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コアキャッチャーが有っても、水蒸気爆発の可能性 [AM-メルトスルー、CCI]

工学では、液体や気体が外部に漏れないようにする部品や素材の総称したり、そうした装置をシール(英: seal)という。
東京電力福島第一原発の2号機、3号機の発災後の経過では、メルトスルー前の炉から漏水は指摘されている。
「再循環系(PLR)ポンプメカシールからの炉水の漏えいが考えられる。通常、PLR ポンプメカシールでは、制御棒駆動機構(CRD)ポンプから供給されるシール水により炉水をシールし、シール水の一部が PLR ポンプ主軸部からD/W 機器ドレンサンプに滴下する構造(この滴下量をコントロールブリードオフ流量という)となっているが、外部電源喪失時には CRD ポンプからのシール水の供給が失われるため、高温の炉水が PLR ポンプ主軸部から D/W 機器ドレンサンプに滴下していたものと考えられる。」(原子力保安院)
http://www.meti.go.jp/press/2011/12/20111222015/20111222015.pdf
BWRの制御棒は原子炉RPVの底面から押し上げられる。BWRでは、通常操作時、緊急(スクラム)時とも水圧で制御棒を駆動する。ABWRでは、通常操作時には電動で駆動し、緊急時には水圧で駆動する。運転時は炉水が駆動機構から出ようとする高圧が常時働くから、シール(封じ込め)で制御棒駆動機構(CRD)ポンプで高圧の水(制御棒シール水)を送っている。これも外部電源喪失時にはポンプからのシール水の供給が失われるため、高温の炉水が漏れ出る箇所になる。
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このようなメカニカルな大量漏水だけではない。格納容器の高温高圧状態を改善するために、散水スプレイが行われている。3号機では13日07時39分から始まり、08時40分から09時10分頃に停止している。その間格納容器の圧力は低下している。この格納容器ドライウエルの散水量は明らかにされていない。シビアアクシデントの対応策マニュアルでは1時間当り120トン以上の水流量でないと散水水滴が冷却に適した大きさ(直径約2ミリ)にならないと記されている。このマニュアルの水流量で1時間スプレイされたとすると格納容器に約120トンの水が散水され、それで凝縮し生成した復水と共に、格納容器下部に蓄水していたことになる。
  PWRでは、マニュアルではスプレイ流量は約130トン/時である。(関西電力資料 http://www.nsr.go.jp/committee/yuushikisya/ooi_genjyou/data/0005_03.pdf
コアキャッチャーを設置すると、こうした水が、メルトスルー前にコアキャッチャー上面に溜まっていることになる。その水溜りに高温の溶融核燃料が落下していく。東電核災害では幸いにして大規模なPCVを破損する水蒸気爆発は起きなかったようだが、これでは水蒸気爆発の可能性がある。
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BWRのコアキャッチャー、GEヒタチと東芝のコアキャッチャーでは冷却水プールからコアキャッチャー底部の冷却水入口から、流路に入る。流路は出口方向が高くなよう傾斜が着いている。炉心溶融物の熱を流れ込んだ冷却水が吸収・除熱し、沸騰し水蒸気が生まれる。傾斜流路上部の出口付近では水蒸気と水が混じった状態で流れていく。東芝の実験では「蒸気量が増えて,ボイド率が約30%になる傾斜流路の出口近傍では,二相流と冷却水の界面は振動しており,冷却水が周期的に加熱面に接触することで,冷却水が加熱面に供給されている様子が観察された。」http://www.scej.org/kagakukogaku_shi/mokuji/76/7609.pdf

 出口であるライザからは水蒸気とまだ液体の冷却水が出る。水蒸気は格納容器PCVの気相部に拡散する。冷却水は溶融物上面に流れ込み、水プールを作る。その上面に出来るプール水の沸騰によって除熱・冷却が進む。さて、溶融物が一度に落下するなら、落ちた溶融物の上面にプールができると単純化できる。
東京電力福島第一原発の発災後の経過を顧みると、五月雨式に落下している。つまり、先に落下した溶融物でコアキャッチャーが作動してできつつある水プールに五月雨式に後から溶融物が落下してくる。そうしたシナリオが当然想定できる。それが溶融物の塊が複数で、時間差や落ち場所に距離が場合も想定される。調べた限りでは、炉心溶融物の研究やモデル化実験ではこうした場合は、水蒸気爆発が起こり易い状態になる。こうした爆発が起きると、小さなものでもコアキャッチャーは損傷するだろう。

