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ガスの漏洩ルートとトップフランジの水張 水素ガスとベント 試論⑬ 訂正 [AM-ベント、排熱]

水素ガス、放射能のパスルート

 PCV格納容器から水素ガスが出てくるパスルートは5つ考えらている。このパスルートは放射能、主にガス状の放射能が出てくるルートでもある。一つは過圧による破損、一つは過温による破損、一つは高圧高温の合わせ技での破損、一つはデブリでの容器の鋼板の溶融貫通メルトスルー破損、一つはTIP(移動式炉心内計測装置)の案内菅、RPV原子炉内部とPCV格納容器外部を直接結ぶ案内菅が熔融炉心で開口してできるパスルートである。

後藤20110329goto-13c.jpg


こうした高圧高温状態が去ると設計段階から許容されている漏洩率以下になる一時的増大である。メルトスルー破損、TIP案内菅では、原理的に考えにくい損傷。KK原発6、7号機の設計漏洩は設計圧力Tdの0.9倍の圧力で設計漏えい率0.4%/日、約53立方㍍である。これは検査の際には常温で、設計温度の0.9倍の154℃などに加温して検査はしていない。

haifu_1-1b14c.jpg東電の温度圧力解析は、全体的評価である。熱い高温気体は軽いから上方に偏在し、上方はより高温化する。これは、ストーブをたいた室内で体験する現象だ。PCVのD/W全体的に見れば212℃でも、PCV頭部のトップフランジ付近は350℃以上になるのではないか。図のB部は212℃位でもA部はより高く局所的に過温破損を起こす温度帯にならないか。東電シナリオでは2時間後にPCVのD/Wスプレイが始まり、温度が低下する。B部はスプレイ水で早く下がるだろう。しかしスプレイ装置よりも上方にトップフランジはあるから、なかなか温度は下がらない。

 SBOが続き格納容器に注水、冷却水のスプレイがなければ、D/W全体でも300℃を超えるだろう。トップフランジ付近は500℃以上で過温破損しているのではないか。

トップフランジの水張
 東電は格納容器頂部に水張りで、トップフランジの破損を防止するとしている。PCV内側から高温ガスで加熱されても、外側に水があれば水が熱を吸収する。張られた水は大気圧下だから100℃で沸騰する。トップフmizuhari-top.jpgランジ外側は100℃以上にはならない。厚みがあるから内側も100℃以下とはならないだろうが、フランジ全体が170℃200℃まで上がるとは考えられない。有効な対策だと考える。北海道大学の奈良林氏によれば「スイスの格納容器頂部はプールの底」だそうだ。

 しかし、東電では頂部水張は「シナリオ上考慮しない操作」としている。対応の概要ではS/Cの圧力が0.38MPa(a)=0.297MPa(g)以上になった時、解析上は約2時間後に準備を開始する。消防車を呼びこんで、注水ラインの構成を始める。準備ができたら行うことになっている。発災から3~4時間はトップフランジの破損防止の水張は行われない。県の依頼で東電が設定した県依頼シナリオでも同様。
(2014年10月7日付、選定したベントシナリオ解析条件の妥当性について、16頁http://www.pref.niigata.lg.jp/HTML_Article/60/47/141007_shiryou2,0.pdf

しかし、スイスのようにトップフランジに常に水張してあっても、NRC米国原子力委員会のSOARCA研究や東電核災害の現実を見ると水素爆発は避けられそうにない。


PCV温度では1.9時間後にベント 水素ガスとベント 試論⑫ 訂正 [AM-ベント、排熱]

東電シナリオでは約2時間以内は、メルトダウン中に発生する高温のガスは給水管の破断口からRPV原子炉からPCVに出てくる。メルトダウンの炉心は2000℃位だから出るガスも1000℃以上だろう。PCV全体ではS/Cプールに導かれプール水が熱吸収するが、東電シナリオでは約2時間後にS/Cで約85℃、D/Wで約215℃と東電は評価している。

格納容器温度aturyoku4.jpg

(2014年10月7日付「選定したベントシナリオ解析条件の妥当性について」27、28頁http://www.pref.niigata.lg.jp/HTML_Article/60/47/141007_shiryou2,0.pdf

