SSブログ

核防災計画の50km圏の外側に広がる暮らせない地帯 核災害 [防災ー中長期的避難、移住]

新しい原発防災指針(案)では、復興など中長期的な視点でも防災を案を検討するとしています。
1321219464.gif

 現行の防災指針で着目している放出核種は、希ガス類とヨウ素です。希ガスは化学的に活性が低く地表に沈着することなく、放出後24時間もすれば大気中に拡散します。ヨウ素は地表に沈着し放射線源になり被爆しても、半減期が約8日で、30日後には8%に減り、60日後は0.5%、半年後には1千万分の一以下になります。ですから、年単位の中長期的な対策はありません。

 しかし、東電フクイチ核事故のような核燃料が熔ける過酷事故では、セシウムなど半減期が長い放射能が放出されます。そのため、地表に沈着したそれらが放射線源になり被爆が長期間、年単位で続きます。復旧・復興期では、住民の被曝が法定受忍上限の1mSv/年を超える地帯は、除染、避難、移転・移住などの放射線防護策が必要な地帯です。

 核事故発生初期の「直ちに顕れる影響」を避ける退避や避難は、防護対策指標では外部被曝の実効線量10mSv/日やIAEAの100mSv/7日が目安になります。この目安の値に較べセシウムなどによる1mSv/年は、0.003mSv/日と遥かに小さい値です。核事故発生初期に退避や避難が想定される地帯の外側に、こうした地帯が有ると考えられます。東電フクイチ核事故の汚染地図をみると、200km以上離れてもこうした地域が見られます。

除染の効果 10-20%減少

 高橋史明(日本原子力研究開発機構)さんがまとめられた、チェルノブイリでの除染の効果をみると、住宅地・都市部では年間の外部被ばく線量が平均10-20%減少です。1986-89年に、旧ソ連3ヵ国(ベラルーシ、ウクライナ、ロシア)の約1000の集落、6万以上の家屋・建物で実施で行われました。土、道路(アスファルト、コンクリート)表面、建物の表面などに、表面の細孔の中まで放射性物質が付着。そうした土の除去、道路や壁や屋根の表面の削り取りなどした結果です。

1321219927.gif

 農作物の汚染は、放射性物質の沈着レベルだけでなく、土壌の種類や管理の実施、生態系のタイプにより影響を受け、一律の対策はありません。1990年代半ばに経済的問題から対策が減り、作物中の放射能濃度が増加したそうです。

 日本での除染実験でも、同様の結果が出ています。政府の除染方針では、除染による純粋な低減効果を10-20%と見込んでいます。放射性セシウムの汚染地帯では、自分から半径約10m内にあるセシウムからのβ線とγ線、その外側の半径約600mにあるセシウムからのγ線を被曝しています。半径約10mの円は、半径約600mの約3600分の一の面積。それでも近いから被曝線量に占める割合は大きく、除染で近辺のセシウム量を減らせば被曝量は大きく減り、平均10-20%減少です。

 チェルノブイリでは、除染後の再汚染・2次汚染は見られなかったそうですが、日本では裏山から雨水などで運ばれて元の木阿弥になる例が出ています。従って、除染を繰り返し、繰り返し行われなければならないことを覚悟しなければならないと思います。

除染の費用

 チェルノブイリでの住宅地・都市部での除染、砂を吹きつけるサンド・ブラストで表面を削り取る、屋根を取り替えるなどの除染法が取られました。表面がツルツルしていると高圧放水で落とせますが、アスファルト、コンクリートは細孔があり内部に入っているので、削るしかないのです。これは、専門的技能が必要で手間がかかり高価です。そのため広い面積を除染するのは無理というのチェルノブイリでの結論で、移住が放射線防護の選択肢になっています。

1321221508.jpg

 南相馬市の住宅 一戸あたりの除染費用の見積もり560万円。南相馬市には4万世帯。つまり2300億円かかると見込まれています。さらに道路のアスファルトの粉砕除去と張り直しなど公共の施設の除染費用が加わります。そして、市の中でも山に近い地域では、山からの雨水などで放射能が運ばれてくるので、再汚染しますから1回ではすみません。