 コアキャッチャーやLower Drywell Flooder は、炉心溶融物が10分程度で大半落下しきるメルト―スルーを想定して設計されている。東電核災害での経過を顧みると、五月雨式に後から後から、溶融物の塊が複数で落下するメルトスルーする場合などを考慮した技術、溶融物が原子炉格納容器PCVの下部コンクリートを溶融貫通することを防ぐ技術が求められていると考えられる。

東芝と日立のコアキャッチャー 東電核災害の前 [AM-メルトスルー、CCI]

日本のBWRメーカーは東芝と日立です。両社は2011年3月の東電核災害の前から、コアキャッチャーの特許を取得したり、出願しています。
調べた限りでは、時間順では
①1994年7月に東芝が出願しています。名は「原子炉コアキャッチャー」、出願番号は1994-175455、公開番号は1996-043576です。これは未査定。http://astamuse.com/ja/published/JP/No/1996043576
発明が解決しようとする課題
上記(1)[炉容器を貫通した炉心溶融物を、冷却材のなかに導くコアキャッチャー]においては水蒸気爆発の可能性を否定できないこと、および(2)[落下した炉心溶融物の上から冷却材を散布するコアキャッチャー]においては炉容器底部に堆積した炉心溶融物を充分に冷却できることの立証が困難であったことが挙げられる。
また、(1),(2)に共通する課題として、軽水炉においては、炉心溶融物は70気圧程度の高圧で、溶融貫通した炉容器から噴出する場合があり、この運動エネルギーを吸収するためのショック・アブソーバーが必要であったことが挙げられる。
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、高速増殖炉に対しても、軽水炉に対しても有効で、高速増殖炉においては過度な燃料・冷却材相互作用(FCI)を起こすことなく炉心溶融物を冷却でき、軽水炉においては水蒸気爆発を起こすことなく炉心溶融物の噴出エネルギーを吸収することができる原子炉コアキャッチャーを提供することにある。


②2006年2月22日にも東芝は「コアキャッチャーおよび原子炉格納容器」名で「容易に設置可能なコアキャッチャーにより、炉心デブリを効果的に冷却できるようにする。」という特許を出しています。出願番号は2006-044742、公開番号は2007-225356です。登録番号は4612558、現在は特許維持です。http://astamuse.com/ja/published/JP/No/2007225356
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発明が解決しようとする課題
GEのESBWRには原子炉格納容器の下部にコアキャッチャーが設置される。これは、次世代のBWRの安全性に関する完結性をさらに高めるためのものである。コアキャッチャーは、たとえば耐熱性の部材を用い、溶融炉心が原子炉格納容器の下部を溶融貫通したり、あるいは、放射性物質が漏洩することがないように下部ドライウェルの床部分に配設されたものである。しかし、単なる耐熱性の部材を敷き詰めただけでは、十分に炉心デブリを冷却できないおそれがある。また、炉心デブリを冷却するために、冷却水を通すための配管を多数配設すると、その配設に手間がかかるという課題がある。
 そこで、本発明は、容易に設置可能なコアキャッチャーにより、炉心デブリを効果的に冷却できるようにすることを目的とする
③6日後、2006年2月28日に「炉心溶融物冷却装置、原子炉格納容器および炉心溶融物冷却装置の設置方法」の名で「既設の格納容器に新たに炉心溶融物冷却装置を設置する場合など、大きな物をペデスタルに搬入することが困難なときであっても、別途製造した各構成部材をペデスタルの内部に持ち込んで、現場で組み立て施工が可能であり、施工性が優れている。」「床面積を広くすることなく、原子炉容器内の炉心が溶融して原子炉容器を貫通した際に発生する炉心溶融物を冷却する効率を向上させることを目的とする。」特許を出願。出願番号2006-053660、公開番2007-232529、特許を取得し登録番号4828963で特許維持されています。
http://astamuse.com/ja/granted/JP/No/4828963
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発明が解決しようとする課題
核燃料溶融物であるコリウムの上からの注水だけでは、コリウム上面の水の沸騰による冷却のみであり、コリウム堆積厚さが厚いとコリウム底部まで十分に冷却できない可能性がある。したがって、床面積を広くとり、コリウムの堆積厚さを冷却可能な厚さ以下にする必要があった。しかし、十分大きな床面積を確保することは格納容器構造設計上困難であった。
 たとえば、典型的なコリウムの崩壊熱は、定格熱出力の約1%程度であり、定格熱出力4000MWの炉の場合には、40MW程度の発熱量になる。上面の沸騰熱伝達量にはコリウム上面の状態により幅があるが、すくなくとも0.4MW/m2程度の熱流束が想定される。この場合には、コリウムの発熱量を上面の熱伝達のみで取るとすると、100m2程度(円直径で11.3m)の床面積が必要になる。これまでの格納容器の構造を考慮すると、この面積を確保することは困難であった。
 そこで本発明は、床面積を広くすることなく、原子炉容器内の炉心が溶融して原子炉容器を貫通した際に発生する炉心溶融物を冷却する効率を向上させることを目的とする。

