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エコキュートを利用する、長期エネルギー需給見通し(案)の検討⑨、パブコメ2015/7/1締切 [エネルギー基本計画]

全原発の再稼働を前提に織り込んだ「長期エネルギー需給見通し 2015」の策定に向けた御意見の募集、パブリックコメントが7月1日締切で行われている。それにかかっている需給見通し(案)を検討する。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620215004&Mode=0
これまでは下部の追加欄

需要より再エネ電力の供給が多い場合②

Co2排出00_.jpg 3.11前には「ゼロ・エミッション」低炭素電力供給が論議されました。太陽光発電PVも原子力発電NPG nuclear power generation も「ゼロ・エミッション電源」発電時に二酸化炭素の排出量をしない点は同じ低炭素電力です。電力需要と発電供給とのアンバランス、不一致な時の対応能力のなさも同じです。それは、対応力に優れた火力発電、水力発電に頼しかないのです。

 そして、原子力発電NPGを使うと夜な夜な電力の供給が過剰な状況になります。揚水式水力発電での上池への蓄水で消費してもなお余ります。(上池に蓄水に使った電力は、下池への落水での発電で約三分の一が回収されます。揚水式水力は蓄電装置です。)

 エアコンと同じくヒートポンプHPを使い、暖房時のエアコンのように貯水タンクの水を温め温水を作る装置を作りました。エコキュートと名を付けました。これで、深夜から明け方までの原子力発電による余剰電力を消化する。その為にその時間帯の電気料金を安くしました。
 「ゼロ・エミッション電源」でPVを大規模に導入する政府方針、2020年には2005年の20倍の2800万kW、2030年には40倍の5300万kWとの政府方針をすすめるとPVでも日が燦々と照る週末や秋春に、PVの電力供給で過剰になるとみられました。その対策としては、
「太陽光発電等の大量導入時の系統安定化対策としては、柱上変圧器の分割設置や電圧調整装置(SVC)、蓄電池の充放電制御、面的に分散した太陽光発電の出力変化による潮流変化への対応などの多くの課題がある。」
「需要面の課題としては、新たな需要の創出や将来的にはピーク電力の削減による電力供給の高効率化が期待できる需要制御(DSM)といった課題が挙げられる。」
 それらを纏めて17頁には「純国産のエネルギーであり、環境面でも優れた特長を有する太陽光発電が導入された場合に最も重要なインフラとなりうる世界最先端の『スマートグリッド』を構築することを目指して、将来の太陽光発電の大量導入に向けた準備を官民一体となって進める必要がある。」

スマートグリッド
スマートグリッドの構想図では、前者の系統関係は「・今後大量導入される太陽光発ネットワーク側蓄電池と既存の火力発電・水力発電等との協調制御が今後の課題」、
後者の需要関係は「・DSM(需要側管理)は今後の課題
・スマート家電、プラグインハイブリッド車等との連系は研究開発段階」
となっている。
参照・・ http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g90522a02j.pdf

Co2排出02_.jpg

Co2排出03_.jpg先ず、後者の需要関係を検討する。

国の資源エネルギー庁の解説図では、具体的には蓄熱式ヒートポンプ(エコキュート)を昼間に運転することと、充電だけでなく放電できる機能を備えたEV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド)への充電である。

電力会社から見ると、屋根に3~4kWの太陽光パネルを載せて、エコキュートで1~2kWを消費、EV(電気自動車)で1kW消費、残りをエアコンや蓄熱暖房機で消費する形が描かれている。この東京電力の説明図から、幾つかの問題、矛盾が読める。

