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「原発依存度低減に向けて廃炉を円滑に進めるための会計関連制度について(案)」にパブコメ 2/22締切  [電気料金制度・稼働率]

 「電気事業会計規則等の一部を改正する省令について(案)」及び「原発依存度低減に向けて廃炉を円滑に進めるための会計関連制度について(案)」に対する意見募集について
電気事業会計規則等の一部を改正する省令について(案)PDF
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000123049
原発依存度低減に向けて廃炉を円滑に進めるための会計関連制度について(案) 
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000123050
 送ったパブコメ
「モラルハザードとなることのないようにすべき」とあるが、国際的なIFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)のやり方と著しく乖離したこれまでの廃炉費用の計上・回収制度への反省と責任分担が明確にされていない。この廃炉に係る会計制度検証ワーキンググループの案では「経営を間違った企業は倒産する」という原則を破壊し、モラルハザードを引き起こすものである。やり直しを求める。
 IFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)は120カ国以上で採用(強制適用や容認)されている。米国はUSGAAP(米国会計基準)の中身をIFRSに置き換え、最終的にIFRSに同一化すること方向である。日本も強制適用の目処を2017年頃をおいて、2002年から徐々に取り入れられている。
 その中に、工場やビルなど有形固定資産を取得・建設・開発した際に、将来その固定資産を除去する際にかかる除去や環境浄化の費用をあらかじめ債務・負債として計上する、資産除去債務・AROとして可視化する考えがあります。原子力発電所では廃炉の費用は正にこれにあたる。

 その資産除去債務・AROの負債を固定資産の耐用年数(減価償却期間)に基づき各年度に費用配分して、償却し積み立ておく。一般的な生産設備は、減価償却期間をこえて生産設備が用いられる事が多々あるが、技術革新などで陳腐化し、設計で想定した稼動期間よりも短い期間で稼動を停止する、廃棄することも多々ある。こうしたことから、固定資産の耐用年数(減価償却期間)を用いている。
 電力会社の会計基準も、2011年度から資産除去債務・AROを取り入れたことになっている。しかし、質的に資産除去債務・AROではない。実態としては、1989平成元年から施行されている原子力発電施設解体引当金を引き継いだものであり、引当金制度の持っていたAROと相いれない特徴をそのまま引き継いでいる。それは、一つは、本来は資産の耐用年数に基づき各年度に費用配分を用いるべきところを発電電力量で行っている。一つは、配分期間が異様に長い。一つは、除去費用見積額が明白に過小である。
 1989・平成元年に設けられた原子力発電施設解体引当金制度は、原発などの体・除去や環境浄化の費用をあらかじめ算定して、その90%を、設備利用率が76%で40年間運転するとして1KWhあたり発電原価に算入し、電気料金で回収して、発電所一基毎の発電実績に応じて積み立てる制度であった。2011年度から変更は、費用の90%を100%に変えるだけである。
 原発は耐用年数を約40年と見て設計されている。しかし、一般的な生産設備でも、技術革新などで陳腐化し、設計で想定した稼動期間よりも短い期間で稼動を停止する、廃棄することも多々ある。それで原発の減価償却期間は15年とされている。ところが、資産除去債務・ARO=廃炉費用は、約40年とされている。米国、フランス、ドイツ、英国では40年を採っているから妥当との見解もあるが、日本は地震大国、天災の多い地域である。地震などで設計想定の40年間稼動ができなく確率は諸外国より高いのだから、諸外国と同じでは不適切である。予め、費用不足状態を内包した枠組みである。
 特に敦賀1号機(運転開始1970年11月)、美浜1号機(運転開始1970年11月)・2号機(運転開始1972年7月)、高浜1号機(運転開始1974年11月)・2号機(運転開始1975年11月)、島根1号機(運転開始1974年3月)、玄海1号機(運転開始1975年10月)など、引当金制度開始時点で設計想定耐用年数をかなり過ぎ1988年から更に40年間運転するとは思えないものは、予め、施設解体引当金不足が予見された。それにも拘わらず、何の手も打たれていない。

 設備利用率が76%というの点は、余りにも実態からかけ離れている。引当金制度が始まった1989平成元年度から2010年平成22年度までに、日本の原発の設備利用率が総合平均で76%を超えたのは、8年間しかなく、22年間全体では73%です。PWR・加圧型は79.2%と達しているが、BWR・沸騰水型は69%と1割も低い。
 されに細かく会社別、プラント別に設備利用率が低下した理由を見てみると、老朽化にともなうひび割れや配管破断などの機器トラブルで停止、事故炉の点検や機器の交換で長期停止。地震後の点検で機器トラブルが見つかり長期停止。それが他の原子炉での点検や予防的交換を招き、定期点検の長期化し低下している。
 
 老朽化原発ほど利用率は低くなる、解体時期が近いほど利用率が低くなり解体費用の積み立て、引当金額が小さくなる。解体費用が不足するという構造的欠陥を引当金制度は内包している。

「敦賀1号機、美浜1号機・2号機、高浜1号機・2号機、島根1号機、玄海1号機は1基あたり210億円程度の費用が一括して発生することになる。」とある。しかし1989平成元年からIFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)の資産除去債務・AROのやり方、主な原発設備の法定耐用年数・15年に基づく償却期間を前提として、将来時点の解体する費用額を費用配分するやり方で1989平成元年から原子力発電施設解体引当金制度を運用していたら、2010年には解体・廃炉費用は積みあがっていた。「資産の残存簿価、核燃料の解体費用等、廃炉に伴って一括して費用計上する必要のあるものについては、」引当金が積んである状態であった。
 原子力発電施設解体引当金制度が「巨額の損失が一括して生じる制度」であった。それで財務・会計的に「廃炉もできない」。この政策と経営の失敗のツケを、安易に会計基準を変更・「技術的修正」をして、投資家に消費者に回す姿勢は、モラルハザードそのものである。「モラルハザードとなることのないようにすべき」なのだから、先ずこの点を、政策と経営の失敗の責任を明確にしてから論議が始められる。やり直しを求める。
 以上
参照
電事連の求める「新たな国策民営のあり方」とは? 、 廃炉費用の計上 加筆2014/05 
http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2013-10-06

タグ:廃炉会計

日本の原発は、預金者の利子を掠め取って建設される。米国議会予算局CBOレポート [電気料金制度・稼働率]

