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日立のリトアニア版ABWRと大間原発のABWR [柏崎刈羽原発、施設設備]

再稼働が目論まれている柏崎刈羽原発6、7号機はABWRという炉型です。この日本版ABWR、JP-ABWRをほかの国々のABWRと比べてみようと思います。
日本国内にABWR、JP-ABWRは6基あります。東京電力柏崎刈羽6号(1996年11月営業運転開始)7号機(1997年7月)、中部電力浜岡原発4号機(2005年1月)、北陸電力志賀原発4号機(2006年3月)、そして中国電力島根原発3号機(工事は終わっているが、燃料未装荷で運転はされていない)、電源開発の大間原発(建設進捗率は約38%)です。建設の主契約者は、東芝、日立、GEです。
日立とGEは、1967年にBWRにおける包括的な技術ライセンス契約を締結。「95基(2006年6月現在)のBWR型の原子力発電設備があり、このうち、日立、GE合計で、約7割のプラントに携わってきました。」
日立はGEと合弁で2007年に、米国にGE日立ニュークリア・エナジー社(出資率、GE60%、日立40%)日本に日立GEニュークリア・エナジー社(出資率、日立80%、GE20%)を設立しています。日本の日立GE「当社は国内でのABWRプラントについてNo.1のシェアがあります。また、ABWR全プラントの建設に参画しており、中心的役割を果しています。」
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その日立のABWRの輸出販売は、日立GEのWEBサイトでは「米国GE社が主契約者である(台湾の)龍門原子力発電所に原子炉圧力容器・炉内構造物をはじめとしたABWRの主要機器を供給しています。」とGEの下請け納入業者の顔を見せています。
 ニュースリリースで設立からの動きを見ると、戦略的方向付けは米国のGE日立、戦術的実務的部分を日本の日立GEという役割分担です。GE日立が注力している地域は、ベトナムなど東南アジア、ポーランドなど中東欧、そして英国。これらの国は、資金が不足している。自前で調達できない。「原子炉1基を装備する発電所を建設するには数十億ドルの投資が必要」この建設資金の手当て、返済まで考慮、関与しないと売れない。
売り込み商品は「現在でも世界で唯一実用化されている第3世代原子炉」「原子力発電機能を短期的に増強したい電力会社にとって、ABWRは理想的な技術です」の「改良型沸騰水型原子炉(Advanced BWR/以下、ABWR)をはじめとする原子力事業の世界市場での」「GEの次世代大型炉「ESBWR」(Economic and Simplified BWR)をはじめとする次世代原子炉の設計等、新規プラントの建設」です。

これらの国々で、日立GEが提案している設計は、2011年3月以降です。つまり東電核災害を踏まえた設計として提案されたものです。

リトアニア版のABWR LT-ABWR

ポーランドの隣国、バルト3国の一つのリトアニア。ソ連崩壊、独立。旧ソ連時代に建設されたイグナリナ原発はリトアニアの電力の80%を供給していましたが、チェルノブイリ原発と類似した構造で危険性が指摘されていました。EU加盟の際に2009年までに閉鎖が条件とされました。それに従って閉鎖されて以降、電力・ガスをロシアからの輸入に依存。2006年には新原発への置き換えが計画されました。場所は同じですが名称はヴィサギナス原発に変更、リトアニアだけでなく近隣諸国へも電力供給。供給予定のバルト三国とポーランドが投資組織を作り、この4国だけでなく大口の投資家、戦略的投資家兼建設業者を呼び込んで、30~50億ユーロの資金調達と建設を実行することにしました。2010年には韓国電力公社 (KEPCO) だけが戦略的投資家兼建設業者に応札。しかし、その後、撤回され、原発計画は宙に浮きました。
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米国のGE日立は、ポーランドの同国初となる2ヵ所の原発建設を獲得しよう営業していました。ABWRと次世代大型炉「ESBWR」の売り込みです。リトアニアの原発の電力は、ポーランドにも供給予定です。その遅れはポーランドにも困り事。GE日立にすれば「将を射んとすれば駒を・・」で、リトアニアの原発の件を日本の日立GEに振ります。日立GEは東電核災害で日本での新規建設がなくなりましたから、海外へ営業したい。台湾の第4原発・龍門原子力発電所ではGEの下請け納入業者で利幅が少ないですが、リトアニアでは主契約者(元請)です。

