SSブログ
柏崎刈羽原発、施設設備 ブログトップ
前の5件 | 次の5件

受動安全性が備わった東芝のEU-ABWR、US-ABWR(起)(承01) update [柏崎刈羽原発、施設設備]

再稼働が目論まれている柏崎刈羽原発6、7号機はABWRという炉型です。この日本版ABWR、JP-ABWRをほかの国々のABWRと比べてみようと思います。
 1回 リトアニア版ABWR LT-ABWR http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2014-04-10
ABWRはBWRの基本的特許を持つGEと日立と東芝が共同で開発しました。それでこの3社が販売する権利を持っています。日立とGEは原発では一体化して、米国のGE日立、日本の日立GEという会社でやっています。

東芝はこれとは別にABWRの売り込みをやっています。東芝は2005年にPWRのメーカーのWH・ウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニーLLCを買収。それでPWRもBWRもどちらも売れる会社です。PWRは日本国内は三菱重工ですから、WHは海外で営業。BWRは、日本国内と海外。海外と言っても、主にGEの下請け、納入でやっていましたが、2005年以降の原発ルネッサンスと言われるブームに乗って、海外でのABWRの販売に乗り出します。米国とフィンランドやトルコです。


東電核災害後は日本国内での新規建設は無理ですから、東芝のABWR部門、原発の国内部隊は目の色が変わったそうです。応用が利く技術者は若手中心に、火力発電機器事業への配置転換を行い、部隊の縮小も図りながら、残った(言い方を変えればつぶしのきかない)国内部隊は海外での受注、新規建設に賭けたそうです。トルコは、資金や運転保守で組んでいた東京電力が脱落し、ダメになりました。米国も出資を決めていた東電が撤退し、シェールガス革命で前途は不明です。フィンランドは、国内総生産の4%を占めた携帯電話機のノキアの不振などで電力需要の減少が見込まれ東芝のABWRは大きすぎ、ロシア企業が出資者もお世話しますと提案してきて、受注を持っていかれました。
参照・・フィンランド便り http://japani.exblog.jp/20241861

DSC00009.jpg
原発輸出は「今やどのプロジェクトでも、原発建設を受注するには(メーカーが)出資をしなくてはならない」「10年近く(1基5千億の)キャッシュが寝てしまうファイナンシャルゲーム」という要素まで加わったそうです。国を巻き込んで資金調達、失敗したら税金で負担という仕組みがないとできない輸出産業って、将来性があるのでしょうか?

それはさておき、米国もフィンランドも設計の欠陥を理由に受注がダメになったわけではありません。規制当局、米国のNRC、フィンランドSTUKの審査、評価で設計に目立った欠陥が指摘されてダメになったのではありません。そして東芝の米国版ABWR、US-ABWRとフィンランド版ABWR、東芝はEU-ABWRといっています、その概要が公表されています。それらと日本のABWR、JP-ABWRを較べてみます。

資料源は3つ
一つは、原子力規制庁と東芝の2014年1月9日の「MDEP-ABWRWG 対応における海外 ABWR 設計の概要について」に付属した東芝からの配布資料、ただこれはプロパティでの作成日が1月21日。当日の資料とは違う可能性がある。


一つは、IAEA
2011年7月のワークショップ
資料

2013年11月の会議(第7回INPRO Dialogue Forum)
資料
一つは、
NRC・米国原子力規制委員会の資料
STUK(ストゥーク)・フィンランド放射線・原子力安全センター
STUK
資料
http://www.stuk.fi/ydinturvallisuus/ydinvoimalaitosten-toiminta/uudet_laitosyksikot/en_GB/uudet_laitosyksikot/_files/83141798951583905/default/STUK_Fortum_PreliminarySafetyAssessment_plant_alternatives_appendix1.pdf
14-0405-20140109_01-15s.png
 シビアアクシデントへの対策、アクシデントマネジメント・AMの視点で検討します。
AMはメルトダウンを防ぐ段階のフェーズⅠとメルトダウンした後の放射能の環境中への拡散、漏れを極小化して被害を少なくする段階、フェーズⅡに分かれます。
フェーズⅠでは(1-1)圧力容器機内の核燃料炉心が水没するように注水をする事と(1-2)格納容器内に蓄積する崩壊熱を環境中に排熱する事と(1-3)100℃以下の状態、冷温停止状態にする事にわけられます。
フェーズⅡは、さらに(2-1)溶融物・コリウムを圧力容器内に留め、格納容器に出さない。メルトスルーさせないという事と(2-2)コリウムを格納容器内に留め、環境中に拡散させない事と(2-3)コリウム、放射能が環境中に拡散しても、放出拡散量を極小化すると分けられます。原子力防災は、(2-3)での放出される核種、量、放出経路、放出開始時刻と終了時刻に左右されます。

また、対策は電動ポンプ、デーゼルポンプ、水蒸気などの動力に依存する能動的対策と、そうした動力ではなく重力などを上手に使う非能動的な受動的な対策、受動安全性を具えた対策に分けられます。

(1-1)の炉心注水確保では、US-ABWRでは能動的対策しかありません。JP-ABWRと同じです。東電核災害後でも、それまであった消防車などの外部の可搬ポンプによる注水に、新たな名前、ACIWA(AC Independent Water Addition)を付けてSBO・全交流電源喪失の対策に計上しただけで、実質的にUS-ABWRで新たなものはありません。
14-0412ACIWA.png
フィンランドのEC-ABWRにはIC(isolation condenser・非常用復水器)が付いています。これは崩壊熱で発生する水蒸気を2個の冷却水タンク内に設置した熱交換器に導きます。タンク毎に2台設置されている熱交換器は、1台で崩壊熱の33%を、崩壊熱をタンクの冷却水に渡して、凝縮して水に戻す能力を持っています。1台が故障しても3台でOKです。その復水を重力で炉に給水するシステム・装置です。蒸気を出すためのポンプ、水を給水するポンプがない受動安全性を具えた対策です。