原発の発電原価、米国議会予算局CBOの2008年レポートの評価と日本の同種の評価では、結果が全く違います。
 CBOの2008年評価では、政府補助なし・炭素税なしの場合は、在来型の火力発電が最安値になります。これを100とすると、原子力発電コストは130です。日本では逆です。3.11東電核災害前の評価では原子力発電が安くなってます。賠償費用や使用済み核燃料の処理などバックエンド費用を算入しても、原子力発電が火力発電より安くなっています。東電核災害後の論議では原子力発電は火力発電とほぼ同じです。米CBOの2008年評価のように30%高いという評価結果にはなっていません。

 2004平成16年1月の経産省のコスト等検討小委員会ではkWh当り、原子力5.3円、石炭火力5.7円、LNG火力6.2円。と、原子力の発電単価が最も安くなっています。
https://www.env.go.jp/council/06earth/y0613-07/mat03_2.pdf

 2011平成23年12月の内閣府のコスト等検証委員会ではkWh当り、原子力8.2円、石炭火力9.5円(うちCO₂対策費が約2.5円)、LNG火力10.2円(うちCO₂対策費が約1.1円)。
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/npu/policy09/pdf/20111221/hokoku.pdf


米国議会予算局レポートによる原子力発電の経済性評価という論考を日本エネルギー経済研究所が2008年7月に発表しています。その論考では、「3.日本での試算例との比較」でこの違いを追及しています。
http://eneken.ieej.or.jp/data/pdf/1714.pdf

(日本エネルギー経済研究所は、昭和41年(1966)設立された各種エネルギーに関する政策・需給・経済動向などを研究する一般財団法人で元経済産業省資源エネルギー庁所管。経済産業省の委託など国や独立行政法人からの事業収入を得ているそうです。このCBOの2008年レポートは5月公表ですから、ごく短時間に仕上げた気合を入れるべき話題だったのでしょう。)

理由は設定金利・・米国 14~8%、日本 3%

それによれば、「日米の原子力発電コストの差異に最も大きな影響を与えているのは利率の設定である。」
原子力発電では建設費比率が高い。その建設費は借入(負債)や投資(株式)で調達します。その時、利率、何%で借りる、投資家は何%の利回りかを検討します。米国の「CBOでは投資家の期待収益率を株式について14%、負債について8%と見込んでいる。」CBOレポートの米国の原発の建設コストは、kw.当り26万円ですから年間に3.64~2.08万円の配当・利息の支払いです。

これを日本の経産省のコスト等検討小委員会の3%に変えて、研究所がCBO式で計算し直しています。配当・利息の支払いは3%の0.78万円に減ります。「発電コストは原子力で3.5円/kWh、石炭火力では3.6円/kWh」「かつ原子力が石炭火力を下回る結果」となっています。米国には、3%で貸し出す銀行や投資家はいないのです。

米国議会予算局レポートによる原子力発電の経済性評価d-005a.jpg

日本の原発の建設コストkw.当り27.9万円ですから、米国の107%倍です。図5から米国のCBO流の評価なら原子力で8.3円/kWh位です。2004平成16年1月の経産省のコスト等検討小委員会の評価の石炭火力5.7円、LNG火力6.2円と較べると、原子力の発電単価が2004年時点で既に最も高くなっています。

「日米の原子力発電コストの差異に最も大きな影響を与えているのは利率の設定である。」

日本エネルギー経済研究所の分析の結論は次のようなものです。

今回の評価結果分析や日米比較の含んでいる意味は「民間事業者が経営戦略の中で原子力発電・・といった初期投資の高い電源に投資する意思決定を下すためには、炭素に価格を付けて(炭素税で)低炭素電源としてのメリットを明確にするか、あるいは大量の資金を低リスクで調達できる事業環境を確保するか、さもなくばその他何らかの形での政策的支援が必須である」

米国議会予算局「CBOレポートではC02排出課税やエネルギー政策法による支援の少なくとも片方かあることが、従来型のガス火力・石炭火力発電に対して原子力発電がコスト優位性を有するための必要条件であると結論づけている。」

 日本ではC02排出課税やエネルギー政策法による支援の双方が無いにも関わらず「日本のほうが米国よりも相対的に原子力発電のコスト優位性が高いのは、日本の場合、比較的低利率で借入が可能であり、かつ資本市場からの調達の比率が低い所以である」
「日本の電気事業者の資金調達源はほとんどが銀行借入金、それも政策投資銀行等利率の低いものが多い」。

また米国の州政府レベルの原発建設の経済的誘因として、一つは電気料金が規制されていて「事業者は消費者に価格転嫁できる余地があるため、初期投資が大きい原子力のような大規模電源が有利である。」南東部の州、一つは「事業者が営業運転開始前にも資金回収可能な」州を挙げています。
 日本は地域独占ですから、消費者への転嫁は思いのままです。総括原価方式では、(a)建設中の未稼働資産(建設仮勘定)として建設中の原発,(b)繰延資産に核燃料を入れていますから営業運転開始前の投資回収が行われています。

40年間貸付の貸出金利として3%の意味 

今、日銀や政府は景気回復には2%位のインフレ目標、物価上昇率(インフレ率)が必要だとして金融政策を行っています。2%位の物価上昇率(インフレ率)がないと経済がうまく回らないのです。ですから、銀行の預金の利率が2%位ないと、1年後に預金は実質的に目減りします。物価上昇率(インフレ率)が2%なら、今日の10万円は1年後に10万2千円にならないと使いでが同じになりません。1年後に10万3千円なら約千円分実質的に増えて、実質金利は約1%です。10万50円なら約2千円実質的に減っています。実質金利はマイナス2%です。

銀行は、私たちから預金という形で借り集めたお金を、銀行の経費や儲けを積み上げた利率で電力会社などに貸し出します。その貸出利率は物価上昇率(インフレ率)、実質金利と銀行の経費や儲けを積み上げた利率となります。2%位のインフレの時に、3%の貸出金利では、銀行の経費や儲けは確保できるでしょうが、実質金利はマイナスだと思います。

従って日本は、借りたから事業者から取り立てて預金者に渡すべき利息を、取り立てないで事業者の懐に残すという経済社会的歪み、弱者へのしわ寄せを行って、原発建設に必要な「大量の資金を低リスクで調達できる事業環境」を電気事業者に与え、原発の発電原価を低く火力発電以下か並みにして電気事業者を原発建設に導く政策が行われていた、いることを意味します。