一つは、PVと原子力発電NPGの競合だ。エコキュートを深夜にNPG稼働で生まれた余剰電力で稼働させ温水を造る。それを夕方から夜の家事や風呂で使うまでの間、昼間は保温蓄水しておく。昼間のPVの余剰電力で温水を作る余地が十分にあるのだろうか。朝と晩の2回も風呂に入っている時間があるだろうか。使う量は上限がある。逆も言える。
 PVの余剰電力でエコキュートを使うとする。余剰電力が少なくて昼間に作った蓄水温水が不足していたり、温度が低いことがある。そうしたら追い焚きなどすればよい。エコキュートで50%しか賄えないかもしれないが、その分はガスの消費≒二酸化炭素削減はしている。 PVのスケジュール運転、天気を予測して翌日の運転を計画するPVの使い方をするから、計画的に前もって準備できる。
 むしろ、PVを大量導入するなら、余剰電力対策でエコキュートを使うことが電力系統対策にも効果的である。太陽光発電の出力変化対応、変化による潮流変化への対応策となり、電圧調整装置(SVC)などのを設置を減らして全体費用を少なくすることが、「ゼロ・エミッション電源」の際の研究で示されている。
 つまり、余剰電力消費の点で原子力発電はPVと対立している。PV大量導入で先鋭化する。エコキュートをPVの産む余剰電力対策として使うなら、原発は夜間に余剰電力を生まない様に数や規模の上限で規制される。逆に、原発の深夜帯の余剰電力で動かすことにしたら、PVは電力系統対策に多大な費用がかかり制限される。

一つは、エコキュートの使い方にエネルギー的に無駄が多い。無駄な電気を使わせるようになっている。
家庭エネルギー消費158.jpgエコキュートはヒートポンプである。熱を物質から汲み上げてポンプアップして、他の物質に移す装置がヒートポンプ・略号HP。エコキュートは、屋外の大気から熱を汲み上げてタンクの水に移すヒートポンプである。しかし原理的には、屋内の大気の熱を汲み上げる事も可能である。この場合、熱を汲まれた室内は冷える。冷房される。だから、熱の汲み上げ先に室内を選べれば、エコキュート使用時には冷房は不要である。冷房用の電気は要らない。ところが、エコキュートの熱交換器の設置はそうなっていない。わざわざ、冷房機を使わせる、電気を多く売るようになっている。
 同様にエアコン使用時に汲み上げた熱をタンクの水にも移せるようにしてあれば、エコキュートと同じ効果がある。
吸熱と放熱先に屋内、屋外、水タンク、給湯用タンクを用意し、
エコキュートの使用運転を屋内から吸熱し給湯用タンクに放熱する冷房(主)&給湯モード、
屋内と屋外から吸熱し給湯用タンクに放熱する給湯(主)&冷房モード、
屋内と水タンクから吸熱し給湯用タンクに放熱する冷房&給湯&夜間冷房用冷水モード、
屋外から吸熱し給湯用タンクと水タンクに放熱する給湯&夜間暖房用温水(巨大湯たんぽ)モードの
4モードが1台のヒートポンプと4台の熱交換器でできる。
 太陽のエネルギーを電気と熱で利用できる。家庭のエネルギー使用の半分以上は冷房、暖房、給湯で占めている。これを太陽のエネルギーで賄うことができる様になる。今のエコキュートの使い方の給湯オンリーで、二酸化炭素削減量は1台1年間で約0.64トンと計算されている。冷暖房に使うようにしたら、どれ位の削減になるだろうか。改装、改造はできるか。

 今でもエコキュートは深夜の冷房もできるのに、冷房機を使わせる、電気を多く売るようになっている。電力会社の利益を優先している。エコキュートの高度化は、電力会社に任せて置いたら電気使用量が減るから、実現しないだろう。エコキュートは、2015年5月末でに約469万台出荷されている。これをPV太陽光発電の大量・多台数設置に利用しない手はない。

PVシステム06_.jpg

これまで


”低炭素電力”論議での太陽光発電電力の扱われ方、長期エネルギー需給見通し(案)の検討⑧、パブコメ2015/7/1締切 [エネルギー基本計画]

全原発の再稼働を前提に織り込んだ「長期エネルギー需給見通し 2015」の策定に向けた御意見の募集、パブリックコメントが7月1日締切で行われている。それにかかっている需給見通し(案)を検討する。
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需要より再エネ電力の供給が多い場合
これまでは再エネ、太陽光発電PVの発電を均す供給を安定化するための方策についての話でした。今回は供給が電力需要より多い場合です。