 冷却に傾斜底面と冷却水流路
図を見ると、核燃料、炉心の溶融物を受け止め冷却する底面が斜めになっている。東芝が引き合いに出しているESBWR(自然循環冷却式受動安全沸騰水型原子炉、特許出願での東芝の表記)でも傾斜している。高温から低温へ流れる熱エネルギーの大きさを、単位時間当たりに単位面積(単位:cm2 )を流れる熱エネルギー量、単位は「W/cm2」、の熱流束(ねつりゅうそく、英: Heat flux)で表すが、東芝は「20°の傾斜を持った下向きの伝熱面の場合は、下向きの水平面(角度0°)よりも、沸騰限界熱流束が約60%程度向上することが、(下向きの伝熱面の角度に対する沸騰限界熱流束の実験結果から)わかる。本実施の形態では、冷却水流路は傾斜を持っているため、沸騰により生じた蒸気泡は、浮力によって伝熱面である水チャンネルの内面から離脱しやすく、良好な熱伝達率が得られる。」としている。東芝は64分の一の大きさ(傾斜の長さ約4m,全体では円形だがその一部の扇型)の試験装置での実験結果を公表している。
http://www.scej.org/kagakukogaku_shi/mokuji/76/7609.pdf
このように効率的冷却を図るために傾斜した底面部を使う点は同じだが、使用、特に既設炉へ使えるか大きく違うようだ。違いをESBWRのコアキャッチャーと較べてみよう。 続く
ESBWRのコアキャッチャー
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GE日立のBiMAC Core Catcherと東芝のコアキャッチャーの違い ドレンサンプ [AM-メルトスルー、CCI]

2010年10月に日立は、GE日立で出願しています。名称は「原子炉溶融阻止冷却装置」で、出願番号は2010-230179、公開番号は2011-128142です。http://astamuse.com/ja/published/JP/No/2011128142

 1985年から米国がTMI事故をその教訓を踏まえて改良型軽水炉(ALWR Advanced Light Water Reactor)開発計画を実施した。これに沿って、GEはSBWR(Simplified BWR・出力670MW)を開発した。設計、確証試験・解析は完了したが製品化せず、これを基に出力を1000MW以上の大型炉の開発に移行した。それがESBWR(Economic Simplified Boiling Water Reactor)である。GEは2005年12月にNRC(米国原子力規制委員会)に申請を出している。2006年の資料を見るとメルトスルー時の対策・対応設備は特に挙げられていない。

 日立は、もともとBWRの日本側メーカーとしてGEと関係が深い。日立側の資料では、2000年代初頭からESBWRの開発に参加している。日立とGEは資本関係も深め、2007年7月にGEと日立の原子力部門を本体からぶりして、共同の会社にしている。米国ではGE60%、日立40%資本のGE日立、日本ではGE20%、日立80%の日立GEが設立されている。