それでABWRを新設しようと日立は売り込みました。2011年には日立は受注の優先交渉権を獲得。2012年3月にはリトアニア国会で承認を得たら建設開始という段階まで進みました。しかし同年10月の国民投票で反対65%。リトアニア首相の任命したタスクフォースが2013年春に、日立の原発はリトアニアにとって高価すぎ電力価格にもロシアとの競争力がないという結論をだしました。
2013年4月22日に首相府は「現在の条件ではビサギナス原発建設計画はリトアニアにとってあまりにも高価だ」「商業的条件が改善され、その他の要件が満たされた場合のみプロジェクトの継続が可能だ」と言明。事実上凍結されました。原発を売り込もうとする開発途上国などでは、付きまとう問題です。
ところが本年、2014年4月3日に「リトアニアの外交戦略としてバルチックとノルディックの国々とEUと米との友好を強化。 さらに昨今の露のクリミア併合を地域の安全と安定の脅威と言及。ビザギナス原発なしではリトアニアとバルチック隣国は 露の電力供給に強く依存したままになる。」として、凍結を解除してます。ロシアへの安全保障の危機感が、リトアニアにとって高価すぎという経済的危機感を吹き飛ばした格好です。

さて建設まであと数歩のリトアニアのABWR、日立のLT-ABWRはどんなものでしょうか。日立によれば「東日本大震災の経験を踏まえ、代替電源の確保や機動的な除熱機能の復旧対策反映等、安全性をさらに向上させたもの」
日立の資料を見ると、航空機衝突に備えて建屋の最上部を大きくしています。使用済み核燃料プール(Spent fuel storage pool)を地下に置いています。非常用の空冷デーゼル発電機、フィルターベント設備を設置。そして、免震基礎(Seismic isolation system)を採用している。
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日本は2006年から発電用原子炉施設に免震構造等の導入が認められています。研究では高速増殖炉・FBR建屋免震装置は、1基当たりの設計荷重が500トンの鉛入積層ゴムで、基礎と建屋下部床の間に276個配置する構造となっている。このような研究の積み重ねがありますが、フィルターベント設備など東電核災害後の新設備で採用された例を知りません。
 また、日本ではBWRの使用済み核燃料プールは最上階、格納容器の頂部の脇にある設計になっています。そして、そこにぎっしりと詰まって貯蔵されている。福島第一原発4号機では、点検作業で使用中の崩壊熱が多い核燃料が一時的にプールに移されていた。それで、その崩壊熱でビッシリ貯蔵されていた物も含めて熔融して、大量の放射能が環境中に出る恐れがあった。また崩壊して周辺に散らばってしまう恐れもある。

このリトアニア版のABWR LT-ABWRの説明図では、運転停止中の点検時交換時に炉から一時的に移動収納するプールは頂部脇にあります。その一方、地下に搬出まで長期貯蔵するプールを設ける設計になっています。仮に運転停止中の点検時、交換時に東電核災害のようにプールからの除熱が停止したとします。その場合、数日の間に崩壊熱で頂部脇プールで溶融する量は、炉内にあった量です。つまり運転中に発災しメルトダウンして生成するコリウムと同じく1炉心分です。少なくて済みます。

柏崎刈羽原発6、7号機の使用済み核燃料プールには約3炉体分あります。運転停止中の点検時、交換時には更に炉から一時的に1炉体分が移されます。その時に東電核災害のようにプールからの除熱が停止したとすると、一時的に入れられた1炉体分が熔融し、さらに3炉体分も熔かされてしまいます。LT-ABWRでは、こ3炉体分は地下の別のプールに入れる設計ですから、熔融は1炉体分ですみます。
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柏崎刈羽原発では、貯蔵プールを新設したり、崩壊熱量が少なくなった物を乾式貯蔵するなどしないと格納容器の頂部の脇にあるプールからは減らせません。大間原発は現在建設中で半分も進んでいません。そして主契約者(元請)はLT-ABWRと同じ日立GEです。日立GEは危険性を減らすために設計変更、大間原発の建屋地下に使用済み核燃料プール設置を言い出さないのでしょうか。それが安全文化『原子力施設の安全性の問題が、すべてに優先するものとして、その重要性にふさわしい注意が払われること』ではないのでしょうか? 工期とか費用よりも安全性の問題を優先して扱う安全文化は日立GEや施主の電源開発にあるのでしょうか?
 リトアニア 2020年までは無理? 2014年6月追記

