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新潟県への質問、新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会への要望(草案) [原発 冷却注水の確保]

旧「畑のたより」で2013年10月13日に掲載分

新潟「県では現在、技術委員会(新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会)における福島第一原子力発電所事故の検証に関する議論について、県民の皆様からご質問・ご意見を受付けています。」 受付窓口
それで、下記の意見書を作ってみました。まだ草案段階です。

福島第一原発で、消防車の高圧送水・放水機能が使われて無い理由を明らかにしてください。

東京電力は柏崎刈羽原発に「消防車8台(AⅠ級2台,AⅡ級6台)をT.P.約35mの高台に分散配置。」という対策をとった。そして「AⅠ級のポンプ仕様:高圧放水圧力1.4MPa,高圧放水量120m3/h以上、AⅡ級のポンプ仕様:高圧放水圧力1.4MPa,高圧放水量84m3/h以上」「消防車により建屋に設けた注水口等から注水可能。」と説明しています。

しかし、東京電力福島第一原発の事故・核災害では、この高圧放水圧力1.4MPaで使われていません。その理由を解明して下さい。

解明して欲しい点

(A)消火系・FPの運転可能な原子炉圧力上限が事故時運転操作手順書(徴候ベース)では0.98MPaと書かれた根拠、事故時運転操作手順書(シビアアクシデント)では0.69MPaと書かれた根拠を明らかにしてください。

(B)事故時運転操作手順書(シビアアクシデント)では、SBO・全交流電源喪失時にはRCIC(HPCI)が稼動停止する原子炉圧力1MPaより低く消火系・FPの注水可能になる0.69MPaの原子炉炉圧の間は、何を炉注水の手段としているのか明らかにして下さい。

(C)仮に3号機で、12日19時から消防車が利用可能であったら、消防車による高圧放水圧力1.4MPaでの注水は可能だったでしょうか?配管や継手などを壊すことなく原子炉に届き、注水できたでしょうか。

(D)2002年には、既設の消火系・FPでは代替注水系として不十分である、運転可能な原子炉圧範囲が0~0.98MPaまたは0.69MPa以下とSBO条件での低圧の代替注水系として能力不足なことは明白でした。福島第一原発では、これを是正する改善するためにとられた対策を解明して下さい。

詳細

東京電力は、柏崎刈羽原発の制御系の弁の開閉や計測機器用の直流電源や圧縮ガスの補強対策を行っています。それで、非常時にもこれらは操作可能、計測可能である可能性が高いので、福島第一原発でこれらが可能であった3号機を例に、私の疑問を詳しく述べます。

資料01
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3号機の事故時運転操作手順書(事象ベース)の12-4-12(添付の資料01)によればSBO・全交流電源喪失時には、原子炉圧力容器から崩壊熱で発生する水蒸気で蒸気駆動のRCIC・原子炉隔離時冷却系かHPCI・高圧注水系を起動します。そして交流電源回復操作を行います。

電源回復に成功したら、RHR・残留熱除去系を起動します。RHRによるCS・炉心スプレイ系を作動させます。つまり原子炉圧力容器への冷却水注水は、蒸気駆動のRCIC・HPCIと電動ポンプのCS(RHR)系の二つの系統で行われている状態を作ります。

手順書(事象ベース)の12-4-25(添付の資料02)によれば冷温停止までの手順は、原子炉圧力が1.04MPa以下になったら、RCIC(HPSI)の流量を徐々に下げ、CS(RHR)系で原子炉水位「維持可能」を確認します。

その確認の後に原子炉の減圧を行い、原子炉圧力が0.98MPa以下でRCIC(HPCI)を停止します。

停止してもCS(RHR)系で注水は継続し水位は維持されています。

その状態で減圧操作を行います。

原子炉圧力が0.517MPa以下でRHRを原子炉停止時冷却モード・SHCモードで運転を行います。原子炉で発生する崩壊熱は、RHR・残留熱除去系の熱交換器を経て海水に移行します。そして原子炉が冷温停止する。

事故時運転操作手順書(シビアアクシデント)の3-4-2(添付の資料03)をみると、RHRの原子炉圧力容器からの吸入(水)配管にある吸入隔離弁が原子炉圧力0.517MPa以上で自動で働きます。それで、RHRの原子炉停止時冷却モード運転が原子炉圧力が0.517MPa以下となっていると思われます。

資料02、03
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さて、電源を回復できない場合、蒸気駆動のRCIC・HPCIによる注水を制限する条件は(1)制御する直流電力・蓄電池容量で設計では合わせて8時間、

(2)ポンプのメカニカルシール及び軸受の温度条件の上限が60℃であり、復水貯蔵タンク・CSTなど外部水源を使えず、S/Pのみが水源である場合は、S/P(圧力抑制プール)水温度が制限条件になります。「事故後約1時間で発生するSRV(逃がし安全弁)からの蒸気放出により、S/P(圧力抑制プール)水温度が上昇し、60℃を越えると、S/P水源とした場合、RCIC・HPCIの油冷却ができなくなる。」[手順書(事象ベース)の12-4-22]。

(3)原子炉圧力の低下。RCICとHPCIの定格流量維持最低圧力は1.03MPa、0.98MPa以下で停止。

柏崎刈羽原発6、7号機では、直流電源や圧縮ガスの補強対策を行っているので、(1)は制限条件でないと想定できます。(2)は代替高圧注水設備(TWL)の新設するとしています。このTWLのメーカーカタログには使用温度の上限を120℃とあります。S/Pのみが水源である場合は、約6~7時間後に120℃なると思います。RCICの60℃には約1時間後です。この(2)と(3)の原子炉圧力の低下が、電源を回復できない場合の高圧注水機能の制限条件になると考えます。

