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③-c 過温破損の遅延効果はないのか、FV施設に?、2015/5/27 新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会 [東電核災害の検証・新潟県技術委]

2015年5月27日、新潟県の技術委員会があった。資料は14もあり多かった。
県のWEB・・平成27年度第1回新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会(平成27年5月27日開催)
http://www.pref.niigata.lg.jp/genshiryoku/1356813191206.html

五つに大別しコメントしてきた。これまでは下部の追記欄にまとめた。
先回で鈴木委員と東京電力のディスカッションは終わり。
今回はフィルタベント検証の位置付けの「③-bフィルタベントFV設備で過圧破損を防止」の続き

FV設備で過熱破損を防ぐ、遅らせる
東京電力はフィルターベントFV施設は「大気を最終ヒートシンクとして熱を輸送するための機能」を持ち「格納容器の圧力及び温度を低下させることで、格納容器の破損を防止する」目的で設置するとしています。
 nuclear_power_150528_03  -89中_.jpg しかし、高圧注水・減圧機能喪失と全交流電源喪失とLOCA時注水機能喪失でメルトスルー後も格納容器内に注水がない(重大事故等対処設備の機能喪失が継続)と溶融核燃料で格納容器雰囲気直接加熱が生じて、過熱破損が起き、FV施設の「性能に期待できない。」それで役には立たないとしています。崩壊熱を大気中に水蒸気や熱い窒素ガスなどで排出しながら過熱破損が起きるのは何故でしょう?最終的に過温破損するにしてもFV設備使用でその時刻が遅延しないのでしょうか?遅延時間の間に他の設備が回復すればよいですし、多くの人々が避難・退避できます。

ベントで排熱の原理 
 格納容器内の気体のガス組成は概ね水蒸気、窒素、水素、放射性ヨウ素ガスです。炉心損傷前は水素、放射性ヨウ素はごく微量で窒素と水蒸気から成ります。炉心損傷が進むにつれて水素、放射性ヨウ素が増えます。最も水素濃度が高くなる想定では水素:水蒸気:窒素≒18:68:14になると東電は見込んでいます。これらが崩壊熱を外部へ運び出します。
 格納容器からベント・排出されると、FV設備で崩壊熱は設備内側に蓄えられた水、スクラバ水に吸熱されます。水蒸気は熱エネルギーをスクラバ水加熱という形で移し水になります。窒素ガスなどもスクラバ水加熱という形で移しますが、凝縮しないので熱エネルギーを保持した高温の窒素ガスなどで環境中に出てます。それで崩壊熱の一部が環境中に出ます。大半はスクラバ水の熱エネルギーになり、高温スクラバ水ができます。
 スクラバ水はFV設備の内部圧力での沸点、7気圧・約151から100℃(第3.2.2.2-5 P115より算出)になります。けれども、格納容器からの水蒸気や窒素ガスがより高温ですから、温度差で熱エネルギーは移行します。その崩壊熱の熱エネルギーは、スクラバ水を蒸発(気化熱)させます。その蒸気で出る崩壊熱もあります。(その際にスクラバ水に捕えられていた放射能は再度、放出される)

ドレン設備_.jpgスクラバ水の排水(ドレン)
この高温&高汚染スクラバ水を東電は格納容器(サプレッションプール)に戻すとしています。折角、ベントで格納容器から出した崩壊熱を一部とはいえ戻すのです。「格納容器の圧力及び温度を低下させる」ことと相反していないでしょうか。高温&高汚染スクラバ水を貯めておくタンクを造れば良い話です。

 それに格納容器にスクラバ水を注水する機能を付けるのです。注水先をサプレッションプールに限らずに、原子炉直下のペデスタルと呼ばれる部分にも注入できるようにすれば、高圧注水・減圧機能喪失とLOCA時注水機能喪失でメルトスルー後も他の重大事故等対処設備が機能喪失している場合も、落下しペデスタル部に堆積する溶融核燃料、デブリに水を注げます。注いだ水が気化熱で崩壊熱を奪います。更に今の設計では電動ポンプが使われてますが、D/Gポンプも使えるようにすれば全交流電源喪失にも注水可能です。注水できる量に応じて、過熱破損の時刻が遅くなります。

 重大事故等対処設備の低圧代替注水系は、格納容器ドライウェルへのスプレイ注水、原子炉への注水、使用済み核燃料プールへの注水など様々な働きをしますが、このスクラバ水ドレンポンプの働きは限定したものです。

新潟県・原発技術委員会の役割
東京電力がFV施設の「性能に期待できない」と評価する事故シーケンス・シナリオの多くは、FV施設の原理的欠陥に因るものではなく東京電力の設計上の性能制限、例えば水蒸気処理量31.6kg/s、によるものです。東京電力の設計性能を引き上げれば、FV施設の目的「格納容器の破損を防止する」をはたし得る事故範囲が広がります。防止できなくとも破損時刻を遅らせて、その上位目的「公衆の被爆を少なくする」ための避難などに充てられる時間を稼ぐことができます。

 新潟県・原発技術委員会は、FV施設の「排出する排気ガスに含まれる放射性物質を低減」する機能とともに、東京電力のFV施設の設計性能引き上げも検討するべきです。それでフィルタベント成功し格納容器の破損を防止する場合、フィルタベント失敗し、格納容器は破損するが避難などに充てられる時間を稼げる場合、フィルタベント失敗の場合を考えるべきです。各々の場合でベント操作による住民被曝や破損時刻などを割りだし、県、県民による地元避難計画との整合性の有無や被曝を許容できないとか判断の材料に供すべきです。

新潟県の技術委員会へのコメント