの水田が灰色低地土のため、降り注いだ放射性セシウムは土壌に固定し稲への移行がきわめて少なかった。

二本松市の予備検査で高濃度のセシウムが米から検出された水田は、褐色森林土でした。一旦、土壌有機物により土壌に固定化したセシウムは、他の陽イオンによって容易に置き換えられ(イオン交換反応)、土壌中の水分に溶け出します。水耕栽培したイネはあっと言う間にセシウムを吸い上げてしまうことが田野井さんの研究でわかりました。褐色森林土の水田ではイオン交換反応で水に溶け出したセシウムをイネは無駄なく吸収するのです。ポッド栽培実験で灰色低地土と褐色森林土でイネを植えて調べると、粘土質が少ない褐色森林土は灰色低地土の8~16倍も放射性セシウムを稲は吸収しました。

また「森林から雨水に移行したセシウムが灌水とともに水田に移行した可能性がある」ということです。この点は、新潟大学農学部土壌研究室・野中昌法教授研究室が、9月16日、24日に行った調査結果で裏付けられます。 
森林から沢水が流入する水口(みなくち)、取水口付近の土壌・・4500Bq/㎏
水田・中央・・・・1900
水田の終末部分の水尻・・・・1200

福島市の規制値超のお米の育った土壌

先日、福島市大波地区(旧小国村)で生産された玄米から暫定規制値を超える630Bq/kgの放射性セシウムが検出されました。今回の暫定規制値を超えた水田は、土質が粘土質ではなく砂地だったそうです。土壌的にセシウムを吸着・固定する力が弱い水田です。

 セシウムを固定する粘土(2:1 型層状珪酸塩)の層間の負電荷がある場所は、セシウムイオンを閉じ込めるのにちょうどいい大きさの穴のようになっています。この穴は、カリウムイオンやアンモニウムイオンを閉じ込めるのにもちょうどいい大きさで、通常はこれらの中で最も存在量が豊富なカリウムイオンがこの場所を埋めています。



この場所との結合力はカリウムイオン<アンモニウムイオン<<セシウムイオンの順に大きくなるため、セシウムイオンはカリウムイオンを追い出してこの場所を埋めることができる。

セシウムイオンがこの場所に一度固定されると引き剥がすことは容易ではないですが、上に述べた競合イオン(アンモニウムイオンやカリウムイオン)が土壌に高い濃度で添加された場合、セシウムイオンが追い出されます。追い出されたセシウムは、根から吸収、移行しやすい。

これは、化学肥料で窒素を与えると容易に短時間でアンモニウムイオンが高濃度になりますから窒素化学肥料に頼るのは危険だということです。

カリウムが不足すると植物はセシウムを吸収しますから、カリウム肥料は必要です。作物の必要量に応じて適時にカリウム施肥した方が放射性セシウムの作物への移行が少ないことが知られています。(1989年・京大・小出裕章)

また東電フクイチからセシウムの約6%に相当する量の放射性のストロンチウムが出ています。検出に手間と時間がかかるため検査はすくないですが、セシウムがあればストロンチウムがあります。ストロンチウムは人体内ではカルシウムと間違えられ骨などに沈着しますが、土壌中でも同様でカルシウムが少ないと植物・作物に吸収されます。日本の土壌は元来カルシウムが少ないので、移行も多くなると思われます。石灰などカルシウム施肥で抑制できます。

今後の営農と全数検査

こうしたことから、東電フクイチからの放射性セシウムなどが降下沈着した福島県、栃木県、群馬県などでは、今後の営農・作付けには
調査密度の髙い土壌の放射性セシウム濃度調査とともに、土性の調査が必要
粘土を入れる土壌改良、水口改善といった農地改良
③粘土からのセシウムを追い出さない施肥などの栽培法改良
④生産物を全数、お米なら30kg袋毎に検査する。基準値を超えるものは東電に買い取らせる。検査結果を表示Bq/kgする。
が求められると思います。

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