資料05
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さて、福島第一原発3号機の手順書では、電源を回復できないで原子炉圧力が1MPa以下の場合の原子炉への注水手段は、消火系・FPのデーゼル駆動消火ポンプだけです。

東電は「今回の事象では、電源がなかったことから電動駆動消火ポンプが使えない状況であった。」と総括しています。事故時運転操作手順書(徴候ベース)の5-7(c1)・(添付の資料05)に記載されている原子炉圧力が1.03MPa(RCICとHPCIの定格流量維持最低圧力)以下の低圧域での低圧注水可能系統は、下記の4系統を挙げています。

LPCP・低圧復水系(0~1.18MPaが運転可能な原子炉圧範囲)、

HPCP・高圧復水系(0~5.20MPa)、

CS・炉心スプレイ系(0~2.26MPa)、

LPCI・低圧注水系(0~1.86MPa)です。

この低圧注水可能系統の代替注水系は、

MUW(MUWC)・復水補給水系(0~0.98MPa)、

CRD・制御棒駆動機構(0~10.30MPa)、

SLC・ほう酸水注入系、

FP・消火系(0~0.98MPa)、

RHR海水系(0~2.84MPa)です。

FP・消火系のデーゼル駆動消火ポンプ・D/DFPを除いて、あとは全て電気駆動、交流電源が必要です。ですから「今回の事象では、電源がなかったことから低圧注水はFP・消火系のデーゼル駆動消火ポンプ・D/DFPだけが使える状況であった。」との総括が適切です。

その消火系・FPの代替注水の操作順序を手順書(シビアアクシデント)の2-2-1-1(添付の資料03)でみると、実施条件として「原子炉圧力が0.69MPa以下であること。」と記載されてます。そしてRCIC(HPCI)が稼動できる原子炉圧力1MPaから0.69MPaの時の原子炉への注水手段が不明です。

事故時運転操作手順書(徴候ベース)の5-7(c1)・(添付の資料05)をみると、消火系・FPの運転可能な原子炉圧力とは「0~0.98MPa」と記載されています。この記載の上限は、手順書(シビアアクシデント)の記載よりも0.29MPa高いものになっています。仮に原子炉圧力1MPaより低い低圧の間は消火系・FPを原子炉への注水手段とする、0.98MPa以下で使用可能なら、手順書(シビアアクシデント)の「原子炉圧力が0.69MPa以下であること。」制限条件は使用可能な炉圧時に使わないようにさせていることになります。

資料06
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資料06は3号機の2011年3月12日17時から13日17時までの原子炉圧力と水位です。消火系・FPの運転可能な原子炉圧力上限が手順書(徴候ベース)の0.98MPaなら、12日の19時から13日2時44分までは、消火系・FPによる炉注水が可能な炉圧領域です。注水ラインを構成し、試みられると思います。この時間帯はHPCIも稼動しており、HPCIとFPの2本立てて炉注水の可能性が十分にあります。

特に12日19時42分は炉圧が0.82、20時15分は0.8、21時は0.72、13日2時以降は炉圧が0.85、0.58と下がっていますから可能性が高い。HPCIは13日2時42分で停止していますが、HPCIとFPの2本立てて炉注水が実現していれば、HPCI停止後も消火系・FPで炉注水が継続したと思われます。そして原子炉炉圧を下げれれば、炉水の沸点が下がります。0.1MPa・約1気圧にすれば沸点100℃で、原子炉冷却水100℃です。

実際には、「原子炉圧力が0.69MPa以下であること。」と制限条件が記載されている手順書(シビアアクシデント)に従い、原子炉圧力が0.69以下になる13日2時42分以降に消火系・FPによる炉注水が試みられています。HPCI停止により注水途絶、原子炉水位の低下、核燃料被覆の損傷により発生する水素ガスによると考えられる炉圧の急上昇がおこります。SRV・逃がし安全弁を開けられず、炉圧減圧をできず、炉注水に失敗しています。

消火系・FPの運転可能な原子炉圧力上限が手順書(徴候ベース)では0.98MPaと書かれた根拠、手順書(シビアアクシデント)では0.69MPaと書かれた根拠を明らかにしてください。そして手順書(シビアアクシデント)では、SBO・全交流電源喪失時にはRCIC(HPCI)が稼動停止する原子炉圧力1MPaより低く消火系・FPの注水可能になる0.69MPaの原子炉炉圧の間は、何を炉注水の手段としているのか明らかにして下さい。

(C)仮に3号機で、12日19時から消防車が利用可能であったら、消防車による高圧放水圧力1.4MPaでの注水は可能だったでしょうか?配管や継手などを壊すことなく原子炉に届き、注水できたでしょうか。

また、消火系・FPの炉注水に使用可能な原子炉圧力上限が0.98MPaにしろ0.69MPaで有るにしろ、どちらもRCIC(HPCI)と同時に炉注水を行えません。使えるのは停止後の想定です。ですからRCIC(HPSI)の流量を徐々に下げ、消火系・FP系で原子炉水位「維持可能」を確認することができません。消火系・FP系で原子炉水位維持ができないならば、核燃料損傷にいたります。電源を回復できない場合、蒸気駆動のRCIC・HPCIによる注水を制限する条件に該当して、RCIC・HPCIが停止せざるを得ない状況なら、メルトダウンへ真っ逆さまです。

