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医療被曝を減らせば、東電・福島原発から放射能汚染の被害を減せる? [被曝影響、がん]

私たちは、宇宙からの放射線やそれで生成する放射性物質、地球誕生時からある放射性物質による放射線を浴びています。我々の体、地球を作る元素は、太陽など恒星の核融合で作られ、超新星爆発で放出されたものです。それが集まって約45億年前に地球ができました。

 様々な放射性物質があったのですが、生命が生まれる約40億年前の間の約5億年間で半減期が長くないものは、事実上天然には存在しなくなりました。半減期の10倍で約千分の一、20倍で約1048万分の一になります。プルトニウム239は半減期2万4千年ですから、100万年たてば約2200億分の1しか残りません。これらが放射線を出し壊変(崩壊)する際の崩壊熱が太古の地球の火山活動をうみました。このような太古には存在していたが半減期が十分に長くないため現在では事実上天然には存在しないものを死滅放射性核種といいます。

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それでカリウム40、ルビジウム87、ウラン系列核種、及びトリウム系列核種、原始放射性核種とか大地放射性核種と呼れるものが今も放射線を出し被曝させてます。これらの崩壊熱が、地熱の45から85%を供給しています。

ルビジウム87は半減期475億年ほとんど減っていません。β(ベータ)線をだして、安定したストロンチウム87に壊変します。

トリウム系列核種はトリウム232から鉛208までα(アルファ)線やβ(ベータ)線をだして崩壊します。その途中のラドン220(トロン)は重要なα線の吸入被ばく源です。トリウム232は半減期140億年ですから、これもほとんど減っていない。

ウラン系列核種はウラン238から8回のα壊変と、6回のβ壊変を経て安定した鉛206に変わります。途中のラジウム226、ラドン226は重要な被曝源です。ラドン226は吸入によるα線被曝です。ウラン238は半減期45億年ですから、地球誕生時から約半分に減った。

カリウム40は、約1割がγ線をだして安定なアルゴン40Arに約9割がβ線をだして安定なカルシウム40に壊変します。半減期12.7億年です。地球が生まれた頃には現在の約12倍、生命が生まれた頃40億年位前には8倍あることになります。

人工的な被曝

この自然被曝だけところに19世紀末に人工的な被曝が加わります。私は2段階あるとおもいます。最初は、1895年にX線が発見されレントゲン写真が医療などに、ラジウムが精製され研究・利用される段階です。放射性物質は、天然のものを生成したもの。社会的には、日常的な被曝によって害を受けるのは、研究者や医者、少数の労働者です。
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次が第二次大戦以降の原子力爆弾や原爆の原料のプルトニウムを製造するために作られた原子炉を発電用蒸気発生に転用した原子力発電が広く用いられるようになった段階です。

人工の放射性物質が大量にできてきます。我々の体、地球を作る元素は、恒星の核融合で作られ、超新星爆発で放出されたものです。東電・福島第一原発から毎日でているヨウ素131は半減期8日ですから、核融合で恒星内でできたそばから放射線を出して壊変して、なくなってしまいます。セシウム137は半減期30年ですから、仮に恒星爆発から宇宙を漂っている間になくなってしまいます。原始地球には無かった放射性物質です。

テクネチウムという元素は、放射性でガンの検診などに使われます。テクネチウム98が最も半減期が長く420万年ですから、死滅放射性核種です。
しかしテクネチウム99が原子炉でのウランの核分裂生成物の6%です。医療検査用のものは、専用の原子炉で作られています。

人工的な放射性物質は強力

このように放射線を出す力が非常に強い、半減期がカリウム40など原始放射性核種よりも短いので放射能が強い放射性物質が人工的に原子炉で作られます。

例えば、カリウム40に比べ化学的性質や体内での挙動が似ているセシウム137は、重さ当たり100万倍も多くの放射線を出します。これまでに福島県で見つかったセシウム137の最高汚染地は1m四方に1470万ベクレル(1年間に約30mSvの被曝)、これのセシウム137は4.7μg(百万分の一g)でしかありません。

漏れ出たら、放射性物質という点では太陽内部の環境、地球が誕生した頃の環境、生命がいない環境を地上に再現するになります。

また、被爆者の数がべらぼうに多くなります。核兵器や原発の労働者、技術者だけでなく、不特定多数の一般人が被曝します。
社会的に見れば人工放射性物質で被曝をもたらす原因者は、核兵器なら国、原発なら電力会社です。原発の労働者、技術者は、X線を扱う医者や技術者と同様にして、被曝量を管理できます。
環境中にでた人工放射性物質で被曝する多数の一般人の被曝を減らすには、除染や立ち退きです。ネバダ核実験場の除染レベルとコスト(1995年の価値)は、1mSv/年で除染すると3500万ドル、0.5mSv/年で10億ドルだそうです。
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ですから、被曝は極微量でも危険、少なくとも浴びた線量に比例して危険度が高まるというより、5mSv未満なら安全、10 mSv未満でも安全妥当、いや100mSvが境目(しきい値)と言う研究者、学者、言論人が、研究費や地位、マスコミでの露出などに国や電力会社から、直接・間接に支援を得やすいというバイアスがあります。そうした意見が有力になれば除染(立ち退き)レベルを高くでき、彼らは除染費用を削減できます。