当初はなかったコアキャッチャー
 GEと日立は1997年にNRCからABWRの設計の認証を受けている。このUS-ABWRにはメルトスルーに備えた設備が付いた設計で認証を受けている。それは Lower Drywell Flooderである。これは、落下してきた溶融物の熱で弁を閉ざしている金属装置が熔融して弁が開き、S/Cプールから重力で冷却水が流入する装置である。GE日立のファクトシートでは10である。
https://nuclear.gepower.com/content/dam/gepower-nuclear/global/en_US/documents/product-fact-sheets/ABWR%20Fact%20Sheet.pdf
ESBWR(Economic Simplified Boiling Water Reactor、高経済型単純化炉 日立GEの訳後)では、BiMAC Core Catcher が追加されている。 Lower Drywell Flooder は、設置されている。IAEAのファクトシートでは、シビアアクシデント対策の一つに挙げられている。
IAEA https://aris.iaea.org/sites/..%5CPDF%5CESBWR.pdf の表3
BiMAC Core Catcher はGE日立のファクトシートでは8である。
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BiMAC( Basemat-internal Melt Arrest Coolability 基盤内部溶融阻止冷却装置)は、NRCへの2005年12月申請のDCD・設計認証図書の初版にはない。特許出願文書には改訂2版(2007年4月30日)から記載されたとある。
URD :米国電力要求文書の要求基準
 メルトスルーした溶融物には上面から冷却水を散布して、その上面の水の沸騰により除熱・冷却するのだが、堆積厚さが厚いと底部まで十分に冷却できない=溶融物が原子炉格納容器PCVの下部コンクリートを溶融貫通する可能性がある。それで、米国は、冷却可能な厚さ以下にするために床面積を広くとること、数値としては定格出力当たり落下する格納容器床面積が0.02m²/MWt以上を要求している。(URD :米国電力要求文書 Utilities Requirements Document )これを満たさない場合は、対策設備を要求する。このURD基準は、溶融物がサーと水の様に拡がると想定しているが、粘性が高く山盛りになる場合は床面積が広くても堆積が厚くなる、底部の冷却が不十分になると批判されている。
 ABWRは0.02m²/MWt以上のURD基準を満たしているので、溶融物にポンプや電力無しでパッシブに受動的に冷却水を注水する Lower Drywell Flooder でNRCは満足した。ESBWRはURDを満たさないので、コアキャッチャー機能が要求される。溶融物の底面を冷却してPCVの下部コンクリートを溶融貫通する可能性を排除する機能が要求される。それが Basemat-internal Melt Arrest Coolability 基盤内部溶融阻止冷却装置 BiMACであり、その開発期間は日立とGEが関係を深め、GE日立(2007年6月設立)、日立GE(2007年7月設立)に到達する時期と重なる。

 BWRではGEは東芝とも関係していてABWRは3社と東電で開発している。それがESBWRのNRC認証獲得の途中でGEからふられる形になっている。ESBWR(Economic Simplified Boiling Water Reactor)の和訳をGE日立は直訳に近いセールスポイントを挙げた「高経済型単純化炉」としているが、東芝は「自然循環冷却式受動安全沸騰水型原子炉」と特許出願書類では記している。その商権を持たない東芝は英訳としては不適切だが技術的特徴を列記する表記としている。
 東芝の2006年2月出願の二つの特許、①登録番号4612558「コアキャッチャーおよび原子炉格納容器」と②登録番号4828963「炉心溶融物冷却装置、原子炉格納容器および炉心溶融物冷却装置の設置方法」が、③ESBWRのBiMACと傾斜底面での冷却と冷却装置を保護する耐熱材という基本アイデアで類似しているのは、経過を見ればある意味当然である。また東芝が1994年7月出願で指摘している必要性、「軽水炉においては、炉心溶融物は70気圧程度の高圧で、溶融貫通した炉容器から噴出する場合があり、この運動エネルギーを吸収するためのショック・アブソーバーが必要」という必要性を満たしていないのも3件で共通している。しかし①は特徴がある。それは、耐熱材層の上面にドレンサンプが設置されている点である。

