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新潟県の柏崎刈羽原発での過酷事故での対策に意見を送りました 核災害への備え⑮ [柏崎刈羽原発の防災計画]

県が柏崎刈羽原子力発電所の過酷(核燃料の損傷・溶融)事故時での県の対策の考え方(事務局素案)を取りまとめ、県民の意見を募集しています。
関係資料の入手方法
 http://www.pref.niigata.lg.jp/genshiryoku/1323036033979.html
 (1)新潟県 防災局 原子力安全対策課(県庁2階危機管理センター内)での配布
 (2)新潟県各地域振興局(企画振興部)、地区振興事務所(総務課)での配布
3 意見の提出方法及び提出先 ①郵送、②ファクシミリ、③電子メールのいずれかの方法で、次の提出先までご提出ください。(意見を提出する様式は任意とします。)
 ① 郵送 〒950-8570(住所の記載は不要) 新潟県 原子力安全対策課行き
 ② ファクシミリ  025-285-2975
 ③ 電子メール ngt130030@pref.niigata.lg.jp

虹屋は下記の意見を送りました。



要旨 



一、最悪の事態を想定して対策を

国の即時避難区域(PAZ)、避難準備区域(UPZ)の距離設定は、① 独立行政法人日本原子力研究開発機構(JAEA)東海サイトの気象データを使用し②過酷事故(シビアアクシデント)時に放出される放射能量の十分の一での試算結果によって検討され設定されている。

新潟県は、③東電・柏崎刈羽原発の気象データを使用し④過酷事故(シビアアクシデント)時に放出される放射能量の十分の十の放出量での試算をして、県の即時避難区域(PAZ)、避難準備区域(UPZ)の距離設定を検討すべき。

二、SPEEDIが使えない時の備えを

「緊急時迅速放射能影響予測システム」(SPEEDI)と「緊急時対策支援システム」(ERSS)が使えない場合の備えが必要である。

一について 最悪の事態を想定して対策を
③は茨城県東海村と新潟県柏崎、刈羽では天候は違うのだから言わずもがなである。
原子力安全委員会原子力施設等防災専門部会 防災指針検討ワーキンググループ(以下防災WG)では、次のような論議をしている。
過酷事故時の放出量を原子炉にある量に対する放出割合で、放射性ヨウ素で千分の一・10マイナス3乗レベル、放射性セシウムで百分の一から万分の一・10マイナス2乗から四乗レベルとしている。今回の東電福島第一原発の核事故での放出量は、「典型的なシビアアクシデントの事故進展及び大気中放出量に相当」と評価している。(防災WGの資料・防WG第4-2号

この典型的な放出となった今回の東電核事故での放射性ヨウ素の拡散・到達距離で検討して屋内退避計画地域(PPA)の50kmを設定している。しかし、即時避難区域(PAZ)、避難準備区域(UPZ)は、十分の一の規模の放出での試算で検討し、設定している。
その一桁小さくした理由は「もし福島の実態だけを踏まえて決めるのであれば、もしそういう事故が起きてもここまでだから大丈夫という解釈になってしまう。それでは全く安全の機能の向上性を図ろうという姿勢が出ないわけで、実際はもっと厳しいけれども、このソースタームで計算すると、実効線量で20kmぐらいになると思いますが、そういうところにきちんと定めて、それを満たすような努力、設備とかアクシデントマネジメント対策をきちんと整備していく」

「その時の安全機能というのは、実際はスプレイであるとかサブチャンのいわゆる水による除染機能も最低のレベルというのですか、十分余裕をとって100分の1とか1,000分の1にとれるのだけれども、10分の1という効果だけを見ましたよと、そういう解釈で」(平成23年10月20日の防災WG、齊藤委員、梶本委員発言、議事録

今回の核事故の実態をみて電力会社が「事故が起きてもここまでだから大丈夫という解釈」をするとは到底思えない。それなりに設備を整備し、核事故時には大量の被曝をして作業に当たって、消火系を利用した注水など限定的にアクシデントマネジメント対策が働いても「典型的なシビアアクシデントの事故進展及び大気中放出量」になってしまった東電福島第一原発の現実を前にすれば、除染効果で10分の1を防災計画で見込むのは適切ではない。