2014年6月12日 ロイター配信より -
日立は12日の事業戦略説明会で、2020年度の原子力発電事業の売上高を2800億円とし、従来計画の3600億円から下方修正したと発表した。リトアニアの原発計画が遅れていることや国内事業を慎重に見積もったため。
 2015年度の原発事業の売上高は1400億円(13年度は1100億円)を計画。説明会に登壇した長澤克己常務(電力システム社社長)は原子力事業について「国内は当面厳しい状況。ただ海外プロジェクトの準備はしていく」とし、海外中心に売り上げ増を図る方針を示した。
 
原発を含む「電力システム事業」の2015年度の売上高は5200億円(13年度は7773億円)を目指す。今年2月付で三菱重工業と火力事業を統合した「三菱日立パワーシステムズ」(出資比率は三菱重65%、日立35%)が発足し、日立グループから火力事業の売り上げがほとんど外れたため、13年度からは減収となる。

原子力、電力流通、自然エネルギーの3事業を柱とする電力システム事業として、2020年度の売上高は8000億円を計画する。

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0EN0QZ20140612?pageNumber=1&virtualBrandChannel=0


非常用のガスタービン発電車② 可搬型設備等保管場所 2014年5月19日、東京電力の柏崎刈羽原発の敷地内見学記③ [柏崎刈羽原発、施設設備]

2014年5月19日、東京電力の柏崎刈羽原発の敷地内見学(エントロピー学会)と元刈羽村村議・武本さんから断層問題を説明を受ける。
敷地内見学では、見学バスに乗車時点から撮影禁止が条件なので画像はありません。動画は、東京電力の[映像で巡る]柏崎刈羽原子力発電所サイトツアー でどうぞ。書いている内容は、見学後の武本さんによる説明などが混じっています。
① 入構  ② 可搬型設備等保管場所 詰所、隆起、陥没
 
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可搬型設備等保管場所で一番目立つのは、真っ赤な消防車。東電の解説資料では、大型車両のはしご車の絵が使われていますが、実際に多数配備されているのは普通車の消防車。はしごなどが載っていないので、玩具ぽく見えました。可搬型代替注水ポンプなので積んであるポンプが使えればよいというところなのでしょう。また電源車も多く置いてありました。1~4号機分を配備してあるそうです。大湊側には5~6号機分。東電は、全機再稼働をやる気マンマンです。
 
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また、この保管所にはガスタービン発電車が3組ありました。25トントラックにロールスロイス製航空機転用型ガスタービンと発電機を、同じく15トントラックに制御装置、バッテリー、燃料タンク等を搭載する2台で一組の構成です。

地震時の揺れ 
地震時には25トン発電機トラック、15トン制御トラックが大きく揺れます。車輪止めはしてありますが、左右や上下動には無防備です。燃料タンクなどと繋ぎ放しになっているので、地震時には燃料接続部や電源接続部、パイプやケーブルが破損したり引きちぎれる可能性があります。
 
潮風での腐食 
また365日24時間、海からの潮風に晒されています。塩分は機器を腐食します。平成25年11月17日に№1発電機車から燃料漏れが見つかっています。この車は平成23年3月に配備された車です。25年10月7日、約1か月前の車両点検では異常なし。
 調査の結果、燃料タンク連結配管(フレキ管)のピンホールからの漏洩。この管は全体的に塩分で腐食していました。№1発電車の他のフレキ管、№2のフレキ管でも塩分による腐食が見つかっています。№2は平成24年3月配備ですから、潮風、浜風の腐食力は大したものです。管の材質を変え交換しています。車窓からは発電車の下部にドレン受がおいてありました。
 この潮風による腐食は、新潟の海岸部に住む者なら自家用車や自転車で誰もが知っています。東電は車内では腐食が無かったとしていますが、これも速度の問題だと経験が教えてくれます。この発電車がイザという時に、部品の潮風による腐食で故障する可能性を示しています。
 