ICRP・国際放射線防護委員会は、1999年に「多くの国で土地の放射能汚染がかなり問題になっている。チェルノブイリのように 事故放出によるものもあれば、・・現在とくに問題なのは原子力施設(古い原子炉や兵器製造工場)の廃止措置である。それには費用がかさむ。そして残留汚染を低レベルに抑えるのにあまりにも金をかけ過ぎると考える人たちがいる。・・
このような問題があるので、出費を減らすために、線量-反応関係にしきい値がある(例えば、100ミリSv未満の被曝は無害)と主張する人たちからの圧力が増しつつある」と委員長名の論文で表明しています。
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医療被曝の削減

さて、日本人の被ばく線量の図を見ると、1992年には1%にもならなかった「その他(核実験、原子力)」の被曝量が、今回の東電・福島原発事故で、急増したのです。図の左側の宇宙線からラドンの項目は、冒頭の自然な避けられない被爆ですので減らせません。右側の医療被曝は減らせないでしょうか。医療機関の対応、CT以外の検査法の開発や実施などと患者側の選択で削減できるでしょうか?そこが減れせれば被曝量をプラス・マイナス・ゼロできます。

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2.25ミリSv(国連科学委員会・1992年報告)で、世界平均の3.7倍です。この92年段階の2.25mSvの医療被曝で発ガンが3.2%、7587人増えている、CT検査での増加で2004年ごろは4.4%、9904人と指摘されました。それへの対応は、どうだったでしょうか? 医療関係者は、削減しようと動いたでしょうか?   

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つづく


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100mSv未満なら安全?、100mSv位なら被曝した方が体に良い? [被曝影響、がん]

私たちが一般公衆が受ける低いレベルの放射線被曝での晩発性の害・発ガンのリスクについては、概ね3つの考えがあります。

γ線、β線被曝でその影響を調べるためには統計学的に次の人数の調査が必要とそれています。100mSv(ミリシーベルト)で約6400人、10 mSvで約62万人、1 mSvで約6180万人です。(ICRPのPublication 99)
 大規模な被曝の疫学調査は、広島、長崎の被爆者を対象にしたものです。1950年に被爆者の実態を把握する調査が行われ、その中の28万4千人の被爆者が対象です。人数から、100mSv以下の低いレベルの放射線被曝は、実例に基づいた疫学的に科学的に確たることが言えない領域です。

その疫学調査からは「白血病を除く、がんの死亡率と被曝(ばく)線量が比例していると統計的に確認できた最低線量は50 mSv(ミリシーベルト)。それ以下ではまだ確認できていない。」(広島市の放射線影響研究所・清水由紀子疫学部副部長)という方もいれば、100mSv以下は一切不明と言う方もいます。

それで、100mSv以上の被曝領域での知見、研究結果を延長、外挿する、そして様々な調査などでチェックし矛盾や不合理な点をただして得られた仮説、100ミリSv未満の被曝でも被ばく線量に比例して直線的に晩発性の障害・ガンが生じるという学説、LNT・しきい値なし直線仮説が被曝防護では用いられています。
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ICRP・国際放射線防護委員会は、この学説と広島、長崎の調査結果から、1958年に初めて公衆の被ばく線量規制量を定めました。5mSv/年です。その後、原爆被爆者の被曝線量が見直され、被曝の発ガンリスクが約2倍となり、1985年に現在の1mSv/年になっています。
このLNT・しきい値なし直線仮説は、ICRP・国際放射線防護委員会だけでなく、UNSCEAR・国連科学委員会、米国科学アカデミーの見解(BEIR- Ⅶ)、ECRR(欧州放射線リスク委員会)などが採っています。
ICRPなどは、100mSvの被曝をした1000人中10人が新たに発癌し半数の5.5人がガン死する、ECRRは内部被曝を重視しその倍というリスクの大きさの違いがあります。

