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被曝は「合理的に達成できる限り低く」というアララの原則は何処へ行った? 食品のセシウム新基準案 [放射能検査と摘発、食品、水]

先週、厚労省が食品のセシウム新基準案を決定しました。「規制値厳しく」などと伝えられていますが、実際の食物での内部被曝を増やす可能性のあるとんでもない基準案だと思います。




 この案は22日の厚生労働省・薬事・食品衛生審議会の放射性物質対策部会で決められました。その会合に出された食品からの放射性物質の一日摂取量の推定では、1日の食生活から摂取される放射性セシウムは福島県でも3.39ベクレルBq/人で0.0193ミリシーベルトmSv/年、宮城県は3.11Bq/人で0.0178mSv/年、東京都で0.45Bq/人で0.0026mSv/年です。基準案は、その新規制値の上限の食品を1年食べ続けると約0.7mSv/年と厚労省は試算していますから、調査の35倍以上緩い基準です。そんな緩い規制をしたら、来年、再来年には実際に約0.7mSv/年に成ってはいないでしょうか?

日本での食品による内部被曝

 先ほどの調査は、平成19年度国民健康・栄養調査の食品別の平均摂取量と今年9月及び11月に宮城県及び福島県で購入した食品、両県では生鮮食品は可能な限り地元県産、あるいは近隣県産品、東京都で購入した食品で検出されたセシウムなどの濃度から推計した値です。このやり方はマーケットバスケット方式といわれ残留農薬などの摂取量の調査で使われる方法です。厚労省資料

 10月の部会に出された食事による内部被曝線量の暫定的な推計では、今年8月までデータと収穫時期を迎えていない作物等のデータのない食品について推計値を用いて0.099mSv/年(多めにみて0.244)と線量推計しています。収穫後の今の時期では、推測値ではなく実測値を用いて、同じ手法でより現実に近い、日本で平均的な食による内部被曝の線量推計値がだせますが、その値は公表されていません。厚労省資料

 10月公表の暫定推計では、データのないものは0Bq/kgと検出限界以下(ND表記)はセシウム134、137ともに一律に10Bq/kg合わせて20との推計値を用いています。9月以降に収穫時期を迎えた作物などが、ゼロ扱いから実測値または検出限界以下ならセシウム134、137で20Bq/kgという濃度が用いられますから、同じ手法で求めた年間被曝線量の推定値は高くなると見込まれます。10月公表数値では、3~8月が0.051ですから、9月以降に収穫時期を迎えた作物などデータから9~2月までが倍になり、それが1年間続くとしても約0.2mSv/年と私は見込んでます。

先ほどの12月22日公表のマーケットバスケット調査では、検出限界以下はセシウム134、137ともに一律に0.025Bq/kgと400分の一にしています。これは検出方法(測定時間)を変え、より精密に測定した結果です。だだし、購入し測定した品目、数が不明で測定値が偏っている可能性が、全国のデータを使った10月公表の暫定推計の手法よりあります。

 何れにしろ、0.099mSv/年、約0.2mSv/年、0.0193mSv/年のどの値も新規制値案で想定している約0.7mSv/年より小さな値です。

アララの原則

 被曝防護の基本的考え方にアララの原則があります。「As Low As Reasonably Achievable・合理的に達成できる限り低く」という意味の英語の頭文字ALARAから「アララ」と読まれる原則で、1977年にICRPが提唱し日本も様々な規制に取り入れている被曝防護の考え方です。先ほどの調査結果等はこのアララの原則にそった経済的にも社会的にも無理なく合理的に達成できる内部被曝の線量です。




 厚生労働省は、日本国内の規制の根本でもあるアララの原則に沿って、自らが国立医薬品食品衛生研究所に調査させた結果などを元に内部被曝線量の目標を設定し、それを達成するための基準案を用意しなかったのでしょうか?文科省が給食を40Bq/kgで規制しようとしたら、厚労省は横槍を入れました。基準案では「乳児用食品」が50Bq/kgですから学童の給食40Bq/kgでは厚労省の面子がつぶれます。縄張り争い本能からも横槍はお役人様の当然の行動ですが、被曝を「合理的に達成できる限り低く」ことは縄張り争いや面子よりも優先順位が厚労省では低いのでしょうか?

 部会長の山本茂貴・国立医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部長ら11名の先生方は、この案をなぜ認めたのでしょうか?11名中9人は、国の厚労省や文科省から経費(給与や研究費など)をいただく立場の方です。被曝を「合理的に達成できる限り低く」するという防護の考えはないのでしょうか?


 
 放射線・放射能の検出器の概ね10Bq/kgが検出限界なことが多いので、食品の検査での被曝低減は、セシウム137、134であわせて20で約0.2mSv/年が限界だと思います。ここから更に「合理的に達成できる限り低く」には、チェルノブイリで行われる田畑パスポートが有効だと思います。

チェルノブイリでは、農地や森林は除染していません。除染したら作物や木を育む土壌が失われます。ただの土くれの大地で、除染して金を使っても食べられる農作物が作れない。山地の除染をするなら、枝を全部払い、葉を落とし、下草を刈り取り、落ち葉や腐葉土を全部掘り下げて除去せねばなりません。つまり「ほぼ禿げ山」にするということです。放射能で生態系を痛めつけ、除染で森を殺すからです。

ある線量以上は耕作放棄。それ以下でも田畑一枚一圃場ごとに土壌の放射能の種類や量、土壌の性質を調べ、その土地で放射能(主にセシウム)の移行(吸収)が少ない作物、栽培法などを選定して営農を許可しています。、汚染が激しいとウォッカ専門(加工でセシウムが減る)、バイオディーゼル用油脂作物(口に入らない)にするそうです。そして4年ごとに更新してる。それを現地ではパスポートと呼び慣らしているそうです。 報告

 チェルノブイリ事故当時は、ソ連でしたから私有財産がなく、耕作放棄地に賠償の問題がありませんでしたが、日本では所得補償や農地の買い上げが必要だと思います。
 日本の福島の土壌での放射性セシウムの挙動が、この1年で随分わかってきています。こうした知見を生かして営農を考えるべきです。チェルノブイリのように国が分析センターをつくり作付ける前の田畑の検査を実施して、まず、キメ細かい汚染マップをつくり、栽培できる作物や栽培法などを選定するのです。そうした上で、汚染量を確認するために収穫されたものを検査するのです。
 そうして、日本の土壌での放射性セシウムの挙動を解明し、営農法の改善を図っていくのです。

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