また(1-2)崩壊熱環境排熱の点では、IC(非常用復水器)は崩壊熱を渡されたタンク水の水蒸気が大気中に出ていき排熱されます。IC冷却タンクの貯水量は24時間分、連絡する貯蔵タンクに48時間分となっています。
14-0407-ic2.png
US-ABWRやJP-ABWRの能動的対策では、蒸気駆動のRCICでは排熱はできません。RCICは崩壊熱で炉(圧力容器)で発生する水蒸気で蒸気タービンを駆動し、その回転力で給水ポンプが稼働します。タービンの安定駆動の蒸気圧下限は10気圧です。これより下では安定的に駆動せず給水ポンプも不安定になり、最終的には停止します。これが東電福島第一原発3号機、2号機でおきました。10気圧程度で電動ポンプのRHRに切り替えます。RHRでは炉への給水電動ポンプだけでなく、RHR熱交換器に冷却水を給水する電動ポンプ、その熱くなる冷却水を海水で冷やす熱交換器に海水を送る電動ポンプ、1系統合計3台が全て稼働して海水・海に排熱します。

 SBO・全交流電源喪失の時の新対策と銘打ったACIWA(AC Independent Water Addition)では、このRHRの熱交換器に冷却水を給水していないので、環境中への排熱はありません。JP-ABWRでも、消防車注水でも同じです。格納容器に注水すれば、注水された水が貯えられる熱量だけ、当初より格納容器内に蓄積できる崩壊熱が増えます。格納容器内の容積によって注水量に上限があります。東電福島第二原発の実例を参照するとABWRでは約2日から3日ほどと見込まれます。

能動的対策でRHRがSBOや3台必要なポンプの1台が故障などで稼働しない場合は、環境中に排熱する事がUS-ABWRやJP-ABWRではできません。日本では追加安全対策で可搬の熱交換ユニットを導入しました。これは、RHRでの熱交換器に冷却水を給水する電動ポンプ、その熱くなる冷却水を海水で冷やす熱交換器に海水を送る電動ポンプに代替するものです。RHRの炉への給水電動ポンプは故障もせず、SBOが解消されて駆動電力が送られて稼働できる時にのみ有効です。半端な対策です。
 14-04110050_.png
PCCS・受動的(静的)格納容器冷却システム 
フィンランドのEU-ABWRでは、そのような時に排熱する受動的なシステムが付いています。PCCS・受動的(静的)格納容器冷却システムです。IC・非常用復水器の原子炉から水蒸気を冷却する同じ原理で、格納容器内の高圧高温のガスを冷却します。Passive(パッシブ、受動的) Containment(格納容器) Cooling(冷す) system(システム)は、配管の弁を開閉する電気は必要ですが、ポンプないので電力は不要な受動的なシステムです。

原子炉からは水蒸気100%でICで冷却されると100%水に凝縮し、その復水を戻します。格納容器には予め窒素ガスが封入されています。そして窒素は非凝縮性のガスです。つまりPCCS・受動的(静的)格納容器冷却システムを稼働すると、復水と冷えた窒素ガスが出てきます。それPCCSには、ガスを格納容器へ戻す配管と水を戻す配管の2本が付いています。この非凝縮性のガスを戻す箇所が技術的にはミソだと思います。これも冷却タンクの貯水量は24時間分、連絡する貯蔵タンクに48時間分となっています。


(1-3)の冷温停止状態にする事は、能動的対策ではRHRが稼働すれば24時間以内に可能です。SBOなどでRHRが稼働できないと不可能です。ACIWAでは注水量を増やし、熱水で格納容器内にだすことで可能ですが、格納容器内蓄水量に上限がありますから一時的なものです。
ICでは、7時間ほどで1気圧に圧力容器内の圧力が下がります。1気圧の冷却水の沸点は100℃です。水蒸気からタンク冷却水へ熱伝達で排熱と復水をしているので、水蒸気の発生する100℃以下にはできません。100℃の高温停止状態が、冷却水タンクに水がある限り可能です。

タグ:次世代ABWR

日立の英国版ABWRはフルMOX?? updato [柏崎刈羽原発、施設設備]

再稼働が目論まれている柏崎刈羽原発6、7号機はABWRという炉型です。この日本版ABWR、JP-ABWRをほかの国々のABWRと比べてみようと思います。
 前回 リトアニア版ABWR LT-ABWR http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2014-04-10
英国での日立の動きは、GE日立(本社・米国、GEが60%株主)の高速炉の売り込みと、日立製造所本社と日立GE(本社・日本、日立が80%株主)の英国版ABWR、UK-ABWRの建設の二つの動きがあります。一見バラバラのようですが、英国が抱えるプルトニウム、恐らく100トンを超えるプルトニウムの処理という点では一貫したものです。
 英国のプルトニウム問題

