日本の原発は、預金者の利子を掠め取って建設される。米国議会予算局CBOレポート [電気料金制度・稼働率]
原発の発電原価、米国議会予算局CBOの2008年レポートの評価と日本の同種の評価では、結果が全く違います。
CBOの2008年評価では、政府補助なし・炭素税なしの場合は、在来型の火力発電が最安値になります。これを100とすると、原子力発電コストは130です。日本では逆です。3.11東電核災害前の評価では原子力発電が安くなってます。賠償費用や使用済み核燃料の処理などバックエンド費用を算入しても、原子力発電が火力発電より安くなっています。東電核災害後の論議では原子力発電は火力発電とほぼ同じです。米CBOの2008年評価のように30%高いという評価結果にはなっていません。
2004平成16年1月の経産省のコスト等検討小委員会ではkWh当り、原子力5.3円、石炭火力5.7円、LNG火力6.2円。と、原子力の発電単価が最も安くなっています。
https://www.env.go.jp/council/06earth/y0613-07/mat03_2.pdf
2011平成23年12月の内閣府のコスト等検証委員会ではkWh当り、原子力8.2円、石炭火力9.5円(うちCO₂対策費が約2.5円)、LNG火力10.2円(うちCO₂対策費が約1.1円)。
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/npu/policy09/pdf/20111221/hokoku.pdf
「米国議会予算局レポートによる原子力発電の経済性評価」という論考を日本エネルギー経済研究所が2008年7月に発表しています。その論考では、「3.日本での試算例との比較」でこの違いを追及しています。
http://eneken.ieej.or.jp/data/pdf/1714.pdf
(日本エネルギー経済研究所は、昭和41年(1966)設立された各種エネルギーに関する政策・需給・経済動向などを研究する一般財団法人で元経済産業省資源エネルギー庁所管。経済産業省の委託など国や独立行政法人からの事業収入を得ているそうです。このCBOの2008年レポートは5月公表ですから、ごく短時間に仕上げた気合を入れるべき話題だったのでしょう。)
理由は設定金利・・米国 14~8%、日本 3%
それによれば、「日米の原子力発電コストの差異に最も大きな影響を与えているのは利率の設定である。」
原子力発電では建設費比率が高い。その建設費は借入(負債)や投資(株式)で調達します。その時、利率、何%で借りる、投資家は何%の利回りかを検討します。米国の「CBOでは投資家の期待収益率を株式について14%、負債について8%と見込んでいる。」CBOレポートの米国の原発の建設コストは、kw.当り26万円ですから年間に3.64~2.08万円の配当・利息の支払いです。
これを日本の経産省のコスト等検討小委員会の3%に変えて、研究所がCBO式で計算し直しています。配当・利息の支払いは3%の0.78万円に減ります。「発電コストは原子力で3.5円/kWh、石炭火力では3.6円/kWh」「かつ原子力が石炭火力を下回る結果」となっています。米国には、3%で貸し出す銀行や投資家はいないのです。
日本の原発の建設コストkw.当り27.9万円ですから、米国の107%倍です。図5から米国のCBO流の評価なら原子力で8.3円/kWh位です。2004平成16年1月の経産省のコスト等検討小委員会の評価の石炭火力5.7円、LNG火力6.2円と較べると、原子力の発電単価が2004年時点で既に最も高くなっています。
「日米の原子力発電コストの差異に最も大きな影響を与えているのは利率の設定である。」
日本エネルギー経済研究所の分析の結論は次のようなものです。
今回の評価結果分析や日米比較の含んでいる意味は「民間事業者が経営戦略の中で原子力発電・・といった初期投資の高い電源に投資する意思決定を下すためには、炭素に価格を付けて(炭素税で)低炭素電源としてのメリットを明確にするか、あるいは大量の資金を低リスクで調達できる事業環境を確保するか、さもなくばその他何らかの形での政策的支援が必須である」
米国議会予算局「CBOレポートではC02排出課税やエネルギー政策法による支援の少なくとも片方かあることが、従来型のガス火力・石炭火力発電に対して原子力発電がコスト優位性を有するための必要条件であると結論づけている。」
日本ではC02排出課税やエネルギー政策法による支援の双方が無いにも関わらず「日本のほうが米国よりも相対的に原子力発電のコスト優位性が高いのは、日本の場合、比較的低利率で借入が可能であり、かつ資本市場からの調達の比率が低い所以である」
「日本の電気事業者の資金調達源はほとんどが銀行借入金、それも政策投資銀行等利率の低いものが多い」。
また米国の州政府レベルの原発建設の経済的誘因として、一つは電気料金が規制されていて「事業者は消費者に価格転嫁できる余地があるため、初期投資が大きい原子力のような大規模電源が有利である。」南東部の州、一つは「事業者が営業運転開始前にも資金回収可能な」州を挙げています。
日本は地域独占ですから、消費者への転嫁は思いのままです。総括原価方式では、(a)建設中の未稼働資産(建設仮勘定)として建設中の原発,(b)繰延資産に核燃料を入れていますから営業運転開始前の投資回収が行われています。
40年間貸付の貸出金利として3%の意味
今、日銀や政府は景気回復には2%位のインフレ目標、物価上昇率(インフレ率)が必要だとして金融政策を行っています。2%位の物価上昇率(インフレ率)がないと経済がうまく回らないのです。ですから、銀行の預金の利率が2%位ないと、1年後に預金は実質的に目減りします。物価上昇率(インフレ率)が2%なら、今日の10万円は1年後に10万2千円にならないと使いでが同じになりません。1年後に10万3千円なら約千円分実質的に増えて、実質金利は約1%です。10万50円なら約2千円実質的に減っています。実質金利はマイナス2%です。
銀行は、私たちから預金という形で借り集めたお金を、銀行の経費や儲けを積み上げた利率で電力会社などに貸し出します。その貸出利率は物価上昇率(インフレ率)、実質金利と銀行の経費や儲けを積み上げた利率となります。2%位のインフレの時に、3%の貸出金利では、銀行の経費や儲けは確保できるでしょうが、実質金利はマイナスだと思います。
従って日本は、借りたから事業者から取り立てて預金者に渡すべき利息を、取り立てないで事業者の懐に残すという経済社会的歪み、弱者へのしわ寄せを行って、原発建設に必要な「大量の資金を低リスクで調達できる事業環境」を電気事業者に与え、原発の発電原価を低く火力発電以下か並みにして電気事業者を原発建設に導く政策が行われていた、いることを意味します。
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