1.9時間後にベント
この解析から東電の事故想定でSBOが2時間続くと、ベントを開始することになる。事故後2時時刻点前からD/W温度は200℃以上になる。東電はベントは「格納容器の最高使用圧力の2倍、温度としては200℃、これを使用の条件として見ております。」
 「それを超えると建屋内で水素、あるいは放射性物質の両方が漏れ出す可能性がありますので、漏えいのリスクと水素爆発のリスク、両方が高まります。従いましてこの条件でベントすることによって逆に格納容器の中の水素を排出するということになりますので、建屋の爆発についてはリスクを大幅に下げられるということになります。以上です。」(東京電力:川村原子力設備管理部長、平成26 年2月11 日新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会)。

 だから東電シナリオでも25時間後にベントは誤っていて、1.9時間位の時刻でベントになる。東電の対応シナリオの様に100%、2時間で電源回復するとは誰も保証できない。だからSBOが続くとしたら安全策を採る(業界用語的には保守的に評価する)と1.9時間位の時刻で初回のベント。

 このPCV格納容器の温度を軽視し東電の様に圧力が最高使用圧力の2倍でベント開始を判断していたら、待っているのは水素爆発。福島第一原発である。
 東電シナリオと県事故シナリオでのベントガスは放射能(気体、微粒子状)、水蒸気、水素ガスからなる。前の炉心が冠水している場合の放射能のブローダウン放出の時の一番の違いは、水素ガスである。水素ガスは一部でも原子炉建屋に漏出すると、爆発・爆轟を起こしうる。その結果、ブローアウトパネルの脱落、開放が起こる。原子炉建屋RBの放射能封じ込め機能が失われる。建屋の破壊が起これば、事故収束が困難になる。瓦礫でフィルタベント設備が破損するかもしれない。

続く


東電の事故シナリオとJNES研究 水素ガスとベント 試論⑩ [AM-ベント、排熱]

新潟県の技術委員会で柏崎刈羽原発6、7号機のフィルタベント設備が論議されている。東電核災害での建屋での水素爆発と放射能放出を顧みて、それへの対策としてのフィルタベント設備である。それを使うシビアアクシデントの事故想定、事故シナリオを4つ選定して論議している。(事故シナリオは前記事)

建屋での水素爆発を視野に入れたシビアアクシデント研究は、NRC米国原子力員会のSOARCAがある。それでは、PCV格納容器が過圧過熱破損と溶融炉心のデブリによる溶融貫通破損で水素ガスがPCVから原子炉建屋RBに移行し爆発する。ただSOARCAはKK原発6、7号機のABWR-RCCV 型PCVで解析・研究していない。 

 これを対象にした研究には、JNESの「平成18年度シビアアクシデント晩期の格納容器閉じ込め機能の維持に関する研究報告書」がある。この研究をもとにABWR-RCCV 型PCVでシビアアクシデントとベントの必要性、つまりKK原発6、7号機のフィルタベント設備を検討してみる。
https://www.nsr.go.jp/archive/jnes/atom-library/seika/000007877.pdf


 ABWR-RCCV 型PCVで解析されている事故シナリオ(事故シーケンス)のうちTCとTWはPCV格納容器がRPV原子炉より先に損傷するので検討から除く。SBO全交流電源喪失のTBは設計最高使用圧力Pdの3倍のPCV破損時刻とRPV原子炉損傷時刻が同じ。ベントはPdの2倍で開始となっているので、ベント後にPCV破損することになる。これも除く。

ABWR事故時刻表v2.jpg

事故シナリオAEと東電シナリオ
 JNES研究のAE、配管の大破断LOCAとECCS注水失敗のAEシナリオは東京電力提案の設置申請に基づく事故シナリオに類似している。「大LOCA+全ECCS機能喪失+SBO」が東電シナリオである。RHR残留熱除去系の炉からの吸込配管の破断を想定している。ECCS非常用炉心冷却系の炉圧が1MPa以上時の高圧系とそれ以下用の低圧系の全機能喪失。SBO全交流電源喪失が東電シナリオである。
防災において想定する事故シナリオについて(東京電力)
http://www.pref.niigata.lg.jp/HTML_Article/256/622/140211_4-2,0.pdf

 JNES研究のAEシナリオは2.1時時刻で核燃料の下の押さえ支持板までメルトダウンが進行し板が破損して全ての核燃料や溶融物がRPV原子炉圧力容器の底部に落下し溜まる。それから3.1時間後にRPVをメルトスルーする。
 東電シナリオでは2時時刻で電源が回復しSBO終了。ECCSの代替のMUWC復水補給系、その電動ポンプの復水移送ポンプcondensate water transfer pump で炉へ注水。既にメルトダウンを始めていた炉心を再冠水(炉心メークアップ)でメルトダウン停止。しかし崩壊熱でPCVの温度と圧力上昇。その対策にPCVスプレイ・散水を130立方㍍/時の量で間欠実施。水源の「復水貯蔵槽が枯渇してスプレイ停止」してPCV圧力が設計圧力Pdの2倍に25時間時刻に達するのベント。