英国の固有の炉型、天然ウラン/黒鉛減速/炭酸ガス冷却方式のマグノックス炉GCRの使用済み核燃料は燃料被覆管の材質から長期の水中冷却や空冷ができません。被覆管が脆くなってバラバラになります。この炉型は、そもそも軍用核兵器材料のプルトニウムを製造するための炉型が原型です。軍用プルトニウムは核分裂が2~3か月程度の使用済み核燃料に含まれるプルトニウムが適しています。 
1359909768.gif
英国でマグノックス炉GCRでの商業発電が始まった当初は、英国軍が発電所の運用、つまり核燃料の交換間隔に関与し、使用済核燃料中のプルトニウムを買い取る事になっていました。それで使用済み核燃料にはプルトニウムクレジットという価格が付いていました。それ位に冷戦中の英国軍が欲しがっていました。だから炉から取り出したら間を置かずにプルトニウムを取り出す処理、核燃料を作る処理を経て2回目の処理ということで再処理といわれる処理をするので、この被覆管の性質は問題にされませんでした。

しかし、原爆が無限に要るわけではありません。やがて軍も引き取らなくなりました。それでも、マグノックス炉の使用済み核燃料がボロボロになって放射能がバラバラになる前に固めてしまうという意味で再処理が行われています。そうするとプルトニウムが取り出されます。
2012年段階で英国のプルトニウムは、軍用を除いて約87トン。マグノックス炉は2014年まで稼働し、その再処理は2020年まで行われます。核兵器の解体によっても使い道のないプルトニウムがでてきます。(英国には日本が委託した再処理などで英国外のプルトニウムも保管されており、それを含めると2018年には軍用でないプルトニウムは約140トンと見込まれている。)

発電で1年とかの核分裂期間をへた原子炉の使用済核燃料を再処理して得られるプルトニウム(原子炉級プルトニウム)では、核兵器は作れないといわれますが、それは嘘です。核爆発を起爆するための最低必要量は多くなり、8㎏になります。弾頭はおおきくなり、起爆装置も複雑化します。第二次世界大戦直後なら、工業・加工技術が低いので、それが理由で爆弾は作りにくかったかも知れませんが、今なら町工場の技術でできます。

発電で1年とか核分裂期間をへた核燃料には、勝手に核分裂し中性子をだす性質、自発核分裂性がたかい種類のプルトニウム(Pu240)が多く含まれるようになります。連鎖反応(核爆発)が勝手におこる可能性があります。それを過早核爆発(pre-detonation)、早期爆発、早発と云います。早発すると設計通りの威力が出ず、爆発規模が小さくなります。

兵器としては、運搬手段のミサイルが大型化する、軍用プルトニウムなら1発で済むところを念のため2発撃ち込むとか使用が面倒にはなります。しかし核兵器はでき、使用可能です。これは1990年に国際原子力機関・IAEAが認めている周知の事実です。それゆえにIAEAは、使用済み核燃料を製造する原発、その保管、行方を監視しているのです。
参照 使用済核燃料とプルトニウム

英国は核兵器保有国です。ですから、日本と違い核兵器不拡散という点ではプルトニウム保有は問題にはなりません。またプルトニウム燃料で高速増殖炉を稼働させて発電と増殖ができる、核燃料サイクルが将来的にできるから資源的経済的価値があるというなら、厳重にプルトニウムを管理保管すればよいのです。

しかし、日本以外の原発利用国で近未来に核燃料サイクルが可能だ、技術的経済的に可能だと考えて政策的に推進している国、政府はありません。研究は多くの国で行われていますが、近未来に核燃料サイクルが可能とは日本政府以外は考えていません。つまり日本以外の政府にとって、プルトニウム貯蔵は、盗まれるなどして核兵器が新たに製造されるリスクがあるだけです。それで、そのリスクを減らす処理が社会的政治的に求められます。

プルトニウム処理法は大きく二つ

処理は大きく二つの方向があります。一つは他の放射能、ガンマ線やベータ線をだす他の放射能と混ぜてしまう。再び使用済み核燃料の状態に戻す方向です。そう処理すると、他の放射能が出すガンマ線被曝が強く運搬自体が難しくなります。苦労して運び出しても核兵器を作るにはプルトニウムを取り出し精製する作業が必要となります。その作業には専門知識、技能をもった組織、設備とそれを賄い運用する資金が必要となります。ですから発見しやすい。使用済み核燃料の状態という錠をかける処理です。
1359904795.jpg
もう一つは、ゆっくりとプルトニウムを核分裂させて無くしてしまう事です。新たな放射能がほぼ同量できますが、プルトニウムは減ります。その処理ための原子炉が必要になります。プルトニウムは速度の速い中性子の方が核分裂を起こしやすいので、高速中性子の原子炉「高速炉」が適しています。核分裂で生じる中性子の速度を落とさないようにするために、高温で液体化した金属ナトリウムを冷却材に使うナトリウム冷却高速炉で研究が進んでいます。

高速炉の炉心でプルトニウム核分裂に使われず、炉心から漏れ出る高速中性子があります。炉心の周辺に高速中性子を吸収するとプルトニウムに核変換するウランを配置して、炉心から漏れ出る高速中性子でプルトニウムを作るする、炉心で消滅るより多くできる増殖するようにした炉が「高速増殖炉」です。

高速増殖炉は、世界で初めて1951年12月20日に原子力発電をおこなった原子炉でもあります。そのEBR-Iという高速増殖炉の実験炉は、1955年に部分的メルトダウンを起こしています。金属ナトリウムは化学的性質から扱いが難しく、日本の「もんじゅ」をみてもわかるように、実用炉はできていません。その手前の実証炉もありません。(多くの国が近未来に核燃料サイクルは不可能と考える理由の一つ)
この中間に、ウラン燃料にプルトニウムを添加したMOX燃料をBWRやPWRで使うやり方があります。核分裂中(発電中)には添加したプルトニウムは減りますが、ウランから新たなプルトニウムが生成します。核分裂(発電)期間が半年程度ならプラスマイナスゼロといわれます。 その使用済燃料は核分裂生成物の放射線が出ますから、1番目の処理法と同じ効果があります。半年ごとに発電を止めて、燃料を交換しますから、発電としては非効率で、電気単価は高くなります。単価を下げようと核分裂(発電)期間を長くすると、総量としてプルトニウムは増えます。

