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食品で内部被曝を生涯で100mSvも受忍できない [放射能検査と摘発、食品、水]

10月27日に食品安全委員会は、放射能汚染食品の管理・基準値の設定について基本的見解を正式決定しました。日本は狂牛病・BSEの侵入を防げなかった反省から、取り締まる農水省、厚労省と、その取り締まり策を科学的客観的に評価する食品安全委員会の分かれた枠組みで食品の汚染などを管理しています。放射能汚染への取締りを科学的に裏付ける見解を食品安全委員会が厚労省に示したのです。

7月26日に原案を決定しました。生涯に100mSv・ミリシーベルト以下です。食品では放射能が体内に入っておきる内部被曝ですが、「これは低線量における過去のばく露データをみた場合、食品だけの影響をとらえて評価をしている論文がほとんど見当たらなかった」「現時点では(外部被曝と内部被曝)両者を区別して判断する必要は無い」などの理由から「食品健康影響評価を超えて外部被曝を含めて全体の数値」で生涯に100mSv・ミリシーベルト以下を出しました。 参照

そして、一般国民や関係機関からの意見を聴取をおこないました。学校教育を管轄する文科省は、「学校給食に関してとられることが期待される措置があれば、あわせて御教示下さい。」とか生涯での乳幼児期、少年期などでの「累積線量の振り分けにリスク管理機関は何をもとにどのように判断すべきと考えていらっしゃるのでしょうか。」などを出しています。3000件余りのコメントが寄せられました。

 食品の放射能汚染対策を、日本政府は1998年(平成10年3月6日)に立案しています。ICRPのPubl.40「放射線緊急時における公衆の防護のための介入に関する諸原則」に従った対策です。1984年のPubl.40は主として事故発生後短期問の、かつ事故地点の近傍における対策の勧告集で、事故から最初の1年間で50~5mSv/年を出しています。それで、日本政府は放射性セシウムでの内部被曝は5mSv/年で規制値案をまとめています。

 1984年のPubl.40から3年後の1987年11月の「食物連鎖中の放射性核種に関する国際会議」で報告された国際連合食糧農業機関(FAO)の案では、飲食物の国際貿易に適用する暫定的な放射能対策レベル(IRALF)では、最初の1年間では5mSv/年で2年目後以降を1mSv/年間としています。

 先の98年放射能汚染食品基準値案は、事故当初に焦点を当てています。それ以降には触れていません。しかし4年後に出された「緊急時における食品の放射能測定マニュアル(平成14年3月)」ではセシウムでは「事故状態の予測が確実になり、放射性物質又は放射線の放出が減少する」第2段階では「1年間での食物摂取による被ばくを実効線量で1mSv/年」としています。

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 規制当局の厚労省は、最初から東電フクイチ核事故はまず放射性セシウムでは5mSv/年で、事故状態が固定化し放射性物質の放出が減少する段階、2年目以降は1mSv/年で規制値などを設定し直すつもりでいたのでしょう。その厚労省からみれば「内部被曝、外部被曝をあわせて生涯に100mSv以下」は、手足を縛る見解です。

 福島県、東日本を中心に東電フクイチ核事故による放射能で、外部被曝だけで1mSv/年以上の地帯が広くあります。原子力安全委員会は、日本では平均して自然放射線量が毎時0.05μSv、年間約0.44mSvあるとします。ですから、毎時0.05μSv以上計測される地域の人々の食物摂取による内部被曝を1mSv/年以下にしなくては、国民を護らないことになるからです。日本政府は福島県を除いた地域では、地表から高さ1メートルの地点が1μSv以上となったら除染対象にしています。除染で0.7μSvになっても、内部被曝は受忍できないことになります。政府全体で、放射線から国民をどのように護るのか?それがないのです。
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 そして10月27日に食品安全委員会が厚労省に渡したリスク評価の答申は、答申文面は7月26日の原案と変わりません。しかし委員長談話で「今回の評価は食品安全委員会が国の健康影響評価機関として『内部と外部とを合計して生涯100mSvでリスクがある』と評価したわけではなく、外部被ばくなどの食品以外からの被ばくについては、しかるべき機関において適切な措置を講ずべきものと考えている。」と”内部被曝で生涯100mSv”と根本的変更しています。7月の「内部被ばくと外部被ばくを合計して生涯100mSvでリスクがある」という報道は、委員会の説明が悪く、記者が勝手に勘違いして報道したからだそうです。 記者会見模様