ドレンサンプ
 東芝によれば「格納容器床には、1つ以上のドレンサンプが設置されている。ドレンサンプは、原子炉の運転中に生じる可能性のある漏洩水を集水し、原子炉からの漏洩を検知するためのものであって、サンプ内に集水された水(ドレン水)は、サンプ上蓋の上に備えられたポンプによって配管を介して格納容器外へ移送される構成となっている。」(特許・登録番号5306074の公開情報・公開番号 2007-225356)つまり、発災時だけでなく運転中の異常・故障を検知するために必要なシステム・機器である。東芝は特許①ではドレンサンプを設けた。
 特許②については、「炉心溶融物冷却装置(コアキャッチャー)を設置すると、漏水が発生して落下してきた水を炉心溶融物冷却装置が受け止めてしまうため、漏水を検知することができない。そのため、炉心溶融物冷却装置を設置する場合、従来の漏水検知装置に代わる漏水検知手段を設ける必要」があるとして、2007年12月、「原子炉格納容器及び漏水検知床」の名で原子炉圧力容器RPVとコアキャッチャーの間に漏水検知床を設ける特許を出願している。出願番号2007-321293、公開番号2009-145135で、特許を得ている。特許の登録番号4987681で特許維持の状態。
http://astamuse.com/ja/granted/JP/No/4987681
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水蒸気爆発の可能性
 調べた限り、ESBWRにはこうした検知システムはない。この欠落は東電福島第一原発の2号機、3号機の経過を見ると貫通した炉心溶融物を、コアキャッチャー上面中心部に溜まったドレン水(冷却材)のなかに落下・導くことになり水蒸気爆発の可能性を否定できないことになる。 続く

三菱のコアキャッチャー 東電核災害の前と後とHP-APWR [AM-メルトスルー、CCI]

日本のPWRメーカーは三菱です。東芝と日立が日本のBWRメーカーです。三社ともコアキャッチャーの特許出願をしています。それも2011年3月の東電核災害の前に出されています。
2010年 東電核災害前 なんだこれは
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三菱は、①2006年12月に「溶融物の粒状化促進装置及び原子炉格納容器」と題する加圧水型原子炉と直下のキャビティとの間に落下するデブリの粒状化を促進する粒状化部材62を設けて「溶融物を適正に粒状化して早期に冷却することで安全性の向上を図った」発明で出願番号2006-346627、公開番号2008-157744で結果は出ていない未査定です。http://astamuse.com/ja/published/JP/No/2008157744

②2009年5月に「溶融物の冷却促進装置及び原子炉格納容器」と題する出願をしている。出願番号 2009-116770、公開番号2010-266286だが特許を認められていない。拒絶査定(最終処分)

③2010年2月に出願しています。三菱は従来のコアキャッチャーでは「溶融物が山状に堆積した場合には、溶融物を十分に冷却することができず溶融物が再臨界を引き起こす危険性があった。」と指摘。「原子炉から流出した溶融物やデブリを小分けに堆積させて、高温の溶融物やデブリを十分に冷却することができる溶融物冷却構造」「これを備えた原子炉格納容器およびこれを備えた原子力プラントを提供する」特許を出願している。出願番号PCT/JP2010/064233で2011年9月に公開された。公告番号は2011104908 A1で「溶融物冷却構造、これを備えた原子炉格納容器およびこれを備えた原子力プラント」、2014年12月現在で未査定の状態。http://www.google.com/patents/WO2011104908A1?cl=ja