余剰電力

余剰電力02_.jpg太陽光発電は、季節的に大きく変動します。発電量が多い夏は需要も冷房需要で多い、少ない冬は需要もまた少ない。秋春は発電量はそこそこあるのに、需要がイマイチです。また平日に較べ週末や休日は電量消費・需要は少なくなりますが、発電量は週末だから休日だからと云って減りません。PVの設備容量が期待通りに0.5億kWなど大きくなると、そうした需要がPV発電量より大きくなる時の対応策を検討しておく必要が出てきます。

 電力系統全体では火力発電+PV太陽光発電で賄っているなら、火力を減らせばよい、火力発電を停めればと数字的にはなります。しかし、単純にそうもいかないのです。
 PVはパワコンPCS(インバータ)で太陽光パネルで生産した直流電力を交流に変えています。このパワコンPCSは送電線への落雷などにより発生する0.2 ~ 0.3 秒程度の瞬時的な系統電圧の低下(瞬低)など系統擾乱に対して運転状態を維持する能力が弱いのです。

パワコンPCSの弱点
 長い送電線に雷が落ちると高電圧が発生します。送電線と鉄塔の間の絶縁を破って電流が鉄塔へ、そして大地に流れます。つまりショートします。保護装置が働いて、その送電線を使わない様に系統から切りはします。ほぼ同時に他の経路をたどって電流が流れるようになっていています。それで気付きにくいのですが、一需要家当り平均で年に5回ほど起きているそうです。それに要する時間は0.007~2秒、より上位の広い地域に高電圧で大量の電気を流す送電線ほど厳重に極短時間で切り離します。500kV系で0.007~0.3秒、鉄塔なら高さ50m程度、腕の幅8m程度の鉄塔を使う154kV系から0.1~2秒、一番身近な6600V系なら0.3~2秒です。その間、電流は地面・大地に流出するので電圧が低下します。

 PVのパワコンPCSは電圧低下率が30%を超えると低下する数が増え、低下率60%以上で0.5秒を超えると全滅。切り離しで電圧が回復する場所のPVも、切り離しまでの間に停止します。これにより、多数のPV が一斉に瞬時に運転停止する、大量導入されたら例えば数100 万kW オーダーでPVからの給電が無くなる可能性があります。その結果、系統全体の周波数が大きく変化し、ネズミ算式に瞬時に停電が拡大して最悪では、一都市全体などの広域的な停電を招く可能性もあると指摘されています。また回復した健全な送電線にPVが繋がっていても、PCSが再起動する概ね5~15秒程度は給電は止まります。
参照・・http://criepi.denken.or.jp/jp/kenkikaku/report/leaflet/R10037.pdf

 そのような事態に備えて、瞬動予備力 spinning reserve や運転予備力 hot reserve として火力発電が必要です。火力発電を全て停めるわけには行きません。それで火力発電の発電は必ずあり、その分、PV太陽光発電の電気が余ります。

余る電気を蓄電池の充電に廻す。揚水式水力で上池の蓄水に使う。それらが満杯になったら、どうしましょう?一番単純な方法は、余る分だけPV太陽光発電の装置から買電=給電を止めることです。それでは、折角、燃料がゼロで手に入るエネルギーを捨てることになります、勿体ない。

温故知新、低炭素電力としての原発、太陽光発電の扱われ方をみる
3.11前にはPV太陽光発電は、3.11前にはPV太陽光発電は、「低炭素社会構築」や「低炭素電力供給システム」という文脈・コンテクスト(Context)で語られていました。低炭素電力の本命は原発であり、原発の社会的批判への目眩まし的アイテムで太陽光発電は扱われています。政策的には二の次三の次扱いでも、その研究などはキチンと論理的に筋道が通る内容でなければなりません。それで判明した事を政策的には軽んじても、研究等が虚偽とか無用とわかる内容だと目眩ましにならないからです。温故知新、その時の研究で蓄えられた知見から、今、役立つ視点、知識をたずねてみます。