これを批判する説には、「これだけなら安全とする線量(しきい値)があって、そこから先は直線で結ぶ」という、しきい値あり直線仮説があります。フランス科学アカデミーらが2005年に発表した説などが代表です。さらに、「多少被爆したほうが体に良いのだ」と低線量被曝を奨励する「放射線ホルミシス」があります。
この3者は共に、先ほどの調査人数の問題から疫学的実証的に確固たる裏付けはありません。原発労働者15カ国、40万人での調査では50mSv以下で発ガン率の上昇が見られていますが、誰もが認めるほど確固たる根拠ではありません。

社会的には、大きく違います。
2004年に英国の高名な疫学研究者のA・ベリングトンらが、国連科学委員会の1992年の報告をもとに世界15カ国の診察用エックス線によるがんリスクを調べた研究を発表しました。日本は世界平均の3.7倍の2.25mSv被曝で発ガンが3.2%、7587人、その後のCT検査での増加を考慮すると4.4%、9904人だと指摘しました。
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米国は日本の約1/4の線量でしかありませんでしたが、米国の科学アカデミーはLNT・しきい値なし直線仮説を認めていますから、指摘を素直に受け入れました。早速に医療界や規制当局は増加削減にとりかかります。

日本でも米国でも業務に際して被曝する医療従事者や原発などの労働者は、被曝線量をモニターされています。そして、LNT・しきい値なし直線仮説に基づくICRPの勧告に準拠して5年間で100mSv(ミリシーベルト)を超えず、1年で50mSvを超えないよう規制・保護されています。
一方、市民・患者の放射線被曝は、モニターも規制もされていないし、検査による被曝が患者のがんリスクを上昇させることを意識しているのは、放射線科医の50%未満、救急医の9%に留まるという研究があるように意識改革や制度整備で野放図な増加を止める事が必要なのです。

ところが、日本ではどのように被ばくを減らすかという議論には向かいませんでした。低線量被曝したほうが体に良い「放射線ホルミシス」説や「10mSv以下の線量ではほとんど有害な影響はない」(放射線医学総合研究所、飯沼武)として医療での被曝線量はその10mSvより下といって、「害がない、安心です」と市民を説得する努力に向けられました。

2008年に1年間にのべ約3000万人がCT検査をうけ、約6000人がこの放射線被曝によるガン死を生じていると群馬大学の遠藤啓吾教授らは推計しています。「日本のがんの発生原因の3%以上は医療被曝が原因です。・・体に広く放射線を当てる診断用の検査をやり過ぎる面があります。例えば頭痛があるだけで頭のCTを日本人は本当にやるんですけれども、あれは考えたほうがいいという気がします。」(東京大学放射線科の中川恵一准教授、2010年10月の講演)といった声はいかされませんでした。

市民・患者に「放射線ホルミシス」「しきい値」を説く医療関係者は、LNT・しきい値なし直線仮説に基づくICRPの勧告に準拠した被曝規制で守られています。この規制は誤った仮説に基づいているのですから、その撤廃や変更を求めるのが、筋でしょうが、彼らはそうしません。自分の身はLNT仮説で守り、患者・市民は被曝を勧め、CT検査費を得ようとする醜悪な姿が見えます。

そして今度の東電福島原発事故で、昨年10月にはLNT仮説に拠りCT検査の削減を訴えていた中川准教授は、「100mSv以上でなければ発がんのリスクも上がりません。」「100mSv未満ならば胎児には影響がでない」と言い出しました。

山下俊一長崎大教授は、事故当初には「10mSv以上を浴びないと、人体に影響はほとんど出ない」(3/13読売新聞)。その後、放射能汚染が深刻化すると、福島県の放射線健康リスク管理アドバイザーに19日に就任した以降は「100mSvで、リスクがあるとは思っていません。」「100mSv以下では発ガンリスクは証明できないのだから、不安を持って将来を悲観するよりも、今、安心して、安全だと思って活動しなさい」「国民の一人として国の指針に従う義務があります。」と福島県民にアドバイスしています。多くの福島県民が、このアドバイスを受けて、避難先から戻ってきています。除染をやろうとしていません。

山下教授の過去の発言 放射線の光と影:世界保健機関の戦略
日本臨床内科医学会会誌 23巻5号(2009年3月)


ICRPのLNT仮説に拠れば、100mSv/年に生まれ40年暮らすと、3人に2人弱は発癌し一人弱はガン死。汚染が深刻化し、それに近づいてることを直視したくなくて、改宗したのでしょうか?また、「安全なんだ」と思いたい人々には、心地よいしらべです。福島の人々を今ひと時でも安心させ、騒がせたく無い人々には、宣伝したい広めたい意見です。

このような動きは東電による放射能汚染を隠すだけではありません。世界では、国連科学委員会の報告をもとに放射線感受性が高い小児でCT 検査が急増している、それでの発ガンが懸念されています。しかし、100mSv以下安全なら、そのような懸念はナンセンス。世界中で子供のCT検査を減らそうとしてる中、日本では頭痛といってはCT検査を子供にしている事になります。



