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放射線審議会・丹羽会長や文化功労者のリスク管理専門家が食品放射能検査の強化に反対するワケ [核のガバナンス]

16日に新潟県が日常食に含まれる放射性セシウムの量の調査データを公表しました。(下図)
1977年・昭和47年度から文科省の「環境放射能水準調査」で、陰膳方式、西蒲区と柏崎市の家庭から一人1日分の食事を提供いただき調べています。今日、チェルノブイリ事故時の水準の汚染があることがわかります。これを3.11前の水準に如何に早く戻すかが課題です。

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そのための対策の大筋は
(1) 東電フクイチからの放射能放出を停める
(2) 高濃度の放射能、放射生セシウムを含んだ食品の生産を予防する
(3) 検査で生産予防の効果の確認と高濃度汚染食品の食卓からの遮断

その検査強化に反対する専門家がいます。文科省の放射線審議会の丹羽太貫会長は、「100ベクレルでも十分安全なレベルで、(赤ちゃんも)健康被害を心配する必要はない。赤ちゃんのいる家庭で食膳を2つに分ける必要もない」「コストが掛かるのは、精密な検査機器だけではない。ビルの中でさえ放射性セシウムは入り込む。きちんとしたデータを取るには、汚染されていないコンクリートで厚さ1メートルの壁を作り、(放射線を10万分の一まで遮蔽した)検査室を設置するところから始めないといけない。膨大なコストが掛かり、(私たち当事者世代は払うつもりがないから、)そのつけを払うのは次世代、次々世代の子どもたちだ。」と反対しています。

 環境リスク管理学の学識で国から年金を支給される文化功労者の中西準子氏は
「 (30kg・1袋のコメの生産者からの)買い取り価格=5,500円、
(スーパーでの)販売価格=15,000円、
(Ge半導体検出器で)セシウム分析費用=20,000円。
この数字をじっと見てください。全袋検査というのが如何に、愚かな政策かということが分かると思います。」
中西准子氏は「100 Bq/kgのコメを3年間毎日食べた時:0.24 mSv (別の表現にすれば、10万分の1.6のがん確率または、損失余命で1.8時間)」とリスク評価をしています。詳し

このコメ摂取の条件は、1日に17Bqの放射性セシウムを摂取し内部被曝するということです。氏はガンの生起確率は丹羽太貫氏が委員を務めるICRPの考えを採用しています。

 中西氏の環境リスク管理学では、化学物質や放射能など様々な環境リスクの大きさを、そのリスクで短縮される寿命・損失余命で数値化します。そのリスクへの対応策の効果も短縮される寿命で数値化します。ある環境リスク(あ)の大きさは損失余命で2日。対策Aをとるとリスクでの損失余命が1日と減るが、別のリスク(い)が顕在化して損失余命で1.5日で対策Aは損失余命で2.5日だから対策Aを採らないほうがよいといった使い方をします。氏の環境リスク管理学は、こうした手法を体系化したものです。

 中西氏は「がんになったことにより寿命が短縮される影響は平均で12.6年である」。1日に17Bqの放射性セシウム摂取を3年間続けると、12.6(年)×1.6(ガン死)÷10万(人)で、一人当たりで1.8時間の寿命短縮と評価し、全袋検査で1袋2万円の検査費用を費やしてリスク管理するほどではないと反対してるのです。新検査器では数百円ですが、それならどうなのでしょう?

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中西氏の専門分野の科学的リスク評価や管理での「リスク」は、病死といった望ましくない出来事(ハザード・hazard)にその生起確率(occurrence probability)を掛け算した積です。数学的には期待値といわれる値です。
しかしハザードは知られているが、生起確率が不明、未知な場合「不確実性・Uncertainty」、ハザードも生起確率も未知である場合「無知・ignorance」という知の水準があります。
中西氏の損失余命では、ガン死といった死亡にいたるハザードとリスクしか扱えません。ICRPもガン死だけに着目しているので同じです。「不確実性」「無知」にある被曝影響は視野から捨てられています。

ガン死以外の「不確実性・Uncertainty」や「無知・ignorance」の知的水準の放射の汚染の影響はどうなのでしょうか?