燃料漏れ資料・・規制庁提出分 地元説明資料


② 可搬型設備等保管場所 隆起・陥没 2014年5月19日、東京電力の柏崎刈羽原発の敷地内見学記②加筆 [柏崎刈羽原発、施設設備]

2014年5月19日、東京電力の柏崎刈羽原発の敷地内見学(エントロピー学会)と元刈羽村村議・武本さんから断層問題を説明を受ける。
敷地内見学では、見学バスに乗車時点から撮影禁止が条件なので画像はありません。動画は、東京電力の[映像で巡る]柏崎刈羽原子力発電所サイトツアー でどうぞ。書いている内容は、見学後の武本さんによる説明などが混じっています。
① 入構
② 可搬型設備等保管場所
 
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 可搬型設備とは、非常用の電源車や消防車などシビアアクシデント対策に配備した車両。昨年2013年秋に来たTさんによれば、中央にドンと設置されているテント型の建物はなかったそうです。東電は資材置き場と言っていました。また昨年秋には1ヵ所しかなかった、見学した北の柏崎市側(荒浜側)にしかなっかたそうです。Tさんは、1ヵ所に集めておけば、道路が壊れるなどで全部使えなくなるのでは?と懸念を持った。東電の説明では、Tさんの訪問後に社内からも分散配備すべきとの意見が出て、南の刈羽村側(大湊側)にもう1ヵ所設け、5、6、7号機用はそちらに配置することにして造成中とのことでした。
 待機詰所
消防車などを運転操作する人は、宿直体制で確保すると東電はしています。東電社員には大型自動車の免許取得させたりショベルカー運転訓練をしているそうです。宿直人数は36人で、組合などと交渉中で確定はしていないそうです。下請けの方を含めそうした非常時の要員は、何処で待機しているのでしょう?車内から見た限り、保管場所には詰所は見えませんでした。イザという時に、何処からこの可搬型設備等保管場所に、どうやってやってくるのでしょう?発災時に既設の電動ポンプやデーゼルポンプが稼働せず、原子炉注水が途絶えると、冷却水不足で約30~40分後には炉心の核燃料の損傷が始まります。短時間で、ここから、消防車を持っていかなければならない。待機場所からこの保管場所までの移動時間は短いほど良いわけです。何処に待機所があるのでしょう。
 
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 また、事故時には待機所は休憩、トイレや食事場所にもなります。福島第一を見れば、衣服を取り換え除染し、被曝量を測りる特別な出入り口。放射能を除いた空気を供給する空調など備え、水や非常食を備蓄した詰所が必要だと思います。事故時の現地司令部は免震重要棟が用意されています。頭があっても手足が無ければ対応できません。その実行部隊の作業員さんたちの放射能を避ける建物が用意されているのでしょうか。車内から見た限り、保管場所にはプレハブの詰所さえ目にしませんでした。
 