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20mSv/年の低線量被曝の危険性(2) [被曝影響、がん]

現在、マスコミ報道に見られる「放射線量、年間100mSv以下なら安全」「500~1000mSvでも恐らく大丈夫」という中村仁信氏(日本放射線学界理事)や、「1日当たり線量1~100mSVの領域は,がんリスクがゼロである可能性が高い」という金子正人 氏(放射線影響協会/日本保健物理学会会長)、「1時間当たり100マイクロSv(年間 875ミリSv)は安全」という福島県放射線健康リスク管理アドバイザーを務める山下俊一、高村昇、長崎大教授やなど見解は、国際的には、かなり少数派の過激な閾値あり線形仮説です。

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参照 福島県放射線健康リスクアドバイザーによる講演会 http://wwwcms.pref.fukushima.jp/pcp_portal/contents;jsessionid=76482E5235737A8103732D1F74B01321?CONTENTS_ID=23695


 子供らに20ミリSvの基準は、国際的には「しきい値無し直線・LNT」仮説の論者からも閾値あり線形仮説の論者からも、とんでもない基準です。 

 3月16日に内閣官房参与に任命された小佐古敏荘(こさこ・としそう)・東京大教授が、子供らの被曝を年間20ミリシーベルトを基準に決めたことに「容認すれば私の学者生命は終わり。」「年間20ミリシーベルト近い被ばくをする人は原子力発電所の放射線業務従事者でも極めて少ない。この数値を乳児、幼児、小学生に求めることは学問上の見地からのみならず、私のヒューマニズムからしても受け入れがたい」と4月30日付けで辞任しました。

小佐古氏は、国際放射線防護委員会(ICRP)の専門委員を長年勤めています。ICRPでは勧告の内容を現場への具体的な適用例を考え項目ごとにさらに深め、各国への導入を推進する役。その学者世界では、「これらの学校では、通常の授業を行おうとしているわけで、その状態は、通常の放射線防護基準に近いもの(年間1mSv,特殊な例でも年間5mSv)で運用すべき」となる。だから20mSvを容認すれば私の学者生命は終わり。

 また小佐古氏は、近畿原爆症訴訟集団認定訴訟で国側の証人に立ち、被爆者からは御用学者と言われる人物。今年の1月に、放射線業務従事者の緊急時被ばくの「限度」を500mSvあるいは1000mSvを「超えてはならない限度の位置付けであるべきではなく、低減すべき努力目標値」と事実上被曝量を青天井とする勧告を放射線審議会から国に出しています。

参照 国際放射線防護委員会(ICRP)2007 年勧告(Pub.103)の国内制度等への取入れについて

また「緊急作業で受けた被ばく線量との関係により当該作業者の将来の放射線取扱業務に大きな影響を与えないような措置」と柏崎・刈羽原発の下請け労働者を福島で被曝量を青天井で収束作業にあたらせ、その被爆線量を別枠扱いにして、再び柏崎・刈羽原発で就労できるようにすることを勧告しています。この決定を無視されたので怒っている。

 この500mSvあるいは1000mSvの努力目標線量では、白血球の減少や白血病などの急性障害がおこります。この対策に造血細胞の冷凍保存などが提案されていますが、東電は検討していないし、この小佐古氏も無視している、触れていない。 ヒューマニズムという点では、かなりの隔たりを感じますが、そういった方でも「受け入れがたい」恐ろしいのが子供らの年間20ミリシーベルトという被曝量です。


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また相馬市が学校のグランドの表土を削り取って除染しています。LNT「閾値なし直線」仮説の方からは可能な限り低くすべきですから、客観的な安全のため大人でも、子供でも有効なものです。フランス科学アカデミーなど閾値あり線形仮説の多数の方からも、基準値が彼らの考える閾値をこえていますから、同様です。精神衛生の心理的な安心ではなく客観的な安全のためのものです。

細野豪志首相補佐官・事故対策統合本部事務局長は、「相馬市が学校のグランドの表土を削り取って除染しているのは、(精神衛生の)安心のためには良いこと」といっています。安心というのは、福島県放射線健康リスク管理アドバイザーを務める山下俊一、高村昇、長崎大教授らの見解を日本政府が採っていることを意味しています。

日本政府は、斑目安全委員会会長らの助言に従って、福島第一原発一号機の水素爆発を招きました。山下俊一、高村昇、長崎大教授らの見解にしたがって、日本政府はどんな自体を引き寄せいようとしているのでしょうか。

