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汚染水対策がない、四電・伊方原発パブコメ201506、③ [核のガバナンス・パブコメ]

放射能汚染水対策について(審査書案265頁) 2015/06/18/13
●意見の骨子
原子力規制委員会の審査書案は、重大事故対策で格納容器内に大量に発生する汚染水について、具体的な対策がない。これでは、大事故が起これば、福島第一原子力発電所事故の現状を顧みれば汚染水の漏えい・流出は避けられず海を放射能で汚染することになる。福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえた事故時の汚染水対策を「中長期の対応」としてしまい、事実上不問にしている伊方3号の審査書案は撤回すべきである。

●意見
四国電力の重大事故対策では、格納容器下部に落下した溶融燃料を冷却するために、格納容器上部のスプレイから大量の水を注水することになっている。それによって、格納容器内には大量の汚染水が発生する。この重大事故対策で生じる汚染水は事故直後から発生するが、この汚染水対策は「中長期的な対応」にしている。その「中長期的な対応」の内容は、具体的な対策は何も書かずに、ただ「放射性物質を含んだ汚染水が発生した際の汚染水の処理等の事態収束活動を円滑に実施するため、平時から必要な対応を検討できる協力活動体制を継続して構築する方針であること」というだけである。(4月 14日補正書 10(3)-5-35/「一部補正(9)」PDF104頁 http://www.nsr.go.jp/data/000104530.pdf
 福島第一原発の汚染水はなんら解決できず、事故発生から約40ヵ月経ても汚染水の漏えい・流出は続いており、漁業関係者をはじめ多くの人々を苦しめ続けている。海の汚染は北米大陸沿岸でも確認されるなど、深刻な状況になっている。「福島第一原子力発電所事故の教訓」は、ひとたび大事故が起これば、汚染水の発生を止めることはできないこと及び何らの事前汚染対策ないままでは深刻な環境汚染を生じることである。その汚染水対策を「事故が起きてから考える」、泥縄式に「必要な対応を検討できる協力活動体制を継続して構築する方針」が形式的にあれば、何の具体的対策もなしに伊方原発3号機を再稼働させることは許されない。パブリックコメントは、「審査書案に対する科学的・技術的意見の募集」となっているが、原子力規制委員会の審査書案自体が必要な「科学的・技術的」内容を欠落させている。

●結論
伊方原発3号の審査書案は撤回すべき。

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地震(審査書案10~20頁)について、四電・伊方原発パブコメ201506、② [核のガバナンス・パブコメ]

地震(審査書案10~20頁)について 2015/06/18/11
●意見の骨子
伊方3号機のすぐ傍には480kmという長大な活断層が走っている。それにもかかわらず、基準地震動Ss-1は650ガルと評価されて妥当と審査されているが、これは余りにも過小評価である。評価方法に整合性がなく、同じ断層でありながら武村式を適用した基準津波の評価より著しく過小評価になっている。基準地震動Ss-2も過小評価している。
それゆえ、基準地震動の評価を全面的にやり直すべきである。

●意見

伊方3号機の震源を特定して策定する地震動のうち内陸地殻内地震に関しては、和歌山県から九州内陸に至る長さ480kmの活断層が基本震源モデルとされている。この活断層は伊方原発の近くでは、長さ54kmの敷地前面海域断層群であり、伊方原発とはわずか7kmほどしか離れていない。それで基準地震動650ガルを産出している。

比較のために高浜3・4号機の場合には、基準地震動を引き起こすFoA-FoB-熊川断層は、長さ63.4kmで高浜原発との距離は約13kmである(平成26年5月9日審査会合資料1-3)。それで高浜原発の基準地震動700ガルで数値的には大きいが、高浜原発より明らかに伊方原発の方が厳しい条件に置かれているから、伊方原発の方が過小評価である。

◇伊方3号機に津波を起こす波源の基準断層モデルについては、「地震規模は武村(1998)を用いた評価を基本とする」(2015年3月20日審査会合資料3-5-1、39頁)とされている。実際、活断層の基本は長さ87kmの敷地前面海域断層群+伊予セグメントで、これに武村式(断層長さ―地震モーメント関係)が適用され地震モーメント(地震の規模)が計算されている。ところがこのうち、54 kmの敷地前面海域断層群については、前記のように、基準地震動評価では入倉・三宅式(断層面積―地震モーメント関係)が用いられている。もし、基準地震動についても武村式(断層面積―地震モーメント関係)を用いれば、地震モーメントは入倉・三宅式を用いた場合の4.7倍になる。同じ断層なのだから、安全側に武村式で評価すべきである。

