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長期エネルギー需給見通し(案)の検討②、パブコメ2015/7/1締切 [エネルギー基本計画]

全原発の再稼働を前提に織り込んだ「長期エネルギー需給見通し 2015」の策定に向けた御意見の募集、パブリックコメントが7月1日締切で行われている。それにかかっている需給見通し(案)を検討する。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620215004&Mode=0
これまでは下部の追加欄

なぜ日本は世界的なパネル価格低下から取り残されたのか。


再エネ買取制度_.jpg発電コスト検証ワーキンググループは、「設備費用が国際価格に収斂するかどうかは①市場の競争状況、②国内市場における海外生産比率、③再生可能エネルギー事業者の選択等の動向による」としている。(報告の25頁)
 生産した太陽光電力など再生可能エネルギー電力が、総電力市場に自由に参入でき価格のみで取引されるようになっていてこそ太陽光電力設備の市場は活性化し競争状況になる。競争でパネルの価格も下がるのである。
 日本は「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」通称FIT法( 平成23年8月30日法律第108号)で再生可能エネルギー電力の市場の枠組みを決めている。
 http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/2011kaitori.pdf

説明では、図のようにグリッドを持つ送配電網電力会社が全量買い取っていると説明されます。確かに第四条で電力会社は再生可能エネルギー電力発電者からの給電(売電)の「特定契約の申込に応ずる義務」やグリッド「接続の請求に応ずる義務」(第五条)の定めがあります。電力の安定供給の責務を持つ送配電を行う電力会社が、その為に一時的にグリッド電力系統との接続を切る(解列)や出力を絞り一部しか買わないなどの出力抑制の仕組みは余り知られていません。

出力抑制・・電力系統との接続を切る(解列)や出力を絞り一部しか買わないなど電力会社の買電拒否
 出力抑制は本来グリッドに給電(売電)され利用できたはずの電力が廃棄されることを意味します。国民全体から見れば、燃料費などの掛からない電力を逸失することです。再生可能エネルギー電力発電者から見れば本来売電できたはずの電力が売れずに電力量=売上≒収入が減ることです。しかし、電力の安定供給の方が重要であり、その責務を持つ者が電力系統の安定性安全性を保った運用をするために限り出力抑制は行使が認められるものです。これは日本でも欧州でも同様です。場合により再生可能エネルギー電力発電者に補償がある場合と無い場合があります。

給電優先
 欧州・EUでは、先ず法令文書で再エネ電力を優先してグリッドに給電(売買電)すること「給電優先」が決められています。そのため再エネを出力抑制より先に燃料費などがかかる石炭火力や原子力を出力抑制しなければならないことになります。つまり欧州の電力会社は、自らが所有する火力や原子力を出力抑制することになります。再エネ電力は、総電力市場に自由に参入できる市場環境になっています。

 再エネ電力を出力抑制した場合に補償を電力消費者≒国民が負担するため、出力抑制の理由を規制機関に報告しなければならない透明性の高い仕組みが整えられています。少額であっても消費者国民が負担する、消費者負担が増える形になりますので、さまざまな方面から厳しい目でみられることになります。会社にとっては気軽に出力抑制を行うことはできません。実際に欧州・EUの加盟国では出力抑制は1〜4%程度に抑えられています。
 
 このように太陽光や風力の再エネ電力は総電力市場に自由に参入できる市場環境があり、再エネ電力事業者は利益を上げるため発電コストをさげることに血眼になります。その王道は設備費を下げることでありドイツ、イタリアでは太陽光パネルの価格は2001年に較べ2013年で約五分の一になっています。

20150316_出力抑制_.jpg


経済産業省謹製の再エネ市場
日本のFIT法(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)には再エネ電力を優先してグリッドに給電(売買電)すること「給電優先」の定めは有りません。より詳細を定めたFIT省令(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則、平成二十四年六月十八日経済産業省令第四十六号)にもありません。
省令 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H24/H24F15001000046.html

 出力抑制には、FIT法5条とFIT省令第六条で「接続の請求を拒むことができる正当な理由」として定められています。その補償は「抑制により生じた損害(太陽光発電設備に係る損害にあっては、年間三百六十時間を超えない範囲内で行われる当該抑制により生じた損害に限り、風力発電設備に係る損害にあっては、年間七百二十時間を超えない範囲内で行われる当該抑制により生じた損害に限る。)の補償を求めない」とあります。
 需要の情報を握り自由に操作できる電力会社が「需要を超える」として、晴れて日差しが強く最も太陽光発電量が多い時間帯に年間360時間の出力抑制(買電拒否)、風が強い時間帯に年間720時間の出力抑制(買電拒否)を、ロハ(無料)でできる制度設計になっています。これでは、再エネ電力事業は売れない電力を作るリスクの高い事業になって事業者、資本が集まりません。競争市場になりません。この経済産業省謹製の制度設計の市場では、競争で太陽光パネルが2001年に較べ2013年で約五分の一になることはあり得ません。

冒頭の「なぜ日本は世界的なパネル価格低下から取り残されたのか」の問いは間違っていました。取り残されたではなく、「踏み留まっているのか」と問うべきでした。
「なぜ日本は太陽光パネルの高価格に踏み留まっているのか」でした。

その答えは需給見通し(案)の「自然条件によらず安定的な運用が可能な地熱、水力、バイオマスを積極的に拡大し、それにより、ベースロード電源を確保しつつ、原発依存度の低減を図る。」にあると思います。

続く

これまで