3号機では13日9時25分から消防車による炉注水が開始されています。消防車に組み込まれる消防用ポンプは、性能規格のAⅠ級、AⅡ級です。ともに1.4MPaも高圧放水圧力を有します。この高圧放水圧力ならRCIC(HPCI)と同時に炉注水を行えます。消火系・FP系で原子炉水位「維持可能」を確認できます。12日の19時から13日2時44分までは炉圧が最高で0.97ですから、消火系・FPによる炉注水で原子炉水位「維持可能」を確認し炉注水は実行できたと思います。

手順書(徴候ベース)の消火系・FPの運転可能な原子炉圧力は「0~0.98MPa」との記載からは、現状では高圧放水圧力での運転は出来ないとも考えられます。また、ビル火事などで消防車による消火系への送水はよく見られますし、そのための送水口がビルには付いています。東京電力は2010平成22年に消防・消火設備拡充を目的に消火系につながる送水口を増設しています。

消防法施行規則の第12条、第15条には、消火系の配管や管継手の「耐圧力は、当該配管の設計送水圧力の一・五倍以上の水圧を加えた場合において当該水圧に耐えるものであること。」という原則と、設計送水圧力が1MPa・約10気圧以上ではそれ用の日本工業規格適合し肉厚が厚い管・継手を使うよう求めています。

AⅠ級、AⅡ級の消防ポンプは、規格放水圧力は0.85MPa、高圧放水圧力は1.4MPaです。0.85MPaを配管の設計送水圧力とするなら消火系の配管などの耐圧力は1.275MPa以上、1.4MPaなら耐圧力は2.1MPa以上なければなりません。送水口から原子炉までに管の抵抗などで失われる圧力を通例どおり0.05MPa程度と見込むと、注水・送水可能な原子炉圧力上限は1.2~2MPaとなります。手順書(徴候ベース)の記載よりも大きく高圧になります。1.4MPaを設計送水圧力としていれば、CS・炉心スプレイ系(0~2.26MPa)、LPCI・低圧注水系(0~1.86MPa)と同様の低圧炉注水機能を持つと思われます。

消防車から原発の消火系への送水は送水口が後付けされたように、もともと設計段階では考えられていません。「原子炉への注水手段として手順書にはないが、消防車を使って原子炉への注水を行った。」と東電は記しています。ですから、消火系・FPの配管や継手などの耐圧力は、もともとの設計で設置されているデーゼル駆動消火ポンプ・D/DFPに見合ったものと考えられます。3号機のD/DFPが、柏崎刈羽6、7号機と同程度の「全揚程75m」0.73MPa程度なら、消火系の耐圧力は1.09程度になります。そこに1.4MPa、約3気圧も高い圧力で水を送り込んだら、壊れてしまうのではないでしょうか。

仮に3号機で、12日19時から消防車が利用可能であったら、消防車による注水、高圧放水圧力1.4MPaでの注水は可能だったでしょうか?配管や継手などを壊すことなく原子炉に届き、注水できたでしょうか。

(D)2002年には、既設の消火系・FPでは代替注水系として不十分である、運転可能な原子炉圧範囲が0~0.98MPaまたは0.69MPa以下とSBO条件での低圧の代替注水系として能力不足なことは明白でした。福島第一原発で、これを是正する改善するためにとられた対策を解明して下さい。

全交流電源喪失・SBOの場合に原発の消火系・FPは、2002年からメルトダウンのような過酷事故対策・AMでの手順に入れられています。それまで設計で既設の消火系・FPの送水・放水圧力ではRCIC(HPCI)と同時に炉注水を行えないこと、消火系・FP系で原子炉水位「維持可能」を確認してから切り替えることができないことは2002年から自明でした。ですから、2002年以降に消火系・FPにAⅠ級、AⅡ級の性能、送水・放水圧力を消防車の高圧放水圧力1.4MPaに合わせて変えていれば、消防車を待たずに消火系・FPに切替られます。

3号機はRCIC・原子炉隔離時冷却系が稼動していた12日の昼までは、SRV・逃がし安全弁を開ける直流電源があり、炉圧減圧をできたと見られています。RCIC稼働中にSRVで1.4MPa以下まで原子炉炉圧を下げて、消火系・FPのデーゼル駆動消火ポンプを起動し、消火系・FP系で原子炉水位「維持可能」を確認してから切り替え、炉圧減圧=炉水沸点低下=水温低下で冷温停止まで行けたと思います。

原子炉炉圧1.4MPa以下で消火系・FPでの炉注水が可能であったら、1号機は12日の2時半に0.8MPaを記録していますから、この頃には原子炉注水が再開できたと見られます。2号機は弁を開閉する直流電源は失われ、14日18時から電源を調達して蒸気逃し弁の開操作し減圧が始まっています。19時3分に0.63、20時3分には0.54を記録しています。その時の水位はBAF(有効燃料下端部)まで水面が下がりきらない、核燃料の下部が水に漬かっている時間帯です。その時間帯に炉注水が再開できたと思われます。

2002年には、既設の消火系・FPでは代替注水系として不十分である、運転可能な原子炉圧範囲が0~0.98MPaまたは0.69MPa以下とSBO条件での低圧の代替注水系として能力不足なことは明白でした。福島第一原発で、これを是正する改善するためにとられた対策を解明して下さい。

消防車で炉注水できない、今の柏崎刈羽原発 [原発 冷却注水の確保]