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道路の陥没隆起
この本場所は林を切り拓いて平らにしただけです。柏崎刈羽原発の敷地の地層の構造、褶曲でみると褶曲の盛り上がりの深谷背斜(はいしゃ)の山脈に当たる背斜軸と沈降の谷にあたる真殿坂向斜(まどのさかこうしゃ)の谷底(向斜軸)があります。この保管場所は真殿坂向斜(まどのさかこうしゃ)の谷底(向斜軸)付近です。武本さんからこの真殿坂向斜の沈み具合を教えてもらいました。この向斜軸の通るところに道があるのです。昭和30年代、武本さんの子供時代はリヤカーや荷馬が通る道でしたが、自動車が通るようになると道が沈降。何度直しても、地盤強化しても沈降が止まらない。とうとう、固い地盤まで50㍍位鋼板を打ち込んで足場を作って、それで橋を作った、平らな道路橋です。
 この道路橋から25㍍くらい離れたところに電柱があります。柏崎刈羽原発の電気を関東に送るための50万ボルトの高い送電鉄塔です。「武本さん、地震などで揺れたら、そっちの真殿坂向斜の谷底方向に傾きませんかね?」「イヤ、支柱を打ち込んであるから」「どれくらいの深さです?」「聞くところ15~20㍍打ち込んで岩盤に達している」・・ほんの水平距離で60m位はなれた真殿坂向斜の谷底付近では、同じ地盤に到達するのに50㍍位鋼板を打ち込んでいる。
 この保管場所は林を切り拓いて平らに造成しただけです。地震で陥没や隆起しないのでしょうか。そうなれば、消防車や電源車を動かせるのでしょうか?ここから水平距離で約100㍍、約30㍍下って1~4号機の敷地に到着します。中越沖地震時には、至る所で道路が陥没、隆起しました。道路に20㎝位の段差ができたら通行できません。Iさんが問い質しました。
  東電は「中越沖地震で陥没隆起するところがわかったので、対策してある。仮にそうした段差ができても、用意してあるショベルカー、砂利などで直ちに応急措置して通れます。」。最短で約30~40分後には、原子炉建屋傍で注水できるようになるというのです。新潟地震、中越地震、中越沖地震と経験している新潟県民から見ると何とも異様に強固な自信をお持ちのようです。Iさんは仕事柄、詳しいので怒って、再度質します。「やれます、やります。」気合で、道路の陥没は直らない、車は通れませんヨ。


入構 2014年5月19日、東京電力の柏崎刈羽原発の敷地内見学記① [柏崎刈羽原発、施設設備]

2014年5月19日、東京電力の柏崎刈羽原発の敷地内見学(エントロピー学会)と元刈羽村村議・武本さんから断層問題を説明を受ける。
敷地内見学では、見学バスに乗車時点から撮影禁止が条件なので画像はありません。動画は、東京電力の[映像で巡る]柏崎刈羽原子力発電所サイトツアー でどうぞ。書いている内容は、見学後の武本さんによる説明などが混じっています。

12時、柏崎駅。見事にシャッター商店街。同行のIさんによれば、郊外の大型店にお客を取られている。新潟県で駅前が繁華街なのは新潟市と長岡市。あとはこのような有様だとか。一昨日、佐藤栄佐久・前福島県知事は大型店の出店の規制条例を私の時代で作ったと仰っていたが、その効果のほどは?

1時駅前出発。2車線道路、周囲の住宅街から避難できるのか?

1時15分頃 東電サービスホール着。閑散としている。早速に身元のチェックを受ける。案内役の広報課長さんのレクチャー後、バスに乗車。

入口①
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入構の車で詰まっている。一日約4000人ほど、中越沖地震前は約1万人だったそうだ。民間の警備会社がチェックしている。耳がつぶれていて柔道やレスリングの経験者だろうが、丸腰。Iさんが、この警備会社の社員にテロリストなどが潜入していたら、素通りできるのではないかと後で問い質した。答えは「 」。新潟県警が常駐しているそうだ。有刺鉄線の柵と監視カメラ。

米国原子力規制委員会・NRCには直属のテロリスト役部隊がいて最低3年に1回、原発で行う「フォース・オン・フォース」という訓練を行うそうだ。「フォースオンフォース訓練(武力対抗訓練)は3年に1回、3夜かけて行い、訓練においては、守るべきターゲットまで到達されてしまえばその時点で訓練はそこで失敗になり、また失敗したときにはそれが広く露見してしまい、原子力に対する信頼低下につながりかねない。各種情報については、必要なメンバーの間で交換するが、難しいのは公衆に対してどのような形で情報を提供できるかである。」http://www.jaea.go.jp/04/np/activity/2011-12-08/report.html

「いずれにしても、航空機の突入等のテロ行為に対しては、何よりもまず、そのような事態に至らないよう、警備体制の強化はもちろん、あらゆる外交的努力、政治的努力が傾注されることが重要であると認識しています。」(原子力安全委員会、2001年 http://www.nsr.go.jp/archive/nsc/toi/010701-010930.htm