電事連の求める「新たな国策民営のあり方」とは? 、 廃炉費用の計上 加筆2014/05 [電気料金制度・稼働率]

経産省は、電力会社を救うために日本の資本主義を壊すつもりらしい。
電力会社が潰れても、電力事業はなくならない。無くなるのは天下りなどの利権だ。

以前、お伝えしたように経産省は原発の廃炉費用、東電福島第一原発のような事故炉の廃炉費用を電気料金に入れて全てを今後の電気代で利用者の懐から取り出そうとしています。この会計制度変更に意見公募があったので、私は「経営を間違った企業は倒産する原則」を破壊し電力会社と監督官庁・経産省のモラルハザードを招くから、新設すべきではないとの意見を送付しました。1ヶ月間に307件あったそうです。

しかし、経産省は原発の廃炉費用を電気料金に入れて、全てを今後の電気代で利用者に気付かれないようにして懐から抜き取る制度変更を施行し、合わせて経産省のコメントが公表されています。 経産省の公示

そのコメントでは、.電力会社の経営責任、国の責任を問う国民意見には「その他の御指摘については、今回の意見募集対象の趣旨とは異なるため、回答は控えさせていただきます。」と答えています。この制度変更で「事故炉の廃炉費用まで電気料金で回収するのであれば、今後、保険も何もいらない。損害賠償も支援機構から国民負担でお金がでるから、原発事故ですら、電力会社にとってはノーリスクということだ。こんなことが通るのは原発業界だけだろう。(立命館大学・大島堅一教授)」となります。こういうことが、小手先の変更で済ませてしまうと、日本の経済システム全体の信用がなくなると思います。

IFRSの資産除去債務・AROの導入

余り知られていないことですが、今、企業の活動や経営状態を写す鏡である会計制度の世界標準が大きく変わりつつあります。それはIFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)というやり方です。2005年のEUにおける域内上場企業に対するIFRS強制適用を契機に、今や120カ国以上で採用(強制適用や容認)されています。米国はUSGAAP(米国会計基準)の中身をIFRSに置き換え、最終的にIFRSに同一化すること方向です。日本も強制適用の目処を2017年頃をおいて、徐々に取り入れられています。

その中に、工場やビルなど有形固定資産を取得・建設・開発した際に、将来その固定資産を除去する際にかかる除去や環境浄化の費用をあらかじめ債務・負債として計上し、可視化する考えがあります。例えば、柏崎刈羽原発を廃炉にする費用を、運転当初から債務・負債として計上しておこう、その負債を固定資産の耐用年数に基づき各年度に費用配分して、償却し積み立ておくという考えです。資産除去債務・AROという項目を新たに建てるのです。

これにより環境に無関心な設備投資は、多額の環境浄化の費用、資産除去債務の計上という形で数値化され可視化されることになります。これまでは除去コスト、環境に無関心な設備投資を行っても、自分が経営陣にとどまっている間に費用計上がなければ、直接その責任は投資家から問われなかったが、今後はそうはいかなくなります。設備投資の意思決定を、調達→維持→除去の過程で発生するトータルコストで考えることが要求されます。Aという設備は投資額100億円で維持費80億円、資産除去債務・AROは40億円、Bは投資額120億円で維持費80億円、資産除去債務・AROは10億円とするとトータル・総額でBを選択する経営者の意識を、経営の質を問うことがIFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)の柱の一つです。

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トヨタ自動車は2012年3月末に108.9億円、2013年3月末で113.7億円を計上しています。これが違っていると、トヨタに投資する人に負債を小さく見せることになります。故意に資産除去債務・AROを過小に計上すれば、不誠実な会計処理、粉飾決算です。経営者の解任や損害賠償請求がありえます。
また、それは原価に含まれる除去や環境浄化の費用を過小にして安く見せるダンピングを行って、消費者を騙し、不当な価格競争をしかけ資源配分を歪ませる社会的有害性を持ちます。

資産除去債務と似て非なる原子力発電施設解体引当金

電力会社の会計基準も、2011年度から資産除去債務・AROを取り入れたことになっています。しかし、実態としては、1989平成元年から施行されている原子力発電施設解体引当金を引き継いだものになっていました。それは、質的に資産除去債務・AROではありません。一つは、本来は資産の耐用年数に基づき各年度に費用配分を用いるべきところを発電電力量で行っている。一つは、配分期間が異様に長い。一つは、除去費用見積額が過小です。

つまり、経産省と電力会社がグルになって消費者を騙しています。原発の発電コスト中の解体費用分は本来よりも小さくなっています。火力発電や水力発電では、そのよう縮小されていません。原子力発電は火力発電などに不当な、ダンピング価格で競争をしているのです。

1989・平成元年に設けられた原子力発電施設解体引当金制度は、原発などの体・除去や環境浄化の費用をあらかじめ算定して、その90%を、設備利用率が76%で40年間運転するとして1KWhあたり発電原価に算入し、電気料金で回収して、発電所一基毎の発電実績に応じて積み立てる制度です。2011年度から費用の90%を100%に変えて、引き直しています。

原子炉など設備費は「原子力発電設備の主な設備については、耐用年数を15年とする定率法で減価償却(回収)が行われており、この減価償却費は料金原価項目に含めることとなっている。」経産省資料。原発の運転可能期間は約40年といわれていますが、地震などの災害で使えなくることがありえます。例えば、東京電力柏崎刈羽原発は、2007年に中越沖地震で全号機停止しました。2、3、4号機はそのまま停止しています。2007年に3、4号機は運転開始から15年経っていません。主な設備の減価償却期間を終えていませんでした。一般的な生産設備でも技術革新などで陳腐化し、設計で想定した稼動期間よりも短い期間で稼動を停止する、廃棄することが多々あります。

このような事態を考慮して設計想定の約40年ではなく15年を減価償却期間にしています。解体・除去や環境浄化の費用の費用配分期間を40年にすることは、このような事態では解体・廃炉費の積立額が不足します。経産省は、米国、フランス、ドイツ、英国では40年を採っているから妥当としていますが、日本は地震大国、天災の多い地域です。地震などで設計想定の40年間稼動ができなく確率は諸外国より高いのですから、諸外国と同じでは不適切です。それを40年とするのですから、予め、費用不足状態を内包した枠組みです。