旧「畑のたより」で2013.10.12に掲載分

 既設の消火系・FPのデーゼルポンプ・D/D-FPが使えないのなら、消防車を使って送水、炉へ注水することはできるでしょうか?
1380582230.jpg東電は「消防車8台(AⅠ級2台,AⅡ級6台)をT.P.約35mの高台に分散配置。消防車により建屋に設けた注水口等から注水可能。」「AⅠ級のポンプ仕様:高圧放水圧力1.4MPa,高圧放水量120m3/h以上、AⅡ級のポンプ仕様:高圧放水圧力1.4MPa,高圧放水量84m3/h以上」としています。

この高圧放水なら注水圧力としては十分可能です。RCIC・原子炉隔離時冷却系を水蒸気圧=炉圧が1.3MPa約13気圧で稼動し注水を行いながら、外から消防車の高圧放水機能・約14気圧でで注水を試みる。消防車で注水ができることを確認してから、炉圧を下げていく。注水が出来なければ、配管や弁を点検する時間は、RCIC注水が継続しているの十分に取れます。炉圧が下がればRCICは停止するが、原子炉の沸点=温度も下がっていきます。

東電の資料では、そのような運用が可能であると読み取れます。しかし、それは無理です。消火系の配管や接続継手が1.4MPa約14気圧に耐えられない、接続部から水が吹き出る、配管が破れるからです。

資料URL-http://www.tepco.co.jp/cc/direct/images/121214e.pdf

消火系・ファイヤープロテクションですから、消防法の規則で設備に求められる性能が規定されています。消防法施行規則の第12条、第15条には、配管や管継手の「耐圧力は、当該配管の設計送水圧力の一・五倍以上の水圧を加えた場合において当該水圧に耐えるものであること。」という原則と、設計送水圧力が1MPa・約10気圧以上ではそれ用の日本工業規格適合し肉厚が厚い管・継手を使うよう求めています。

1MPa・約10気圧は、約100mの高さまで地上の消防車から送水できます。つまり高層ビルなどでは、それ用の特別な消火設備を作るよう求めています。配管に詳しい人に尋ねたら、5kg/㎠約0.5MPa用、10kg/㎠約1.0MPa用、15kg、20kgと分かれていて、5kg、10kgは汎用品で15kg、20kgは特注品で高価だそうです。

柏崎刈羽原発の消火系の既設のポンプは、0.75Mpaが設計送水圧力です。つまり既設の配管・継手の対圧力は約1.1MPaが上限です。そこに1.4MPaの圧力で送水したら、破れてしまいます。10階建ての建物に20階建て用の圧力で送水したら、配管は破れてしまいます。

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消防車は普通使いの規格放水圧力0.85Mpaという二つの性能を持っています。0.85Mpaなら使える可能性があります。しかし地震の後なら、配管が動いている可能性があります。中越沖地震後に柏崎刈羽原発では消火系配管が壁からはずれ落ちたり、継手の破損が見つかっています。

できたら使いたくないし、使うとしても設計圧力になります。つまり、さきほどの状況と変わりません。原子炉の炉圧が、RCICが停止する約10気圧から消防車で注水が可能になる約6.8気圧の間は原子炉に注水できるシステムが今はありません。注水が順調に行える確認もできません。一か八かの度胸勝負で使うしかないのです。

東電福島第一原発の3号機はメルトダウン

この状況が、東電福島第一原発の3号機の運転員が3月11日から12日に置かれた状況です。

3号機は弁を開閉するための電力などは地震・津波で損傷しませんでした。消火系からの炉注水のための弁操作はできました。しかし、1.4MPaで注水は出来ませんから、確実に炉注水できるかは確かめようがありません。一か八かの度胸勝負です。

もし、注水が出来なかったら、自分が運転してる炉から放射能を撒き散らすことになります。一方、電力の回復、電源車の繋ぎ込み作業が行われています。電気が電力が回復すれば、本来の低圧注水系での炉注水を確認してから、切り替えられます。高圧系が止らないように工夫した弁操作をして時間を稼ぎ、電力回復を待ちます。ズルズルと時間が過ぎていきます。

いよいよ高圧注水系がゴロゴロと音を立て始め、何時壊れるか、止るかという状態になりました。そこでエイヤと止めて、消火系での注水に切り替える一か八かの度胸勝負にでました。結果は、負けて炉への注水が途絶え、メルトダウン、メルトスルーとなりました。

対策・・消火系・FPの耐圧力強化

これを避ける策は、単純です。消火系・FPが1.4MPaでも使えるように耐圧力を強化する。単純ですが、お金がかかります。東電も認めているように「同時に被災及び火災が発生した場合を想定」しなければなりません。火災が同時発生すれば1.4Mpaで、本来の消火系へも送水です。既設のスプリンクラーや消火栓、配管・継手は、1.4MPa送水で壊れます。

消防関係者が、これまでの火災経験などから割り出した基準に沿って設計送水圧力が1MPa・約10気圧以上の場合の特別な特注品の管や継手などに全て取り替える必要があります。多分、途中に通るMUWC系も強化が必要です。また消火系は、格納容器への冷却水の送水も、SBO時には担っていますから、そちらの格納容器への送水なども取り替える必要があります。高額で工事時間もかかります。しかし、行わなければ福島第一3号機の悲劇を繰り返すことになります。

このように消火系・FPの耐圧力を強化するのですから、予め設置しておく非常用デーゼルポンプも強化する。東電は「D/D 

ポンプを新設し、全号機への低圧注水対応が可能となるよう強化する。」ことを検討中だそうですから、各号機に消防車に積んであるA-1、A-2規格のポンプを設置するのです。