 経済産業省の低炭素電力供給システムに関する研究会の報告書を検討の材料にします。平成21年5月付の報告書(案)と7月の正式報告書があります。
参照、5月の(案)・・http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g90522a07j.pdf
参照、7月の正式版・・http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g90727e01j.pdf

本命の原発
5月の(案)では、太陽光発電の導入量予定を5頁の図で2030年には2005年の40倍の5300万kWと示しています。7月の正式版では、7頁の図では2020年には20倍の2800万kWとしか示していません。

PV導入00_.jpg 原子力発電は「2009 年度電力供給計画に示されている今後10 年間のうちに運転開始を予定している原子力発電は9基であり、」「原子力発電所2基によって・・1990 年度における我が国のCO2 排出量である12 億3,700 万トンの実に1%に相当する年間約1,400 万トンものCO2 の削減が可能となる」「2020年度を目途に『ゼロ・エミッション電源』を50%以上とする『低炭素社会づくり行動計画』の目標を達成するためには、こうした原子力発電の建設計画を着実に進めていくことが必要となる。」と両方とも記しています。
 そして5月の(案)では「このため、電気事業者が着実な新増設・リプレースを進めるための環境整備が政策的に重要となっている。今後とも安全を大前提として、新増設・リプレースの円滑化や設備利用率の向上、出力向上の推進などの課題を克服するとともに、核燃料サイクルを確立していくことが必要である。」とあります。

 正式版では「このため、今後とも安全確保を大前提として、電気事業者による既設炉の高度利用や着実な新増設・リプレース等を進めることが政策的に重要となっている。具体的には新増設・リプレースの投資をめぐる環境を整備する措置、既設炉における設備利用率の向上や出力向上等に関する事業者の積極的な取組み及びこれを円滑化するための措置が必要となる。また、使用済燃料の貯蔵・再処理・プルサーマル・高レベル放射性廃棄物処分事業等の核燃料サイクルの推進、立地地域をはじめとした国民との相互理解促進や地域共生も極めて重要であり、いずれの課題についても、国が前面に立って施策を進めていく必要がある。」と詳細に倍増し国が前面に立つ必要性を出しています。

PV導入01_.jpg 5月の(案)では「一方、今後の電力供給システムを考える上では、本報告書の7.に示すとおり、需要側における電力負荷平準化の推進がますます重要となる。また、電力需給の状況が変化する中で、原子力発電比率が高まれば、一時的に定格出力以下での運転を行うことが必要となる場合も生じてくると見込まれる。省エネルギー対策の強化等が進められる状況において、こうした運転方法は原子力発電が基幹電源として一層大きな役割を果たしていく上で必要な柔軟性を付与するものであり、今後検討していくことが重要である。」。

「一方、今後の電力供給システムを考える上では、本報告書の7.に示すとおり、需要側における電力負荷平準化の推進がますます重要となる。また、電力需給の状況が変化する中で、原子力発電比率が高まれば、一時的に定格出力以下での運転を行うことが必要となる場合も生じてくると見込まれる。省エネルギー対策の強化等が進められる状況において、こうした運転方法は原子力発電が基幹電源として一層大きな役割を果たしていく上で必要な柔軟性を付与するものであり、今後検討していくことが重要である。」と同じく倍増しています。

 原子力発電比率が高まれば、人が寝静まり電気需要が激減する夜間も、大量の電力が原発から生産されます。今でもその電力をエコファームでお湯作りに使ってもらうために値引きしています。質の高いエネルギーを熱に変える明らかに浪費です。その浪費を報告書では「需要側における電力負荷平準化」と書いています。

「平準化の推進がますます重要」で推進しても、原発が増えればそれで間に合わなくなる。それで原発の事故リスクを高める出力を変動させる運転、出力調整運転を「必要な柔軟性を付与するもの」と明記しています。増設・リプレースでは「安全確保を大前提として」とエクスキューズ・言い訳が付いていましたが、ここにはエクスキューズすらありません。出力調整運転のもつリスクの高さ、危険性を無視しています。