「低線量における過去のばく露データをみた場合、食品だけの影響(内部被曝)をとらえて評価をしている論文がほとんど見当たらなかった」のに、内部被曝だけでのリスク評価ができるはずもなく、食品安全委員会のリスク評価は全く科学的根拠が無いものになってしまいました。厚労省官僚は当初の予定通り、核事故から1年後の来年春から1mSv/年で規制、500ベクレルBq/kgを100に下げることできますから万々歳です。小宮山厚生労働大臣には、「より一層、食品の安全と安心を確保するため、来年4月をめどに許容できる線量を年間1ミリシーベルトに引き下げる」と手柄顔で会見できます。大臣に花を持たせられるから、この点でも官僚には好都合。

実際には10分の一、20分の一に下げられる

 厚労省は「食品中の放射性セシウムの濃度が時間の経過とともに低くなってきたことから、この上限を1ミリシーベルトに引き下げる方針を固めました。」そうですが、実際は違います。
 福島県産米、検査の結果は、以下。
500ベクレル以上 0    (0.0%)
100ベクレル以上 5    (0.4%)
100ベクレル未満 203  (17.3%)
検出限界(セシウム137が10、134で10)以下    964  (82.3%)

一番土壌汚染されている福島県ですら100Bq/kgではほとんど不合格にならない。5mSv/年を0.25、500Bq/kgを25に下げても80%強のお米は合格します。25Bq/kg以上のお米は買い上げて補償すればよいし、お米も不足しない。内部被曝も低く抑えられる。政府の原発対策本部は、8月に厚生労働省の現在の測定データを基に食品からの内部被ばくを、試算値として約0.11ミリシーベルと評価しています。

1mSv/年・100Bq/kgで規制は世界の原子力村での村の常識だから、これを破って国民の健康の損傷をへらすために現状で食糧経済的にも十分可能な0.25mSv/年・25Bq/kgで規制すると、世界の原子力村の村民、米国やフランスやICRPやIAEAなどの関係者や補償費をだす東電や財務省から陰に陽に厚労省官僚は袋叩きに遭う。
 東電フクイチ核事故で放出されたセシウムは、その核種構成から物理的に約6年後のは半分のベクレルにへります。それ以降は、減り方が遅くなります。作物への移行の程度が同じなら、時間の経過と共に食品中の放射性セシウムの濃度が低くなりますから、0.25mSv/年・25Bq/kgからさらに規制値は下げられます。

 しかし、今回の食品安全委員会のリスク評価答申が実質的に変更された力学を考えると、できるだけ内部被曝を下げ国民を護るために食品汚染の実態にあわせて実行可能な規制が行われることは、このままでは期待できません。

自殺した食品安全委員会

 また、食品安全委員会としては自殺行為です。日本は英国からのBSE・狂牛病の侵入を、飼料規制を十全に行わなかったので防げませんでした。その理由として、規制当局の農水省は飼料規制の妥当性について、農水省の審議会にかけて答申を得て行っています。飼料規制だけでなく、様々な規制は学識経験者などの審議会での審議、答申を得て、お墨付きを得て行われます。

 1996年4月、世界保健機構(WHO)の勧告を受けて、牛への肉骨粉の使用を行政指導で禁止。併せて法的規制の必要性について、専門家で作る農業資材審議会飼料部会で検討を始めました。複数の委員が「勧告は明らかに(肉骨粉の)使用禁止をうたっている」などと法規制を求めました。「次回以降の検討事項」として結論が見送られたが、結局、具体的な検討はされず、同部会の議論は同年9/18を最後に立ち消えとなりました。EUで狂牛病問題が再燃した後の2001年3月まで5年間も凍結状態。国内初の感染牛が見つかった直後の9月中旬になって、泥縄で法制化しました。

 この経過から、英国などに範を取り、お墨付きを出す審議会を規制当局から切り離し独立させることが事態の再発を防ぐために有効ではないかとして作られたのが食品安全委員会です。米国産牛肉の輸入再開の審議で、その独立性、中立性には大きな疑問符がつきました。それでも、そのリスク評価は論理的整合性を保とうとする努力がみられ、それなりの体裁はありました。

 今回の食品放射能汚染のリスク評価では、体裁さえ取り繕っていません。7月26日に原案を、10月27日の正式決定で委員長談話で全く科学的根拠が無いものにしてしまいました。管理当局の都合意向に迎合する高名な学者らをみると、独立委員会方式が日本では権力の暴走を制止するものならないことが歴然としています。この国の権力・統治機構に、どのようなスタビライザーを組み込めばよいのか?そうした課題も出てきたと思います。

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