「年間20ミリシーベルトは、子供の発がんリスクを200人に1人増加させ、このレベルでの被ばくが2年間続く場合、子供へのリスクは100人に1人となる」(社会的責任のための医師の会PSR、本部米国ワシントン)


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20mSv/年の低線量被曝の危険性(1) [被曝影響、がん]

「しきい値無し直線・LNT」仮説の妥当性

100ミリSv(シーベルト)未満の被曝、特に20ミリSv以下の被曝に関して、その危険性や安全性はどのような議論がされているでしょうか。
ある被曝線量で、危険性の有無がわかれる「しきい値・閾値」がない、極少量の被曝でも危険性が、被ばく線量に比例してあるとする「しきい値無し直線・LNT」仮説と、閾値あり線形仮説の対立、論争が行われています。

 気をつけなければならないことは、閾値あり線形仮説論者は、様々な支援が得やすいことです。LNT理論では、ゼロを起点に社会的に許容しうるリスクにみあう線量が放射線防護基準になります。閾値あり線形仮説では、その閾値を起点にリスクに見合う線量が基準になります。つまり底上げ、下駄を履いた値が基準値になります。

たとえば、ネバダ核実験場の除染レベルとコスト(1995年の価値)の関係は、1mSv/年で除染すると3500万ドル、0.5mSv/年で10億ドルだそうです。(出典)ですから、汚染費用を負担する政府や原発事業者などから、閾値あり線形仮説論者は研究資金や発表機会、研究職の地位獲得などで直接、間接に支援が得やすいのです。この論争には、そうしたバイアス・偏りがかかっていることを頭においてみなければなりません。


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さて、代表的な閾値あり線形仮説として、フランス医学アカデミーとフランス科学アカデミーは共同で2005年に発表したものをみてみます。フランスは、総電力の約80%が原発で、福島第一でも超高濃度汚染水の除染処理にフランスの会社の技術を使います。


☆LNT(しきい値無し直線)仮説は、現在の生物学的概念知識に立脚しているとは言えない。リスクの過大評価になり、放射線防護に関して、誤った結論に導く可能性もある。

☆LNT仮説を、100mSv以下の低線量域でのリスク評価に用いること、数十mSvより低い線量の範囲でLNT仮説を適用することの妥当性には疑問がある。

☆約10mSvを超える線量の放射線防護規則を定めるためには、LNT仮説は実用的で便利なツールになりうる。
出典

これを纏めたフランス科学アカデミーのM. Tubianaは、「おそらく極小線量(10mSv未満)は無害もしくは恩恵さえ期待できると言えよう。」としています。


このフランスの見解から、約10mSvを超える線量、日本政府が退避基準、子供の学校や幼稚園で強制しようとしている20ミリSvでは、LNT仮説が放射線防護するための規制を定めるためには実用的で便利な仮説です。つまり20から15、10に減らせば、危険性が減る、四分の3、半分に減ると考えて行動することが妥当です。


今度は、代表的な「しきい値無し直線・LNT」仮説に、米国科学アカデミーが、2005年に発表した「電離放射線の生物学的影響に関する第7報告・BEIR-VII」でみてみます。米国科学アカデミーの検討委員会には、原子力推進派も含む幅広い立場の委員がいます。この第7報告は2001年に公表予定でしたが、4年遅れた、その間、激しい議論が交わされてまとめられたものです。


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エックス線やガンマ線、β線など低LET放射線(放射線の飛程に沿う電離密度の小さい放射線)による低線量被曝でもしきい値のなしの直線型でがんのリスクが生じ、極小線量が人体に対するリスクを多少なりとも増加させるポテンシャルがあるという「しきい値なし直線仮説」(LNT)リスクモデルを支持している。委員会は、それ以下では発がんリスクをゼロにするしきい値を示す証拠はないと結論しています。


低LET放射線は、線量計などで測られる、政府などの線量モニターでこの地点の線量として発表する放射線です。放射性物質が体外にある外部被曝で被曝する線量です。


生涯リスクモデルでは0.1Svの線量により100人中約1人にがん(固形がんか白血病)が発生すると予想でき、一方、他の原因では100人中約42人に固形がんや白血病が発生すると予想される。線量が低ければそれに比例してリスクは低くなる。例えば、0.01 Svの被曝では1000人に約1人ががんになると予想される。別の例示としては、低LETの自然「バックグラウンド」放射線(ラドン等の高LET放射線を除く)の生涯(70年)被曝で100人中約1人にがんが発生することになる。データが限られているので、リスク評価は不確定で2、3倍大きいか、2、3分の1小さい評価も排除できない。