 その一方で、すでに記したように太陽光発電は政府の公式目標ですら隠すような真似をしています。太陽光発電PVも原子力発電NPG nuclear power generation も「ゼロ・エミッション電源」発電時に二酸化炭素の排出量をしない点は同じです。
 電力需要と発電供給とのアンバランス、不一致な時の対応能力のなさも同じです。それは、対応力に優れた火力発電、水力発電に頼しかないのです。そして、原子力発電NPGでは夜な夜な丑三つ時の、太陽光発電は日が燦々と照る時の、その供給が過剰な時にやれることが電力を熱作り(熱温物や冷温物)で消費であることも同じです。人のそれらへの需要に限りがあるから、太陽光発電PVと原子力発電NPGはその熱作り電力消費を奪い合う関係だからでしょうか?

続く

これまで


太陽光発電の安定的計画的電源化、長期エネルギー需給見通し(案)の検討⑦、パブコメ2015/7/1締切 [エネルギー基本計画]

全原発の再稼働を前提に織り込んだ「長期エネルギー需給見通し 2015」の策定に向けた御意見の募集、パブリックコメントが7月1日締切で行われている。それにかかっている需給見通し(案)を検討する。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620215004&Mode=0
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スケジュール運転で二酸化炭素削減
宮古島ではスケジュール運転、最適な制御方法が実証研究された。

スケジュール運転は天気予報など気象データを元に前日に日射量を予測して、太陽光発電PV電力を計算しその出力ロード(時間ごとの推移)、発電出力カーブを予測する。
その予測PV出力カーブと蓄電池の残存電気量から、太陽光発電+蓄電池の合成出力の出力ロード(時間ごとの推移)を作成する。つまり時刻毎に放電するか充電するか計画し、放電時の太陽光発電電力プラス蓄電池からの放電出力または充電時の太陽光発電電力マイナス蓄電池への充電電力の合成出力の出力ロード(時間ごとの推移)を作成する。
これが実現できれば、蓄電池とディーゼル発電機(火力発電)の効率的な運用ができる。変動性電源である太陽光発電を火力発電のように安定的、かつ計画的な電源として位置づけられるようになる。

スケジュールの計画_z5b.jpg
実証結果は下図。これを見ると、太陽光発電の過不足を蓄電池の充放電で打ち消し、計画と実績が見事に一致している。
スケジュールの宮古島実証_zu07_s.jpg
 
二酸化炭素削減、黒島実証研究

このように、蓄電池を併用して太陽光発電を安定的、かつ計画的な電源として利用可能であるから、時間をずらして出力することによる太陽光発電の有効活用と火力発電の高効率運用により、燃料消費量削減、二酸化炭素・CO2削減が可能ではないか。その実証研究が行われた。鹿児島県鹿児島郡三島村の黒島で、九州電力が2010年に行った。予期した結果が得られた。