そうすれば、消防車の到着を待たずに原子炉の炉圧が13気圧程度から、D/D-FPのデーゼルポンプで炉に注水を試みられます。注水ができることを確認できれば、切り替えて10気圧以下でも注水が可能になります。

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1気圧までに下げれば、冷却水の沸点は100℃です。そして注水量を多くすれば、沸騰せず90℃、80℃、50℃の熱水、温水になります。炉が冷温停止します。東電は電動ポンプの低圧注水系を使えば、スクラムから約1.5時間で冷温停止できるとしています。恐らく同様の時間で冷温停止できます。

ところが、東電は消火系にはポンプの2台の新設で、それも現在よりも性能が劣ったポンプ新設で済まそうとしています。そして、今年1月には消防車などを可搬設備を使う対策は発災・スクラムから12時間後以降とする基本方針を発表しています。恐らく人員の確保(消防車1台に運転手1人・作業員1人×8台を24時間・365日確保)の経費関係でしょうが、消防車すら12時間後以降しか使えない、使わないような基本方針を発表しています。

資料・・東京電力の「安全確保に関する考え方」

そして、フィルターベント設備を設置です。ベントする=放射能を撒き散らす方が、消火系・FPの耐圧力強化より東京電力には好ましい対策ということなのでしょうか?


柏崎刈羽原発に非常用デーゼルポンプ・消火用を2台しか設置してない東電。 [原発 冷却注水の確保]

 旧「畑の便り」で2013年9月30日掲載
 
原発の消火系・FP(Fire Protection System)は、メルトダウンのような過酷事故対策・AMでは原子炉への注水に利用されます。柏崎刈羽原発への発電所外部からの交流送電が途絶え、各号機に3台ある非常用発電機が稼動しない場合には、電動のポンプが動きません。この状態を全交流電源喪失・SBO(ステーション・ブラックアウト)といいますが、その時に消火系・FPの非常用デーゼルポンプで原子炉に冷却水を注水する手順に2002年からなっています。ですから、重要なデーゼルポンプです。消火系・FPの非常用デーゼルポンプの略号は、D/DFP、D/D-FP。

東京電力の資料、《参考資料1》福島第一原子力発電所事故の教訓と対策(平成24年12月14日)を見つけ読んでいたら魂消ました。東電は柏崎刈羽の7つの原子炉用に2台しか設置してないのです。柏崎側(荒浜側)の1~4号機共用で1台、刈羽側(大湊側)に5~7号機共用で1台です。全交流電源喪失・SBOの炉への注水で重要なのに、たった2台。



東電は「同時に被災及び火災が発生した場合を想定し、D/D-FP以外の低圧注入手段が喪失した場合に備え、D/D ポンプを新設し、全号機への低圧注水対応が可能となるよう強化する。」ことを検討中と記してあります。それは、1~4号機共用の予備に1台、5~7号機共用で1台で、それも送水能力は今よりも小さい。各号機に専用の1台を新たに設置し、今の共用を予備に回すなら話の筋「強化する」と言えますが、能力の劣ったものを2台新設しても、・・
 
 全交流電源喪失・SBOの炉への注水方法

原子炉は運転時には約70気圧・70Mpa(メガパスカル)あります。全交流電源喪失・SBOで緊急停止後の炉圧が高い場合は、RCIC・原子炉隔離時冷却系で炉に注水します。これは核燃料の崩壊熱により原子炉で発生する水蒸気でタービンを廻し、その力でポンプを駆動する注水システムです。定格流量は約180㎥/時、注水圧力は約20~90気圧(揚程は200~900m)です。柏崎刈羽6、7号機には各1台が設置されています。東電はさらにもう1台、米国製の代替高圧注水設備(TWL)という水蒸気駆動のシステムを6、7号に付けるそうです。
 
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この二つの高圧注水システムは、初期は復水貯蔵槽(タンク)から、最終的には格納容器の圧力抑制室プールの水、柏崎刈羽6、7号機では各3600トンのプール水が水源です。またプールには原子炉で発生する水蒸気が出されます。つまり崩壊熱で熱水化する水が水源です。圧力抑制室のプール水温が上がると、熱気で格納容器の圧力が上昇します。復水貯蔵タンクを使わない場合に最高使用圧力到達が約16時間後です。

また、崩壊熱により原子炉からの水蒸気がエネルギー源です。水蒸気圧力の作動最低圧があります。水蒸気圧力は原子炉圧力と同じです。柏崎刈羽原発6、7号機のRCIC・原子炉隔離時冷却系の作動圧範囲は東電に問合せていますが、他のBWRは7.86~1.04MPa(約78~10気圧)です。この下限の約10気圧以下になるとRCIC・原子炉隔離時冷却系で炉に注水できなくなります。

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原子炉の炉圧が高いと水の沸点は高いのは、圧力釜と同じです。約16気圧では200℃で、約10気圧で180℃です。炉を100℃以下の低温停止にするには、炉の圧力=水蒸気圧力を下げなくてはなりません。そして約10気圧以下になるとRCIC・原子炉隔離時冷却系で炉に注水できなくなります。交流電源があると電動ポンプでの注水、低圧注水のシステムがあります。BWRの低圧炉心スプレイ系(LPCS)が2.03MPaから、低圧注水系(LPCI)は1.55MPaから注水が可能になります。ABWRの柏崎刈羽原発6、7号機の低圧注水系の圧力値は東電に問合せていますが、ほぼ同じだと見られます。

