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新原発防災対策(案)では、子供を甲状腺被曝から護れない 核災害への備え⑩ [被曝影響、特に甲状腺]

日本政府は、原発事故・核災害への防災対策の見直しを、原子力安全委員会、原子力施設等防災専門部会、防災指針検討ワーキンググループ(防災WG)で進めています。防災WGは、原発核災害の放射能雲・ブルームのなかの放射性ヨウ素による甲状腺被曝を避ける対策、屋内退避、ヨウ素剤服用等の対策を予め立てておく地域をPPA(Plume Protection Planning Area)と名づけ、東電フクイチ核災害から「概ね50 ㎞」としました。

基準・指標を100mSvから50mSvに半減

まず基準・指標を半分に変更しました。「新たなIAEA の安全基準文書によると、放射性ヨウ素による甲状腺被ばくを避けるために安定ヨウ素剤を服用する指標は、100mSv から50mSv に引き下げられた。」
そして、「この50mSvをSPEEDIを活用した甲状腺等価線量についての(東電フクイチでの)3月23日の逆推定の結果に当てはめると、その範囲は、概ね50 ㎞となっている。これを踏まえ、この区域の範囲の参考値としては、『概ね50 ㎞』が考えられる。」

 東電フクイチの甲状腺等価線量は、現行の防護指針の評価法、ブルーム通過時に、なんらの措置も講じなければ受けると予測される被曝線量で出されています。この線量は、いわば最大値ですが、原子力安全委員会は「より安全側の対応になる」ので採用しています。

あったらいいな、75%減るフィルター効果

1343663434.jpg今回の案では、放射性ヨウ素の吸入量が75%減るフィルター効果がある屋内などに1日に16時間は過ごすとしています。つまり、従来の予測線量評価に比べると安全性を切り捨てた評価法を採用しています。それで計算すると従来よりも甲状腺が被曝する線量が半分になります。従来は100mSvと評価された地点が、50mSvと評価が変わります。

指標が100mSvから50mSvに引き下げても、対象地域は従来と変わらないのです。それで、甲状腺等価線量が従来の基準で100mSvの地点、おおよそフクイチの事例から50kmをヨウ素剤服用等の対策を準備する区域(PPA)としています。

「ヨーロッパ、ドイツの方の報告で一般の家屋でどのくらいでプル ーム(放射能雲)が中に入ってくるか・・6時間でだめになる・・完全なシェルター、要するに換気装置を、もともと核戦争用のシェルターみたいなやつはそこにとどまるべきで、そうではない一般の建物の屋内退避というのはすぐにプルームが入り出すので有効ではないという評価(鈴木・防災WG外部委員、8/26)」
「家屋で実験をしてフィルタリングファクターをやっていますが、なかなか難しい。それから、効果もそれほど高い効果は得られないというのは、今鈴木委員がおっしゃったとおりだと思います。」(本間主査、8/26)
「建屋の家屋のフィルター効果というのは、これ実際データというのは余りないのですけれども、これは防災指針にこういう4分の1から10分の1・・そういう記載があるので、安全側の4分の1という効果をとっていますが。それが劣化していくと、時間とともにですね、それはなかなか難しいのですけれども。そういうデータがないので。」(本間主査、10/20)

このように吸入量が75%削減の高いフィルター効果が16時間もあるとは考えられません。また、今回のように地震と複合すれば、家屋には歪みやヒビが入り、フィルター効果が著しく落ちると思います。屋外に避難することもあります。ですから、「より安全側の対応になる」屋外に居続けなど、なんらの措置も講じなければ受ける線量で考えるべきです。

防災WGのシビアアクシデント時の1/10の放出量での被曝評価から、約90km圏と推し量れます。想定最大放出量での試算を示すべきです。

ヨウ素剤を準備しない遠方地域の対策

また「もっと広域の場合はプルームの方向はどこに行って、そこの住民はこういうふうにしなさいというアナウンスメントが絶対に必要なんです。・・基本的にそんな遠方の場合は本当にヨウ素剤を中心というよりは、屋内退避とそれから確実な飲食物の摂取制限が緊急にできるかどうかという方が大きいんだろうと思います。

