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CO₂対策は原発推進のため、2008年アメリカ議会予算局レポート [地球温暖化]

 GO2images.jpgアメリカ議会予算局(CBO, Congressional Budget Office)は、2008年に「発電市場における原子力の位置づけ(Nuclear Power’s Role in Generating Electricity)」で、原子力発電原価の試算を行っている。45ドル/CO₂・トンの炭素税が課税される場合には、CO₂排出量の多い火力発電のコストと原子力発電のコストがほぼ等しくなり、45ドル以上なら原子力発電のコストが最も小さくなり、米連邦政府による財政支援がない、なくなる場合でも電気事業者は原子力発電を建設することになるという結果を示しています。

2005年にブッシュ(子)大統領はエネルギー政策法に署名しました。この政策法は、原子力が米国のエネルギーの重要なオプションであり続けるよう、現在の原子力発電所への支援と、新原子力発電所の建設に必要な様々な誘因incentiveイエンセンティヴを定めています。これで原子力ルネサンスの動きが生じたとされています。

 その誘因イエンセンティヴは、原子炉の事故時に公衆のため即時の無過失保険準備金のための枠組みのプライス―アンダーソン法の延長、新原子力発電所に対する建設費用の80%までの貸付・債務保証、新発電所のための発電税控除などです。
 新発電所のための発電税控除は、新原子力発電所の運転初期の8年間、容量6,000MWまで1kWh当り1.8セントの発電税控除を提供するもので、これで発電原価は15%減少します。しかし総額に限度があります。8年後には発電原価が15%上がることになります。それで、アメリカ議会予算局は様々なincentiveイエンセンティヴの影響を評価しました。その評価では、燃料価格はその当時の見込み、天然ガスは6.26ドル、石炭は1.74ドル、核燃料は0.75ドル(取引単位当たり、百万Btu)です。

米国議会予算局レポートによる原子力発電の経済性評価a2.jpg


イエンセンティヴなし・炭素税なしの場合・・在来型の火力発電が最安値なのでこれが建設される
新設の従来型の石炭火力・ガス火力のコストはほぼ同じです。これを100とすると、原子力発電コストは130です。二酸化炭素CO2対策で排出量の90%を回収・貯蔵するCCSをする革新型火力は150です。その原因は建設費です。原子力発電は、CCSなし石炭火力の157%倍、CCSなしガス火力の347%倍で、CCSありガス火力の169%倍です。CCSあり石炭火力の95%倍で、かろうじて原子力発電の建設費が安くなります。ただ、原子力発電設はベントフィルターといった様々な安全措置・規制が追加されると建設コストが上がります。それで、5%ほどの優位はあまり意味がないとみられました。

 イエンセンティヴ≒政府補助金で原子力発電の発電原価は下がり、従来型の石炭火力・ガス火力のコストはほぼ同じになると評価されました。

米国議会予算局レポートによる原子力発電の経済性評価d-001a.jpg それは、新発電所のための発電税控除がきれる8年後には発電原価が15%上がり、従来型の石炭火力・ガス火力より高くなるということです。原子力発電は建設費用が高く、その回収に長時間かかりますから、これは不利です。それで、火力発電で排出される二酸化炭素CO2に課税して、火力発電の発電コスト・原価を押し上げて原価差をなくす策の効果が調べられました。

 その評価では、排出CO2の1トン当りに18ドル以上の炭素税をかけるとCO2を90%回収のCCSのない石炭火力の原価が押し上げられれて原子力発電より高くなる。45ドルでCCSのないガス発電の原価が原子力発電と並ぶというものでした。炭素税は火力発電だけでなくガソリンなどにも平等に課税するものですから、政治的には直ぐには実現はできないですが、方向はこれで見えてきます。