時間帯シフトの黒島実証01_.jpg
日照量の予測
太陽光発電PVを安定的、かつ計画的な電源として扱うためには確度の高い日照量の予測情報を得ることが大切です。それには気象データから雲の種類やその動きの予測データを抽出することになります。そのデータが全国で、簡単に入手できることが望ましい。
 電事連は気象の変動を、電力の運転予備力で対処する変動幅の20分程度に相当する短周期変動とそれ以上に長い長周期変動に分け、「気象学によれば、雲の種類や、その雲が影響を及ぼす範囲は、短周期変動は10km程度以下、長周期変動は数km~数百kmの範囲に概ね相当する。」としています。
気象とPV出力01_.jpg
そして「これに着目してデータを蓄積・分析。」として、独自に全国321箇所に日射量計・気温計を設置、このうち、117箇所では太陽光発電出力データも収集・蓄積を2009年度から行っています。
気象とPV出力11_.jpg
その分析では、「GWを含む春季など(2010年、名古屋地区)のデータ分析により、短周期変動について一定の平滑化効果を確認。」と名古屋地区で変動の大きかった日( 4 / 17、4/30、5/6、5/9)を分析した結果を報告しています。これで、日照変動によるPV出力変動は広域的に纏めれば変動率が小さくなる、ブロック内でPVが分散設置して在ればブロック単位で変動率は小さくなるという予想された平滑化効果を確認しています。
気象とPV出力02_.jpg
翌年の宮古島実証研究の意味
そして「データ蓄積・分析を継続するとともに、推定手法の合理性についても検証を進める。」「分析にあたっては、今後の出力把握・予測技術の開発に資するよう進める。」と予測手法・技法が未完成と2011年度に纏めています。未完にもかかわらず翌年2012年度に日照量の予測、PV出力の発電出力カーブを予測し、スケジュール運転を宮古島で実証研究しています。
 宮古島の事例では、13時過ぎから14時にかけてPV出力が約3600kWから約200kWまで急減しているが、事前に充電された蓄電池からの放電で対処。14時から15時にかけては逆に約3900kWまで急増し、蓄電池の充電に振り向けています。この日照量の急変≒出力の急増急減を前日に予測し、放電と充電の蓄電池運転を前日に計画していたのです。電事連独自の予測手法・技法は未完成なのだから、日照量の急変は他の予測気象データに頼っています。日本では、気象庁の気象予報になります。
気象庁のGPV
気象予報01_.jpg 気象庁は目的等によって気象の数値予報データGPVを幾つも出しています。
参照・気象庁HP・・http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/whitep/1-3-4.html
格子間隔が20kmの全球モデルでは、高・低気圧や台風、梅雨前線などの水平規模が100km以上の現象を11日間分予測したものです。放射能雲・ブルームの動きを予測するSPEEDIは、この格子間隔が20kmのGPVを基にしてさらに細かく地域区分をして風向・風速、気温等を2km間隔の格子点の予測データを算出します。さらにアメダスデータや地方自治体から提供される実測値で補正する処理をして、500m間隔の格子点の予測データを、1時間間隔で最大44時間後まで算出します。これから放射能雲・ブルームの動きを予測します。

 PV太陽光発電のスケジュール運転の気象予測は、放射能雲でなく水蒸気の雲が相手です。必要な予報期間から5km間隔で36時間を予報期間とするメソモデルを使ったのでしょう。「メソモデルになると、局地的な低気圧や集中豪雨をもたらす組織化された積乱雲など水平規模が数10km以上の現象を予測できるようになります。(気象庁)」これならば、気象庁が全国規模で出していて、入手可能です。
 何れにしろスケジュール運転に不可欠な種類の気象予測は可能でしたし可能です。ですからスケジュール運転によって可能になる、蓄電池を併用して太陽光発電を安定的、かつ計画的な電源での利用はできます。それによって系統全体での火力発電量を安定的、かつ計画的に減少できれば、二酸化炭素の計画的な削減も可能です。


続く

これまで


宮古島での実証研究、長期エネルギー需給見通し(案)の検討⑥、パブコメ2015/7/1締切 [エネルギー基本計画]

全原発の再稼働を前提に織り込んだ「長期エネルギー需給見通し 2015」の策定に向けた御意見の募集、パブリックコメントが7月1日締切で行われている。それにかかっている需給見通し(案)を検討する。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620215004&Mode=0
これまでは下部の追加欄

発電量の凸凹を均す・・宮古島の実証実験

太陽光発電は地点、時刻、天候、日の照り方が違えば発電量が変動するのは当たり前で、晴天時に雲が流れている場合には雲の影が太陽光パネルの上を通過するにつれ、出力が短時間で激しく変動する。多数あれば変動が総体で急激にならない。

3.11前の2009年度には太陽光発電の大量導入に備えた実証研究が始まっている。その一つに「独立した電力系統の離島において、太陽光発電設備等を大量に導入した場合に発生する影響を把握し、系統安定化対策を検討する」十の離島での独立型系統新エネルギー導入実証事業がある。沖縄の宮古島では、蓄電池を使い出力変動と周波数変動を抑制する実証研究が行われた。