1339158570.jpg・・家庭菜園なんかも含めて、飲食物の野外にあるものは緊急禁止、とりあえず安全が確認されるまでとるなという、恐らくそれが一番ヨウ素の摂取経路、遠方でのヨウ素の摂取経路としては経口の方が大きくなってくるはずなので、そういうことができる体制をとるんだと思うんです。・・

それ(アナウンスメント)を原発のある県がやるのか、国がやるのか、その辺は実際にそういう広域になっていった場合、県では対応できない、あるいは県外に及ぶことがあるということもあり得るので、これは国としてやるかどうかというような準備体制になるんだと思うんですけれども、(鈴木委員10/20)」

時頃何処に何流れてくるか、タイミングが大事

このな様々な対策を手早く的確にとるためには、放射性ヨウ素が何処に何時流れていくか、という予測情報が必要です。屋内退避なら隙間を目張りしたり、放射性ヨウ素で汚れていない水や食料を確保し数日間引き篭もる準備をする時間が必要です。安定ヨウ素剤は備蓄してあるものを配布する時間、乳幼児に飲ませるシロップ剤に調製する時間が必要です。服用は、前24時間以内または直後で最も効果があり、効果は1日位とされていますから、服用は早すぎて流れてきた時には効めが切れました、遅すぎては効用がないのでタイミングが大切です。

新しい防災対策は、5km以内はすぐに退避、5~30km圏は放射線測定器などを事前に配備して、空間の線量の測定値に応じて避難などする地帯です。目安をSPEEIDIなどでの被曝量を予測して予測値から実測値に、IAEAが推奨する実測値方式に切り替えています。

しかし配備された測定器で放射性ヨウ素の濃度がリアルタイムに測定できません。線量計では、地面に沈着した放射能から放射線、空中のブルームからの放射線など全ての放射線を測ります。そこからブルーム中の放射性ヨウ素だけ割り出すのは出来ない。必要な情報は、1立方メートルの大気中の放射性ヨウ素が305ベクレル以上有るかです。305以上なら服用。

その濃度情報は、大気を吸引してフィルターを通して、フィルターに付着したものを測定するダストモニタリングで計測します。「実際の事故の時というのはダストモニタリングの結果というのは2日遅れぐらいになってきてしまう(鈴木委員)」IAEA推奨の実測値方式では、一昨日、子供にヨウ素剤を飲ませるべきだったと“後の祭”になる。IAEAもその欠陥、実測値方式が甲状腺の放射性ヨウ素被曝対策に実効性が低いことは認めていて、別のやり方を考えなさいとしています。

その別のやり方が、今回の防災対策案では示されていない。ですから子供らを放射性ヨウ素による甲状腺被曝・甲状腺癌から防護する策は、今は「絵に描いた餅」です。その別のやり方としてIAEAが挙げている一つは、排気塔からの放出量モニターを使うことです。放射性ヨウ素の放出の量や時刻が判れば、SPEEDIを使い何処に何時流れていくかを大まかに、不確実であっても予測できます。

柏崎刈羽原発から○○時に出た放射性ヨウ素が新潟市方面に流れる、長岡市方面に流れる、上越方面に流れるそうした大まかな情報でも、放射能の流入が少ない南相馬市から、大量に流れてくる飯舘村へ逃げるようなことは防げます。飯舘村の村民も逃げれました。

福島県は服用を支持していませんが、一方、約47kmはなれた三春町は3 月15 日に自治体の判断で住民7248名に配布し、その際に服用を指示し、服用しています。

ですから、3.11核災害で、SPEEDIが活用されなかった理由、発電所のモニター・計測設備などのハード面、予想プログラムなどのソフト面、意思決定など運用面での検証が不可欠だと思います。 続く


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