 原子炉RV直下に捕捉板を設置する。補足板は傾斜していて、溶融物が流入する筒が複数の設けられている。筒は冷却水(冷却材)に漬かって、冠水している。流入する高温の溶融物は、外面を覆う冷却水に熱を奪われる。熔融部は筒部に流入し小分けにされて冷却効率が向上する装置である。三菱は「流出した溶融物を早急に冷却することができる。したがって、溶融物が再臨界になることを防止して、原子炉格納容器の安全性を確保することができる。」「溶融金属(溶融物)と、冷却水(冷媒)とが直接接触することを防止しつつ、溶融金属を冷却することができる。したがって、加圧水型原子炉(原子炉)から流出した溶融金属が冷却水に接触することによって生じる爆発を防止することができる。」と主張している。
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東電核災害後 上部凹部を有する炉心溶融物の貯蔵所
2012年4月に「溶融物の捕集装置」を出願している。出願番号2011-251992、公開番号2013-108772で未査定の状態です。
http://astamuse.com/ja/published/JP/No/2013108772
 三菱は仏アレバのコアキャッチャーの貯蔵所の床、冷却する床部はは底面の凹部を付けた板が敷かれている。その凹部に冷却水が流れる。三菱はメルトスルーしたら原子炉格納容器で、落下した溶融物を「一時冷却し、その後に取り出す必要がある。」しかしアレバのような従来の装置では「この溶融物を効率的に冷却することが困難である。」。三菱は「溶融物を効率的に冷却するために、この溶融物を複数の小堆積物に分離し、所定の間隔をあけて保持して冷却することが望ましい。」「落下する溶融物を早期に冷却することで安全性の向上を図る」装置が出願の「溶融物の捕集装置」であるとしている。
 それは炉心溶融物の貯蔵所の床部を次のようにする。縦横に冷却水の通路を設ける、その通路の間を凹みを設ける。複数の凹部を千鳥状に設ける。三菱は「溶融物は捕集面で受け止められて拡散され、この捕集面にある複数の凹部に捕集され、この複数の凹部に捕集された小体積物としての溶融物は、冷却媒体流通路を流れる冷却媒体により冷却されることとなり、原子炉から落下する溶融物を小体積物に分離し、この溶融物を早期に冷却することで安全性の向上を図ることができる。」としている。そして「沸騰型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)に適用することもでき、軽水炉であれば、いずれの原子炉に適用してもよい。」としている。
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典型的な炉心溶融物の崩壊熱は、定格熱出力の約1%と考えられ、例えば、定格熱出力が4000MW(電気は約1/3の1300MW・130万kw.)の炉の場合では約40MWの発熱量になる。炉心溶融物へ注水し炉心溶融物上面の水を沸騰させて冷却する方法では上面の沸騰熱伝達量は幅があるが、小さい方の値として約0.4 MW/m²の熱流束が想定されている。このような場合には、上面の沸騰熱伝達のみで除熱しようとすると、約100m²(円直径で11.3m)の床面積が必要になる。凹部に捕集された複数の小体積物にすることでどれ位効率的に冷却できるのであろうか?面積は減るのか?
日本の原子力委員会は2010年平成22年8月17日に次世代炉の開発計画を検討している。それでは次世代PWR・HP-APWRは178万kwの電気出力(熱出力4451MW)で「炉心溶融デブリの保持・冷却対策はIVR(In-VesselRetention 炉心溶融デブリ炉内保持)により強化する。また海外における規制に応じた対策も採り入れることが可能な設計」。だから三菱の本命技術はIVRで、コアキャッチャーは欧州対応の追加的技術なのだろう。
WH社のAP1000は115万kw.でIVRである。出力が1.5倍以上になるからAP1000のような原子炉RVの外面冷却では足りるのであろうか?「ハニカム多孔質体を伝熱面に装着する手法で冷却限界性能を向上」させる技術開発に森昌司(横浜大学)を代表に三菱重工、東京大学の研究グループに国費を投じている。
http://www.ripo.ynu.ac.jp/senryakusuishin/wp-content/uploads/2014/09/topics_2014_msh.pdf
http://www.jst.go.jp/nuclear/application/h26/ini_kadai.html

 

フランスのコアキャッチャー EPR欧州型加圧炉 [AM-メルトスルー、CCI]

Flamanville.jpgロシアのMLD:溶融局所化装置は、米国のPWRのIVR原子炉容器内溶融保持策は共に核燃料溶融物デブリ・コリウムを局所に閉じ込めようとする。ロシアは直下に設置した高さ14m、直径6.5m、重さ750tの鋼鉄製の鍋・vesselに封じる。米国は原子炉RVからのメルトスルーを防止して、その中に閉じ込める、そしてMLDやRVの外側を冷却水で包み上面に冷却水を散布して冷却する。
 フランスのEPR欧州加圧水型炉のそれは原子炉直下に落下してくる溶融物を、一旦直下で受け止め、溶融物の流動性と重力による移動でロ米に較べて薄く拡がる冷却装置に導き、冷却水で冷やす。
← フランスのフラマンヴィル原子力発電所の実証EPR炉FA3
右側に導かれた溶融物が拡がる構造が見える。
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3者とも加圧型で格納容器が大きい、出力当りの空間量が大きいから、冷却水が奪った崩壊熱を格納容器からの自然伝熱で外部に放出される。
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EPRのコアキャッチャーは、炉からメルトスルーした溶融物コリウムが保持部、170m²のSpreading Areaに拡がる確証がない。これまでの研究では半分固まった流動性がほとんどないような場合もあるとされている。拡がるまでに時間がかかると、冷却が上手くいかないのではないか?

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