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文芸春秋9月号の木村俊雄氏論文について=⑩ICベントラインの耐震性 [東電核災害の検証]

新潟県の技術委員会で木村氏の主張が取り上げらた。新潟県の技術委員会では、福島事故検証課題別ディスカッションの【地震動による重要機器の影響】で、1号機非常用復水器(IC)の小破口LOCAの可能性を論議している。田中三彦委員から問題提起された。

このIC蒸気管ベントラインの耐震性に「1号機循環水系配管については、建設当時に耐震重要度分類はなく、耐震評価が行われていない。1991 年には海水系配管の損傷により建屋内に海水が漏洩している。」と新潟県の技術委委員会で指摘されている。(中間まとめ) http://www.pref.niigata.lg.jp/HTML_Article/187/166/160810_No.3_kadai1,0.pdf


1991年の海水系配管の損傷の件は、文芸春秋2019年9月号の木村敏夫氏の論文で176頁から氏の体験で出ている。要約すると【フクイチ1号機の配管腐食部分から冷却用海水が漏れ出した。電線ダクト管を経由して、タービン建屋に、放射能汚染水が浸入してしまった。
 建屋の地下に海水が貯まり、非常用ディーゼル発電機が水没して機能を失った。法令とマニュアルから、非常用発電機が喪失したなら、ただちに原子炉本体の運転を停止しなければならない。結果、1号機は68日間にわたって、運転を停止せざるをえなくなった。
 木村氏は上司に疑問をぶつけた。「これくらいの海水漏洩で非常用ディーゼル発電機が機能を喪失するならば、津波が来た場合は、すべての発電機が使えなくなる。そうなれば原子炉を冷却できないので、事故を解析する必要があるのでは?」上司は答えた。「君の言うとおりだ。しかし安全審査のなかで津波を想定するのはタブーなんだ」


 上司は、原発のデザイン・設計ベースの事故事象について安全審査する担当者だった。東大の原子力工学科を出たエリートで、人間的には良い人物だった。この言葉を聞いて、氏は戦慄し、大きな脱力感を覚えた。氏はついホンネを漏らしてしまった。 「デザインベースから駄目ではないですか?」と。


 言った瞬間に、すべての対話は終わり、その後は、なおざりの報告書が作られ、埋まっていた配管が掘り起こされただけで、それ以上の対策は何一つとられなかった。】


それでは、話をIC蒸気管ベントラインに戻して、第6回第6回の東電回答・150713_No.2,0.pdfに依れば《非常用復水器系配管のうち,原子炉を「止める」「冷やす」放射性物質を「閉じ込める」に係わる安全上重要な機能を有する主要なSクラス設備については,東北地方太平洋沖地震に対する影響評価を実施しております。》とその「地震観測波を用いた地震応答解析では、非常用復水器の配管の評価値は全て評価基準値を満たしている。」と東京電力は主張しますが、ベントラインの《当該配管については,耐震Sクラス配管に該当しないことから,東北地方太平洋沖地震に対する影響評価は実施しておりません。》


県の技術委委員会の委員からは「東京電力が実施した地震応答解析は、配管支持装置などは正常であるという前提でなされており、この結果から地震動の影響がなかったと即断することはできない。」と指摘されています。
ICベントラインの弁は「非常用復水器(B)上部に設置されており,1号機原子炉建屋4階の床面から5~6m高さにあるグレーチング付近にあります。」グレーチングとは、鋼材を組んだ[格子・スノコ]で溝などへの排水がスムーズな金属製の組み込み型の蓋のこと。ベントラインの配管・弁の支持装置などは正常だったでしょうか。? 東電曰く「当社がこれまでに行った調査時のビデオや写真などからは確認できていません。また,事故以前の映像,写真も調査した限りでは確認できませんでした。」写真は撮られていません。不明です。


この弁付近で、微小な割れ目が生じたら??非常用復水器系の1次系配管は、地震観測波を用いた地震応答解析で割れ目は入らなかったと東電は云う。そこの入口蒸気隔離弁付近から、引き出される肉厚5.5mmの管と三軸弁らのベントラインは、応答解析・影響評価していない。だからこの弁付近で、微小な割れ目が生じていても、何の不思議もない。そうなると、先ず、高圧かつ高温の水蒸気が漏れ出す。 続く


touden田中委員ご質問回答(東京電力)部分,0.jpg

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