米国は1983年にプルトニウムの民生利用(発電)の研究を行わないことを決定し、高速炉も1994年には公費での研究は中止しました。その後はGE、GE日立がPRISM (S-PRISM)プリズムという名で研究をつづけます。2009年には、設計申請を2011年半ば又は2012年には米国原子力規制委員会・NRCに提出する予定と公表。2010年には実証炉の建設地の交渉を始めましたが、今でも申請も建設もされてません。
英国の処理方針 

2011年12月に英国政府は、プルトニウムを再利用する方針を固め、「英国国民により良い価値を提供し得るプルトニウム管理に関する提案を引き続き求めていく」とし、英国の原子力廃止措置機関(NDA)は、2012年2月に英国のプルトニウムを管理する代替方法の提案の公募を始めました。

それで、GE日立は英国のプルトニウム処理にPRISM (S-PRISM)・プリズムを使う、その際の核分裂エネルギーで発電を行う案を英国に提示。2012年に英国国立原子力研究所(NNL)と協力覚書(MOU)を結ぶなど話は進展しています。

ただこのナトリウム冷却高速炉PRISM (S-PRISM)は開発中で、米国での設計申請とNRCの審査、実物の実証炉の建設も行われていません。いつ実現するか見当もつかない。それで英国のプルトニウム処理策の隠し玉として、GE日立などが用意している策が英国版ABWR、UK-ABWRとみられます。日本でプルトニウムを添加したMOX燃料を炉心すべてに装荷するフルMOXのABWR、大間原発が日立GEの手で建設中です。

2012年11月に、日立製作所、日立の本体会社が英国の原発事業会社を約890億円で買収しました。このホライズン・ニュークリア・パワーン社は、既存のオールドベリー、ウィルファ両原発に1,300メガワット級の原子炉、フランスのアレバ社のEPR/欧州加圧水型炉か東芝のWH社のAP1000をそれぞれ2~3基、発電能力の合計で6,000MWe程度、導入する計画を持っていました。
日立によれば買収話は「3月にオファーがあり、炉型をABWRにしてもらえれば買収する意思を6月15日付で伝えていた。原子力発電事業をやるわけではなく、発電所をつくる場が欲しかった。一定の投資回収を求めるが大きな期待をもたない(日立製作所の羽生正治執行役常務)」買収で横からかっさらって日立GEのABWRにしたのです。

日立GEはABWRの英国政府の炉型審査、包括設計審査(GDA: Generic Design Assessment)手続きを2013年1月から始めました。2014年1月から第二段階に入っています。当初の予定では2017年に終了です。

電源開発が青森県に建設中の大間原発は、プルトニウムを添加したMOX燃料を炉心全部に詰めるフルMOXで稼働するABWRです。その建設主契約者(元請)は日立GEです。米国のGE日立の高速炉PRISMがもたついて、それでの処理ができない間は、子会社の日立GEがオールドベリー原発、ウィルファ原発に建設予定のABWRでMOX燃料でプルトニウム処理できるというわけです。

ABWRはフルMOXを想定して設計されていません。日本はMOX燃料をたった6体しか使ったことがありません。その特性、挙動のデータも少ない。
 原発の再処理で取り出されたプルトニウムは、自発核分裂を起こす性質が高い種類のプルトニウムが多いのです。それはどれくらいの期間、どれ位の強度で使われたかなどで個々バラバラです。それは核兵器では、組成の違いはどの原子炉から取り出されたプルトニウムを使った、どの国の核兵器であるを示す指紋の役割を果たし、過早核爆発(pre-detonation)となります。MOX燃料では、どの原子炉から取り出されたプルトニウムを使っているかでその特性、挙動が違うということです。原発のブレーキ役の制御棒やホウ酸水は、高速の中性子は吸収が少ないのでブレーキの利きが悪いのです。核兵器の過早核爆発は、MOX燃料では制御棒を入れウランの核分裂を停止した場合にも核分裂がゼロにはならないという性質になります。自発核分裂で発生した中性子が、制御棒で吸収されずに他のプルトニウムやウランを核分裂を起こしうるからです。MOX燃料毎に、その性質がどの原子炉から取り出されたプルトニウムを使ったかで違う。それは、使った経験を積むことでしか予測・予想できないことです。フランスは3000体以上も使っています。日本は6体。経験値が全く違います。
それを基にした計算・シュミュレーションでは、問題がないとなっていますが、どうも怪しい。

その点は、電源開発も同じで「MOX燃料の装荷は、着実かつ段階的に確認しながら進めるという考え方を基本として、初装荷として3分の1炉心程度以下を装荷し、運転開始後5年から10年程度かけて段階的に全炉心までMOX燃料の装荷割合を増やしていきます。」

そして「大間原子力発電所(フルMOX-ABWR)は、基本仕様は先行ABWRと変わりませんが、全炉心でMOX燃料を使用するにあたり、次のような一部設備の設計対応を行います。」その変更はホウ酸水タンクの容量増加など小規模なものです。


ですから、基本となるABWRで炉型審査、包括設計審査が合格が獲れていれば、直ちにフルMOXで運転できると日立GEやGE日立は考えている。
 英国版のUK-ABWRの安全系
さてその基本となるABWR、英国版のUK-ABWRでは、発災時の対応はどうなっているでしょうか?
東電核災害を踏まえたとして日立GEが公表している設計(2013年4月付)は次のようなものです。
14-0410UKABWR-11.png14-0410UKABWR-12.png 

