SSブログ

20ミリSv基準、手術痕ネックレス [被曝影響、がん]

被曝の影響を小さく見せよう

放射線被曝の影響は、盛んに分裂している細胞が影響を受けやすい、高感受性です。これは年齢的には若年、幼若なものほど放射線感受性が高いという年齢差です。放射線のがん誘発効果に関しても、原則的に幼若なものほど感受性が高い。(がんの種類によっては原則から外れるものもあります。)この点に関しては、内部被曝も外部被曝も同じです。

ICRP・国際放射線防護委員会は、広島・長崎における疫学調査の結果から0-90歳、0-19歳、20-64歳の年齢群に分けた研究を基礎としているのだから、この結果を0-15歳の乳幼児(保育園・幼稚園)学童、生徒の影響がストレートに出ていません。それでも、致死がんの相対確率は年長者群(20-64歳)と若年者群(0-19歳)とで約3倍になっています。

 ですから、実効線量が大人と同じだとしても、影響も同じだとすることはできません。


 また白血病以外の全てのがんの相対リスクは被ばく時年齢が10歳以下の場合では、被爆者は、被曝していない対照者の2.32倍となっています。20mSv以下の福島県内外の子供らと比べて、将来発ガンする危険性が高くなるのは、自明です。なぜ福島の子供らが、同じ日本の子供なのに、このような負担を負わされるのか??

1303775518.jpg


被曝を合理的に実行可能な限り低く

法では、被曝限度は年間1ミリSv(時間当たりで0.11マイクロSv)。
我々は宇宙線やカリウム40などの天然にある放射性物質による内部被曝などで概ね2.4ミリSv被曝しています。レントゲンやCTなど被曝する人が直接利益をうる医療被曝を除いて、別枠にして、過去の核実験や原発、研究・教育、非破壊検査などからの廃棄物などの人工放射性物質(放射能)による被曝の法的上限が1ミリSv。仮にこの上限の1ミリSvを被曝した大人2万人、集団線量で2万人・ミリSvで新たな致死がんが一人です。

1303776008.gif
1303776093.jpg

 近年、この上限が低すぎるという意見が強くなってきていました。
ICRP・国際放射線防護委員会は、1999年に「多くの国で土地の放射能汚染がかなり問題になっている。チェルノブイリのように 事故放出によるものもあれば、・・現在とくに問題なのは原子力施設(古い原子炉や兵器製造工場)の廃止措置である。

 それには費用がかさむ。そして残留汚染を低レベルに抑えるのにあまりにも金をかけ過ぎると考える人たちがいる。汚染した土地をそのままにしておくと社会問題になって、国によっては環境リスクが大きすぎるという理由で訴訟になるだろう。

 このような問題があるので、出費を減らすために、線量-反応関係にしきい値がある(100ミリSv未満の被曝は無害)と主張する人たちからの圧力が増しつつある」と1999年に委員長名の論文で表明しています。(出典


 今回、福島県など非常に広い大地が東電・福島第一原発1号炉から4号炉から放出された放射能で汚染されました。 
福島県の放射線モニタリングで県内の小・中学校等の約20%が被曝手帳を持ち線量計をもって働くレベル2.3マイクロSv以上の「個別被ばく管理区域」、約55%0.6マイクロSv以上の、18歳未満就労禁止の「放射線管理区域」に相当しています。


グランドや園庭の土の入れ替えなどで除染できますが、「放射性物質は土の表面5cmくらいの深さに蓄積しますので、浄化の方法としては、(重金属の)カドミウムなどの浄化と同じです。土を30cmほどとり、捨て場がないので深い土中に汚染された土を埋めて、上30cmにきれいな土を入れるんです。その場合、1haあたり、2000万円くらいかかります。放射性物質の場合、掘り返すのはもう少し浅く、数cmでいいかもしれません。その場合、費用は数百万のオーダーになると予想します。(大阪市立大学の畑明郎特任教授)」で「それには費用がかさむ・・」

 こうした「出費を減らすために、線量-反応関係にしきい値がある(100ミリSv未満の被曝は無害)と主張する人たちからの圧力」へのICRPの専門家の対応は、判断を集団線量による社会全体で見ることから、着目点を個人に移し「最も多く被曝した個人の健康に対するリスクが問題にならない(trivial)ものであれば、いかに多くの人が被曝しようとも全体のリスクは問題にならない」です。

 それまでは、「被曝を合理的に実行可能な限り低く、ALARP(as low as easonably practicable)」という姿勢でした。グランドや園庭の土の入れ替えなどの除染や学童疎開など被曝を低減するための費用・負担と被曝低減によるメリット、新たな発ガンの減少など、この両者を比較して合理的に対処するという姿勢です。

 年間10ミリSv被曝での発ガン率上昇は、大人一人ひとりの個人レベルでみれば0.05%の上昇です。2000人単位・集団で見れば2万人・ミリSvの集団線量ですから一人多く発ガンです。10ミリSv減らせば、逆に減ります。0.05%は「個人の健康に対するリスクが問題にならない(trivial)もの」と考える人が多いでしょう。同じことを2000人に一人多く死ぬと言われたら、どうでしょうか?交通事故死亡者は2000人で0.08人です。