放射能の放射線の身体への影響を遺伝子損傷で考えると、放射線によって遺伝子の載っているDNAが物理的に切れるのです。放射線照射では、修復が難しい二本鎖切断が起き易い。

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それで、損傷した遺伝子とその遺伝子損傷をなおす修復遺伝子群の損傷、その2段構えの損傷があるとガン細胞化して、そのガン細胞が増殖して発癌し、発癌のした人の約半分の方が病死する。それでは、修復遺伝子以外の遺伝子だけが損傷した場合はどうなるのでしょう。

大概は修復されますが、失敗もでます。遺伝子が欠落状態になったり、突然変異します。突然変異が1個の体細胞に生じても、身体の具合に取り立てた変異は起きないと思いますが、幹細胞、組織や臓器に成長する(分化する)元となる幹胞でおきたら、それも乳幼児や胎児という段階で起きたら、組織や臓器レベルでの変異になります。卵子、精子なら遺伝します。

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突然変異は進化の原動力ですが、現在の進化論では突然変異の大半は適応度(生存率=死亡率や繁殖率)を左右しない中立的な変化(中立説)とされています。

具体的にアルコール代謝の酵素ALDH2の遺伝子で見てみます。中国で約2万年ほど前に突然変異(不活性型・AAタイプ)をもつ人が現れ、その遺伝子が子孫に受け継がれ、中国、朝鮮、日本に広がっています。日本人の約5%で「一滴もダメ」です。変異していない100%活性型・GGタイプの遺伝子は「酒飲み」で黒人・ネグロイドや白人・コーカソイドの人々、日本人の約55%です。片親からを不活性型を片親から活性型を受け継いだ場合はAGタイプ。活性型・GGタイプの約1/16の代謝能力のタイプがあり、日本人の約40%で「下戸」です。

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 突然変異(不活性型・AAタイプ)は、適応度(生存率=死亡率や繁殖率)を左右していません。 消毒用アルコールや栄養ドリンクなどに含まれる少量のアルコール分でも赤くなるなど敏感に反応したり、宴席で「俺の酒が飲めないか」に出会うと難儀する不都合です。仮に全ての食品にアルコールが含まれる環境激変がおきれば自然淘汰されるでしょうが、・・

日本人の約40%のAGタイプの遺伝子で飲酒の生活習慣の方は、アルコール代謝で生じるアセトアルデヒドに由来する疾患をわずらう事が多いことが知られています。このように大半の突然変異は、QOL(Quality of Life、クオリティ・オブ・ライフ)の変化で顕れ、環境条件、生活習慣などで影響の出方が違うと考えられます。

チェルノブイリ事故でQOLの変化「食事、喫煙習慣、飲酒、その他の生活スタイル要因のような行動に重要な影響」があったが、診断基準を満たさない「医学的に説明できない身体症状」などが多く見られたとUNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)は2008年報告で述べています。

これは今は医学的に説明できないから放射線被曝と直接に関係付けられないが、「チェルノブイリ事故に原因帰属させることができるのは明らかである。」、「放射線への恐怖、政府不信の問題、不適切なコミュニケーション、ソ連邦解体、経済問題およびその他の要因に原因帰属できないと結論」しています。

こうした人々をソ連政府は放射線恐怖症(ラジオフォビアradiophobia)とし、気の迷いや科学知識の不足から「正しく怖がる」ことができず起こしたあり得ない反応などと扱いました。現実の被曝影響と受け入れませんでした。社会的拒絶の環境ストレスが加わり、症状が強化されました。

被曝した人々の、現時点では医学的には説明がつかないかもしれない身体症状や不安を現実のもの「無知」「不確実性」の放射能影響としてケアし解明すべきです。こうした非発がん影響をガン死リスクだけを問題にする人々、丹羽会長や中西準子氏は認知していません。放射能汚染を過小にリスク評価しており、その食品検査強化不要というリスク管理判断は間違っています。

次に、「無知」「不確実性」の放射能影響を取り入れたリスク管理とケア、中西準子氏らのリスク管理論では「無知」「不確実性」の影響が入れない理由を考えて見ます。


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