事故対応の手順書のやり方では、RCICで注水を継続しながら炉圧が下がって、下げて低圧注水システムでの注水が可能になったら、RCIC注水と平行して同時に低圧システムを作動させます。配管などに損傷が無く、弁の開閉も間違えなく注水が順調に始まったことを確認します。中央制御室で弁の開閉状態を示す表示の多くは、操作盤から出ている指令信号が開信号か閉信号を示しています。実物の弁が開いているか閉じているかを示していません。重要な弁にはモニター装置が付いていますが、これも誤作動があります。従って、注水が順調に行える確認は欠かせません。

ところが、全交流電源喪失・SBO(ステーション・ブラックアウト)の時に使える低圧注水システムは、消火系・FPのデーゼルポンプ・D/D-FPだけですが、D/D-FPは注水が順調に行える確認はできません。

一か八かの度胸勝負を強いる手順

東電の資料では「全揚程75m」となっています。これは水を75mの高さまであげられる圧力が出せる性能ということです。水は
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10mで約1気圧ですから、約7.5気圧・0.75MPaの水圧で水を出せるということです。これは消火栓、スプリンクラーなどに送水する本来の場合です。原子炉に注水するには、MUWC系とRHR系と復水給水系を通らなければなりません。その曲がりくねった配管や弁(MUWC系で2ヶ、RHR系で5ヶ、復水給水系で3ヶ)を通過する際に圧力損失が発生します。大概は1気圧程度を見込みますので、原子炉に到達時には約6.8気圧・0.68MPa程度です。つまり原子炉の炉圧が、RCICが停止する約10気圧から消火系・FPのデーゼルポンプ・D/D-FPで注水が可能になる約6.8気圧の間は原子炉に注水できるシステムが今はありません。炉の冷却水は減るだけです。
約6.8気圧に下がった、下げてから、消火系・FPのデーゼルポンプ・D/D-FPで注水を行うとします。その際には水が通る弁だけでなく、水が他所へ行かないように開閉する弁が20ヶあります。この弁が正しく開閉されていなければ、炉に冷却水が届かない、他所に行ってしまって不足することになります。しかし、それを事前に確かめる術はありません。一か八かの度胸勝負です。負けてD/D-FP注水が上手くいかなかった場合に配管損傷や弁の開閉を直すのに使える時間は45分から70分と限られています。6.8気圧までに下げる間に失われる水量、下がっている水面高を考慮するともっと短いと考えられます。東電核災害での福島第一でのベント配管の構成にかかった時間を思うと、私は45分から70分では点検すら終わらない、メルトダウンの可能性が高いと思います。

さて、D/D-FPで炉への注水を行わないで高圧系を使い続けるとします。まずベントを避ける遅らせるには、どのような手があるでしょうか。D/D-FPでRCIC・原子炉隔離時冷却系の水源となっている圧力抑制室プールに冷水を注水すると崩壊熱での熱水化を抑制できます。格納容器の圧力上昇を抑えることができます。柏崎刈羽の6、7号機に今付いている消火系・FPの共用のデーゼルポンプ・D/D-FPは定格容量は1時間に177トンです。号機当り約88トンの注水が可能です。もともとのプール水量は3600トンですから、1時間に2.4%増量できます。

RCIC・原子炉隔離時冷却系は、約8時間使用で設計されています。東電核災害では2号機は100時間ほど動きましたが、そのメカニズムは不明で柏崎刈羽6、7号のRCICが100時間動くとは言えません。3号機は24時間ほどでゴロゴロという音を立てて止っています。8時間設計の3倍の24時間、それ位しか見込めません。新たに設置される米国製の代替高圧注水設備(TWL)はカタログデータには最高使用温度が120℃とあります。TWLは送水ポンプと一体化されていますから通過する圧力抑制室プール水で冷されて機器全体で120℃以下であればよいわけです。13気圧ほどの水蒸気圧の蒸気温度は約190℃、10気圧で約180℃、1時間に2.4%プール水量が増量しても熱容量的にみると約1日後にはプール水が120~100℃近くまで上がりますから、代替高圧注水設備(TWL)も1日位しか稼動できません。つまり、高圧系の注水は約1日くらいしか出来ないと想定されます。

それでは、既設の消火系・FPのデーゼルポンプ・D/D-FPが使えないのなら、消防車を使って送水することはできるでしょうか?

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東電は「消防車8台(AⅠ級2台,AⅡ級6台)をT.P.約35mの高台に分散配置。消防車により建屋に設けた注水口等から注水可能。」「AⅠ級のポンプ仕様:高圧放水圧力1.4MPa,高圧放水量120m3/h以上、AⅡ級のポンプ仕様:高圧放水圧力1.4MPa,高圧放水量84m3/h以上」としています。この高圧放水なら注水圧力としては十分可能です。RCIC・原子炉隔離時冷却系を水蒸気圧=炉圧が1.3MPa約13気圧で稼動し注水を行いながら、外から消防車の高圧放水機能・約14気圧でで注水を試みる。消防車で注水ができることを確認してから、炉圧を下げていく。注水が出来なければ、配管や弁を点検する時間は、RCIC注水が継続しているの十分に取れます。炉圧が下がればRCICは停止するが、原子炉の沸点=温度も下がっていきます。