前年の2012年6月のリトアニアのLT-ABWRと較べると(1)航空機衝突対策の高い天井がなくなって日本と同じになっている(2)使用済核燃料プールが格納容器頂部脇にしかない、日本と同じ。(3)免震基礎もない。LT-ABWRの特徴が全てない。日本のJP-ABWRには、後から作ることになっているバックアップの施設が入った建物が最初からある。日本が東電核災害後に追加した安全対策が全てついている。LT-ABWRで追加された対策が全てない事が明示しているように、日本の追加安全対策それだけしか追加変更されていない。

ホライズン・ニュークリア・パワーン社が日立に買収される前に検討されいてた炉型に較べると、特にメルトダウン後の対策、フェーズⅡの対策で雲泥の差がある。フランスのアレバ社のEPR/欧州加圧水型炉では、コアキャッチャーが設置されていて、炉心の溶融し圧力容器からら出たコリウムをコアキャッチャーで受け止めて、重力で貯留エリアに導いて格納容器内に設置された燃料取替用水タンクからの水が重力に従って流れ込んで冷やす、受動的安全性を具えた設備設計になっている。

東芝のWH社のAP1000では、メルトダウンすると圧力容器が格納容器内のタンクの水で水没して容器ごと除熱する。それで発生する水蒸気は格納容器内に閉じ込めて、格納容器頂部から外面に水をかけて、その気化熱で除熱する設計になっている。(東芝は2009年からセラフィールドで新規建設を計画していた英国のニュージェネレーション社の株式60%を約170億円で1月に取得、AP1000を3基建設する予定)

日立GEのUK-ABWRには、メルトダウンしても動力ポンプで圧力容器に注水、メルトスルーしたら格納容器に動力ポンプで注水という対策になっている。だから、電力がなくなるSBOでは電動ポンプは全滅、地震津波などでデーゼルポンプが不調、接近道路が不通で移動ポンプ(消防車)が行けないとなるとお手上げになる。これで、崩壊熱の減少が遅いMOX燃料を炉心すべてに詰めるフルMOX、大間原発の発災時の危険性は??

日本には技術がないのでしょうか?
日本のBWR陣営、日立GEと東芝には、ポンプなしの受動安全性を具えた安全系を作る技術がないのでしょうか。 
2014年3月25日付で、「日立と日立GEでは現在、大規模自然災害などによりポンプなどを駆動する電源が喪失した場合でも、原子炉を冷却可能なシステム」「原子炉自然冷却システムの開発を進めています。」「開発を進めている原子炉自然冷却システムは、崩壊熱が大きい初期はポンプなどを駆動する電源を用いない水冷システムで除熱し、崩壊熱の減衰後は空気の自然循環力を用いた空冷システムのみで原子炉を冷却するものです。」、その空冷システムの「詳細は、3月26日から28日まで、東京都市大学で開催される「日本原子力学会2014年春の年会」にて発表する予定です。」とニュースリリースを出しています。 
東芝がフィンランドの原発事業会社フェンノボイマに提案した設計・EC-ABWRでは、コアキャッチャーが設置されていて、受動安全性を具えたコリウム、格納容器の除熱の水冷却システムが設備設計されています。実用化段階の技術はあります。

EC-ABWRに続く


タグ:次世代ABWR

東電回答(2) 未完 [柏崎刈羽原発、施設設備]

さて地震時は次のようになります。

地震を地震計などで感知すると、制御棒を一斉に挿入し核分裂を止めるスクラムと発電用の蒸気タービンへの蒸気を止めます。これは地震時に高速回転することによる破損、タービンの羽・ブレードがミサイルのように飛び出すような破損を避けるためです。スクラムが成功すれば原子炉は「高温停止」状態です。原子炉で発生する水蒸気は、復水器に直接にタービンバイパス弁を開けて送り込みます。

1383997653.jpg

これで、通常の停止手順で数時間かけて到達する「未臨界」「高温停止」状態に数秒でなります。外部電源、他所の発電所からの交流電流の送電が地震でも途絶えていない、そして復水器の気圧を下げる蒸気式空気抽出系(SJAE)を稼動するための補助ボイラーがつかえるなら、タービンバイパス弁⇒復水器での通常停止の手順で「冷温停止」にできます。

中越沖地震時に柏崎刈羽原発の3、4号機は運転中でした。定格出力運転時は給水系から約6400トン/時、下からの制御棒駆動系から10トン/時程度の冷却水が原子炉へ注水されています。この合計分が主蒸気として原子炉からタービンへ流れ出しています。補助ボイラーと外部からの送電が3系統使えました。それで通常停止の手順でタービンバイパス弁⇒復水器での通常停止の手順で減圧冷却。原子炉水温度が100℃付近で残留熱除去系(RHR)の原子炉停止時冷却モードを使用し、原子炉-残留熱除去系熱交換器-原子炉と炉水を循環させ、熱交換器で除熱しさらに冷却して「冷温停止」させています。

同じく運転中だった7号機は、補助ボイラーが地震で停止。原子炉圧力が1.4MPaまでは原子炉からの水蒸気で蒸気式空気抽出系(SJAE)を稼動して、復水器をつかって冷却と復水器から復水を電動ポンプで原子炉へ給水・水位維持。地震から約9時間後に1.4MPaになったので主蒸気隔離弁(MSIV)を閉とし復水器への蒸気の送り出しを停止。その後は、原子炉で崩壊熱と減圧で発生する水蒸気は主蒸気逃し安全弁(SRV)を開き圧力抑制プールの約3600トンの冷水中に放出し凝縮。原子炉への給水は復水器から復水を電動ポンプで補給。約14時間後、原子炉水温度が100℃付近で残留熱除去系(RHR)を停止時冷却モードを使用し、「冷温停止」させています。