 宮古島には、ディーゼルとガスタービン発電機の7万4000kWの火力発電設備、4200kWの風力発電設備と4000kWのメガソーラーが設置されている。太陽光発電PVの太陽光パネル面積は約2.9㌶、太陽光パネル枚数21,716枚である。全体の系統規模は約5万kWで、太陽光発電は8%、風力発電も8%で再生可能エネルギーの比率は16%。蓄電池4100kWを備えた。

周波数の変動・・需給ギャップの目安
電力の需要と供給バランスが崩れると周波数が変動する。日本での周波数は静岡県の富士川と新潟県の糸魚川周波数01_.jpgあたりを境にして、東側は1秒間に流れる方向が50回変わる50ヘルツ、西側は60ヘルツになっている。これが電力の供給が需要よりもよりも少ない、供給<需要では小さくなる。逆に供給>需要では周波数は大きくなる。使う電気機器に影響がでる。
 関西では関東で使ってきた掃除機、電気時計が使えないが電気毛布は使えるように、電熱を利用したものは周波数には関係なく使用できる。モーターは周波数と回転数はほぼ比例するので、電動力を利用するものは影響を受ける。時計や自動オートメーション機器は、電気の周波数を基準に動いているものがあり、周波数が変動すると時計では進みや遅れ、自動オートメーション機器では作動ムラが発生したりする。周波数の変動を北海道、沖縄は±0.3ヘルツ、この他の地域では±0.2ヘルツを目標にしている。その変動幅に収まるように需要に追随して出力を変動させている。

 宮古島では火力発電だけ発電の時間帯は、ごく僅かな変動にとどまった。更に太陽光発電と風力発電が稼働すると、風力や太陽光の出力変動があまりにも急峻だと、ディーゼル発電機が追随しきれずに周波数が変動してしまった。周波数が0.1~0.2Hz近く上下に振れるようになった。ディーゼル発電機のその時点の出力に対して10%程度の幅で風力・太陽光の変動するとディーゼル発電の運転も小刻みに変化し、トータルでは0.3Hz以上の目標を超えて変動した。その変動を蓄電池で抑制することができるか実証実験された。

実証研究の結果
出力変動抑制は、例えば太陽光パネルが十分に発電しているときは蓄電池に充電し、急に雲がかかったり雨が降ったりして出力が低下したら放電する。これによって、太陽光と蓄電池の出力を合わせた「合成出力」を均して平滑化する。その結果は、周波数の変動が見事に緩和された。

 また、系統全体、宮古島の約5万kW全体での周波数変動を監視して、その変動を蓄電池4100kWで緩和すること、周波数変動抑制の実証研究された。実際には、0.3Hzを上回る変動がありそうな場合に蓄電池を稼働させるという運用にした。結果は偏差は約0.15Hzと半分程度に収まることが分かった。


 下図の出力変動抑制研究の沖縄電力データを参照。蓄電池平滑化06_s.jpg

二つの方法の比較
太陽光の出力を監視してその変動を個々のPV装置で平滑化する方法でも、電力系統の周波数変動を監視してその変動を全体で緩和する方法でも、周波数の安定化に効果があった。後者の全体制御は宮古島では系統規模の約8%容量の蓄電池があったから実証研究できたので、系統規模が大きくなる本土でそれだけの容量の蓄電池が準備できるか、容量が足りないと効きにくくなる可能性がある。
 前者は確実に平滑化し周波数変動を抑制できる。太陽光発電は、パワーコンディショナー、PCS (Power Conditioning System)で太陽光パネルで発電した電圧や量がランダムな直流電流を、家電で一般的に使われる交流電流に変換する仕組みで、メガソーラーは系統に売電するだけだからそれがそっくりそのまま系統に送られ給電される。宮古島ではPSCと蓄電池を繋げて、太陽光パネルが十分に発電しているときは充電し、パネルの出力が低下した時は不足分を蓄電池から放電して、太陽光と蓄電池の出力を合わせた「合成出力」で均して平滑化して給電する方法が採られ周波数の安定化に効果があった。
 大規模に実用する場合は、多数遠隔にあるPV設備毎の蓄電池の充電率や放電・充電状況を把握した上で系統全体を制御する事が望ましいので、通信設備なども併せて設置しスマート化すべき。