◇震源を特定せず策定する地震動は、2000年鳥取県西部地震および2004年北海道留萌支庁南部地震を参照してこれをベースに水平方向620ガルとしている。基準地震動の審査ガイドで参照を求めている原子力安全基盤機構の報告書ではM6.5で1340ガルになることを示している。中越沖地震で基準値を大きく超えた柏崎刈羽原発の1699ガルを経験しているが、事前に予測されておらず、要因を地盤増幅等に求めているが、いずれもまだ確定したものではない。自然現象は未知の部分が圧倒的に多く、かつ、ばらつきの大きいのだから、これまで経験した最大既往の値を用いるべきである。即ち、基準地震動Ss-2の最大加速度はすなくとも既往最大の1700ガルにすべきである。

●結論
基準地震動Ss-1については、最低限、基本となる敷地前面海域断層群+伊予セグメントについて武村式で評価し直し、さらに480km断層群の評価をそれに準じてやり直すべきである。基準地震動Ss-2もの最大加速度はすなくとも既往最大の1700ガルにすべきである。また、原子力規制委員会は高浜原発仮処分の決定を真摯に受け止め、基準地震動の評価を全面的に見直すべきである。

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四電・伊方原発パブコメ201506、① [核のガバナンス・パブコメ]

避難計画など全般 2015/06/18/05
今回のパブコメは四国電力株式会社伊方発電所(以下四電・伊方原発と記す)の発電用原子炉設置変更許可申請書(3号原子炉施設の変更)に関する審査の適否を対象にしている。しかし、より上位の目的の原子力規制委員会の活動、事務として適切なものであるかも明示されていないがコメントの対象となる。すなわち原子力規制委員会設置法第3条「・・・国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全・・・」との規定に照らしてのコメントである。
 その点では今回は片肺飛行である。今回のパブコメでは「科学的・技術的意見」のみ募集としているが、防災対策なども含めた「社会的」意見を募集すべきである。原発の稼働については、広く市民の合意形成が必要である。住民は直接の利害関係者である。防災対策、避難計画は生命、健康及び財産の保護に非常に重要である。原子力安全確保の深層防護の観点からも防災対策、避難計画の安全確保での重要性は明らかで、当然パブコメの対象に含まれる。合意形成の点からも、意見募集を行い、原子力規制員会の事務に意見が反映されなければならない。すなわち、パブコメ、公聴会や周辺自治体の意見を聞く機会を設け地元住民、国民の意見を聞くべきである。

防災・避難計画は未だでき上がっているとはいえない。大地震・大津波、大雪、豪雨、台風などの自然災害と重なれば、避難すること自体が危険であり命がけとなる。たとえば、佐多岬の人びとは海上へ避難しなければならない。このようなインフラの実情に照らし合わせれば、物理的に有効な避難ができるかが疑わしい。災害弱者が取り残される危険が予測されている。四電・伊方原発が災害避難者を含め佐多岬の人びとが避難できる時間、事故時に放射能を放出をしない性能があるか、無いのかが審査書では明らかではない。

避難指示は、重大事故の進展状況を判断して適切かつタイムリーに発せられなければならない。原発の運転状況・放射性物質拡散予想・避難指示を統括する責任を原子力規制委員会は、放射性物質拡散予想に緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDIネットワークシステム)を今後使用しないという決定で放棄した。四電・伊方原発は佐多岬の付け根に立地し、佐多岬の人々の避難に放射性物質拡散の開始時刻予想や拡散方向などの地理的予測情報は特に重要である。原子力規制委員会はそうした情報を出す、発信する責任を放棄し、六本木のビルの椅子に座っていることにしたのであるから、原因者となる四国電力が負うより他にない。その点も発電用原子炉設置変更許可申請書(3号原子炉施設の変更)に関する審査書や審査では不明である。

審査をやり直すべきである。

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