小児がんの研究からは、胎児期や幼児期の被曝では低線量においても発がんがもたらされる可能性
10から20mSvの低線量被曝において「オックスフォード小児がん調査」からは「15歳までの子どもでは発がん率が40%増加する」ことが示されている。


この米国科学アカデミーの見解によれば、子供らに20ミリSv基準を適用とすると小児癌が激発すると見られます。大人なら20ミリSvでは、1000人に2人弱が新たに癌にかかると予想されます。

出典



以下引用
低LETによる低線量被曝の健康影響をどう理解するかについては難題をかかえてはいるものの、最近の研究のおかげで結論を述べても大丈夫な点も出てきた。BEIR Ⅶ委員会の結論は次のとおりである。電離放射線の被曝とそれによって誘発された人間の固形がんの発生の間には線形の線量-応答関係が成り立つ、という仮説は最近の研究が示す科学的証拠と矛盾しない。当委員会は、それ以下だとがんは誘発されないというしきい値が存在するとは考えないが、ただ、低線量域でのがんの誘発はあっても少ないだろうとみなしている。当委員会は、他の疾患(例えば心臓病や脳卒中等)は高レベルの被曝によって引き起こされるとみなしてはいるが、低線量被曝とがん以外の疾患の間にもしかして成り立っているかもしれない線量-応答を評価するにはもっと多くのデータが収集されねばならないと考えている。


LNTモデルは低線量放射線の健康影響を過大に考えているという見解も委員会は入手している。リスクはLNTから推計できるものより小さいか存在しないかであり、あるいはむしろ低線量被曝は人体によい影響をもたらすこともある、という考えである。我々はこうした仮説も受け入れることはできない。たとえ低線量であっても何らかのリスクがあるらしいことを示す情報の方が優勢なのである。この「要約」で行った単純なリスク計算で示したように、低線量のリスクは確かに小さい。そうは言うものの、我々の採用したがんのリスクの基本モデルでは、たとえ被曝線量が少なくても少ないなりに発がんはもたらされるのである。

結論を導くにあたってBEIR Ⅶ委員会は、低線量においてしきい値が存在することや人体影響が低減することを論じた論文をレビューした。そうした論文の結論は、非常に低い線量での被曝は無害であるかあるいは有益でさえもある、というものだった。これらの研究は、生態学的な研究(特定地域に着目した疫学的研究)であるか、人体の全体をそれで代表させることはできない部分について得られた発見を引用している研究であった。


生態学的研究は広範な地域特性の関連を調べるものであり、場合によっては、より精密な疫学研究が示す結果と比較するとがんの発症率がうんと大きくなったり小さくなったりすることがある。皆が合意できる見解は、研究の全体を見渡してみて初めて見出すことができる。そのようにして我々が得た見解は、電離放射線の健康リスクは、そのリスクは低線量では小さいわけだが、やはり被曝線量の関数になっている、ということである。

疫学研究でも実験研究でも、なんらかの相関が見出せる線量域なら線形モデルと矛盾するものは見出されていない。電離放射線の健康影響の主だった研究は1945年の広島・長崎の原爆被爆生存者を調べることで確立された。それらの生存者のうち65%が低線量被曝、すなわち、この報告書で定義した「100mSvに相当するかそれ以下」の低線量に相当する。放射線にしきい値があることや放射線の健康へのよい影響があることを支持する被爆者データはない。他の疫学研究も電離放射線の危険度は線量の関数であることを示している。さらに、小児がんの研究からは、胎児期や幼児期の被曝では低線量においても発がんがもたらされる可能性があることもわかっている。例えば、「オックスフォード小児がん調査」からは「15歳までの子どもでは発がん率が40%増加する」21ことが示されている。これがもたらされるのは、10から20mSvの低線量被曝においてである。

どのようにがんができるかについて線形性の見解を強く支持する根拠もある。放射線生物学の研究によれば、「可能な限り低い被曝でできる1本の放射線の飛跡は、標的となる細胞の核を通過して細胞のDNAを損傷する可能性が低くても一定程度はある」22。この損傷の一部には、DNAの短い部分に複数の損傷を起こす電離の「突出」があり、修復しにくく、まちがった修復が起こりやすい。委員会は、それ以下では発がんリスクをゼロにするしきい値を示す証拠はないと結論した。

引用 終わり


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20ミリSv基準、手術痕ネックレス [被曝影響、がん]

被曝の影響を小さく見せよう

放射線被曝の影響は、盛んに分裂している細胞が影響を受けやすい、高感受性です。これは年齢的には若年、幼若なものほど放射線感受性が高いという年齢差です。放射線のがん誘発効果に関しても、原則的に幼若なものほど感受性が高い。(がんの種類によっては原則から外れるものもあります。)この点に関しては、内部被曝も外部被曝も同じです。

