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新潟県の技術委員会での事故想定 水素ガスとベント 試論⑨ [AM-ベント、排熱]

新潟県の技術委員会でフィルタベント設備が論議されている。そこでのシビアアクシデントのシナリオで、TIPの案内菅やペネトレーションによる水素漏洩とそれによる水素爆発とヘッドフランジから漏洩で水素爆発で放出が始まった場合の放出総量の違い、格納容器PCVの中のガスをそのまま出す耐圧強化ベントとフィルターで濾しとるフィルタベントの損得をSOARCAの次の視点を織り込んで検討してみる。

 ①「現在の軽減対策が実現に成功し、放射性物質の遠隔地への拡散を遅らせたり減量できるからである。」これは、フィルタベント設備の性能をきちんと評価する必要を示している。
 ②放射能が放出される前に避難する、もしくは避難後に放射能の放出をすることが重要であることを示している。
 ③日本の炉心溶融の防止策=炉注水策はどうなっているだろうか?

シナリオ2.jpg

新潟県の原子力発電所の安全管理に関する技術委員会では、東京電力が柏崎刈羽原発に設置するフィルターについて論議している。フィルターを使うベントは4つの事故シナリオを想定している。(上図)
 その内の東電核災害時の福島第一原発と同様の状態でベントする極限ケースは、JNESの「平成18年度シビアアクシデント晩期の格納容器閉じ込め機能の維持に関する研究報告書」にある研究をもとにしている。
https://www.nsr.go.jp/archive/jnes/atom-library/seika/000007877.pdf
 このJNES研究は、PCV破損を過圧破損だけで過温破損を考慮していない。設計での最高使用圧力(Pd)の3倍でPCV破損で、破損温度は設定していないからこの研究ではPCV過温破損は起きないことになっている。米国でのPCV破壊実験に従事した後藤正志氏の資料によれば下図のように設計使用圧力でも高温、設計温度Tdの約2倍の250~300℃になれば損傷する。またPCVの機器ハッチ・出入り口では約200℃は10気圧まで窒素などの漏洩は起きないとのデータがある。
後藤20110329goto-13b.jpg
NRC米国原子力委員会のSOARCAはBWR4-マーク1型PCVで解析している。JNES研究のBWR5-マーク1改型PCVとABWR-RCCV 型PCVで解析している。SOARCAの事故シナリオSTSBOとは事故シナリオTQUV (AM 無し)のBWR5-マーク1改のJNES研究が最も類似している。TQUVは高圧注水、自動減圧系は作動するので減圧されるが、低圧注水が使えない。JNES研究では0.8時間つまり48分時点で被覆管損傷がはじまり、気体の放射能が出始め水素ガスが生成する。
 SOARCAのSTSBOは非常用電池が初めから使えないので高圧注水のECCS・非常用炉心冷却装置が作動せない。水面が下がり、30分時点で核燃料が露呈して、55分時点で水素ガスの生成が始まる。しかし、5分後の1時間時刻点で炉注水が運転員の手動で復活し、3.4時間時刻点まで作動する。5.7時間時刻点で再び核燃料が露呈する。この間の崩壊熱は注がれる冷却水の沸騰、水蒸気で原子炉RPVから排熱される。核燃料の再露呈の後、6.6時間時刻点で水素ガスの生成が再開する。露呈から生成まで最初は25分間で2回目は0.9時間、54分間である。これは時間当たりの崩壊熱量が減ったからである。2.16倍の時間を要する量に減ったからである。この減った崩壊熱でRPV損傷は16.7時間時刻点で10.1時間後である。

 JNES研究は注水の復活はなく、被覆管損傷がはじまった0.8時間時刻点から継続して進行し5.0時間時刻点でRPV損傷、つまりメルトスルーしている。4.2時間かかっている。JNES研究のBWR5にくらべSOARCAのBWR4は、最初の被覆管損傷時刻が0.1時間遅い。この5.0時間時刻点も、BWR4では約5.6時間時刻点であろう。この時刻点を参照すると、BWR4で炉注水が運転員の手動で復活しなければ、約4.7時間でRPV損傷に至る。炉注水が一次復活した場合は、先ほど見たように崩壊熱量が小さくなっているから約4.7から約10.15時間になる。これはSOARCAでの時間10.1時間と余り違わない。JNES研究も、RPV損傷まではSOARCAとあまり違いわない。
PCV格納容器の加熱過圧破損と溶融貫通破損
 SOARCAでは、RPV損傷で格納容器PCVに落下した溶融核燃料デブリがPCVの鋼鉄板を0.2時間、12分後の16.9時間時刻点にメルトスルー溶融貫通してしまう。PCV格納容器が破損することである。LTSBOという事故シナリオでは、RPV損傷は19.7時間時刻点で12分後にPCV頭部のトップフランジが過熱過圧破損して水素ガスや放射能などを原子炉建屋RBの最上階に吹き出し、それから6分後にメルトスルー溶融貫通でPCV格納容器が破損する。同じ頃に水素爆発も起きる。
 JNES研究は、格納容器の過熱過圧破損と溶融貫通破損を除いている。最高使用圧力(Pd)の3倍で過圧破損しか考慮していない。BWR5-マーク1改型解析でも12時間時刻点から15時間時刻点でPCV過熱過圧破損が生じることが読み取れる。
マーク1、AMなし02.jpg
事故シナリオ(事故シーケンス)では「低圧状態でRPV原子炉破損、ペデスタル床に溶融炉心が落下」と「高圧状態でRPV原子炉破損、ペデスタル床などに溶融炉心が飛散」との二つのパターンがある。前者をLPMR low pressure melt release といい、後者をHPME  high pressure melt ejection という。(release は放つこと、投下で、ejection は放出、噴出。)
 BWRの原子炉RPVの底には制御棒の管など直径5~6.5㎝の配管が多数ついている。この管が破断していたり、貫通部は融け易いので、BWRでは溶融核燃料・炉心はここから出てくる可能性が高い。

 再循環配管が破断するAEや自動減圧系が作動するTQUVの事故シーケンスでは炉圧が低い。LPMRであり、「床に溶融炉心が落下」する。落下した溶融炉心が流れてPCVの壁に届き、溶融貫通して格納容器破損に至る。
LPMR.jpg

 自動減圧系が作動しないTQUXや全交流電源喪失SBOのTBの事故シーケンスでは炉圧が高い。RPVの炉圧が水蒸気や水素ガスで高い状態では、これらに押されて、またこれらの気泡を蔵して、噴出してくる。HPHEである。噴出の勢いや内蔵する気泡の膨張などで遠くへ溶融炉心が届く。「床などに溶融炉心が飛散」である。この飛散した溶融炉心は、落下したものよりPCVの壁に近かったり、付着するものもあるだろう。溶融貫通が早く起きる。
HPME.jpg
NRC米国原子力委員会のSOARCAでは、LTSBOもSTSBOも炉圧が低い状態でRPV損傷が起きる。LPMRを想定している。
PCVの過熱過圧破損と溶融貫通破損も考慮して、ABWR-RCCV 型PCVで解析結果を検討してみる。

 

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