信頼できない東電の対応

 私は、このような対応をする東電は全く信用ならない。全交流電源喪失SBOで使える代替注水手段に、常設のデーゼル駆動の消火ポンプD/DFPがある。柏崎刈羽6、7号機のD/DFPは、約0.85MPaから注水可能で約0.59MPa以下で117~177立方㍍の注水が可能である。

 第一の利点は火災に備えて常時スタンバイしている。ガスタービン発電機での電源回復を待つことなく直ちに使える。水蒸気や放射能の微粒子が噴出しているPCV格納容器にスプレイ散水注水して、冷却・減圧をし微粒子をPCV内の水に封じ込めできる。第二の利点は、消火系FPは電動の消火ポンプやD/DFPはタンク容量5千立方㍍のろ過水タンク№1、1万立方㍍の№2の淡水を水源にしていること。スプレイできる水量が多い。発災時に容量の半分位しかなくても、6、7号機の復水貯蔵槽2100立方㍍の3倍はある。水源が「枯渇してスプレイ停止」まで75時間以上はある。

 欠点は、MUWC復水補給系の方が注水可能になる炉圧が0.1MPa高い。約0.95MPaで10立方㍍/時の注水可能。東電シナリオでは給水管が大破断しているので、大破断口から水蒸気などが出て炉は減圧されていく。この炉圧まで下がった時に電源回復して使えるなら、チョットでも良い、焼け石に水でも良いから炉に注水できる。
 電源回復してなければ、大破断口から水蒸気などが出てもう炉圧が0.1MPa下がって約0.85MPaになってからデーゼル駆動の消火ポンプD/DFPで注水を開始することになる。東電核災害では3号機のD/DFPは使えたが、炉の減圧を早期にしなかったので宝の持ち腐れであった。炉の減圧が行えず、注水が途絶えメルトダウン、メルトスルーしてしまった。

 東電は大LOCAでの炉圧の推移を県に示していないが、2時間後の電源回復でMUWC復水補給系で安定的に炉注水が可能であるから約0.59MPa以下になっている。それより前の時刻で約0.85MPaになるからD/DFPで炉注水を開始出来る。3号機の二の舞を踏ませない。
 
 東京電力は、このD/DFPをなぜ使わないのか。説明が一切しない。D/DFPやろ過水タンクを使おうとしない東電は全く信用できない。

 JNES研究のAEシナリオは、別の経過をたどる。 続く


水素は均質に部屋の中で混合?? 水素ガスとベント 試論⑦ [AM-ベント、排熱]

漏れる水素の量と爆発

NRCのSOARCA報告書では、TIP(移動式炉心内計測装置)の案内菅を通じて30kgの水素が原子炉建屋に漏れるとしている(LTSBOで、約10時間)。1kgの水素ガスは常温常圧では約11.2立方㍍だから、約330立方㍍。原子炉建屋内に均一に混合すると仮定して容積75200立方㍍のごく小さい率0.4%程度?にしかならない。放出点に最も近いTIP室の容積では約2%だという。SOARCA報告書はこの濃度では爆発は起きないと評価している。

 爆発反応は可燃性ガスの濃度が高すぎても低すぎても爆発しない。濃度の低い方を爆発下限界(Lower Explsion Limit : LEL)、高い方を爆発上限界(Upper Explosion limit : UEL) と呼び、両者の間を爆発範囲 (Limitof explosion) という。水素の爆発は空気との混合では 4.1 % — 74.2 % と言われる。

 爆発は大きく分けて爆燃(deflagration) と爆轟(ばくごう detonation デトネーション)がある。爆燃は火炎の伝播速度が音速以下で、一般には秒速で数十cmから10m程度。密閉容器内での爆発圧力値は最大で爆発前の圧力(初期圧力)の7~8倍となるとされている。爆轟は火炎の伝播速度が音速状態以上でその燃焼波と衝撃波が一体となって進行する。衝撃波は発生地点から遠くなれば減衰するが、爆轟では後から燃焼波が来てエネルギーを供給するのでなかなか衰えない。爆轟波の速度(火炎面の移動速度)は、1~3km/s程度。爆轟の圧力は理論計算的には初期圧力のほぼ20倍程度。波面圧力は最初の圧力の13~55倍が観測されている。

genkai2.jpg


 爆発限界の中に爆轟を生じうる爆轟限界 (Limitof detonation)がある。水素と空気との混合では 18% — 59% と言われる。ただ温度や容器の形で変わること知られていて、下限は定説がない。日本の原子力規制委員会は13%を目安にしている。

