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日立のリトアニア版ABWRと大間原発のABWR [柏崎刈羽原発、施設設備]

再稼働が目論まれている柏崎刈羽原発6、7号機はABWRという炉型です。この日本版ABWR、JP-ABWRをほかの国々のABWRと比べてみようと思います。
日本国内にABWR、JP-ABWRは6基あります。東京電力柏崎刈羽6号(1996年11月営業運転開始)7号機(1997年7月)、中部電力浜岡原発4号機(2005年1月)、北陸電力志賀原発4号機(2006年3月)、そして中国電力島根原発3号機(工事は終わっているが、燃料未装荷で運転はされていない)、電源開発の大間原発(建設進捗率は約38%)です。建設の主契約者は、東芝、日立、GEです。
日立とGEは、1967年にBWRにおける包括的な技術ライセンス契約を締結。「95基(2006年6月現在)のBWR型の原子力発電設備があり、このうち、日立、GE合計で、約7割のプラントに携わってきました。」
日立はGEと合弁で2007年に、米国にGE日立ニュークリア・エナジー社(出資率、GE60%、日立40%)日本に日立GEニュークリア・エナジー社(出資率、日立80%、GE20%)を設立しています。日本の日立GE「当社は国内でのABWRプラントについてNo.1のシェアがあります。また、ABWR全プラントの建設に参画しており、中心的役割を果しています。」
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その日立のABWRの輸出販売は、日立GEのWEBサイトでは「米国GE社が主契約者である(台湾の)龍門原子力発電所に原子炉圧力容器・炉内構造物をはじめとしたABWRの主要機器を供給しています。」とGEの下請け納入業者の顔を見せています。
 ニュースリリースで設立からの動きを見ると、戦略的方向付けは米国のGE日立、戦術的実務的部分を日本の日立GEという役割分担です。GE日立が注力している地域は、ベトナムなど東南アジア、ポーランドなど中東欧、そして英国。これらの国は、資金が不足している。自前で調達できない。「原子炉1基を装備する発電所を建設するには数十億ドルの投資が必要」この建設資金の手当て、返済まで考慮、関与しないと売れない。
売り込み商品は「現在でも世界で唯一実用化されている第3世代原子炉」「原子力発電機能を短期的に増強したい電力会社にとって、ABWRは理想的な技術です」の「改良型沸騰水型原子炉(Advanced BWR/以下、ABWR)をはじめとする原子力事業の世界市場での」「GEの次世代大型炉「ESBWR」(Economic and Simplified BWR)をはじめとする次世代原子炉の設計等、新規プラントの建設」です。

これらの国々で、日立GEが提案している設計は、2011年3月以降です。つまり東電核災害を踏まえた設計として提案されたものです。

リトアニア版のABWR LT-ABWR

ポーランドの隣国、バルト3国の一つのリトアニア。ソ連崩壊、独立。旧ソ連時代に建設されたイグナリナ原発はリトアニアの電力の80%を供給していましたが、チェルノブイリ原発と類似した構造で危険性が指摘されていました。EU加盟の際に2009年までに閉鎖が条件とされました。それに従って閉鎖されて以降、電力・ガスをロシアからの輸入に依存。2006年には新原発への置き換えが計画されました。場所は同じですが名称はヴィサギナス原発に変更、リトアニアだけでなく近隣諸国へも電力供給。供給予定のバルト三国とポーランドが投資組織を作り、この4国だけでなく大口の投資家、戦略的投資家兼建設業者を呼び込んで、30~50億ユーロの資金調達と建設を実行することにしました。2010年には韓国電力公社 (KEPCO) だけが戦略的投資家兼建設業者に応札。しかし、その後、撤回され、原発計画は宙に浮きました。
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米国のGE日立は、ポーランドの同国初となる2ヵ所の原発建設を獲得しよう営業していました。ABWRと次世代大型炉「ESBWR」の売り込みです。リトアニアの原発の電力は、ポーランドにも供給予定です。その遅れはポーランドにも困り事。GE日立にすれば「将を射んとすれば駒を・・」で、リトアニアの原発の件を日本の日立GEに振ります。日立GEは東電核災害で日本での新規建設がなくなりましたから、海外へ営業したい。台湾の第4原発・龍門原子力発電所ではGEの下請け納入業者で利幅が少ないですが、リトアニアでは主契約者(元請)です。

それでABWRを新設しようと日立は売り込みました。2011年には日立は受注の優先交渉権を獲得。2012年3月にはリトアニア国会で承認を得たら建設開始という段階まで進みました。しかし同年10月の国民投票で反対65%。リトアニア首相の任命したタスクフォースが2013年春に、日立の原発はリトアニアにとって高価すぎ電力価格にもロシアとの競争力がないという結論をだしました。
2013年4月22日に首相府は「現在の条件ではビサギナス原発建設計画はリトアニアにとってあまりにも高価だ」「商業的条件が改善され、その他の要件が満たされた場合のみプロジェクトの継続が可能だ」と言明。事実上凍結されました。原発を売り込もうとする開発途上国などでは、付きまとう問題です。
ところが本年、2014年4月3日に「リトアニアの外交戦略としてバルチックとノルディックの国々とEUと米との友好を強化。 さらに昨今の露のクリミア併合を地域の安全と安定の脅威と言及。ビザギナス原発なしではリトアニアとバルチック隣国は 露の電力供給に強く依存したままになる。」として、凍結を解除してます。ロシアへの安全保障の危機感が、リトアニアにとって高価すぎという経済的危機感を吹き飛ばした格好です。