設備利用率76%もそうです。「1966年に商業用原子力発電所が運転を開始して以来、設備利用率は、1975年前後に初期トラブルや応力腐食割れ等のために総合平均で約40%まで低下した時期を除き、1983年度に70%台、1995年度には80%台を達成し、以後、2001年度まで80%台の高水準で推移した。」とされています。これでは、76%は楽々達成できそうです。

しかし原子力発電施設解体引当金制度が始まった1989平成元年度から2010年平成22年度までに、日本の原発の設備利用率が総合平均で76%を超えたのは、1994年から8年間しかありません。その前の5年間は平均73.2%、8年間が80.6%、2002年から9年間は58.9%、22年間全体では73%です。原子力発電施設解体引当金の設備利用率76%という想定は、過大です。

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会社別、プラント別に設備利用率が低下する理由を見てみると、老朽化が背景にあります。 
a)ひび割れや配管破断などの機器トラブルで停止、事故炉の点検や機器の交換で長期停止。それが他の原子炉での点検や予防的交換を招き、定期点検の長期化。
B)機器トラブルを隠蔽すると停止しませんから利用率は低下しませんが、内部告発などで発覚して再点検などで長期停止。
C)また、地震による停止があります。地震後の点検で機器トラブルが見つかり長期停止。柏崎刈羽2、3、4号機では地震後の点検も終えていません。余談ですが、原発に詳しく点検作業を立案、指揮、実施できる能力のある人は福島第一に廻されており、点検は終わらないといわれています。

バックフィットの影響

経産省は設備利用率×期間の想定総発電電力量を制度変更の理由の一つにしています。「バックフィットを求める新規制基準の導入等を考慮すれば、今後、平均的な設備利用率を確実に見通すことがより困難となり、生産高比例法の前提となる想定総発電電力量の設定が難しくなるおそれがある」

浜岡原発では耐震性強化、1000ガル対応バックフィットにより1、2号機は廃炉になり、3、4、5号機は補強工事が行われています。これは1、2号機は1970年代の導入技術の消化に力点が置かれた設計で補強に各1500億円、計約3000億円と見積もられました。3、4号機はBWR-5改良標準型の1980年代の設計で、5号機は最新のABWRです。耐震補強に数10~100億円と見積もられたためです。1、2号機は設計が古くて、元々の性能を補強するのにお金がかかりすぎる。補強するより新しく建てる方が安くつくから中部電力は廃炉にしています。

つまりバックフィットを求める新規制基準の導入で廃炉や長期の工事期間=停止期間など設備利用率が下がるのは、設計時期の古さ=老朽化が主因になると考えられます。これは、これまで平成元年から22年度まで設備利用率を下げてきた主因でもあります。老朽化が今でも「平均的な設備利用率を確実に見通す困難」、76%を達成できない事態を招いているのです。バックフィットが「平均的な設備利用率を確実に見通す困難」を新たにもたらす訳ではありません。老朽化を考慮せず、生涯76%という想定をしてきたことが、制度変更を余儀なくさせているのです。

老朽化原子炉ほど利用率は低くなる、解体時期が近いほど利用率が低くなり解体費用の積み立て、引当金額が小さくなる。解体費用が不足するという構造的欠陥を引当金制度は内包しています。

政策的不当廉売、ポリシーダンピング

原子力発電施設解体引当金制度の設備利用率が76%で40年間運転という想定は解体費用が不足するという構造を持っています。経産省・通産省の制度設計が最初から間違っていたのです。それは2002年以降に顕著に顕われています。その制度の枠組みを正さなかったツケが今回顕わになったのです。

原子力発電施設解体引当金のような工場やビルなど有形固定資産を取得・建設・開発した際に、将来その固定資産を除去する際にかかる除去や環境浄化の費用をあらかじめ負債・資産除去債務・AROとして計上し、可視化する考えのIFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)。その日本への取り入れは2002年から始まっています。「実は、わが国に資産除去債務を導入する際、最大の焦点となったのが電力会社の原発の扱いだった。それまで引当金方式で計上してきた負債額を変更すると、原発の発電計画全体に影響が及んでしまう。このため、当時の企業会計基準機構の審議過程では、電力の扱いについて再三議論が交わされた。」 Finance GreenWatch
このように、正すチャンスはあったのです。

IFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)の資産除去債務の場合、法定耐用年数・15年に基づく償却期間を前提として、解体する将来時点の費用額を費用配分します。引当金方式の場合、原子炉等を解体する将来時点の費用額を推計しその費用の90%分を、設備利用率が76%で40年間運転という想定の発電量に基づいて40年間に按分して計上するしていました(電気事業法)。「その(企業会計基準機構の審議の)結果、電力にも資産除去債務を適用するが、原発の将来債務の推計については、それまでの発電電力方式の総額とほぼ同額扱いとするとの妥協がかわされたとみられる。」
現行の電力会社の資産除去債務の計上は、従来の引当金方式で計上した費用(90%分)を100%に引き直した数字を計上しています。

IFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)の資産除去債務のやり方、主な原発設備の法定耐用年数・15年に基づく償却期間を前提として、将来時点の解体する費用額を費用配分するやり方で1989平成元年から原子力発電施設解体引当金制度を運用していたら、2010年には解体・廃炉費用は積みあがっています。

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15年を40年にすることで年間の配分費用、つまりコストに含まれる金額は約37%に減ります。逆に言えば、原発の発電コスト中の解体・廃炉費用分は本来よりも約63%小さくなっています。経産省の政策によるダンピング・不当廉売の発電コスト・原価です。

原発の電気は安い、リーズナブルだといわれていますが、政策的不当廉売、ポリシーダンピング価格だから安く見えるのです。こうした粉飾された発電原価で原子力発電を火力発電と比較して、経済的に優位として経産省と電力会社は原子力発電を推進してきました。

その歪みが明らかになり、責任を問う国民の声には経産省は「御指摘については、今回の意見募集対象の趣旨とは異なるため、回答は控えさせていただきます。」

この制度変更で「事故炉の廃炉費用まで電気料金で回収するのであれば、今後、保険も何もいらない。損害賠償も支援機構から国民負担でお金がでるから、原発事故ですら、電力会社にとってはノーリスクということだ。こんなことが通るのは原発業界だけだろう。(立命館大学・大島堅一教授)」このように、国全体での資金・投資の歪みが生じます。