ICRP・国際放射線防護委員会は、広島・長崎における疫学調査の結果から0-90歳、0-19歳、20-64歳の年齢群に分けた研究を基礎としているのだから、この結果を0-15歳の乳幼児(保育園・幼稚園)学童、生徒の影響がストレートに出ていません。それでも、致死がんの相対確率は年長者群(20-64歳)と若年者群(0-19歳)とで約3倍になっています。

 ですから、実効線量が大人と同じだとしても、影響も同じだとすることはできません。


 また白血病以外の全てのがんの相対リスクは被ばく時年齢が10歳以下の場合では、被爆者は、被曝していない対照者の2.32倍となっています。20mSv以下の福島県内外の子供らと比べて、将来発ガンする危険性が高くなるのは、自明です。なぜ福島の子供らが、同じ日本の子供なのに、このような負担を負わされるのか??

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被曝を合理的に実行可能な限り低く

法では、被曝限度は年間1ミリSv(時間当たりで0.11マイクロSv)。
我々は宇宙線やカリウム40などの天然にある放射性物質による内部被曝などで概ね2.4ミリSv被曝しています。レントゲンやCTなど被曝する人が直接利益をうる医療被曝を除いて、別枠にして、過去の核実験や原発、研究・教育、非破壊検査などからの廃棄物などの人工放射性物質(放射能)による被曝の法的上限が1ミリSv。仮にこの上限の1ミリSvを被曝した大人2万人、集団線量で2万人・ミリSvで新たな致死がんが一人です。

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 近年、この上限が低すぎるという意見が強くなってきていました。
ICRP・国際放射線防護委員会は、1999年に「多くの国で土地の放射能汚染がかなり問題になっている。チェルノブイリのように 事故放出によるものもあれば、・・現在とくに問題なのは原子力施設(古い原子炉や兵器製造工場)の廃止措置である。

 それには費用がかさむ。そして残留汚染を低レベルに抑えるのにあまりにも金をかけ過ぎると考える人たちがいる。汚染した土地をそのままにしておくと社会問題になって、国によっては環境リスクが大きすぎるという理由で訴訟になるだろう。

 このような問題があるので、出費を減らすために、線量-反応関係にしきい値がある(100ミリSv未満の被曝は無害)と主張する人たちからの圧力が増しつつある」と1999年に委員長名の論文で表明しています。(出典


 今回、福島県など非常に広い大地が東電・福島第一原発1号炉から4号炉から放出された放射能で汚染されました。 
福島県の放射線モニタリングで県内の小・中学校等の約20%が被曝手帳を持ち線量計をもって働くレベル2.3マイクロSv以上の「個別被ばく管理区域」、約55%0.6マイクロSv以上の、18歳未満就労禁止の「放射線管理区域」に相当しています。


グランドや園庭の土の入れ替えなどで除染できますが、「放射性物質は土の表面5cmくらいの深さに蓄積しますので、浄化の方法としては、(重金属の)カドミウムなどの浄化と同じです。土を30cmほどとり、捨て場がないので深い土中に汚染された土を埋めて、上30cmにきれいな土を入れるんです。その場合、1haあたり、2000万円くらいかかります。放射性物質の場合、掘り返すのはもう少し浅く、数cmでいいかもしれません。その場合、費用は数百万のオーダーになると予想します。(大阪市立大学の畑明郎特任教授)」で「それには費用がかさむ・・」

 こうした「出費を減らすために、線量-反応関係にしきい値がある(100ミリSv未満の被曝は無害)と主張する人たちからの圧力」へのICRPの専門家の対応は、判断を集団線量による社会全体で見ることから、着目点を個人に移し「最も多く被曝した個人の健康に対するリスクが問題にならない(trivial)ものであれば、いかに多くの人が被曝しようとも全体のリスクは問題にならない」です。

 それまでは、「被曝を合理的に実行可能な限り低く、ALARP(as low as easonably practicable)」という姿勢でした。グランドや園庭の土の入れ替えなどの除染や学童疎開など被曝を低減するための費用・負担と被曝低減によるメリット、新たな発ガンの減少など、この両者を比較して合理的に対処するという姿勢です。

 年間10ミリSv被曝での発ガン率上昇は、大人一人ひとりの個人レベルでみれば0.05%の上昇です。2000人単位・集団で見れば2万人・ミリSvの集団線量ですから一人多く発ガンです。10ミリSv減らせば、逆に減ります。0.05%は「個人の健康に対するリスクが問題にならない(trivial)もの」と考える人が多いでしょう。同じことを2000人に一人多く死ぬと言われたら、どうでしょうか?交通事故死亡者は2000人で0.08人です。

