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100mSv未満なら安全?、100mSv位なら被曝した方が体に良い? [被曝影響、がん]

私たちが一般公衆が受ける低いレベルの放射線被曝での晩発性の害・発ガンのリスクについては、概ね3つの考えがあります。

γ線、β線被曝でその影響を調べるためには統計学的に次の人数の調査が必要とそれています。100mSv(ミリシーベルト)で約6400人、10 mSvで約62万人、1 mSvで約6180万人です。(ICRPのPublication 99)
 大規模な被曝の疫学調査は、広島、長崎の被爆者を対象にしたものです。1950年に被爆者の実態を把握する調査が行われ、その中の28万4千人の被爆者が対象です。人数から、100mSv以下の低いレベルの放射線被曝は、実例に基づいた疫学的に科学的に確たることが言えない領域です。

その疫学調査からは「白血病を除く、がんの死亡率と被曝(ばく)線量が比例していると統計的に確認できた最低線量は50 mSv(ミリシーベルト)。それ以下ではまだ確認できていない。」(広島市の放射線影響研究所・清水由紀子疫学部副部長)という方もいれば、100mSv以下は一切不明と言う方もいます。

それで、100mSv以上の被曝領域での知見、研究結果を延長、外挿する、そして様々な調査などでチェックし矛盾や不合理な点をただして得られた仮説、100ミリSv未満の被曝でも被ばく線量に比例して直線的に晩発性の障害・ガンが生じるという学説、LNT・しきい値なし直線仮説が被曝防護では用いられています。
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ICRP・国際放射線防護委員会は、この学説と広島、長崎の調査結果から、1958年に初めて公衆の被ばく線量規制量を定めました。5mSv/年です。その後、原爆被爆者の被曝線量が見直され、被曝の発ガンリスクが約2倍となり、1985年に現在の1mSv/年になっています。
このLNT・しきい値なし直線仮説は、ICRP・国際放射線防護委員会だけでなく、UNSCEAR・国連科学委員会、米国科学アカデミーの見解(BEIR- Ⅶ)、ECRR(欧州放射線リスク委員会)などが採っています。
ICRPなどは、100mSvの被曝をした1000人中10人が新たに発癌し半数の5.5人がガン死する、ECRRは内部被曝を重視しその倍というリスクの大きさの違いがあります。

これを批判する説には、「これだけなら安全とする線量(しきい値)があって、そこから先は直線で結ぶ」という、しきい値あり直線仮説があります。フランス科学アカデミーらが2005年に発表した説などが代表です。さらに、「多少被爆したほうが体に良いのだ」と低線量被曝を奨励する「放射線ホルミシス」があります。
この3者は共に、先ほどの調査人数の問題から疫学的実証的に確固たる裏付けはありません。原発労働者15カ国、40万人での調査では50mSv以下で発ガン率の上昇が見られていますが、誰もが認めるほど確固たる根拠ではありません。

社会的には、大きく違います。
2004年に英国の高名な疫学研究者のA・ベリングトンらが、国連科学委員会の1992年の報告をもとに世界15カ国の診察用エックス線によるがんリスクを調べた研究を発表しました。日本は世界平均の3.7倍の2.25mSv被曝で発ガンが3.2%、7587人、その後のCT検査での増加を考慮すると4.4%、9904人だと指摘しました。
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米国は日本の約1/4の線量でしかありませんでしたが、米国の科学アカデミーはLNT・しきい値なし直線仮説を認めていますから、指摘を素直に受け入れました。早速に医療界や規制当局は増加削減にとりかかります。

日本でも米国でも業務に際して被曝する医療従事者や原発などの労働者は、被曝線量をモニターされています。そして、LNT・しきい値なし直線仮説に基づくICRPの勧告に準拠して5年間で100mSv(ミリシーベルト)を超えず、1年で50mSvを超えないよう規制・保護されています。
一方、市民・患者の放射線被曝は、モニターも規制もされていないし、検査による被曝が患者のがんリスクを上昇させることを意識しているのは、放射線科医の50%未満、救急医の9%に留まるという研究があるように意識改革や制度整備で野放図な増加を止める事が必要なのです。

ところが、日本ではどのように被ばくを減らすかという議論には向かいませんでした。低線量被曝したほうが体に良い「放射線ホルミシス」説や「10mSv以下の線量ではほとんど有害な影響はない」(放射線医学総合研究所、飯沼武)として医療での被曝線量はその10mSvより下といって、「害がない、安心です」と市民を説得する努力に向けられました。

2008年に1年間にのべ約3000万人がCT検査をうけ、約6000人がこの放射線被曝によるガン死を生じていると群馬大学の遠藤啓吾教授らは推計しています。「日本のがんの発生原因の3%以上は医療被曝が原因です。・・体に広く放射線を当てる診断用の検査をやり過ぎる面があります。例えば頭痛があるだけで頭のCTを日本人は本当にやるんですけれども、あれは考えたほうがいいという気がします。」(東京大学放射線科の中川恵一准教授、2010年10月の講演)といった声はいかされませんでした。

市民・患者に「放射線ホルミシス」「しきい値」を説く医療関係者は、LNT・しきい値なし直線仮説に基づくICRPの勧告に準拠した被曝規制で守られています。この規制は誤った仮説に基づいているのですから、その撤廃や変更を求めるのが、筋でしょうが、彼らはそうしません。自分の身はLNT仮説で守り、患者・市民は被曝を勧め、CT検査費を得ようとする醜悪な姿が見えます。

そして今度の東電福島原発事故で、昨年10月にはLNT仮説に拠りCT検査の削減を訴えていた中川准教授は、「100mSv以上でなければ発がんのリスクも上がりません。」「100mSv未満ならば胎児には影響がでない」と言い出しました。

山下俊一長崎大教授は、事故当初には「10mSv以上を浴びないと、人体に影響はほとんど出ない」(3/13読売新聞)。その後、放射能汚染が深刻化すると、福島県の放射線健康リスク管理アドバイザーに19日に就任した以降は「100mSvで、リスクがあるとは思っていません。」「100mSv以下では発ガンリスクは証明できないのだから、不安を持って将来を悲観するよりも、今、安心して、安全だと思って活動しなさい」「国民の一人として国の指針に従う義務があります。」と福島県民にアドバイスしています。多くの福島県民が、このアドバイスを受けて、避難先から戻ってきています。除染をやろうとしていません。

山下教授の過去の発言 放射線の光と影:世界保健機関の戦略
日本臨床内科医学会会誌 23巻5号(2009年3月)


ICRPのLNT仮説に拠れば、100mSv/年に生まれ40年暮らすと、3人に2人弱は発癌し一人弱はガン死。汚染が深刻化し、それに近づいてることを直視したくなくて、改宗したのでしょうか?また、「安全なんだ」と思いたい人々には、心地よいしらべです。福島の人々を今ひと時でも安心させ、騒がせたく無い人々には、宣伝したい広めたい意見です。

このような動きは東電による放射能汚染を隠すだけではありません。世界では、国連科学委員会の報告をもとに放射線感受性が高い小児でCT 検査が急増している、それでの発ガンが懸念されています。しかし、100mSv以下安全なら、そのような懸念はナンセンス。世界中で子供のCT検査を減らそうとしてる中、日本では頭痛といってはCT検査を子供にしている事になります。



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