 SOARCAの評価は、均一に混合するとすれば爆発下限界以下だから当然であるが、均一に混合するだろうか。水素は軽いから部屋や建物の中でも天井部に移動しそこが濃くなる。そうした偏在性がある。均一に混合するという仮説が間違っている。水素の元素およびガス状分子の中で最も軽い、早い速度で拡散する物理的性質を考慮しない非実際的な仮定ではないか。TIP室の上方10%に偏在するとすると濃度は約20%で爆轟がおきる範囲である。

 東電核災害でも勝村 庸介氏(東京大学)は4号機の爆発に関して、「5階の天井、壁の壁面から0.1mの領域は334立方㍍に水素が濃縮存在している」と仮定し、実験で得られたデータから4号機の使用済燃料プールが沸騰し生成した水素ガスで爆発が起きた可能性を提起している。
http://www.radiation-chemistry.org/kaishi/092pdf/92_09.pdf

 3号機の5階の大きさは約34.2m×約46.0m×約16.4mで約25800立方㍍。ここにNRCのSOARCA報告書でのTIPの案内菅漏洩、30kg・約330立方㍍の水素が漏れ入ったとすると、均一に混合仮説では約1.3%だから爆発しない。しかし天井部の1mに偏在すると約21%、爆轟範囲に入る。

続く


新潟県の技術委員会での事故想定 水素ガスとベント 試論⑨ [AM-ベント、排熱]

新潟県の技術委員会でフィルタベント設備が論議されている。そこでのシビアアクシデントのシナリオで、TIPの案内菅やペネトレーションによる水素漏洩とそれによる水素爆発とヘッドフランジから漏洩で水素爆発で放出が始まった場合の放出総量の違い、格納容器PCVの中のガスをそのまま出す耐圧強化ベントとフィルターで濾しとるフィルタベントの損得をSOARCAの次の視点を織り込んで検討してみる。

 ①「現在の軽減対策が実現に成功し、放射性物質の遠隔地への拡散を遅らせたり減量できるからである。」これは、フィルタベント設備の性能をきちんと評価する必要を示している。
 ②放射能が放出される前に避難する、もしくは避難後に放射能の放出をすることが重要であることを示している。
 ③日本の炉心溶融の防止策=炉注水策はどうなっているだろうか?

シナリオ2.jpg

新潟県の原子力発電所の安全管理に関する技術委員会では、東京電力が柏崎刈羽原発に設置するフィルターについて論議している。フィルターを使うベントは4つの事故シナリオを想定している。(上図)
 その内の東電核災害時の福島第一原発と同様の状態でベントする極限ケースは、JNESの「平成18年度シビアアクシデント晩期の格納容器閉じ込め機能の維持に関する研究報告書」にある研究をもとにしている。
https://www.nsr.go.jp/archive/jnes/atom-library/seika/000007877.pdf
 このJNES研究は、PCV破損を過圧破損だけで過温破損を考慮していない。設計での最高使用圧力(Pd)の3倍でPCV破損で、破損温度は設定していないからこの研究ではPCV過温破損は起きないことになっている。米国でのPCV破壊実験に従事した後藤正志氏の資料によれば下図のように設計使用圧力でも高温、設計温度Tdの約2倍の250~300℃になれば損傷する。またPCVの機器ハッチ・出入り口では約200℃は10気圧まで窒素などの漏洩は起きないとのデータがある。
後藤20110329goto-13b.jpg
NRC米国原子力委員会のSOARCAはBWR4-マーク1型PCVで解析している。JNES研究のBWR5-マーク1改型PCVとABWR-RCCV 型PCVで解析している。SOARCAの事故シナリオSTSBOとは事故シナリオTQUV (AM 無し)のBWR5-マーク1改のJNES研究が最も類似している。TQUVは高圧注水、自動減圧系は作動するので減圧されるが、低圧注水が使えない。JNES研究では0.8時間つまり48分時点で被覆管損傷がはじまり、気体の放射能が出始め水素ガスが生成する。
 SOARCAのSTSBOは非常用電池が初めから使えないので高圧注水のECCS・非常用炉心冷却装置が作動せない。水面が下がり、30分時点で核燃料が露呈して、55分時点で水素ガスの生成が始まる。しかし、5分後の1時間時刻点で炉注水が運転員の手動で復活し、3.4時間時刻点まで作動する。5.7時間時刻点で再び核燃料が露呈する。この間の崩壊熱は注がれる冷却水の沸騰、水蒸気で原子炉RPVから排熱される。核燃料の再露呈の後、6.6時間時刻点で水素ガスの生成が再開する。露呈から生成まで最初は25分間で2回目は0.9時間、54分間である。これは時間当たりの崩壊熱量が減ったからである。2.16倍の時間を要する量に減ったからである。この減った崩壊熱でRPV損傷は16.7時間時刻点で10.1時間後である。

