SSブログ

受動安全性が備わった東芝のEU-ABWR、US-ABWR(承02) [柏崎刈羽原発、施設設備]

再稼働が目論まれている柏崎刈羽原発6、7号機はABWRという炉型です。この日本版ABWR、JP-ABWRをほかの国々のABWRと比べてみようと思います。
 1回 リトアニア版ABWR LT-ABWR http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2014-04-10
 シビアアクシデントへの対策、アクシデントマネジメント・AMは、メルトダウンを防ぐ段階のフェーズⅠとメルトダウンした後の放射能の環境中への拡散、漏れを極小化して被害を少なくする段階、フェーズⅡに分かれます。また、対策は電動ポンプ、デーゼルポンプ、水蒸気などの動力に依存する能動的対策と、そうした動力ではなく重力などを上手に使う非能動的な受動的な対策、受動安全性を具えた対策に分けられます。3回目でフェーズⅠで比較検討しました。
3回 EU-ABWR、US-ABWR 
フェーズⅡは、(2-1)溶融物・コリウムを圧力容器内に留め、メルトスルーさせないという圧力容器内溶融物保持(IVR:In-Vessel Retention)といい、そのための対策をIVR-AMと(2-2)コリウムを格納容器内に留め、環境中に拡散させない事と(2-3)コリウム、放射能が環境中に拡散しても、放出拡散量を極小化する策に分けられます。(2-3)での放出される核種、量、放出経路、放出開始時刻と終了時刻が原子力防災に左右されます。

(2-1)圧力容器内溶融物保持(IVR)ための対策(IVR-AM)は、US-ABWR、EU-ABWRの両タイプにありません。
(2-2)コリウムを格納容器内に留め、環境中に拡散させないための受動安全性を具えた策として、US-ABWRにはthe passive flooder system、1997年5月のRev. 4ではthe lower drywell flooder (LDF)と名付けられている設備が設計されています。これはメルトスルーしてコリウム・溶融核燃料が圧力容器直下の下部ドライウエル・lower drywell、ペデスタル部と呼ばれる部分に落下して、コリウムの崩壊熱でペデスタル部のガス温度が260℃(533K)以上になった場合に注水する装置です。
14-0405-2012a_sc_session3.png
ペデスタルの隣には圧力抑制プールがあります。それとの間に導水管を通し、ペデスタル側に260℃になると10分未満で融ける溶融弁(可溶栓)を付けてあるものです。ミニマムで1秒間に10.5㍑の水が抑制プールから流れ込んでくる管が10本設置されています。
その効果は、コリウムの温度を低く保ち、コリウムーコンクリート相互作用CCIの予防、つまり大量の水素ガス、一酸化炭素ガス、コリウム・核燃料溶融物のエアロゾル・微粒子状の微粉の発生を予防し、ペデスタル部への伝達、放射による加熱を防ぎペデスタル部の高温化による構造劣化を防ぐことです。the lower drywell flooder (LDF)は、動力を必要としない受動のバックアップ・システムです。コリウム落下時に水がペデスタル床にあったり落下直後から注水があり、コリウムが水でおおわれる場合は260℃にならないので作動しません。

コリウムがペデスタル床に一様に拡がった場合は、このような効果が生じますが、厚い薄い、塊ができるなど不均一になると、熱の伝達が大量の部分が生じ高温化してコリウムーコンクリート相互作用CCIが発生すると見られます。EU-ABWRには、コリウムの受け皿となるコアキャッチャーが設置してあります。コアキャッチャー底面と床面は離れており空隙があります。その空隙に水が入ります。そして、沸騰して除熱します。the lower drywell flooder (LDF)や格納容器スプレイだけでは、起こりうるCCIを防ぐ策です。(格納容器最高使用圧力の約2倍、8気圧時でも水の沸点は約175℃)

