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GE日立のBiMAC Core Catcherと東芝のコアキャッチャーの違い ドレンサンプ [AM-メルトスルー、CCI]

2010年10月に日立は、GE日立で出願しています。名称は「原子炉溶融阻止冷却装置」で、出願番号は2010-230179、公開番号は2011-128142です。http://astamuse.com/ja/published/JP/No/2011128142

 1985年から米国がTMI事故をその教訓を踏まえて改良型軽水炉(ALWR Advanced Light Water Reactor)開発計画を実施した。これに沿って、GEはSBWR(Simplified BWR・出力670MW)を開発した。設計、確証試験・解析は完了したが製品化せず、これを基に出力を1000MW以上の大型炉の開発に移行した。それがESBWR(Economic Simplified Boiling Water Reactor)である。GEは2005年12月にNRC(米国原子力規制委員会)に申請を出している。2006年の資料を見るとメルトスルー時の対策・対応設備は特に挙げられていない。

 日立は、もともとBWRの日本側メーカーとしてGEと関係が深い。日立側の資料では、2000年代初頭からESBWRの開発に参加している。日立とGEは資本関係も深め、2007年7月にGEと日立の原子力部門を本体からぶりして、共同の会社にしている。米国ではGE60%、日立40%資本のGE日立、日本ではGE20%、日立80%の日立GEが設立されている。

当初はなかったコアキャッチャー
 GEと日立は1997年にNRCからABWRの設計の認証を受けている。このUS-ABWRにはメルトスルーに備えた設備が付いた設計で認証を受けている。それは Lower Drywell Flooderである。これは、落下してきた溶融物の熱で弁を閉ざしている金属装置が熔融して弁が開き、S/Cプールから重力で冷却水が流入する装置である。GE日立のファクトシートでは10である。
https://nuclear.gepower.com/content/dam/gepower-nuclear/global/en_US/documents/product-fact-sheets/ABWR%20Fact%20Sheet.pdf
ESBWR(Economic Simplified Boiling Water Reactor、高経済型単純化炉 日立GEの訳後)では、BiMAC Core Catcher が追加されている。 Lower Drywell Flooder は、設置されている。IAEAのファクトシートでは、シビアアクシデント対策の一つに挙げられている。
IAEA https://aris.iaea.org/sites/..%5CPDF%5CESBWR.pdf の表3
BiMAC Core Catcher はGE日立のファクトシートでは8である。
000004記名.png

BiMAC( Basemat-internal Melt Arrest Coolability 基盤内部溶融阻止冷却装置)は、NRCへの2005年12月申請のDCD・設計認証図書の初版にはない。特許出願文書には改訂2版(2007年4月30日)から記載されたとある。
URD :米国電力要求文書の要求基準
 メルトスルーした溶融物には上面から冷却水を散布して、その上面の水の沸騰により除熱・冷却するのだが、堆積厚さが厚いと底部まで十分に冷却できない=溶融物が原子炉格納容器PCVの下部コンクリートを溶融貫通する可能性がある。それで、米国は、冷却可能な厚さ以下にするために床面積を広くとること、数値としては定格出力当たり落下する格納容器床面積が0.02m²/MWt以上を要求している。(URD :米国電力要求文書 Utilities Requirements Document )これを満たさない場合は、対策設備を要求する。このURD基準は、溶融物がサーと水の様に拡がると想定しているが、粘性が高く山盛りになる場合は床面積が広くても堆積が厚くなる、底部の冷却が不十分になると批判されている。
 ABWRは0.02m²/MWt以上のURD基準を満たしているので、溶融物にポンプや電力無しでパッシブに受動的に冷却水を注水する Lower Drywell Flooder でNRCは満足した。ESBWRはURDを満たさないので、コアキャッチャー機能が要求される。溶融物の底面を冷却してPCVの下部コンクリートを溶融貫通する可能性を排除する機能が要求される。それが Basemat-internal Melt Arrest Coolability 基盤内部溶融阻止冷却装置 BiMACであり、その開発期間は日立とGEが関係を深め、GE日立(2007年6月設立)、日立GE(2007年7月設立)に到達する時期と重なる。

 BWRではGEは東芝とも関係していてABWRは3社と東電で開発している。それがESBWRのNRC認証獲得の途中でGEからふられる形になっている。ESBWR(Economic Simplified Boiling Water Reactor)の和訳をGE日立は直訳に近いセールスポイントを挙げた「高経済型単純化炉」としているが、東芝は「自然循環冷却式受動安全沸騰水型原子炉」と特許出願書類では記している。その商権を持たない東芝は英訳としては不適切だが技術的特徴を列記する表記としている。
 東芝の2006年2月出願の二つの特許、①登録番号4612558「コアキャッチャーおよび原子炉格納容器」と②登録番号4828963「炉心溶融物冷却装置、原子炉格納容器および炉心溶融物冷却装置の設置方法」が、③ESBWRのBiMACと傾斜底面での冷却と冷却装置を保護する耐熱材という基本アイデアで類似しているのは、経過を見ればある意味当然である。また東芝が1994年7月出願で指摘している必要性、「軽水炉においては、炉心溶融物は70気圧程度の高圧で、溶融貫通した炉容器から噴出する場合があり、この運動エネルギーを吸収するためのショック・アブソーバーが必要」という必要性を満たしていないのも3件で共通している。しかし①は特徴がある。それは、耐熱材層の上面にドレンサンプが設置されている点である。

ドレンサンプ
 東芝によれば「格納容器床には、1つ以上のドレンサンプが設置されている。ドレンサンプは、原子炉の運転中に生じる可能性のある漏洩水を集水し、原子炉からの漏洩を検知するためのものであって、サンプ内に集水された水(ドレン水)は、サンプ上蓋の上に備えられたポンプによって配管を介して格納容器外へ移送される構成となっている。」(特許・登録番号5306074の公開情報・公開番号 2007-225356)つまり、発災時だけでなく運転中の異常・故障を検知するために必要なシステム・機器である。東芝は特許①ではドレンサンプを設けた。
 特許②については、「炉心溶融物冷却装置(コアキャッチャー)を設置すると、漏水が発生して落下してきた水を炉心溶融物冷却装置が受け止めてしまうため、漏水を検知することができない。そのため、炉心溶融物冷却装置を設置する場合、従来の漏水検知装置に代わる漏水検知手段を設ける必要」があるとして、2007年12月、「原子炉格納容器及び漏水検知床」の名で原子炉圧力容器RPVとコアキャッチャーの間に漏水検知床を設ける特許を出願している。出願番号2007-321293、公開番号2009-145135で、特許を得ている。特許の登録番号4987681で特許維持の状態。
http://astamuse.com/ja/granted/JP/No/4987681
000008w記名.jpg

水蒸気爆発の可能性
 調べた限り、ESBWRにはこうした検知システムはない。この欠落は東電福島第一原発の2号機、3号機の経過を見ると貫通した炉心溶融物を、コアキャッチャー上面中心部に溜まったドレン水(冷却材)のなかに落下・導くことになり水蒸気爆発の可能性を否定できないことになる。 続く

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