しかし、消防法を読むと、現状では無理、高圧放水の1.4MPaでは使えないことが分かりました。

続く


既設原発に後付けできるメルトスルー対策、IVR-AM 東電vs泉田知事(22) [原発 冷却注水の確保]

東京電力はフィルタベント設備設置の目的を「福島第一原子力発電所の事故の教訓を踏まえ、原子炉の注水と格納容器除熱機能を強化しているが、万一それらの機能が発揮できない場合でも、放射性物質放出の影響を可能な限り低減させ、セシウム等による大規模な土壌汚染と避難の長期化を防止する。」としています。

原子炉の注水機能強化は大まかには注水用ポンプを多様にし数多く使えるよう手順書を整えたり、代替高圧注水設備や消防車8台(AⅠ級2台,AⅡ級6台)を配備する対策をとっています。格納容器の除熱機能は下図のように、格納容器のドライウエルという上部の部分や下部の圧力抑制室や原子炉圧力容器直下のペデステル(台座)という部分へので、消防車による送水でスプレイ(散水)・注水を対策としています。

先回まで、SBO・全交流電源喪失で原子炉の注水機能だけが使える状況を検討してきました。今回はSBOで格納容器の除熱機能は使える、建屋内に設置してある消火系・PFのデーゼルポンプや消防車でスプレイ(散水)・注水できる状況を検討してみます。

原子力安全基盤機構JNESの平成18年度の研究を参照すると、柏崎刈羽6、7号機のABWRでは
発災・スクラム(全制御棒挿入で核分裂の緊急停止)し原子炉の注水機能が停止すると、

1381163840.jpg1、約0.7時間後に水面から核燃料・炉心が顔を出します。(フローダウン放出は0.7時間・約40分)
2、約2分後に核燃料のジルコニウム合金の被覆が破れるものも出てきます。
その裂け目から希ガスは炉心内蔵量の5%程度、ヨウ素も5%程度、セシウムも5%程度が放出される、ギャップ放出量と見込まれています。
3、約25分間(0.4時間)後、発災から1.1時間に炉心溶融が始まります。
4、約90分間(1.5時間)後に、炉心溶融の放射性溶融物(コリウム)の大半が圧力容器底部に落下します。発災から2.6時間後。
5、約130分後(2.1時間)後、発災から5.7時間に、放射性溶融物(コリウム)によって圧力容器が損傷して格納容器など様々の物が溶融した放射性の炉心溶融物(デブリ)が出てしまう、つまりメルトスルーします。
6、メルトスルーして下部の床、ペデステル(台座)床に落下して放射能や崩壊熱を出します。床の鋼製ライナーや鉄筋コンクリート、横に広がって数分後にペデステル(台座)の縦壁のRPV支持ペデスタルに到達し、崩壊熱で直接加熱します。コアコンクリート反応で水素ガスが大量発生します。溶融・侵食が進行します。

建屋内に設置してある消火系・PFのデーゼルポンプや消防車での格納容器への注水で、1~5までの進展を食い止めることは出来ませんが、やり方によっては遅くして原子炉の注水機能の回復作業にあてる時間を稼いだり、それが間に合えば、メルトスルーを回避できます。6のペデステルの溶融・侵食を食い止めれます。

溶融燃料を原子炉内に保持する・・IVR-AM

TMI・スリーマイル島事故では、圧力容器の下部ヘッドに高温の炉心溶融物(デブリ)が、約19 トン(全炉心の約16%)も落下したにもかかわらず、圧力容器の破損は回避されました。それで「シビアアクシデント時の溶融燃料を原子炉内に保持すること」(IVR:In-Vessel Retention)を人為的におこし、圧力容器の破損を回避しする対策の研究が、1998平成10年度から2003平成15年度まで経産省の予算で行われています。 研究結果の概要

スプレイ(散水)による圧力容器外面冷却方式を、a)炉型に依存しない、PWR/BWR 共通に適用可能、b)プラントレイアウトに依存しないc)冷却開始が早いという理由で選択しています。また「将来炉のみならず既設プラントへの適用も可能である」としています。

この研究されたIVR-AM 策は、圧力容器内部への注水を行うとともに、圧力容器と放射断熱板の間隙に外面スプレイラインから、溶融炉心が圧力容器下部ヘッド落下後に、スプレイ(散水)により圧力容器外面を冷却し圧力容器内の溶融炉心を冷却するものです。 いわば、原子炉のウォシュレットです。

「実機スケールでの解析は、既存の代表的なPWR およびBWR 体系を対象として行った。これらの解析によれば、IVR-AM 設備による圧力容器内部注水及び圧力容器外面冷却を行うことで、圧力容器下部ヘッド内面温度は1,600K 程度(鉄の融点は約1800K)に維持することが可能であり、その健全性を維持できる結果が得られた。すなわち、本AM 策の効果により圧力容器破損が回避される見通しを得た。」
「IVR-AM 成立時の安全性向上評価では、米国の標準設計承認を得ているABWR(Advanced Boiling Water Reactor)を対象として、・・IVR 効果を組み込んだ確率論的安全評価(PSA)の解析を実施した。IVR-AM 設備の圧力容器内部注水及び圧力容器外面冷却(IVR-AM)を考慮した場合、IVR-AM を考慮しないケースと比較して圧力容器破損頻度がおよそ1/100 に低減し、格納容器破損頻度はさらにその1/5 低減する結果が得られた。」