PVシステム00miyako_.jpg

この他にもスケジュール運転、最適な制御方法が実証研究された。スケジュール運転は「太陽光発電の予測手法を検討し、予測された太陽光発電結果及び蓄電池残存電気量から発電計画を作成し、計画に基づいた出力運転の実現を目指す」蓄電池とディーゼル発電機(火力発電)の効率的な運用方法を得る研究。最適な制御方法は、太陽光発電や蓄電池をつないだ状態で一般家庭や商業施設などに配電したときの電力負荷を模擬し「模擬配電線路に連系されている蓄電池と太陽光発電の最適制御階層」つまりさまざまなパターンにおける負荷の平準化方法を検証する研究。
続く

これまで


住宅での太陽光利用を157万戸から1280万戸へ、長期エネルギー需給見通し(案)の検討⑤、パブコメ2015/7/1締切 [エネルギー基本計画]

全原発の再稼働を前提に織り込んだ「長期エネルギー需給見通し 2015」の策定に向けた御意見の募集、パブリックコメントが7月1日締切で行われている。それにかかっている需給見通し(案)を検討する。
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どれ位の太陽光発電が使えるでしょうか?

再エネ電力の「自然条件によらず安定的な運用が可能な地熱、水力、バイオマス《需給見通し(案)》」がある。バイオマスはガスにして使うのであればガスの供給源の一つで、固形なら石炭の代わりで新たな電源というより燃料源の多様化である。水力はこれまで使われてきた。目新しいのは地熱である。これらは、二酸化炭素排出量は小さいから、代替分だけ排出量が減る。

メガソーラー
メガそらー11s.jpgそして太陽光発電は基本的に人の活動≒電力の需要に応じて発電する。供給の不安定性を減らす方法の一つには、多数の発電と給電箇所を設けることである。地点、時刻、天候、日の照り方が違い発電量が変動するのは当たり前で、晴天時に雲が流れている場合には雲の影が太陽光パネルの上を通過するにつれ、出力が短時間で激しく変動する。多数あれば総体で急激な変動にはなりにくい。

 その点、 出力1メガワット(1000kW)以上の大規模な太陽光発電:メガソーラーを1ヵ所新設よりも、住宅用の4kWの物を250ヶ所以上設ける方が良い。また太陽光は生態系の一次生産者:植物のエネルギー源である。それより高次の生物の根源的エネルギー源である。これまで草地林地であった処を切り拓きメガソーラーを設置すれば、そこの植生、生態系は開拓で物理的に破壊されるだけでなく、エネルギー源である陽光が奪われるのだから再起不能になる。住宅は既に環境生態系は破壊されている。新たな環境破壊を作ることはない。

住宅で太陽光利用
日本の住宅数は6063万戸でうち157万戸に太陽光発電設備がある。太陽温水器などは220万戸である。(平成25年10月1日現在、http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/topics/topi863.htm
 4kWシステムの太陽電池パネル・モジュールの設置面積は約25〜40平方メートルだから敷地面積75平方メートル以上、設置しやすい一戸建ては2561万戸(約42%)。この全てに4kWシステムを設置した場合、約一億kWの設備容量になる。その半分、一戸建の二軒に一軒、全住宅の5軒に1軒設置で0.5億kWになる。

太陽光戸数-topi8617.jpg

0.5億kWはどれほどの大きさであろうか
。東京電力の2010年度の昼夜差は最も多い夏で0.3億kW。
参照・・ http://www.tepco.co.jp/forecast/html/chigai-j.html
 日本全体:10電力計では2009年夏で0.67億kW。日の出から日没までの増える電力需要の大半はカバーできる勘定である。発電量が変動し凸凹するからそれを均し、需要にマッチさせることが大切になる。
続く

これまで