 これまでは、後者の集団・社会全体で見ていました。3月間につき1.3mSvを超えるおそれのある「放射線管理区域」というのも、その被曝で生じる労働者集団での発ガンなど労災が他の産業での労災と同じレベルにするという尺度で決められています。

 それを土地が強く放射能汚染し職業人ではない一般の公衆が多人数、多量に被曝する事態では、着眼点を個人レベルにうつして、同じことを問題にならない(trivial)ものに見えるようにしてしまう。文科省は、集団線量という考えは用いない、福島の学童・生徒の全体、数万人の集団レベルでのリスクは考えないと明言しています。

1303777017.jpg
 これで判断の天秤の右側に乗っている被曝による負担・リスク(低減によるメリット)がどんどん小さく、軽くなって、「全体のリスクは問題にならない」と見えてくる。そうなると反対側天秤に載せる被曝低減の費用・負担をどんどん小さく、軽くしないと釣合いがとれなくなる。数百万円もかけて校庭・グランドを浄化するのは無駄で非合理で、先生が注意するくらいが合理的とみえてくる。

 100ミリSv未満の被曝は無害説なら、原発から20kmの強制避難も不要になる。安全委の小原規制課長によれば4/5時点での大気中への放射性ヨウ素131が1日当たり16兆7760億ベクレル、セシウム137は3兆4320億ベクレル、放射能影響としてセシウム137はヨウ素131の40倍で換算するから、合計すると1日に153兆7120億ベクレルが出ています。この放出は東電の希望的予定では年明けまで続きます。注水、冷却が余震などで停止すれば、もっと多くの放出がおこります。それでも、一時的退避位ですみます。国や東電は大助かりでしょう。


 100ミリSv未満の被曝は無害か有害か?細胞レベルでも研究の結果は分かれています。実際の100ミリSv未満の被曝が多人数でおきたのは、チェルノブイリの事故。

「被曝時に青少年期(0~18歳)だった人たちに6000人を超える甲状腺癌(分化型)が発生し、2005年時点で15人(0.3%未満)が死亡した。」「こうした25年に及ぶ追跡研究の結果から、15歳以下の小児においても100mSv以下であれば有意なリスク上昇は認められない」(国立がん研究センター所長代理の中釜斉氏)という人もいます。(出典

その一方、チェルノブイリに近いベラルーシで、小児甲状腺がんの治療にあたった経験を持つ医師で松本市長の菅谷昭氏によれば、「ベラルーシでの小児甲状腺がんの発生数は、異常な率でした。国際的には、15歳未満の子どもの甲状腺がんは100万人に1人か2人。ところが汚染地では、それが100倍、多い地域では130倍に跳ね上がったんです。発生が増え始めたのは事故から5年後で、10年後にはピークを迎えました。私が診療していた当時も、毎日毎日子どもたちが診察に来た」

 菅谷氏によると、800人の患者のうち20人弱が死に至り、ミンスクの甲状腺がんセンターでは、6人に1人が肺への転移がみつかっています。800人で20人弱ですから、6000人なら約140人死亡ですが、中釜氏は15人。そのデータに拠って無害説をとなえ、福島の人々には「原子炉付近で作業を行っている人を除けばほとんど問題がない」主張しています。

15人とのデータは、原子放射線の影響に関する国連科学委員会・UNSCEARのデータの出したものですから、トンデモ学説ではありません。しかしこれを採って一般国民は行動すべきでしょう?

 菅谷氏によれば、病院を訪れ手術を受け助かった780人の一人で思春期の女の子は、首の周りにネックレスのように残る手術痕を見て、「どうしてこんなことになったの! 何も悪いことはしてないのに」と悲嘆にくれていた、「甲状腺がんにかかった子どもには、自覚症状がないんです。だから気付きにくい。定期的に触診や、超音波検査などを行って、早期に見つけださないといけない。甲状腺がんにかかると甲状腺を摘出しますので、一生、薬で甲状腺ホルモンを補充し続けなければいけないんです。薬の服用は毎日で、それを一生続けなければならない。今回の福島の事故では、絶対に子どもたちにこんな思いをさせてはいけないんです」

1303778346.jpg

 無害説をとり「福島の人々には、ほとんど問題がない」というなら事故から5年後に発生が増え始める小児甲状腺がんに備え早期発見の体制を作る必要はないわけです。しかし、無害説が間違い、原子力安全委の「今回の福島からの放出で、甲状腺がんは出ない」が間違っていたら、自覚症状が現れないから甲状腺がんにかかった子どもらの発見は遅れ、良くて傷跡ネックレスをつけるか、悪くすれば致死。

大人なら100ミリSv未満で無害説、有害説のどちらを採って行動すべきでしょう??


nice!(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

Facebook コメント

トラックバック 0