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水素は均質に部屋の中で混合?? 水素ガスとベント 試論⑦ [AM-ベント、排熱]

漏れる水素の量と爆発

NRCのSOARCA報告書では、TIP(移動式炉心内計測装置)の案内菅を通じて30kgの水素が原子炉建屋に漏れるとしている(LTSBOで、約10時間)。1kgの水素ガスは常温常圧では約11.2立方㍍だから、約330立方㍍。原子炉建屋内に均一に混合すると仮定して容積75200立方㍍のごく小さい率0.4%程度?にしかならない。放出点に最も近いTIP室の容積では約2%だという。SOARCA報告書はこの濃度では爆発は起きないと評価している。

 爆発反応は可燃性ガスの濃度が高すぎても低すぎても爆発しない。濃度の低い方を爆発下限界(Lower Explsion Limit : LEL)、高い方を爆発上限界(Upper Explosion limit : UEL) と呼び、両者の間を爆発範囲 (Limitof explosion) という。水素の爆発は空気との混合では 4.1 % — 74.2 % と言われる。

 爆発は大きく分けて爆燃(deflagration) と爆轟(ばくごう detonation デトネーション)がある。爆燃は火炎の伝播速度が音速以下で、一般には秒速で数十cmから10m程度。密閉容器内での爆発圧力値は最大で爆発前の圧力(初期圧力)の7~8倍となるとされている。爆轟は火炎の伝播速度が音速状態以上でその燃焼波と衝撃波が一体となって進行する。衝撃波は発生地点から遠くなれば減衰するが、爆轟では後から燃焼波が来てエネルギーを供給するのでなかなか衰えない。爆轟波の速度(火炎面の移動速度)は、1~3km/s程度。爆轟の圧力は理論計算的には初期圧力のほぼ20倍程度。波面圧力は最初の圧力の13~55倍が観測されている。

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 爆発限界の中に爆轟を生じうる爆轟限界 (Limitof detonation)がある。水素と空気との混合では 18% — 59% と言われる。ただ温度や容器の形で変わること知られていて、下限は定説がない。日本の原子力規制委員会は13%を目安にしている。

 SOARCAの評価は、均一に混合するとすれば爆発下限界以下だから当然であるが、均一に混合するだろうか。水素は軽いから部屋や建物の中でも天井部に移動しそこが濃くなる。そうした偏在性がある。均一に混合するという仮説が間違っている。水素の元素およびガス状分子の中で最も軽い、早い速度で拡散する物理的性質を考慮しない非実際的な仮定ではないか。TIP室の上方10%に偏在するとすると濃度は約20%で爆轟がおきる範囲である。

 東電核災害でも勝村 庸介氏(東京大学)は4号機の爆発に関して、「5階の天井、壁の壁面から0.1mの領域は334立方㍍に水素が濃縮存在している」と仮定し、実験で得られたデータから4号機の使用済燃料プールが沸騰し生成した水素ガスで爆発が起きた可能性を提起している。
http://www.radiation-chemistry.org/kaishi/092pdf/92_09.pdf

 3号機の5階の大きさは約34.2m×約46.0m×約16.4mで約25800立方㍍。ここにNRCのSOARCA報告書でのTIPの案内菅漏洩、30kg・約330立方㍍の水素が漏れ入ったとすると、均一に混合仮説では約1.3%だから爆発しない。しかし天井部の1mに偏在すると約21%、爆轟範囲に入る。

続く


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