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”低炭素電力”論議での太陽光発電電力の扱われ方、長期エネルギー需給見通し(案)の検討⑧、パブコメ2015/7/1締切 [エネルギー基本計画]

全原発の再稼働を前提に織り込んだ「長期エネルギー需給見通し 2015」の策定に向けた御意見の募集、パブリックコメントが7月1日締切で行われている。それにかかっている需給見通し(案)を検討する。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620215004&Mode=0
これまでは下部の追加欄

需要より再エネ電力の供給が多い場合
これまでは再エネ、太陽光発電PVの発電を均す供給を安定化するための方策についての話でした。今回は供給が電力需要より多い場合です。

余剰電力

余剰電力02_.jpg太陽光発電は、季節的に大きく変動します。発電量が多い夏は需要も冷房需要で多い、少ない冬は需要もまた少ない。秋春は発電量はそこそこあるのに、需要がイマイチです。また平日に較べ週末や休日は電量消費・需要は少なくなりますが、発電量は週末だから休日だからと云って減りません。PVの設備容量が期待通りに0.5億kWなど大きくなると、そうした需要がPV発電量より大きくなる時の対応策を検討しておく必要が出てきます。

 電力系統全体では火力発電+PV太陽光発電で賄っているなら、火力を減らせばよい、火力発電を停めればと数字的にはなります。しかし、単純にそうもいかないのです。
 PVはパワコンPCS(インバータ)で太陽光パネルで生産した直流電力を交流に変えています。このパワコンPCSは送電線への落雷などにより発生する0.2 ~ 0.3 秒程度の瞬時的な系統電圧の低下(瞬低)など系統擾乱に対して運転状態を維持する能力が弱いのです。

パワコンPCSの弱点
 長い送電線に雷が落ちると高電圧が発生します。送電線と鉄塔の間の絶縁を破って電流が鉄塔へ、そして大地に流れます。つまりショートします。保護装置が働いて、その送電線を使わない様に系統から切りはします。ほぼ同時に他の経路をたどって電流が流れるようになっていています。それで気付きにくいのですが、一需要家当り平均で年に5回ほど起きているそうです。それに要する時間は0.007~2秒、より上位の広い地域に高電圧で大量の電気を流す送電線ほど厳重に極短時間で切り離します。500kV系で0.007~0.3秒、鉄塔なら高さ50m程度、腕の幅8m程度の鉄塔を使う154kV系から0.1~2秒、一番身近な6600V系なら0.3~2秒です。その間、電流は地面・大地に流出するので電圧が低下します。

 PVのパワコンPCSは電圧低下率が30%を超えると低下する数が増え、低下率60%以上で0.5秒を超えると全滅。切り離しで電圧が回復する場所のPVも、切り離しまでの間に停止します。これにより、多数のPV が一斉に瞬時に運転停止する、大量導入されたら例えば数100 万kW オーダーでPVからの給電が無くなる可能性があります。その結果、系統全体の周波数が大きく変化し、ネズミ算式に瞬時に停電が拡大して最悪では、一都市全体などの広域的な停電を招く可能性もあると指摘されています。また回復した健全な送電線にPVが繋がっていても、PCSが再起動する概ね5~15秒程度は給電は止まります。
参照・・http://criepi.denken.or.jp/jp/kenkikaku/report/leaflet/R10037.pdf

 そのような事態に備えて、瞬動予備力 spinning reserve や運転予備力 hot reserve として火力発電が必要です。火力発電を全て停めるわけには行きません。それで火力発電の発電は必ずあり、その分、PV太陽光発電の電気が余ります。

余る電気を蓄電池の充電に廻す。揚水式水力で上池の蓄水に使う。それらが満杯になったら、どうしましょう?一番単純な方法は、余る分だけPV太陽光発電の装置から買電=給電を止めることです。それでは、折角、燃料がゼロで手に入るエネルギーを捨てることになります、勿体ない。

温故知新、低炭素電力としての原発、太陽光発電の扱われ方をみる
3.11前にはPV太陽光発電は、3.11前にはPV太陽光発電は、「低炭素社会構築」や「低炭素電力供給システム」という文脈・コンテクスト(Context)で語られていました。低炭素電力の本命は原発であり、原発の社会的批判への目眩まし的アイテムで太陽光発電は扱われています。政策的には二の次三の次扱いでも、その研究などはキチンと論理的に筋道が通る内容でなければなりません。それで判明した事を政策的には軽んじても、研究等が虚偽とか無用とわかる内容だと目眩ましにならないからです。温故知新、その時の研究で蓄えられた知見から、今、役立つ視点、知識をたずねてみます。

 経済産業省の低炭素電力供給システムに関する研究会の報告書を検討の材料にします。平成21年5月付の報告書(案)と7月の正式報告書があります。
参照、5月の(案)・・http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g90522a07j.pdf
参照、7月の正式版・・http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g90727e01j.pdf