参照 原子力安全・保安院「東京電力柏崎刈羽原子力発電所における新潟県中越沖地震発生時の運営管理に係る評価結果」



1383996342.jpg



東京電力から回答が来ました。 [柏崎刈羽原発、施設設備]

東京電力に9月26日に出した問い合わせに、10月24日付で回答がありました。
質問書とあわせた形で公表します。

東京電力㈱ お客様相談室 〇間 様 
2013年9月26日
案件

「《参考資料1》福島第一原子力発電所事故の教訓と対策」の問合せ


お手数をかけますが、下記の点にお答えください。(全2枚)

(1) 24、25ページの下記の数字は、柏崎刈羽原発六、7号機の数字でしょうか?
CRD 約30㎥/h ⇒原子炉停止16時間後の崩壊熱に相当
RCIC 約140㎥/h ⇒ 原子炉停止15分後の崩壊熱に相当
SLC 約10㎥/h

解説 東電・柏崎刈羽原発 1~5号機の電気出力110万kw.、6、7号機は137万kw。当然熱出力や崩壊熱の発生量が違います。
CRD・・制御棒駆動水ポンプ
SLC ・・ホウ酸水注入系ポンプ
RCIC・・原子炉隔離時冷却系 ABWRの定格流量は約180㎥/時との資料もあります。

回答

当該資料は柏崎刈羽1号機のデータです。 
6/7号機の数字は下記の通りです。(6号機、7号機ともに同じ) 

CRD約30㎥/h⇒原子炉停止16時間後の崩壊熱に相当(※) 
RCIC約180㎥/h⇒原子炉停止15分後の崩壊熱による蒸気量
相当に余裕を持たせた値 
SLC約10㎥/h

(※)CRD流量は1号機より6/7号機の方が若干大きいですが、有効数字一桁で表記すると30㎥/hとなります。崩壊熱相当の値は対数グラフからの読み取り値です。 

1382964755.jpg


(2)原子炉隔離時冷却系(RCIC)と代替高圧注水設備(TWL)について

(a) この二つの高圧注水設備は共に蒸気駆動なので、その駆動する蒸気圧の範囲、
(b) 注水可能な原子炉圧力容器の炉圧の範囲
(c) 注水可能量
(d)  両者の性能的違い

解説 
1380553551.jpg

回答

(a)RCIC、HPACは共に蒸気タービン駆動ポンプによる高圧注水設備であり、いずれも、ポンプが定格運転できる蒸気圧範囲は、原子炉圧力が高圧状態(約 8MPa)から低圧状態(約 1MPa)である。 

[虹屋注 この質問は2012年12月14日付の東京電力の資料に基づいているが、2013年に入って代替高圧注水設備(TWL)を高圧代替注水系(HPAC)と呼称を変えている。 http://www.tepco.co.jp/cc/direct/images/130125a.pdf の13ページ]

(b)上記(a)の通り、原子炉圧力が約 8~1MPaで、定格流量を注水することが可能。なお原子炉圧力が 1MPa以下であっても、注水できないわけではなく、定格流量以下にはなるが注水することは可能である。 
 
(c)RCIC、HPACともに、注水可能量は同じになるよう設計しており、上記(a)、(b)の蒸気範囲で、注水量は約 180㎥/hである 

(d)RCIC,HPACは前述の通り注水能力等の注水性能はほとんど同じである。大きな違いとしては、ポンプ駆動に必要な電源容量であり HPACポンプの方が必要電源容量が少なくて済むことである。(RCICポンプは電気制御、グランドシール装置のような電気設備が必要であるが、HPACポンプはそれらが不要な構造であり、必要電気容量が少なくて済む)。 

従って、HPACは電源にあまり頼らずに高圧注水が期待できる設備である。 

また、HPACポンプは運転に電気制御が不要なため、ポンプ自体が水没してもポンプが停止しない設計になっている。従ってRCICよりも耐浸水性に優れたポンプとも言える。 

以上 

1382965026.jpg
1382965074.jpg 


(3) 6、7号機のRHR(LPFL機能)について 26ページ、39ページ 
(a) 注水可能な原子炉圧力容器の炉圧の上限と下限、上限まで減圧することになるがその炉圧は、どれくらいか。
(b) 注水可能量
(c) 「1号機の場合、津波等による全電源停止から24時間以内に代替海水熱交換器設備のインサービスを完了することにより、48時間以内に冷温停止が可能」とあるが、6、7号機では冷温停止到達時間は? 

6、7号機はABWRであり、ABWRのRHRは設計基準事故である冷却材喪失事故時に、炉心及び原子炉格納容器の冷却に必要とされる除熱量に対して、1系統で50%の冷却能力である。BWRの1号機は100%であるから、当然に到達時刻は違うと思われるが、全電源停止から24時間以内に代替海水熱交換器設備のインサービスを完了した場合の冷温停止の到達時刻は48時間以内か?