これは10年以上前の見解だが、集団的自衛権など外交的、政治的にテロリズムを呼び込むようになっているから、出入りする作業員・住民・国民を監視する社会になっていく。「 ロベルト・ユンクの原子力帝国を読んでください。」と佐藤栄佐久・前福島県知事は最後に言っていた。(この本は虹屋密林店にあります。)
 
② 可搬型設備等保管場所 に続く 
 
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受動安全性が備わった東芝のEU-ABWR、US-ABWR(承02) [柏崎刈羽原発、施設設備]

再稼働が目論まれている柏崎刈羽原発6、7号機はABWRという炉型です。この日本版ABWR、JP-ABWRをほかの国々のABWRと比べてみようと思います。
 1回 リトアニア版ABWR LT-ABWR http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2014-04-10
 シビアアクシデントへの対策、アクシデントマネジメント・AMは、メルトダウンを防ぐ段階のフェーズⅠとメルトダウンした後の放射能の環境中への拡散、漏れを極小化して被害を少なくする段階、フェーズⅡに分かれます。また、対策は電動ポンプ、デーゼルポンプ、水蒸気などの動力に依存する能動的対策と、そうした動力ではなく重力などを上手に使う非能動的な受動的な対策、受動安全性を具えた対策に分けられます。3回目でフェーズⅠで比較検討しました。
3回 EU-ABWR、US-ABWR 
フェーズⅡは、(2-1)溶融物・コリウムを圧力容器内に留め、メルトスルーさせないという圧力容器内溶融物保持(IVR:In-Vessel Retention)といい、そのための対策をIVR-AMと(2-2)コリウムを格納容器内に留め、環境中に拡散させない事と(2-3)コリウム、放射能が環境中に拡散しても、放出拡散量を極小化する策に分けられます。(2-3)での放出される核種、量、放出経路、放出開始時刻と終了時刻が原子力防災に左右されます。

(2-1)圧力容器内溶融物保持(IVR)ための対策(IVR-AM)は、US-ABWR、EU-ABWRの両タイプにありません。
(2-2)コリウムを格納容器内に留め、環境中に拡散させないための受動安全性を具えた策として、US-ABWRにはthe passive flooder system、1997年5月のRev. 4ではthe lower drywell flooder (LDF)と名付けられている設備が設計されています。これはメルトスルーしてコリウム・溶融核燃料が圧力容器直下の下部ドライウエル・lower drywell、ペデスタル部と呼ばれる部分に落下して、コリウムの崩壊熱でペデスタル部のガス温度が260℃(533K)以上になった場合に注水する装置です。
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ペデスタルの隣には圧力抑制プールがあります。それとの間に導水管を通し、ペデスタル側に260℃になると10分未満で融ける溶融弁(可溶栓)を付けてあるものです。ミニマムで1秒間に10.5㍑の水が抑制プールから流れ込んでくる管が10本設置されています。
その効果は、コリウムの温度を低く保ち、コリウムーコンクリート相互作用CCIの予防、つまり大量の水素ガス、一酸化炭素ガス、コリウム・核燃料溶融物のエアロゾル・微粒子状の微粉の発生を予防し、ペデスタル部への伝達、放射による加熱を防ぎペデスタル部の高温化による構造劣化を防ぐことです。the lower drywell flooder (LDF)は、動力を必要としない受動のバックアップ・システムです。コリウム落下時に水がペデスタル床にあったり落下直後から注水があり、コリウムが水でおおわれる場合は260℃にならないので作動しません。

コリウムがペデスタル床に一様に拡がった場合は、このような効果が生じますが、厚い薄い、塊ができるなど不均一になると、熱の伝達が大量の部分が生じ高温化してコリウムーコンクリート相互作用CCIが発生すると見られます。EU-ABWRには、コリウムの受け皿となるコアキャッチャーが設置してあります。コアキャッチャー底面と床面は離れており空隙があります。その空隙に水が入ります。そして、沸騰して除熱します。the lower drywell flooder (LDF)や格納容器スプレイだけでは、起こりうるCCIを防ぐ策です。(格納容器最高使用圧力の約2倍、8気圧時でも水の沸点は約175℃)