防災や危機管理は、最悪の状況を想定してやるもの。だから、まず過酷事故時に放出される放射能量の十分の十で検討するべきだと思う。屋内退避計画地域(PPA)は、放出放射能量を十分の十になった今回の核事故で検討しているのだから即時避難区域(PAZ)、避難準備区域(UPZ)でも同じにしないのはおかしい。論理的に筋が通らない。

例えば、旧山古志村は東電・柏崎刈羽原発から30km以上離れているから避難準備区域(UPZ)に入らない。この国の30kmは過酷事故時に放出される放射能量の十分の一での試算結果に拠るものだから、放出量が増えれば避難する必要が出てくると思われる。その点を検討するためにも十分の十の放出での試算は有用。

また避難しようとすると、既に高濃度に汚染されている旧長岡市まで出てから避難することになる。旧山古志村だけでなく、このような高汚染地帯を通過しないと避難できない地域・集落が県内には多いと思われる。こうした地域などは、30km以上離れていても避難準備区域(UPZ)にして準備しておくべきではないだろうか。

避難先には避難準備区域(UPZ)圏外としている。しかし放出量が国の想定より増えれば、その避難先から再度の避難することになる。十分の十での汚染でも再度の避難不要の地を避難先に選ぶべきだと思う。

長岡駅は柏崎刈羽原発から約20km。つまり新幹線、高速道路は避難準備区域(UPZ)圏を通っている。事故発生時には、どの駅で、インターで閉鎖するのか。避難経路としてどのように使うのか。JRや東日本高速道路株式会社と話し合っておく必要があると思う。
二について、SPEEDIが使えない時の備えを

泉田知事は12月8日の県議会で、「緊急時迅速放射能影響予測システム」(SPEEDI)を活用して拡散状況を把握し、避難誘導にあたる考えを示したと報道されている。
SPEEDIは緊急時対策支援システム(ERSS)からのデータが必要だが齊藤 実(原子力安全基盤機構防災対策部審議役)はERSSやSPEEDIは初期の防護対策の意志決定に用いないよう提言し、国の案では採用されている。

ERSSの予測機能・・今般の事故では、原子炉の炉心溶融開始の時間は、比較的正しく(数時間の違いで)予測できたと思われる。しかし、最も重要な、放射性物質の種類(核種)と放出の量と時刻(放出率)と経路については、全く予測できなかったと言える。・・改良すれば予測が可能になるかと言うとノーである。」「今回のように、放出率、放出の場所や高さの条件設定が非常に不確かで、放出の初期の放射性物質の拡散はその場所の局所的な建家形状や地形に左右されることを考慮し、元々、気象パラメータも連続的に変化すると、核種濃度を予測することは極めて困難と言わざるを得ない」ERSSもSPEEDIもシナリオに基づいて、解析するので、シナリオが明らかになった時点での、状況を依り詳細に把握するため活用が期待されるが、初期の防護対策の決定には適していないと思う。」(防WG第1-5号

このようなERSSなどから放出情報が得られない場合は、単位放出量でSPEEDIで試算・予想し活用する手順になっていたが、今回は試算されても、その情報は役立てられなかった。政府・東京電力統合対策室合同記者会見での園田政務官などの答弁を聞いていると、役立てられなかった経緯もその反省も不明で、改善するとは思えない。

SPEEDIが当てにならない事故が起き、国から今回のように適切に予測情報が出ない時の対応策が必要である。

また放射能のブルームによる外部被曝線量は、モニタリングポストや緊急時モニタリングなどの空間線量率などの測定でわかり、それで避難措置をとることになっている。しかし放射性ヨウ素はできない。各放射能の濃度情報は、大気を吸引してフィルターを通して、フィルターに付着したものを測定するダストモニタリングで計測するが「実際の事故の時というのはダストモニタリングの結果というのは2日遅れぐらいになってきてしまう(防災WG、10/20での審議)」

この計測の問題が解決されない状況でかつSPEEDIが当てにならない事故が起き、国から今回のように適切に予測情報が出ない時の放射性ヨウ素への対応策を考えてほしい。


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noir

いつもレベルの高い情報を載せてくださってありがとうございます。
私は東京在住ですが、食品の安全について知りたくてここに辿りつきました。
土壌から稲への汚染の移行の話などは、どこよりも早くここで知りました。
生産者と消費者がいがみ合うと、東電だけが漁夫の利を得る、本当にそうだと思います。
何とか、お互いが情報と状況の認識をすり合わせることが出来ればよいのですが。
これからもよろしくお願いします。
by noir (2011-12-12 01:21) 

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