さて建設まであと数歩のリトアニアのABWR、日立のLT-ABWRはどんなものでしょうか。日立によれば「東日本大震災の経験を踏まえ、代替電源の確保や機動的な除熱機能の復旧対策反映等、安全性をさらに向上させたもの」
日立の資料を見ると、航空機衝突に備えて建屋の最上部を大きくしています。使用済み核燃料プール(Spent fuel storage pool)を地下に置いています。非常用の空冷デーゼル発電機、フィルターベント設備を設置。そして、免震基礎(Seismic isolation system)を採用している。
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日本は2006年から発電用原子炉施設に免震構造等の導入が認められています。研究では高速増殖炉・FBR建屋免震装置は、1基当たりの設計荷重が500トンの鉛入積層ゴムで、基礎と建屋下部床の間に276個配置する構造となっている。このような研究の積み重ねがありますが、フィルターベント設備など東電核災害後の新設備で採用された例を知りません。
 また、日本ではBWRの使用済み核燃料プールは最上階、格納容器の頂部の脇にある設計になっています。そして、そこにぎっしりと詰まって貯蔵されている。福島第一原発4号機では、点検作業で使用中の崩壊熱が多い核燃料が一時的にプールに移されていた。それで、その崩壊熱でビッシリ貯蔵されていた物も含めて熔融して、大量の放射能が環境中に出る恐れがあった。また崩壊して周辺に散らばってしまう恐れもある。

このリトアニア版のABWR LT-ABWRの説明図では、運転停止中の点検時交換時に炉から一時的に移動収納するプールは頂部脇にあります。その一方、地下に搬出まで長期貯蔵するプールを設ける設計になっています。仮に運転停止中の点検時、交換時に東電核災害のようにプールからの除熱が停止したとします。その場合、数日の間に崩壊熱で頂部脇プールで溶融する量は、炉内にあった量です。つまり運転中に発災しメルトダウンして生成するコリウムと同じく1炉心分です。少なくて済みます。

柏崎刈羽原発6、7号機の使用済み核燃料プールには約3炉体分あります。運転停止中の点検時、交換時には更に炉から一時的に1炉体分が移されます。その時に東電核災害のようにプールからの除熱が停止したとすると、一時的に入れられた1炉体分が熔融し、さらに3炉体分も熔かされてしまいます。LT-ABWRでは、こ3炉体分は地下の別のプールに入れる設計ですから、熔融は1炉体分ですみます。
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柏崎刈羽原発では、貯蔵プールを新設したり、崩壊熱量が少なくなった物を乾式貯蔵するなどしないと格納容器の頂部の脇にあるプールからは減らせません。大間原発は現在建設中で半分も進んでいません。そして主契約者(元請)はLT-ABWRと同じ日立GEです。日立GEは危険性を減らすために設計変更、大間原発の建屋地下に使用済み核燃料プール設置を言い出さないのでしょうか。それが安全文化『原子力施設の安全性の問題が、すべてに優先するものとして、その重要性にふさわしい注意が払われること』ではないのでしょうか? 工期とか費用よりも安全性の問題を優先して扱う安全文化は日立GEや施主の電源開発にあるのでしょうか?
 リトアニア 2020年までは無理? 2014年6月追記

2014年6月12日 ロイター配信より -
日立は12日の事業戦略説明会で、2020年度の原子力発電事業の売上高を2800億円とし、従来計画の3600億円から下方修正したと発表した。リトアニアの原発計画が遅れていることや国内事業を慎重に見積もったため。
 2015年度の原発事業の売上高は1400億円(13年度は1100億円)を計画。説明会に登壇した長澤克己常務(電力システム社社長)は原子力事業について「国内は当面厳しい状況。ただ海外プロジェクトの準備はしていく」とし、海外中心に売り上げ増を図る方針を示した。
 
原発を含む「電力システム事業」の2015年度の売上高は5200億円(13年度は7773億円)を目指す。今年2月付で三菱重工業と火力事業を統合した「三菱日立パワーシステムズ」(出資比率は三菱重65%、日立35%)が発足し、日立グループから火力事業の売り上げがほとんど外れたため、13年度からは減収となる。

原子力、電力流通、自然エネルギーの3事業を柱とする電力システム事業として、2020年度の売上高は8000億円を計画する。

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0EN0QZ20140612?pageNumber=1&virtualBrandChannel=0


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Discovery

コメントしたくなったので書きます

使用済み核燃料は4年を経過すれば、空気中で保存が可能です
米国のシュミレーションでは4年を経過した燃料をBWRプールの
中に水を入れずに保存しても、溶融温度を下回ります。最大で900度程度にしかなりません。
900度と言えばバラバラになるだけで溶融はしないと考えて良いです。
日本の原子炉では1年で1/4の燃料を取り出して保存して居ます
だから、4年以下の冷却しか受けていない核燃料は基本的に1基分しか有りません。
だから、設計上問題は無いのです。

基本的に、使用済み核燃料の移動は水中で行います。
プラントの地下までどうやって移動させるかが問題になります。
キャスクで移動させるかPWRの様に移送機を使うか、たぶん前者でしょう
日本の原発にも共用プールというものは有りますよね。
日本で何故移動しないか?再処理施設が稼働して居ないからですよ。

フィルタベントについても、ABERやPWRには必要性は高くないです
フイルタについても抑制できるだけで、環境中に放出する事に違いない
事を認識された方が良いと思います。
逆に、他の部分が耐えられる圧力に耐えられるベント設備は製作できるか
と言う点で弱点になる可能性も考えられます。
by Discovery (2016-08-24 23:18) 

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