「 政策と経営の失敗のツケを、安易に会計基準を変更して、投資家に回す姿勢が“国策”として国際金融市場に認知されると、日本の企業会計に対する国際的な信頼は大きく毀損される可能性がある。報道されているような廃炉コストの分割処理というような『日本的仕組み』は、一見、電力会社にとって緩和策のように映るが、実態は、日本の電力各社は、特殊な会計処理をしないと企業価値を維持できない企業であるということに、国がお墨付きを与えることにもなる。」Finance GreenWatch

そのようなお墨付きを出す政府・国を、世界の経済人は信用するでしょうか?日本の経済システム全体の信用がなくなると思います。IFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)に顕われているように、世界は企業の経営、経済運営に調達→維持→除去の過程で発生するトータルコストで考える経営者の意識を、経営の質を問う時代に入っています。それに逆行するものです。

経産省は、電力会社と経産省の天下り利権を救うために日本の資本主義を壊すつもりらしいです。
 
 
新たな国策民営のあり方の検討を 電事連 2014年5月26日追記
 
 八木誠・電事連会長(関西電力社長)の5月23日会見より
http://www.fepc.or.jp/about_us/pr/kaiken/__icsFiles/afieldfile/2014/05/23/kaiken_20140523.pdf
 
 小売全面自由化を進めるにあたっては、将来のわが国の電力需要に応じた供給力が確実に確保される仕組み等をしっかりと構築していく必要がある
 
 課題① 電力需給状況の改善 原発再稼働
現在のように、原子力発電の再稼働が進まず需給逼迫が続く状況下では、たとえ全面自由化を進めたとしても、発電余力に乏しく、競争の活性化につながりにくいと考えられます。私どもといたしましても、できる限り早く原子力発電所を再稼働できるよう最大限の努力を続けてまいります
 
 原子力発電所の安全確保につきましては、自主的かつ継続的に安全性向上を図っていくことが重要であり、そのためには、「原子力のリスク」に正面から向き合う取り組みが必要であると考えております。「業界全体の取り組み」につきましては、まとまり次第この場で報告させていただきます。 現在の取り組み・・3層の多重防護
 
 課題② 原子力事業環境の整備
 原子力発電を「重要なベースロード電源」として活用していくために、競争が進展した環境下におきましても、民間事業者が予見性をもって事業を計画し、実行できる環境の整備が大変重要になると考えております。こうした観点から、原子燃料サイクルも含めまして、原子力事業を長期に亘り安定的に運営していけるよう、全面自由化の実施に先がけて、新たな国策民営のあり方を検討していただき、国と事業者が果たすべき役割と責任の整理をお願いしたい
 
5月26日 日刊工業新聞 記事より 
 
 全面自由化に合わせ、料金規制も段階的に撤廃され、費用項目を電気料金に反映できる総括原価方式も廃止される。八木会長は「自由化の中に費用回収の手だてがない」「自由化後の競争環境下では、超長期の投資や費用の回収が難しくなる」と述べ、建設から廃炉まで数十年におよぶ原発の費用回収が不可能になるとの懸念を表明した。 以上記事より
 
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現在、核のごみの 「ガラス固化体」、英仏での再処理で生成放射能を集めてガラス状に固めた約490㎏、直径約40センチ、長さ約130センチの円柱状の固化体まで1本約1億3千万円で総括原価に入れています。その一方、廃炉費用等、会計的には資産除去債務は計上していません。IFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)のやり方でやってこなかったツケが廃炉費用等の積み立て不足になっています。
 
 電事連は核燃料サイクルは国策民営といいますが、 英国では国策会社「英国電力公社は、原子炉での新燃料から超高燃焼度燃料そして再処理及びそのプルトニウムからの新燃料に至るまでのプルトニウムを用いた高速炉燃料サイクルの全体を実証した。英国の保守党政権の考えとしては、高速炉概念は産業規模で実証されたものであり、高速炉技術を市場に導入するかどうか、いつ導入するかは英国電力業界が決定すべきである(1990年代に)とした。」その英国の民営電力会社は、建設も運転もしていません。
 参照・・http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2014-01-03-2 の英国の経験
 
つまり、日本の電力会社は、民営に必要な経営観・感覚を欠いているのです。 


原発の賠償保険・・東電が10兆円の損害賠償保険をかけてから、再稼動の話を聞こう 加筆2014/5/21 [電気料金制度・稼働率]

柏崎刈羽原発の6、7号機の再稼動の話は、東京電力が損害賠償保険で、東電福島第一原発での核災害への現時点での補償見積額10兆円を用意するまで、新潟県は話を聞くべきではないと思います。

東電は事実上倒産しています。柏崎刈羽で事故っても、補償金はびた一文も身銭で払える状態ではありません。イザという時の蓄え・備えもないのに、再稼動して電気を売って金をもうけたいというのは、モラルがない、企業のモラルハザードです。ならば、賠償保険で補償金を用意する、車を運転するなら任意での賠償保険を付けてお金で補償できる損害部分に備えるように、東電にも備えてもらいましょう。それから東電は再稼動を持ち出すべきですし、話はそれからです。

原賠法で1200億円/基の強制保険があります。10兆ですから、その100倍の保険料で引き受ける保険会社があるかもしれません。自動車保険は事故を起こすと高くなります。東電さんなら事故確率が高いから500倍の保険料という会社もあるかも知れません。逆に、新たな対策で確率が低くなったから50倍でOKという会社もあるかも。強制保険はお上の指示で仕方無しに引き受けた、業界存続のための税金みたいな保険だからと、1社も引き受け手がないかもしれません。

損害保険を付けるということは、政府や自治体など“官”や“学”ではない、民間の目を入れることです。それも銭金の絡む最もシビアな、プロの評価です。巨額なので再保険されます。それを引き受ける他の保険会社の目も入ります。保険が付かないのなら、ビジネスとして再稼動、原発は無理だということです。

巨額の損害保険料を支払っても、柏崎刈羽の電気は火力より安価?? 再稼動しないと電気代があがるという経済学者もいますが、損害保険をかけたら、どれ位に電気代がなるかを経済学の専門家なのですから是非に試算して欲しいです。病気と補償は新潟県民もち、電気だけ頂戴って、三つ四つの子供みたいな論議ではなく、試算の上で、電気代の話を論議すべきではないでしょうか?