本命の原発
5月の(案)では、太陽光発電の導入量予定を5頁の図で2030年には2005年の40倍の5300万kWと示しています。7月の正式版では、7頁の図では2020年には20倍の2800万kWとしか示していません。

PV導入00_.jpg 原子力発電は「2009 年度電力供給計画に示されている今後10 年間のうちに運転開始を予定している原子力発電は9基であり、」「原子力発電所2基によって・・1990 年度における我が国のCO2 排出量である12 億3,700 万トンの実に1%に相当する年間約1,400 万トンものCO2 の削減が可能となる」「2020年度を目途に『ゼロ・エミッション電源』を50%以上とする『低炭素社会づくり行動計画』の目標を達成するためには、こうした原子力発電の建設計画を着実に進めていくことが必要となる。」と両方とも記しています。
 そして5月の(案)では「このため、電気事業者が着実な新増設・リプレースを進めるための環境整備が政策的に重要となっている。今後とも安全を大前提として、新増設・リプレースの円滑化や設備利用率の向上、出力向上の推進などの課題を克服するとともに、核燃料サイクルを確立していくことが必要である。」とあります。

 正式版では「このため、今後とも安全確保を大前提として、電気事業者による既設炉の高度利用や着実な新増設・リプレース等を進めることが政策的に重要となっている。具体的には新増設・リプレースの投資をめぐる環境を整備する措置、既設炉における設備利用率の向上や出力向上等に関する事業者の積極的な取組み及びこれを円滑化するための措置が必要となる。また、使用済燃料の貯蔵・再処理・プルサーマル・高レベル放射性廃棄物処分事業等の核燃料サイクルの推進、立地地域をはじめとした国民との相互理解促進や地域共生も極めて重要であり、いずれの課題についても、国が前面に立って施策を進めていく必要がある。」と詳細に倍増し国が前面に立つ必要性を出しています。

PV導入01_.jpg 5月の(案)では「一方、今後の電力供給システムを考える上では、本報告書の7.に示すとおり、需要側における電力負荷平準化の推進がますます重要となる。また、電力需給の状況が変化する中で、原子力発電比率が高まれば、一時的に定格出力以下での運転を行うことが必要となる場合も生じてくると見込まれる。省エネルギー対策の強化等が進められる状況において、こうした運転方法は原子力発電が基幹電源として一層大きな役割を果たしていく上で必要な柔軟性を付与するものであり、今後検討していくことが重要である。」。

「一方、今後の電力供給システムを考える上では、本報告書の7.に示すとおり、需要側における電力負荷平準化の推進がますます重要となる。また、電力需給の状況が変化する中で、原子力発電比率が高まれば、一時的に定格出力以下での運転を行うことが必要となる場合も生じてくると見込まれる。省エネルギー対策の強化等が進められる状況において、こうした運転方法は原子力発電が基幹電源として一層大きな役割を果たしていく上で必要な柔軟性を付与するものであり、今後検討していくことが重要である。」と同じく倍増しています。

 原子力発電比率が高まれば、人が寝静まり電気需要が激減する夜間も、大量の電力が原発から生産されます。今でもその電力をエコファームでお湯作りに使ってもらうために値引きしています。質の高いエネルギーを熱に変える明らかに浪費です。その浪費を報告書では「需要側における電力負荷平準化」と書いています。

「平準化の推進がますます重要」で推進しても、原発が増えればそれで間に合わなくなる。それで原発の事故リスクを高める出力を変動させる運転、出力調整運転を「必要な柔軟性を付与するもの」と明記しています。増設・リプレースでは「安全確保を大前提として」とエクスキューズ・言い訳が付いていましたが、ここにはエクスキューズすらありません。出力調整運転のもつリスクの高さ、危険性を無視しています。

 その一方で、すでに記したように太陽光発電は政府の公式目標ですら隠すような真似をしています。太陽光発電PVも原子力発電NPG nuclear power generation も「ゼロ・エミッション電源」発電時に二酸化炭素の排出量をしない点は同じです。
 電力需要と発電供給とのアンバランス、不一致な時の対応能力のなさも同じです。それは、対応力に優れた火力発電、水力発電に頼しかないのです。そして、原子力発電NPGでは夜な夜な丑三つ時の、太陽光発電は日が燦々と照る時の、その供給が過剰な時にやれることが電力を熱作り(熱温物や冷温物)で消費であることも同じです。人のそれらへの需要に限りがあるから、太陽光発電PVと原子力発電NPGはその熱作り電力消費を奪い合う関係だからでしょうか?

続く

長期エネルギー需給見通し(案)の検討の1回目
①省エネルギー、②再生可能エネルギー
http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2015-06-20

なぜ日本は世界的なパネル価格低下から取り残されたのか
http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2015-06-21

予備力と再エネ電力
http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2015-06-22

原発全停止のあと、どの発電方式で電力を賄っているか
http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2015-06-24

住宅での太陽光利用・・157万戸を1280万戸へ
http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2015-06-25-2

宮古島での実証研究
http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2015-06-26

太陽光発電の安定的計画的電源化
http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2015-06-27


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