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文芸春秋9月号の木村俊雄氏論文について=⑯追加漏れ口は何処に 加筆 [東電核災害の検証]

新潟県の技術委員会で木村氏の主張が取り上げらた。新潟県の技術委員会では、福島事故検証課題別ディスカッションの【地震動による重要機器の影響】で、1号機非常用復水器(IC)の小破口LOCAの可能性を論じている。田中三彦委員から問題提起された。

⑯追加漏れ口は何処に

原子力規制委員会は、逃し安全弁SRVの「安全弁は原子炉圧力がスプリングによる圧力に打ち勝って弁体を押し上げる構造であり、徐々に原子炉圧力容器内の蒸気が排出される」「逃し弁は、作動圧を越えると強制的に開となる構造であり、、一気に原子炉圧力容器内の蒸気が排出される」「したがって、安全弁機能と逃し弁機能との作動時の蒸気の排出状況が異なり、」と説明している。(中間報告書NREP-0001の63,64頁) http://www.nsr.go.jp/data/000069286.pdf


だから、SRVやSV安全弁が閉じる炉圧を越えて上がり【原子炉圧力がスプリングによる圧力に打ち勝って弁体を押し上げ】【徐々に原子炉圧力容器内の蒸気が排出され】る。炉圧が上昇するからその量が増える。IC非常用復水器の蒸気管ベントラインの漏えいと合わせて、相当な量になるだろう。やがて、それが漏えい面積で、800㎟になる。そうなれば炉圧は7.64Mpa以上は上がらないだろう。


ICベントラインの割れ目など漏えい孔は、小さくとも、通過する水蒸気などの高温で熱くなり高温クリープで成長して大きく広くなる。1管で最大で200㎟相当の漏えいで、A系B系の2管で最大400㎟に相当する。中間報告書NREP-0001の通りなら3弁あるSV、4弁あるSRVは完全に閉まらず、完全に開いてもいない状態である。全体で漏えい面400~600㎟に相当する漏えいがあればよい。総合計で漏えい面積で、800㎟相当になる。

また、この稿の仮定では、原子炉内はドライアウトしている。「『自然循環』による水流がなくなると、炉心内の燃料ペレット(直径・高さともに一センチ程度の円筒型に焼き固めた燃料)が入っているパイプ(燃料被覆管)の表面に『気泡』がびっしり張り付きます。この『気泡』が壁となって、熱を発している燃料被覆管と冷却水を隔離してしまい、冷やすことができなくなり」という状態に【地震の後、わずか一分三十秒後に『ドライアウト』が起こっていた可能性が高い】(2019年9月文芸春秋・木村俊雄氏論文173頁)


HTC_Rep.35.1_2015-09上2.jpgそして、この気泡が被覆管の放熱=冷却を阻害し、ジルコニウム合金製の被覆管が高温化する。被覆管の融点1850℃に達するはるか手前の800℃以上で、高温の金属ジルコニウムと気泡を作る水蒸気・水とが化学反応が盛んになる。。反応式はZr+2H2O → ZrO2+4Hである。水は分解されて水素ガスが生成し、ジルコニウムは酸化されて脆い酸化物となる。また800℃位にまで過熱された水蒸気が発生している。こうした高温800℃以上の水蒸気や水素ガスが、SRV逃し安全弁の弁体を押し上げ徐々に原子炉圧力容器内に排出されてる。


そして弁の仕様では使用【の最高温度は302℃であり、高温でも500℃程度までしか想定していない。】900℃位の蒸気が【通ることによって弁座破損し完全に閉まらなくなることは容易に考えられる。】と圓山重直/東北大学 流体科学研究所教授は指摘している。そして当時の計測データから、【20:26頃に安全弁( SV203-4C)の弁座に直径1.7cm相当の隙間が空き】と分析・推計している。これは漏えい面積では227㎟になり、安全弁だから高温の水蒸気は格納容器のD/Wドライウェルに出ることになる。(2015年論文



原子力規制委員会は、【過熱蒸気により逃し安全弁のフランジガスケット部が損傷し、圧力容器気相部温度が450℃に達した時点で漏えい発生を仮定】している(中間報告書の61頁)。だからSRVとSVの”弁座破損し完全に閉まらなくなる”ことは十二分にあると考えられる。


そして、この稿では水蒸気と水素ガスが漏えいする。SRVが漏えいの主体ならば、S/Cが漏えい先になる。水蒸気はS/C圧力抑制プール内で凝縮するが、水素ガスは凝縮しないので、泡が形成されるだろう。発泡しても、細かい小さな泡で音が余りしないと思うが、時折はW/Dとの圧力調整弁の音がするだろう。SV安全弁が漏えいの主体とすると、格納容器のD/Wドライウェルが漏えい先だから、そのような発泡、発音も稀なことになるだろう。

運転員・当直等がSRVの作動音を聞いたという証言がないから、SV安全弁の弁座が破損し完全に閉まらなくなったとすると、見られる


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