また、10兆円も補償すべきものを支払っての金額なのか?汚染された土地家屋を買い叩いている、補償を値切り倒しているという話も伝わっています。その点も、要チェックです。

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再保険とは
 原子力発電所事故の賠償責任について
―JCO臨界事故と東京電力福島第一原発事故の賠償実績を中心として―
張 博
経済開発と環境保全の新視点,No.5
新潟大学大学院現代社会文化研究科

私は、2の「原子力保険プールと『大数の法則』」が興味深かった。

大数の法則とは「サイコロの目は1から6まであり、サイコロを転がすといろいろな数字がでる。最初のうちは特定の数字が多くでることもあるが、何万回、何十万回とやっているうちに、1から6まで、ほぼ満遍なく出てくるようになる。つまり、1回1回を見れば、数字が偏って、偶然の結果にすぎないように見えるものも、長い間やっているうちに、一定の傾向、一定の法則がある」ということで、「保険料算出の基礎数値の一つである保険事故の発生率は、大数の法則に立脚した統計的確率にほかなりません。」
張博さんは「大数の法則」は原子力保険に適用しにくい。理由は(1)大規模な原発事故が生じる事は「極めて希な事象で巨大な損害」を意味する、(2)原発事故発生のリスクは確定できないの2点を挙げている。正にその通りである。
どれ位巨額なのか 原発・核発電事故の損害の性質 
 加藤尚武氏(カトウヒサタケ、環境倫理、生命倫理など哲学者、原子力委員会専門委員を歴任)は、2011年10月刊行の「災害論 安全性工学への疑問」で次のように記している。
=「異常な危険」(abnormal danger)には無過失責任を適用するという法律論は、過度の損失はそれを反復すると人間の生活が成り立たなくなるので、「事実上リスク・ゼロ」にしなさいという含意である。原子力発電所の事故は、当然、無過失責任の適用を受ける。=ⅲ
 =大型タンカーの事故、油田の事故、原子力発電所の事故は、偶発的に発生する多数の事例をサンクション等によって一定の水準以下に抑えていくという政策では対処できない。
 一回の事故の実質的な被害(人命、個人の財産、自然環境の被害)がたとえ法的に賠償を受けたとしても、永続的な影響が残り、人間社会はそういう事故の反復に耐えられない。ランダムに発生する多数の犯罪や事故に対し、サンクション(罰金、刑罰)によってその被害を一定以下に保つという確率論的安全確保政策の有効範囲をこれらの大事故は超えているからである。=
=自動車事故による交通事故の場合は、「異常な危険」ではなく、通常の過失責任として扱われてきた。それは、個々の災害の規模がタンカーや原子炉の事故に比べて小さく、個人にとっては立ち直りが不可能になるような不幸な事故が起こっても、社会全体としては、事故予防のためのきめ細かい努力を積み重ねることによって、立ち直りが可能な限度内に抑えられてきたからである。=p.102~103
 事故の人命、個人の財産、自然環境の実質的な被害に賠償が行われても、残る「永続的な影響」は何でしょうか?人命の被害の原状回復は、土台無理。それは交通事故でも同じ。加藤氏は被害の規模の大小を違いに挙げている。3.11では大津波で多くの方が亡くられた。東北地方太平洋沿岸は津波の常習地。地形と相まって大きな被害になっています。その被害からの集落など地域社会の回復過程を顧みると、人口的には転入者と生き残った人々で次世代を生み育みで回復している。人口の自然増加率が正の値、ゼロよりも大きいと回復過程。その値が大きいほど回復速度が速い。
 大型タンカーの事故、油田の事故での自然環境の回復も、基本的には野生生物の個体数の回復である。タンカーや油田の事故で原油や重油が流した海域では、流出油によって生態系が回復しない永続的影響が顕れています。その汚染地域では、野生生物が他所から流入し、子孫、次世代を生み育つ環境が流出油で損なわれているのです。
放射能で汚染された地域で、そこの地域社会の人口の自然増加率がマイナスなら先細りし何れ消滅。ゼロかごくわずかなプラスでは停滞します。これが「異常な危険」の特徴である「永続的な影響」ではないでしょうか。
チェルノブイリ事故で人が住まなくなった地域では、鳥類、例えばツバメはその地域では生存率や出生率が低いので自然増加率は⁻マイナスですが、他所から途切れなく渡ってやってくる移住者たちで個体数を維持しています。 
参照・・チェルノブイリのいま – 死の森か、エデンの園か
  原発からの放射能で汚染された地域で、人の種社会で個体数の自然増加率がマイナスになるかは不明です。ただ歴史的には、江戸時代中後期の大阪、京都や江戸、同時期のロンドンなどの大都市で起きていて歴史人口学では”都市墓場効果””アリ地獄効果”と言われます。(参照)密集しての居住での感染症の流行が主因で、 飢饉期に適宜な措置が採られない、独身率の高さ、居住の不安定性などが大阪、京都や江戸での自然増加率をマイナスにします。その不足分を周辺農村部からの転入で穴埋めしています。そして徳川幕府の人口調査から「平常年では、ほとんどの国で人口は増大しているが、江戸を中心とする関東地方、京都・大坂を含む近畿地方で減少している。」アリ地獄効果のある地域・大都市を抱えると、より広い地域社会では人口的には衰退してます。
 原発からの放射能で汚染された地域で人口的に”アリ地獄効果”がおきると、その当該地域社会の衰退、消滅だけでなくより広い地域社会でも人口的には衰退する可能性があります。これは、当該地域を無住化することで予防できます。その当該地域の集落など地域社会を人為的に消滅し、以後の定住を禁止するのです。
 ツバメと違い人はその地域では生存率や出生率が低く、子供が産めない、育てられないという情報を得れば転入しようとしないでしょう。”アリ地獄”とわかっていて、近寄る人はいない。子供がなかなか生まれない、生まれても生存率が低いという状況下で、自然増加率がマイナスなら何れ消滅する。ゼロ付近では停滞します。地域社会を人為的に消滅させることは、それによって現在の構成員やその子孫を”アリ地獄”から脱出させることです。
消滅する当該地域の集落など地域社会を、他の地域で再現、移植できれば原状回復という意味で、被害が償われた言えます。しかし、当該地域の集落など地域社会には、その地域の自然に根差した暮らし、漁や農という生業、季節の移ろいでの情趣、祭りなど行事などの文化、その中で築かれる人間関係など、その地域固有のものがあり、他の地域で再現、移植は原状回復という意味では無理です。
交通事故で人命が損なわれると賠償金が支払われます。それで亡くなった方が生き返るはずもなく原状回復の原資ではありません。賠償金には懲罰という意味も込められています。原発・核発電所事故では、原発からの放射能で汚染された地域で消滅させないと 人口的”アリ地獄”化してしまう地域社会が作り出されてしまいます。社会消滅への賠償は、懲罰金という意味合い、色あいを当然に持ちます。さていくらでしょう?
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福島県の双葉町は人口約7000人、51.40 km²です。この地域社会を消滅させる賠償金は??円。 新潟県の出雲町は人口約5千人、約44 km²で、隣村の旧和島村と良寛ゆかりの地です。東京電力が柏崎刈羽原発で事故となって、この街を消滅させなくてはならなくなったら、東京電力への請求金額は???円が妥当でしょうか。東京電力は、それに備えて、補償額いくらの保険契約を結ぶべきでしょうか?