 また表土や道路表面、建物の表面を削り取れば、目に見えない放射性物質の微粒子が空中に舞い上がります。飯舘村近辺での表土3センチほどはく離する除染試験で地表面の線量は下がりましたが、地上1mの空間線量が舞い上がった微粒子で1.5倍になっています。剥がされた放射性物質の微粒子を除染作業者や周辺の住民が吸い込み内部被曝の恐れがあります。ですから、除染地域から期間中は住民の一時避難が求めら、その費用も加算されます。

除染ボランティアは特攻隊?

 日本政府の被曝防護策は、専ら除染です。除染実施の具体的な目標は、被曝線量を2年後までに放射性物質の物理的減衰で38%減、風雨など運び出しの自然要因による減衰で2%減、除染で10%減(学校、公園などは20%)で50%減少(子供は60%減)です。物理的減衰で3年後には49%減、4年後には57%減になりますから、除染で1~2年早める格好です。

 そして、除染後の被曝線量の目標値がありません。子供たちを産み育てる地域社会を営める被曝環境、線量を考えていないのです。
国は年間20mSv以上の地域を国の手で除染するとしています。30mSvの地域では、除染後には大人15、子供12mSv。新潟で私たちは、大人も子供も1mSv以下で暮らしています。福島の大人も子供も放射線被曝に異常に強いのでしょうか?福島県民は移住しなくても大丈夫な特異的体質?

 20~1mSvの地域は、住民やボランティアが除染する方針です。除染中も人が住んでいるのですから、除染ででる放射性微粒子による内部被曝を日本政府は無視しています。

 政府は除染ボランティアも被爆に強いと考えているようです。20mSv以上の地域は、国が業者に発注して除染を行います。業者は法に従って、作業員に放射能や放射線、被曝防護の教育を行い、放射線特殊健康診断を受けさせて、防塵マスクや防護服を貸与し、個人線量計で被曝線量を管理します。定期的に内部被曝線量をはかり放射線特殊健康診断です。被爆量は国のセンターや手元の放射線作業管理手帳に記録します。そして白血病などになり、労災と認められれば補償があります。これまでの5mSv程度の被曝で認められています。

1321221903.jpg

 除染ボランティアの環境省の募集案内を見ると、被曝防護の教育は、資料のコピー代や送料は自己負担。健康診断無し、防塵マスクなども自前でそろえ、線量計=被爆量管理もなし、内部被爆の測定もなし。「ボランティア保険の補償の範囲(通常、放射線被ばくは保険の対象外)や保険費用を踏まえて、ご加入・ご更新をお願いします(原則、自己負担です)。」 
この処遇は、住民が自ら行う住民ボランティアの除染でも同じです。ボランティア=志願なのだから、不全な防護でも良いという考えは、特攻隊と同じです。

事前に、本当のことを知りたい
政府は原発事故コスト試算で除染費用を約1兆円計上。それでの原発の発電コストは、火力より0.6円・約10%高くなります。放射線から防護する除染や移住に手を尽くし費用が1兆円増えるごとに、コストが0.32円上積みされ、火力に負けます。ボランティアは志願した云々と理由をつけ、被曝の負担を住民らに押し付けるほど、原発は火力に張り合って生き残れます。本当の発電コストを知りたい。

1321222191.jpg

 虹屋は東電・柏崎刈羽原発から約60km。もし核事故が起きたら、翌朝、政府の口先三寸で、どれ位の被曝にも大丈夫な体に変身するのか、知りたいと思います。核防災計画の30km圏、50km圏の外側に年間1mSv以上の地域があります。どれ位の離れた地帯が、放射能沈着で何mSvになるか試算し、公表すべきです。
1321223270.gif

nice!(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

Facebook コメント

トラックバック 0