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放射能検査器の進化、検査体制の再編を [放射能検査と摘発、食品、水]

食品の放射能の検査器で使われているのは、主に2種類。(1)据え置き型のゲルマニウム(Ge)半導体検査器(2)据え置き型のヨウ化ナトリウム(NaI)シンチレーション検査器の2種類。この2種の検出器は、調べる食品をフードプロセッサーなどで細かく切り刻み測定用容器に隙間なく入れます。重さは秤で壊すことなく測れますが、放射能は野菜、魚などを粉砕してから測ります。ですから、貴方が粉砕された野菜や魚を食べるのでなければ、口にする野菜や魚を直接測ることはできず、抽出されたサンプルで検査するしかありません。

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食品を粉砕しないで放射能を測る

原子力災害マニュアルでは、放射性ヨウ素の食品検査で携帯型のヨウ化ナトリウム(NaI)検査器、サーベイメーターという種類の検出器をつかい遮蔽無しで測る手順が定められています。過大評価しやすいのですが、短時間に数多く検査できます。これをまねた手順で、次のようなやり方で牛舎で出荷前の生きた牛の汚染レベルを計測する方法を、農研機構・畜産草地研究所と福島県畜産研究所などが開発しています。

道具は携帯型の「NaI」と約7kgのリング状の鉛。牛の腰角後方に約7kgのリング状の鉛を載せて、鉛で囲いの中に検出部をいれ環境からの放射線を遮蔽します。5分の計測を3回繰り返します。1キロ当たりでほぼ50ベクレル以上の放射性セシウムが含まれていればわかるそうです。この計測法のポイントは、約7kgのリング状の鉛による遮蔽です。

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検出器には、宇宙線や自然界にもともと存在するカリウム40などの自然放射線と、地面や土壌など環境中の放射性セシウムから発生する放射線という2つのバックグラウンド放射線が降り注いできます。これは“計測の雑音”、低くするほど、低濃度、短時間で測れます。牛も、もっと遮蔽すれば検出の下限の値を下げたり短時間にできますが、牛の腰が鉛の重さに耐えられない。食品検査に使うゲルマニウム(Ge)やヨウ化ナトリウム(NaI)の検査器は、鉛の容器内部に検出部を設置してあります。

精密型のWBC

人体内の放射性物質・死の灰を、人体の外部に置いた検出器で検出して体内量を測定する装置(全身カウンター、ホールボディカウンターWBC)でも遮蔽は重要です。放出されるγ線の検出器とその放射線数の計測部、放射能量を計算する処理部と遮蔽から構成されます。簡易型は遮蔽した椅子、寝台と、遮蔽を施した検出器(直径20cm厚さ10cmのNaI検出器など)と計測部で、10分間の測定時間で400Bq程度のセシウム137体内量を検出可能です。(検出器の種類と大きさ、遮蔽の程度によって変ります)

精密型は、17分弱・千秒でセシウム137の20Bq以程度の体内量を検出することができます。厚さ10~36cmの鉛、鉄で遮蔽された室に寝台と検出器(直径20cm厚さ10cmのNaI検出器が標準)を使用しています。厚さ10cmの鉛はセシウム137の放射線を約100分の一遮蔽するので精密に計測できるのです。

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3.11後、福島県に新たに設置されたホールボディカウンターWBCは簡易型の椅子型です。精密型が遮蔽室だけで30~60トンで設置場所が限定されること、短時間に緊急で内部被曝量をスクリーニング(篩い分け)する必要があったためです。簡易型は検出の下限が高いのに、東電核事故でバックグラウンドの放射線量が高くなっているため、さらに下限が高くなっています。それで、福島市の市民測定所では2月にレントゲン室用の鉛合板で測定室の遮蔽工事を行ってバックグラウンド放射線量を下げています。

検査器の進化、検査体制の再編

精密機器、計測器、医療機器の島津製作所は、30kgの米袋に含まれる放射性セシウムを高速・高精度で測定できる「食品放射能検査装置FOODSEYE(フーズアイ)」を昨年から開発しました。これは、ガンの検診などに用いられる医用画像診断用PET装置の技術を応用したもの。PET装置に用いられるゲルマニウム酸ビスマス(BGO)シンチレータと光電子増倍管を組み合わせた高感度の検出器を用いてます。
検出器の周りを鉛で遮蔽して環境からの放射線の影響を最小限に抑えています。それで、本体で約1.4トンもあります。大量の米袋をそのままベルトコンベアーに載せて、検査器を通し流れ作業で検査します。

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4/1からの新基準値では一般食品の100 Bq/kg用のスクリーニング検査法の測定下限値25 Bq/kg以下、乳幼児用食品の50Bq/kgでは10を検査器の性能要件としています。二本松市で行われた実証実験からベルトコンベアに米袋を載せて下ろす手間をいれても、一袋あたり5秒で測定下限値20 Bq/kg以下、15秒では測定下限値10 Bq/kg以下の測定が可能。実用的には、1日8時間の作業で5秒で測定で約2000袋以上、15秒の測定で約1200袋以上を検査できるとしています。

このスクリーニング検査で高濃度汚染を摘発、排除し、さらに合格品から抽出で1ベクレル単位での汚染量を測定します。その細密測定データから、スクリーニングで検出の下限以下の品物の汚染度の見当がつけられます。

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ND(Not Detected)とか<25Bqと表記される下限以下は、学術的な扱いは3通りあります。一つは、「0」とみなす、一つは下限値のぎりぎり下の値、<25Bqなら24Bqとみなす、一つは中間の値、<25Bqなら12Bqとみなす。細密測定データからスクリーニングで下限以下の場合を客観的に解釈できます。例えば、○○JAは5Bq程度とか××村は限界値ギリギリだから農法を改善しようとかできます。

二本松市での実証実験からの数値は、測定室内でバックグラウンド値が0.4μSv/h以下です。これが4分の一の0.1μSv/h以下なら5秒で測定下限値10 Bq/kg以下、15秒では5 Bq/kg以下、16分の一なら5秒で測定下限値5 Bq/kg以下に、15秒では2.5 Bq/kg以下にできます。規制値を下げたり、検査数を増やせます。

環境中の放射性セシウムからの放射線は、半減期・約2年のセシウム134の崩壊で減衰しますが、精密型WBCと同様に測定室に遮蔽を施せば直ぐに大幅に下げられます。約20cmの厚さの普通コンクリートで10分の一、重量コンクリートで15分の一が遮蔽効果とされています。

セシウム134の崩壊減少で汚染レベルは下がります。また将来的に検査で撥ね出す汚染レベル・規制値を下げて、日本人の摂取量・内部被曝を減らしていくことを考えれば、最初に測定室自体に遮蔽を施した方がよいと思います。

この検査装置・フーズアイの予定価格は、2000万円。この機器での米以外の食品での検査法は“今後の検討課題”、品目が増えると検査数が劇的に増え、検体当り費用が減少します。こうした検査機器、体制の整備に反対の専門家もいます。放射線審議会長の丹羽太貫氏もその一人です。反対の理由は? 続く


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