2014年5月21日 大飯原発3、4号機運転差止請求事件 福井地方裁判所判決要旨 でのとらえ方
個人の生命、身体、精神及び生活に関する利益は、各人の人格に本質的なものであって、その総体が人格権であるということができる。人格権は憲法上の権利であり(13条、25条)、また人の生命を基礎とするものであるがゆえに、我が国の法制下においてはこれを超える価値を他に見出すことはできない。したがって、この人格権とりわけ生命を守り生活を維持するという人格権の根幹部分
大きな自然災害や戦争以外で、この根源的な権利が極めて広汎に奪われるという事態を招く可能性があるのは原子力発電所の事故のほかは想定し難い。
事故の確率  交通事故との対比
 原発事故の論議では自動車の交通事故が引き合いに出される事が多いです。
原発・核発電所の事故の確率は炉年、延べ運転年数単位で表されています。例えば、1.0×10-9(回/炉・年)とは、ひとつの原子炉を109(10億)年運転した場合に、 一回程度発生することを表します。
 原子力規制員会は安全面の性能目標として、「原子炉の事故は炉心損傷頻度(CDF)は1万炉年に1回程度、格納容器機能喪失頻度(CFF)は10万炉年に1回程度に、Cs137 の放出量が100T(テラ・兆)Bq を超えるような事故の発生頻度は、100万炉年に1回程度を超えないように抑制されるべきである(テロ等によるものを除く)」をかがげています。
 原状回復が不可能という点で自動車事故の中の死亡事故が、原発の過酷事故との比較には適していると思います。
内閣府の交通安全白書によると http://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/index-t.html
1万台・年あたりの死亡者数(人、事故から30日以内での死亡者数)
2006年・・ 0.98
2007年・・ 0.89
2008年・・ 0.81
2009年・・ 0.78
2010年・・ 0.78
2011年・・ 0.74
原発の台数、炉数の絶対値が小さいため、その過酷事故は「極めて希な事象」という印象を持ちます。「希」であって欲しいものですが、延べ数を物差しにしてみると、このように日本の原発・核発電所の安全目標にしている発生頻度は、 死亡自動車事故の実績よりも緩いものになっています。原状回復が不可能な損害を起こす頻度では安全目標を達成した原発でも死亡自動車事故よりも高いだろうことが明確です。 
 参照・・日本の原発の安全目標・1万炉年に1回程度は、自動車事故の実績・1万台年当りの0.74人死よりも緩い
保険料率算出のために開発された確率論的安全評価の解析手法
現在、核発電プラントの危険性(安全性)評価に使われている 確率論的リスク解析 (PRA,probabilistic risk analysis)は、原子力損害賠償保険の料率を適正に定める目的で、米国政府機関が1970年前半に開発した解析手法である。このPRAでの確率論的安全評価・PASは、のちに絶対値については不確実性が大きく信頼性が低いが、事故の相対的評価には有用との評価が定説である。
 大数の法則が当てはまらないからと、代替に開発した手法も、原発事故発生のリスクは算出できない現状である。
 1979年のTMI事故以降、米国、欧州の規制機関は炉心損傷事故(当時はシビア・コア・ダメージSCDと呼ばれた)が起こりうることを前提にし、その防止策や影響緩和策の策定と実行に取り組みました。その時、既存や新設の原発プラントの弱点検出や改善策の効果の判定(前後での相対的変化の検出)の道具にPAS・確率論的安全評価を使っています。 参照・・全交流電源喪失・SBO対策にみる確率論的安全評価の使われ方
85年からのそうした手法で、「改良型軽水炉計画」が米国主導で行われました。そこで開発された炉設計、システム、技術は、BWR・沸騰水型ではESBWR、PWR・加圧型ではAP1000に結実しています。それでは、格段に事故発生頻度・確率が下がっています。(下図参照) 

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このようにPAS・確率論的安全評価で、事故の頻度が下がった原発、ある設備を付けることで確率論的安全評価(PSA)が相対的に小さくなれば、その分損害賠償保険の料率が小さくなることが合理的です。

 例えば、柏崎刈羽原発6、7号のJP-ABWRに、EU-ABWRやESBWRにあるIC・非常用復水器やPCCS・受動的(静的)格納容器冷却システム、PFを後付けすると確率論的安全評価(PSA)でリスクが相対的に十分の1になり、その分損害賠償保険の料率が十分の1になるとすれば、その設備の使用期間と保険料の低下額の積、総節減保険額がそれらの機器の設置費用よりも大きければ、これらを後付することが経営的経済的に合理的である。
 保険はリスクという外部コストを内部コスト化する機能があります。規制という権力、経済外強制によらずとも、リスクが相対的に低くなります。
 それは可能でしょうか?