このレポートが出た2008年の翌年、2009年のコペンハーゲンで開かれた温暖化対策国際会議COP(コップ)15で米国は初めて国際合意に参加しました。そのコペンハーゲン合意は「気温上昇を2度以内に抑える」という長期的な目標を掲げる。ただし、CO2排出の削減目標は義務づけないという合意です。米国は、政策・政治的に手を縛られることなく、炭素税を導入する雰囲気、環境整備に成功しました。このように、CO2削減・温暖化対策は、原子力発電の維持・推進の手段という側面があります。 米議会予算局CBOレポートは「カリフォルニア州などいくつかの州は、CO₂排出規制を法制化しようとしており、このような取り組みも原子力への追い風になる。」と指摘しています。

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誤算・・シェール革命、火力の発電効率の劇的向上 

この評価では、燃料価格の高騰、下落の影響も評価しています。天然ガスの価格は、シェールガスの採掘、シェール革命で半値の3ドル程度に下がりました。この米議会予算局CBOの2008年レポートで、半値になると二酸化炭素CO2対策で排出量の90%を回収・貯蔵するCCSをするガス火力でさえ原子力発電の約10%安い発電原価になり、CCSなしの在来型では50%安くなります。1kWh当り1.8セントの発電税控除で原発の発電原価は、CCSありガス火力と同程度にはなりますが、在来型ガス火力にはかないません。この価格差を炭素税で無くすには100ドル以上の課税となります。

 この半値のガス価格は、シェールガスの生産費・4-6ドルを割り込んでいるので長続きしない一時的と言われていますが、シェールオイルに随伴して採掘されるガスがあるので、供給量は増えますからガス価格の上昇、頭を抑えられます。

 また、米国のガス火力発電の発電効率・熱効率は、43.2%(2012年1-9月平均)と低いのですが、新たなガス発電プラントは約61%あります。これは、発電原価にはガス価格が約30%安くなるのと同じ効果ですし、発電量当たりの二酸化炭素CO2を約30%低くします。CO2を回収・貯蔵するCCSの装置、設備を付けなくても同じ効果が得られます。

 この発電効率・熱効率の上昇効果は、石炭火力発電ではより顕著です。米国の石炭火力は32.5%(2012年1-9月平均)ですが、新プラントは約50%です。価格下げ、CO2削減効果は約35%です。

 また、CO₂を排出しない発電、再生可能エネルギーの太陽光発電や風力発電も、米国では設備費が大幅に下img_0317a0f1d233cc2e8af69f836ac948b1116075.jpg落、太陽光パネルは75%以上ダウン、しています。再生可能エネルギーの燃料費は、太陽光や風の価格はゼロ、発電原価は設備費、建設コストが決めます。それが大幅下落。「革命は、今ここに Revolution Now」が米国エネルギー省の2013年グリーンエネルギー報告書の題です。

 原子力発電は、3.11東電核災害後の安全規制の見直し、強化で設備費、建設コストは上がることはあっても下がることはありません。また、発電効率も核燃料を包むジルコニウムの性質から、約35%が上限ですから、ガス発電、石炭火力のような劇的な向上はありません。

 2008年の米議会予算局CBO評価では、発電原価は、原子力発電を100とすると火力は77でした。今や、その差は拡がる一方です。最新技術では約50です。もともと、1953年に米原子力委員会AECが「アトムズ・フォ・ピース」で原発推進政策を出した時も、連邦政府の補助金を出すことになっていました。「アトムズ・フォ・ピース」は冷戦での軍事・国家安全保障戦略ですから、その補助金は国家安全保障の経費として是認されました。今も、冷戦の時代でしょうか。

b_b02.jpg 二酸化炭素CO₂は図のように悪者扱いされてます。しかし、植物には必要不可欠な栄養素です。太陽光のエネルギーを光合成で取り込んで、糖分・デンプンで蓄えるのに不可欠な栄養成分です。我々動物は、植物が光合成で捕らえ二酸化炭素を使って蓄えた太陽の核融合エネルギーに依存して生きています。つまり、人間にも間接的に不可欠です。

 植物にとって現在の大気中の濃度は、少ないのです。施設園芸農業では、作物の周辺だけ二酸化炭素を施肥することが有効なのです。石炭や天然ガスでの火力発電で生じる高濃度の二酸化炭素は、その有効利用を考える方がよいのではないでしょうか。

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StepFep

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