このようにペデスタル部の落下コリウムが水で冷却されるということは、大量の水蒸気が発生するということです。メルトダウンで発生する非凝縮性の水素ガス、核燃料から放出される放射性希ガスが、封入してある窒素ガスに加わっています。そこに、この水蒸気が加わり格納容器内の圧力は高まります。US-ABWRでは、発災時から炉に注水がなくメルトダウンした場合でのシュミュレーションが示されています。それによれば、発災から約20時間後に格納容器の加圧破損の危険圧力に達します。

この格納容器内の減圧、除熱には、EC-ABWRではPCCS・受動的(静的)格納容器冷却システムを使うことになっています。IC・非常用復水器と同様に2つの冷却水プール、プールの中に2台の熱交換器です。1台で崩壊熱の33%能力で格納容器内の高圧高温のガスを冷却します。冷えたガスは圧力抑制プール、復水はペデスタル部のコリウムに戻す配管です。冷却プールの貯水量は24時間分、連絡する貯蔵タンクに48時間分となっています。配管の弁を開閉する電気は必要ですが、ポンプないので電力は不要な受動的なシステムです。
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(2-3)の環境中の放出拡散量を極小化する策はどうでしょうか。US-ABWRでは20時間後には危険な圧力、格納容器の使用最高気圧の2倍に達します。その場合は、ベント、フィルターなしの耐圧強化ベントが減圧の手段です。その際に圧力抑制プールの水の中を潜らせ、エアロゾル状の放射能を減少してからガスを取り出すウェットウエルベントが、放出拡散量を極小化する策です。

EU-ABWRでは、フィルターベント設備が設けられています。ですから、PCCSの冷却水がなくなるなどで格納容器内からの排熱、減圧ができなくなって高圧化した場合には、このフィルターベント設備を使ってベントできます。
 しかしフィンランドで予定している使い方はこれではありません。STUK(ストゥーク)・フィンランド放射線・原子力安全センターの文書を見ると、A filtered containment venting system will be installed at the plant for long-term management of uncondensed gases.とあります。PCCSの作動時のシュミュレーションを見ると、作動しても圧力は最高使用気圧の1.2倍ほどです。メルトダウンでの非凝縮性の水素ガス、核燃料から放出される放射性希ガスなどが加っているためです。

設計ではガスの漏出は、常温・最高使用圧力の0.9倍の圧力でABWRでは格納容器空間部容積の0.4%/日が設計漏洩量です。柏崎刈羽で1日に約30㎥です。最高使用気圧の約1.2倍ですから、格納容器が無傷でも、かなりの量が原子炉建屋内に漏洩しています。建屋内で事故処理作業にあたっている方に水素ガスは爆発の危険性、放射性希ガスは被曝をもたらします。作業環境、労働環境を考えれば、大気圧まで減圧した方がよい。それで長期管理という視点では、風向きなどを考慮して、ベントを、環境中への放射性エアロゾルを可能な限り捕ってベントを行う道具としてフィルターベント設備を設けるとしています。ご念の入ったことです。フィンランドの世評では「フィンランド規制庁であるSTUKの重箱の隅をほじくる『ゴールデン・スタンダード』の呼び名も高い、厳しいチェック」だそうですが、こういう「重箱の隅をほじくり」は、国民にとって良いことです。

さて、溶融弁付き導水管やPCCSは、思い立って直ぐにはできません。東芝は何時から技術開発していたのでしょうか。

東芝は溶融弁に関する特許を持っています。特開平7-134193です。それは、平成5年(1993)11月12日に出願されてます。内容は「米国GE社の溶融弁よりも優れた形状記憶合金を使った弁を作りました」です。平成7年(1995)5月23日に認められ公開されてます。

 JP-ABWRの柏崎刈羽6号機は1991年9月着工、7号機は92年2月、浜岡5号は99年3月、志賀2号は99年8月、島根3号は2005年7月、大間は2008年、どれにも付いていない。何故でしょう?


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