解説
1379751165.jpg

回答

(a)RHR(LPFL系)の注水可能圧力の範囲は、下記の通り。 
6号機: 0~2.07 MPa[gage]
7号機: 0~2.16 MPa[gage]

(b)6/7号機ともに下記の通り 
注水可能量:定格流量 954[m3/h] 
(定格揚程 125[m]) 

(c)6/7号機の場合も1号機同様に、全電源停止から24時間以内に代替海水熱交換器設備のインサービスを完了することにより、48時間以内の冷温停止が可能となるよう設計しております。
(RHR系1系統での除熱) 
なお、1号機のものと比較すると、代替熱交換器設備の交換熱量が大きなものとなっています。 

以上 

1382965335.jpg
1382965936.jpg 

(4) 6、7号機のMUWCについて 26ページ

「早期の原子炉注水に必要な注水量が不足しており不可、約1時間後の崩壊熱除去には有効」との記載がある。
(a) MUWCで注水可能量と吐水圧力はどれくらいか?
(b) MUWCで注水が可能になる原子炉圧力は、どれくらいか? 

福島第一3号機の事故時運転操作手順書にはMUWは「原子炉圧力が0.69MPa以下であること」と記載されているが、柏崎刈羽の6、7号機では、原子炉圧力の上限、つまり減圧操作で下げる目標の原子炉圧力は、どれくらいか? 

解説
1379706807.jpg

回答

(a)MUWCの注水可能量と吐水(吐出)圧力ですが,6号機及び7号機ともに以下の通りです。 
注水可能量:定格流量 125m3/h 
定格揚程:85m(参考)台数:3台 

(b)MUWCで注水が可能になる原子炉圧力については,原子炉圧力容器の圧力が約 0.85MPa[gage]から MUWCにより注水が可能となります。 
一般的に電動ポンプによる注水は注入先の原子炉圧力が低いほど注水量は増加します。従って,MUWCを用いて注水する場合には原子炉圧力を逃し安全弁(※)により減圧する手順としておりMUWCを用いる場合には原子炉圧力は 0.49MPa[gage]以下としています。 
ただし,実際は逃し安全弁を「開」操作して下げられるまで下げ,注水量を確保することとしています。 

※:逃し安全弁は 18弁設置されており,原子炉を減圧する際には 18弁のうち,自動減圧機能(ADS)が付いている 8弁を「開」操作する手順としています。 
以上 

1382966275.jpg
1382966306.jpg 


(5)  6、7号機のD/DFPについて 26ページ、36ページ

「早期の原子炉注水に必要な注水量が不足しており不可」との記載がある。
(a) 現在設置されているD/DFPの注水能力はどれくらいか?それは、原子炉停止からどれ位の時間の崩壊熱に相当するのか? 
36ページの記載では、給水建屋(5~7号機用大湊側)に 1台あり、定格容量177 ㎥/h、全揚程75 m、締切揚程81 mとある。この定格容量で6、7号機で、原子炉注水に必要な注水量が不足している原子炉停止からの時間は何時までなのか?1時間後といった具体的時間で示して欲しい。
(b) 全揚程75 m、締切揚程81 mとの性能で、注水可能な原子炉圧力はいくらか?
(c) 福島第一3号機の事故時運転操作手順書には消火系・FPの使用には「原子炉圧力が0.69MPa以下であること」と記載されているが、柏崎刈羽の6、7号機では、原子炉圧力の上限、つまり減圧操作で下げる目標の原子炉圧力は、どれくらいか? 
 
回答

(a)D/D FPの注水能力ですが,以下の通りです。 
注水可能量:定格流量 117m3/h 
定格揚程:75m(参考)台数:1台 

崩壊熱による原子炉の冷却材の蒸発が約 117m3/hとなるまでの時間は,燃焼時間等によって影響するため一意には定まりませんが,停止数十分後の崩壊熱による蒸発量に相当します。 
ただし,原子炉を減圧する際に逃し安全弁を「開」操作するため,冷却材が原子炉圧力容器からサプレッション・プールに流出します。従って,実際には崩壊熱による蒸発分に加え,減圧時に冷却材がサプレッション・プールに流出する分も加えて注水する必要があります。 

(b)揚程が 75mのときは原子炉圧力容器の圧力が約 0.75MPa[gage]から注水可能となります。 
(c)基本的には Q(4)の(b)と同様で,原子炉圧力は 0.49 MPa [gage]以下を確認します。 
以上 
 
1382967126.jpg

本文

From:〇●◎@tepco.co.jp 
Sent: Thursday, October 24, 2013 10:50 AM 
To: nijiya@sky.plala.or.jp 
Subject: 【東京電力】お問い合わせへの回答 


弦巻 英市 様

私どもの福島第一原子力発電所の事故により、今なお、発電所周辺地域をはじめとした福島県のみなさま、広く社会のみなさまに大変なご迷惑とご心配をおかけしておりますことを、改めて心より深くお詫び申し上げます。

さてこのたび、弦巻様よりFAXにてお問い合わせいただきましたご質問に対しまして、当該メールにて別添の資料のとおりご回答させていただきます。ご査収くださいますようお願い申し上げます。何かご不明な点がございましたら、恐れ入りますが当該メールへお問い合わせくださいますようお願いいたします。
なお、ご回答に際しまして、大変お時間が掛かりましたことをお詫び申し上げます。

弊社といたしましては、引き続き、原子力事故の早期収束・安定化、被災者のみなさま方に対する賠償、あわせて電気の安定供給の確保などの重要課題に、全社一丸となって取り組んで参ります。ご理解を賜れれば幸いでございます。


**********
東京電力株式会社
お客さま相談室
電話:050-3066-3033
**********





東電・柏崎刈羽原発の使用済み核燃料 [柏崎刈羽原発、施設設備]