 これまでは、後者の集団・社会全体で見ていました。3月間につき1.3mSvを超えるおそれのある「放射線管理区域」というのも、その被曝で生じる労働者集団での発ガンなど労災が他の産業での労災と同じレベルにするという尺度で決められています。

 それを土地が強く放射能汚染し職業人ではない一般の公衆が多人数、多量に被曝する事態では、着眼点を個人レベルにうつして、同じことを問題にならない(trivial)ものに見えるようにしてしまう。文科省は、集団線量という考えは用いない、福島の学童・生徒の全体、数万人の集団レベルでのリスクは考えないと明言しています。

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 これで判断の天秤の右側に乗っている被曝による負担・リスク(低減によるメリット)がどんどん小さく、軽くなって、「全体のリスクは問題にならない」と見えてくる。そうなると反対側天秤に載せる被曝低減の費用・負担をどんどん小さく、軽くしないと釣合いがとれなくなる。数百万円もかけて校庭・グランドを浄化するのは無駄で非合理で、先生が注意するくらいが合理的とみえてくる。

 100ミリSv未満の被曝は無害説なら、原発から20kmの強制避難も不要になる。安全委の小原規制課長によれば4/5時点での大気中への放射性ヨウ素131が1日当たり16兆7760億ベクレル、セシウム137は3兆4320億ベクレル、放射能影響としてセシウム137はヨウ素131の40倍で換算するから、合計すると1日に153兆7120億ベクレルが出ています。この放出は東電の希望的予定では年明けまで続きます。注水、冷却が余震などで停止すれば、もっと多くの放出がおこります。それでも、一時的退避位ですみます。国や東電は大助かりでしょう。


 100ミリSv未満の被曝は無害か有害か?細胞レベルでも研究の結果は分かれています。実際の100ミリSv未満の被曝が多人数でおきたのは、チェルノブイリの事故。

「被曝時に青少年期(0~18歳)だった人たちに6000人を超える甲状腺癌(分化型)が発生し、2005年時点で15人(0.3%未満)が死亡した。」「こうした25年に及ぶ追跡研究の結果から、15歳以下の小児においても100mSv以下であれば有意なリスク上昇は認められない」(国立がん研究センター所長代理の中釜斉氏)という人もいます。(出典

その一方、チェルノブイリに近いベラルーシで、小児甲状腺がんの治療にあたった経験を持つ医師で松本市長の菅谷昭氏によれば、「ベラルーシでの小児甲状腺がんの発生数は、異常な率でした。国際的には、15歳未満の子どもの甲状腺がんは100万人に1人か2人。ところが汚染地では、それが100倍、多い地域では130倍に跳ね上がったんです。発生が増え始めたのは事故から5年後で、10年後にはピークを迎えました。私が診療していた当時も、毎日毎日子どもたちが診察に来た」

 菅谷氏によると、800人の患者のうち20人弱が死に至り、ミンスクの甲状腺がんセンターでは、6人に1人が肺への転移がみつかっています。800人で20人弱ですから、6000人なら約140人死亡ですが、中釜氏は15人。そのデータに拠って無害説をとなえ、福島の人々には「原子炉付近で作業を行っている人を除けばほとんど問題がない」主張しています。

15人とのデータは、原子放射線の影響に関する国連科学委員会・UNSCEARのデータの出したものですから、トンデモ学説ではありません。しかしこれを採って一般国民は行動すべきでしょう?

 菅谷氏によれば、病院を訪れ手術を受け助かった780人の一人で思春期の女の子は、首の周りにネックレスのように残る手術痕を見て、「どうしてこんなことになったの! 何も悪いことはしてないのに」と悲嘆にくれていた、「甲状腺がんにかかった子どもには、自覚症状がないんです。だから気付きにくい。定期的に触診や、超音波検査などを行って、早期に見つけださないといけない。甲状腺がんにかかると甲状腺を摘出しますので、一生、薬で甲状腺ホルモンを補充し続けなければいけないんです。薬の服用は毎日で、それを一生続けなければならない。今回の福島の事故では、絶対に子どもたちにこんな思いをさせてはいけないんです」

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 無害説をとり「福島の人々には、ほとんど問題がない」というなら事故から5年後に発生が増え始める小児甲状腺がんに備え早期発見の体制を作る必要はないわけです。しかし、無害説が間違い、原子力安全委の「今回の福島からの放出で、甲状腺がんは出ない」が間違っていたら、自覚症状が現れないから甲状腺がんにかかった子どもらの発見は遅れ、良くて傷跡ネックレスをつけるか、悪くすれば致死。

大人なら100ミリSv未満で無害説、有害説のどちらを採って行動すべきでしょう??


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