 JNES研究は注水の復活はなく、被覆管損傷がはじまった0.8時間時刻点から継続して進行し5.0時間時刻点でRPV損傷、つまりメルトスルーしている。4.2時間かかっている。JNES研究のBWR5にくらべSOARCAのBWR4は、最初の被覆管損傷時刻が0.1時間遅い。この5.0時間時刻点も、BWR4では約5.6時間時刻点であろう。この時刻点を参照すると、BWR4で炉注水が運転員の手動で復活しなければ、約4.7時間でRPV損傷に至る。炉注水が一次復活した場合は、先ほど見たように崩壊熱量が小さくなっているから約4.7から約10.15時間になる。これはSOARCAでの時間10.1時間と余り違わない。JNES研究も、RPV損傷まではSOARCAとあまり違いわない。
PCV格納容器の加熱過圧破損と溶融貫通破損
 SOARCAでは、RPV損傷で格納容器PCVに落下した溶融核燃料デブリがPCVの鋼鉄板を0.2時間、12分後の16.9時間時刻点にメルトスルー溶融貫通してしまう。PCV格納容器が破損することである。LTSBOという事故シナリオでは、RPV損傷は19.7時間時刻点で12分後にPCV頭部のトップフランジが過熱過圧破損して水素ガスや放射能などを原子炉建屋RBの最上階に吹き出し、それから6分後にメルトスルー溶融貫通でPCV格納容器が破損する。同じ頃に水素爆発も起きる。
 JNES研究は、格納容器の過熱過圧破損と溶融貫通破損を除いている。最高使用圧力(Pd)の3倍で過圧破損しか考慮していない。BWR5-マーク1改型解析でも12時間時刻点から15時間時刻点でPCV過熱過圧破損が生じることが読み取れる。
マーク1、AMなし02.jpg
事故シナリオ(事故シーケンス)では「低圧状態でRPV原子炉破損、ペデスタル床に溶融炉心が落下」と「高圧状態でRPV原子炉破損、ペデスタル床などに溶融炉心が飛散」との二つのパターンがある。前者をLPMR low pressure melt release といい、後者をHPME  high pressure melt ejection という。(release は放つこと、投下で、ejection は放出、噴出。)
 BWRの原子炉RPVの底には制御棒の管など直径5~6.5㎝の配管が多数ついている。この管が破断していたり、貫通部は融け易いので、BWRでは溶融核燃料・炉心はここから出てくる可能性が高い。

 再循環配管が破断するAEや自動減圧系が作動するTQUVの事故シーケンスでは炉圧が低い。LPMRであり、「床に溶融炉心が落下」する。落下した溶融炉心が流れてPCVの壁に届き、溶融貫通して格納容器破損に至る。
LPMR.jpg

 自動減圧系が作動しないTQUXや全交流電源喪失SBOのTBの事故シーケンスでは炉圧が高い。RPVの炉圧が水蒸気や水素ガスで高い状態では、これらに押されて、またこれらの気泡を蔵して、噴出してくる。HPHEである。噴出の勢いや内蔵する気泡の膨張などで遠くへ溶融炉心が届く。「床などに溶融炉心が飛散」である。この飛散した溶融炉心は、落下したものよりPCVの壁に近かったり、付着するものもあるだろう。溶融貫通が早く起きる。
HPME.jpg
NRC米国原子力委員会のSOARCAでは、LTSBOもSTSBOも炉圧が低い状態でRPV損傷が起きる。LPMRを想定している。
PCVの過熱過圧破損と溶融貫通破損も考慮して、ABWR-RCCV 型PCVで解析結果を検討してみる。

 

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