東京電力・柏崎刈羽原発再稼動に関する新潟県民投票の条例案に付けら多泉田知事の意見書で、使用済み核燃料が出ていた。
「3 投票の実施前に原子力についての体系的な施策が構築されるべきであること
 日本の原子力政策は、使用済核燃料を再処理する核燃料サイクルを基本として進められてきた。
 原子力発電所を稼働させないということは、核燃料サイクルという基本政策を放棄するということになる。核燃料サイクルが放棄されると、使用済核燃料が利用することのできない廃棄物に変わるという現実がある。この場合、これまで本県から搬出され、青森県六ヶ所村に保管されている使用済核燃料が柏崎刈羽原子力発電所を保有している東京電力に戻される可能性があり、また、その後の処理も地元が担うことにもなりかねない。」

まず、事実確認

東京電力の使用済み核燃料の日本国内での処理は、日本原子力研究開発機構(茨城県の東海工場)と日本原燃(青森県の六ヶ所工場)と契約し搬出している。柏崎刈羽原発から海外への搬出はない。

1358990409.jpg
クリックで拡大

柏崎刈羽原発から使用済み核燃料は、平成23年度末までに燃料集合体で990体、青森県の六ヶ所村に988体、茨城県の東海村に2体搬出されている。平成24年度は、これまでのところ2012年11月に38体。

1358990454.jpg
クリックで拡大

柏崎刈羽原発の使用済み核燃料の貯蔵プールの保管状況は2012・平成24年6月末現在で、(イ)各号機の炉心に核燃料を残さないで全てプールで貯蔵するならあと3143体で満杯、(ロ)炉心にも使用済みを詰めた装荷した状態なら8707体で満杯になる。泉田知事が心配している使用済み核燃料が戻ってきても、今ある使用済み核燃料の貯蔵プールに余裕で収まる。

1358990542.jpgクリックで拡大

柏崎刈羽原発で東電は13ヶ月運転し、3ヶ月ほどかけて定期検査と新燃料との交換、約1/4を入れ替えるサイクルで発電している。1号機から7号機まで炉心には5564体が装荷されているから、その1サイクルででる使用済み核燃料は約1400体。
運転可能なのは(イ)の各号機の炉心に核燃料を残さないなら約2.2サイクル、使用済み核燃料が戻ってくると約1.5サイクル。
(ロ)炉心にも使用済みを詰めた装荷したままにするのなら約6.2サイクル、使用済み核燃料が戻ってくると約5.5サイクル。
(ロ)では使用済み核燃料の冷却を、炉とプールの2ヵ所、7ユニットあるから原発全体では14ヶ所。(イ)ならプールの1ヶ所だから半分であり、(イ)の方が保管経費は安く、事故の危険性も低い。

核燃料サイクルを堅持しても、その要の高速増殖炉が実用化しない限り、六ヶ所村で再処理してもプルトニウムの行き場が無い。つまり、再処理は停止せざるを得ない。

高速増殖炉は実用化のための原型炉の「もんじゅ」段階である。もんじゅの次は実証炉、次いで実用炉であり、国の計画では実証炉が2025年、実用炉が2050年。そのもんじゅの運転は止まっている。実証炉が国の計画通りに2025年に出来る可能性は、非常に低い。2050年に実用炉は、無理である。

1359027925.jpg
クリックで拡大

電気出力28万kWのもんじゅのプルトニウム装荷量は1533kg、実証炉は電気出力50万kW~75万kWであるからプルトニウム装荷量は約3000kg?もんじゅと実証炉で必要とする量は20トン位?。日本は現在約44トンのプルトニウムを持っている。英国、フランスに委託した再処理ですでに35トン持っている。 我が国のプルトニウム管理状況

この上に、六ヶ所村で再処理を継続してプルトニウムの手持ち、8kg余りで原爆を作れるプルトニウムを増やせば、泉田知事の心配する「日本が核兵器不拡散条約から撤退し、核武装するのではないかという疑念を諸外国から抱かれる可能性が生じる」。
東電が柏崎刈羽から六ヶ所へ搬送した量は、約177トンウラン、ここには概ね1770kgある。再処理での計測誤差が0.5%あるとすると約8kg。プルトニウム原爆1発分。再処理を継続すると計測誤差で誤魔化して原爆用プルトニウムを蓄えているのではないかと疑われる。
したがって核燃料サイクルという基本政策を堅持しても、再処理は停止する、少なくとも高速増殖炉の実用炉が出来るまで停止することが、日本が核武装するのではないかという疑念を諸外国から抱かれる可能性をなくすために必要である。再処理を停止するなら使用済み核燃料をこれ以上増やさない、少なくとも現在の使用中の保管設備容量以上は増やせないことになる。それが諸外国への証となる。核武装するのではないかという疑念をもたれないようにするための証となる。

(ハ)使用済み核燃料をこれ以上増やさないなら、再稼働はしない、できない。危険性を最小にして保管することが大切となる。
(ニ)現在の使用中の保管設備容量以上は増やさないのなら、実用炉までの間、危険性を最小にして保管することが大切となる。それは(イ)である。全て貯蔵プールで貯蔵することである。現在の保管状況から、再稼動しても約2サイクル程度、約4年が上限である。これで経済的に成り立つのか?
(ホ)核燃料サイクルという基本政策を止めるのなら、核廃棄物の最終処分法、処分地が決まるまでの間、使用済み核燃料を危険性を最小にして保管することが大切となる。

国が核燃料サイクルという基本政策を堅持するにせよ、放棄するにせよ、使用済み核燃料を危険性を最小にして保管する方法の検討が急務である。

前の5件 | 次の5件 柏崎刈羽原発、施設設備 ブログトップ