原発・核発電所の損害賠償の保険は、「原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)」と「原子力損害賠償補償契約に関する法律(補償契約法)」の2本の法律があります。 
 原賠法では、電力会社など原子力事業者が一般的なリスク、事故に備え民間の「日本原子力保険プール」と賠償措置額を保証する保険契約を結ぶことを定めています。通常の商業規模の原発1基の補償上限は現在1200億円(2014年4月末現在)です。その原発一基あたりの年間保険料は公開されていませんが、東京新聞調べで2011年には平均約5700万円でした。

 補償契約法による原子力損害賠償補償契約は、異常に大きな天災地変や戦争などを対象に政府が引き受け賠償措置額は現在1200億円(2014年4月末現在)です。その原発一基あたりの年間保険料は、2011年には3600万円でした。2013年4月1日からそれを約7倍(現行の補償料率を「1万分の3」から「1万分の20」に改訂。)

つまり、原発一基あたりの賠償金の上限は1200億円で年間保険料は民間分が同じなら年間1~3億円程度。これでは、損害賠償保険の保険料の割引は、安全投資の動機にはなりません。
 賠償金の上限を約42倍の10兆円にする。民間の料率も約7倍に上げて1万分の30で、年間300億円。政府分は1万分の20で年間200億円。通常の商業規模の原発1基で年間約500億円。この額なら危険性が低下すると、その分保険料額が低下する仕組みを入れれば、経営的経済的に自ずと原発のリスクが相対的に低くなる投資が行われます。

しかし通常の商業規模の原発1基での保険料年間約500億円を発電量でわって電気料金にいれると、1kw時.あたり10~20円になると試算されています。関西電力によれば「天然ガスを使った火力発電は10.7円程度、石炭を使った火力発電は9.5円程度」ですから、保険料は火力の発電単価と同じか、むしろ高くなる。原子力のリスクをより小さくしていく「健全な発達」に資する保険料額では、原子力事業の拡大=「発達」はできない。

 保険はリスクという外部コストを内部コスト化する機能があります。それで、内部コスト、外部コスト(一部)を合わせた総コストを提示することで、社会全体での投資の最適化を導く。またリスクという外部コストを下げると保険コストが下がるので、リスクを下げようとするインセンティブを生みます。
 原発・核発電で保険はそのような機能を果たしていない。事故での損害が大きすぎ、これまでと異質で、機能を果たしていません。つまり、資本主義の経済で、経済行動の最適化に重要な保険が働かない原発・核発電。それを、いかにしてコントロールする仕組みを作れるのか。 それが課題だと思います。

原子力のリスクをよ り小さくしていく「健全な発達」に資する保険料額では、原子力事業の拡大=「 発達」はできない。 [電気料金制度・稼働率]

損害保険、最も身近な損害保険は自動車の保険です。事故を起こさない起こさなかったドライバーには、保険料が安くなる「等級」があるのは、よく知られています。車の種類、車種や型式でも違います。車の危険度(事故・盗難)を表す「車両料率クラス」というものです。

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原発もある設備を付けることで危険性が低下する、原発の確率論的安全評価(PSA)事故リスクが相対的に小さくなれば、その分原発事故の損害賠償の保険の料率が小さくなることが合理的です。原発の炉型別の確率論的安全評価(PSA)、プラントの機器の故障や人的ミスが原因がある場合のPSA(レベル1)では次のように桁違いで差があります。

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だから、柏崎刈羽原発6、7号のJP-ABWRに、EU-ABWRやESBWRにあるIC・非常用復水器やPCCS・受動的(静的)格納容器冷却システム、PFを後付けすると確率論的安全評価(PSA)でリスクが相対的に十分の1になり、その分損害賠償保険の料率が十分の1になるとすれば、その設備の使用期間と保険料の低下額の積、総節減保険額がそれらの機器の設置費用よりも大きければ、これらを後付することが経営的経済的に合理的です。規制という権力、経済外強制によらずとも、保険のリスク・外部コストを内部コスト化する機能で経営的経済的に自ずと原発のリスクが相対的に低くなります。

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原発・核発電所の損害賠償の保険は、「原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)」と「原子力損害賠償補償契約に関する法律(補償契約法)」の2本の法律があります。東電核災害後に盗電、ぁぁ誤変換、東電救済のために原子力損害賠償支援機構が設立されています。

原賠法では、電力会社など原子力事業者が一般的なリスク、事故に備え民間の「日本原子力保険プール」と賠償措置額を保証する保険契約を結ぶことを定めています。賠償措置上限額は通常の商業規模の原発1基は現在1200億円(2014年4月末現在)です。その原発一基あたりの年間保険料は、2011年には平均約5700万円でした。(東京新聞が国への情報公開請求で調査、2012年7月4日記事)補償料率では1万分の4.75

補償契約法による原子力損害賠償補償契約は、異常に大きな天災地変や戦争などを対象に政府が引き受け賠償措置額は現在1200億円(2014年4月末現在)です。その原発一基あたりの年間保険料は、2011年には3600万円でした。2013年4月1日からそれを約7倍(現行の補償料率を「1万分の3」から「1万分の20」に改訂。対象は全国54か所中20か所のBWR)

つまり、原発一基あたりの賠償金の上限は1200億円で年間保険料は民間分が同じなら年間1~3億円程度。これでは、損害賠償保険の保険料が十分の1になるとしても、年間の低下額は9千万~2億7千万円。これでは・・・

賠償金の上限は1200億円で低すぎると思いますので、これを約42倍の10兆円にする。民間の料率も約7倍に上げて1万分の30で、年間300億円。政府分は1万分の20で年間200億円。通常の商業規模の原発1基で年間約500億円。この額なら危険性が低下する、原発の確率論的安全評価(PSA)が相対的に小さくなり、その分保険料額が低下する仕組みを入れれば、経営的経済的に自ずと原発のリスクが相対的に低くなる投資が行われます。原賠法の目的の一つ「原子力事業の健全な発達に資すること」を果たせます。リスクをより小さくしていく「健全な発達」に資することができます。

通常の商業規模の原発1基での保険料年間約500億円を発電量でわって電気料金にいれると、1kw時.あたり10~20円になると試算されています。関西電力によれば「天然ガスを使った火力発電は10.7円程度、石炭を使った火力発電は9.5円程度」ですから、保険料は火力の発電単価と同じか、むしろ高くなる。原子力のリスクをより小さくしていく「健全な発達」に資する保険料額では、原子力事業の拡大=「発達」はできない。

つまり、原子力事業の拡大に資する保険料額では、原発のリスクが相対的に低くなる投資が経営的経済的に自ずと行われる事はないのです。その投資は、経済外強制、権力による規制で行われるようにしなけれならない。

「原子力事業の健全な発達」には、原発は元来危険という意識をもって規制する権力が不可欠なのです。原発・核発電所の危険性、安全性を検討する際に工学的な視点は不可欠ですが、同様に規制する側を観ることも不可欠です。



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