このようにペデスタル部の落下コリウムが水で冷却されるということは、大量の水蒸気が発生するということです。メルトダウンで発生する非凝縮性の水素ガス、核燃料から放出される放射性希ガスが、封入してある窒素ガスに加わっています。そこに、この水蒸気が加わり格納容器内の圧力は高まります。US-ABWRでは、発災時から炉に注水がなくメルトダウンした場合でのシュミュレーションが示されています。それによれば、発災から約20時間後に格納容器の加圧破損の危険圧力に達します。

この格納容器内の減圧、除熱には、EC-ABWRではPCCS・受動的(静的)格納容器冷却システムを使うことになっています。IC・非常用復水器と同様に2つの冷却水プール、プールの中に2台の熱交換器です。1台で崩壊熱の33%能力で格納容器内の高圧高温のガスを冷却します。冷えたガスは圧力抑制プール、復水はペデスタル部のコリウムに戻す配管です。冷却プールの貯水量は24時間分、連絡する貯蔵タンクに48時間分となっています。配管の弁を開閉する電気は必要ですが、ポンプないので電力は不要な受動的なシステムです。
14-0407_PCCS.png
(2-3)の環境中の放出拡散量を極小化する策はどうでしょうか。US-ABWRでは20時間後には危険な圧力、格納容器の使用最高気圧の2倍に達します。その場合は、ベント、フィルターなしの耐圧強化ベントが減圧の手段です。その際に圧力抑制プールの水の中を潜らせ、エアロゾル状の放射能を減少してからガスを取り出すウェットウエルベントが、放出拡散量を極小化する策です。

EU-ABWRでは、フィルターベント設備が設けられています。ですから、PCCSの冷却水がなくなるなどで格納容器内からの排熱、減圧ができなくなって高圧化した場合には、このフィルターベント設備を使ってベントできます。
 しかしフィンランドで予定している使い方はこれではありません。STUK(ストゥーク)・フィンランド放射線・原子力安全センターの文書を見ると、A filtered containment venting system will be installed at the plant for long-term management of uncondensed gases.とあります。PCCSの作動時のシュミュレーションを見ると、作動しても圧力は最高使用気圧の1.2倍ほどです。メルトダウンでの非凝縮性の水素ガス、核燃料から放出される放射性希ガスなどが加っているためです。

設計ではガスの漏出は、常温・最高使用圧力の0.9倍の圧力でABWRでは格納容器空間部容積の0.4%/日が設計漏洩量です。柏崎刈羽で1日に約30㎥です。最高使用気圧の約1.2倍ですから、格納容器が無傷でも、かなりの量が原子炉建屋内に漏洩しています。建屋内で事故処理作業にあたっている方に水素ガスは爆発の危険性、放射性希ガスは被曝をもたらします。作業環境、労働環境を考えれば、大気圧まで減圧した方がよい。それで長期管理という視点では、風向きなどを考慮して、ベントを、環境中への放射性エアロゾルを可能な限り捕ってベントを行う道具としてフィルターベント設備を設けるとしています。ご念の入ったことです。フィンランドの世評では「フィンランド規制庁であるSTUKの重箱の隅をほじくる『ゴールデン・スタンダード』の呼び名も高い、厳しいチェック」だそうですが、こういう「重箱の隅をほじくり」は、国民にとって良いことです。

さて、溶融弁付き導水管やPCCSは、思い立って直ぐにはできません。東芝は何時から技術開発していたのでしょうか。

東芝は溶融弁に関する特許を持っています。特開平7-134193です。それは、平成5年(1993)11月12日に出願されてます。内容は「米国GE社の溶融弁よりも優れた形状記憶合金を使った弁を作りました」です。平成7年(1995)5月23日に認められ公開されてます。

 JP-ABWRの柏崎刈羽6号機は1991年9月着工、7号機は92年2月、浜岡5号は99年3月、志賀2号は99年8月、島根3号は2005年7月、大間は2008年、どれにも付いていない。何故でしょう?


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0