柏崎刈羽で試算してみる

柏崎刈羽原発6、7号機でスクラムから5時間後までの最低必要注水量は約62トン/時、5~10時間後は約57トン/時、10~20時間後は約46トン、20時間以降は約41トンと福島第一の事故時の対応手順書から概算できます。発災・スクラムから2.6時間後に炉心溶融した放射性溶融物(コリウム)の大半が圧力容器底部に落下します。その落下時点から、圧力容器下底部外面をスプレイ(散水)冷却を始めた場合、スプレイ水が容器下部外面で水蒸気や熱水になって冷却効果を顕します。その冷却・除熱効果で放射性溶融物(コリウム)による圧力容器の溶融が遅れます。注水する機器の修復や手配、配置の時間が稼げます。

1時間に20トンの外面スプレイ(散水)による容器下部外面での水蒸気や熱水になっての冷却効果が、内部注水量換算で7トン/時とします。スプレイ無しでは、発災・スクラムから5.7時間後です。スプレイありで約6時間後になります。このようにメルトスルーに至った場合でも、充満する水蒸気や格納容器の床面・ペデスタル床面に溜まった水(約40cm水深)にデブリが除熱されます。格納容器下部のデブリとコンクリートとの反応を抑制されます。IVR-AM 策研究では水蒸気のデブリ除熱効果だけを見ていますが、それでも「格納容器破損頻度は1/500に低減」しています。約40cmのペデステル床上の水溜りに落下するのですから、除熱=冷却効果はもっと大きくなり、ほぼ確実に格納容器破損は防げます。格納容器外にでたデブリ、汚染水によって東電福島第一で起きている地下水汚染を予防できます。

仮に、5.9時間後に東電が配備している消防車「消防車8台(AⅠ級2台,AⅡ級6台)をT.P.約35mの高台に分散配置。消防車により建屋に設けた注水口等から注水可能。」で原子炉への注水が可能になったとします。AⅠ級のポンプ仕様:高圧放水圧力1.4MPa・高圧放水量120m3/時以上、規格放水圧力0.85MPa・放水量168m3/時以上。AⅡ級のポンプ仕様:高圧放水圧力1.4MPa・高圧放水量84m3/時以上、規格放水圧力0.85MPa・放水量120m3/時以上。

IVR-AM のスプレイ無しではメルトスルーしていますが、スプレイ有りでは首の皮1枚でメルトスルー前に84~168m3/時の注水が始まります。この時間の最低必要注水量は約57トン/時ですから、メルトスルーは先ず避けれると思います。「圧力容器内部注水及び圧力容器外面冷却(IVR-AM)を考慮した場合、IVR-AM を考慮しないケースと比較して圧力容器破損頻度がおよそ1/100 に低減」です。

炉への注水なしでメルトスルーを防げるか。

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格納容器への冷却水の注水を継続すると、水が溜まり続けてやがて図のような状態になります。圧力容器の下底部が水に漬かり、核燃料の放射性溶融物(コリウム)で発生する崩壊熱で沸騰する。それで除熱される。
ならば、最初からこの圧力容器の下底部が水に漬かった状態にしてしまえば、炉への注水なしでもメルトスルーは避けれる?溶融燃料を原子炉内に保持(IVR:In-Vessel Retention)を達成できるのではないか?下図は、中国で建設中の米国WHの技術による加圧型のAP1000という原子炉の炉外殻注水というシビアアクシデント対策です。スウェーデンは、シビアアクシデント対策として格納容器に、炉心の高さまで注水することを求めています。

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柏崎刈羽原発の6、7号機、ABWRで、格納容器に炉心の高さまで注水する、メルトスルーが起こる発災・スクラムから5.7時間後までに注水できる可能性があるかは、検討する価値があるのではないでしょうか?

消防車で炉注水できない、今の柏崎刈羽原発 [原発 冷却注水の確保]

既設の消火系・FPのデーゼルポンプ・D/D-FPが使えないのなら、消防車を使って送水、炉へ注水することはできるでしょうか?

1380582230.jpg東電は「消防車8台(AⅠ級2台,AⅡ級6台)をT.P.約35mの高台に分散配置。消防車により建屋に設けた注水口等から注水可能。」「AⅠ級のポンプ仕様:高圧放水圧力1.4MPa,高圧放水量120m3/h以上、AⅡ級のポンプ仕様:高圧放水圧力1.4MPa,高圧放水量84m3/h以上」としています。

この高圧放水なら注水圧力としては十分可能です。RCIC・原子炉隔離時冷却系を水蒸気圧=炉圧が1.3MPa約13気圧で稼動し注水を行いながら、外から消防車の高圧放水機能・約14気圧でで注水を試みる。消防車で注水ができることを確認してから、炉圧を下げていく。注水が出来なければ、配管や弁を点検する時間は、RCIC注水が継続しているの十分に取れます。炉圧が下がればRCICは停止するが、原子炉の沸点=温度も下がっていきます。

東電の資料では、そのような運用が可能であると読み取れます。しかし、それは無理です。消火系の配管や接続継手が1.4MPa約14気圧に耐えられない、接続部から水が吹き出る、配管が破れるからです。


 消火系・ファイヤープロテクションですから、消防法の規則で設備に求められる性能が規定されています。消防法施行規則の第12条、第15条には、配管や管継手の「耐圧力は、当該配管の設計送水圧力の一・五倍以上の水圧を加えた場合において当該水圧に耐えるものであること。」という原則と、設計送水圧力が1MPa・約10気圧以上ではそれ用の日本工業規格適合し肉厚が厚い管・継手を使うよう求めています。

 1MPa・約10気圧は、約100mの高さまで地上の消防車から送水できます。つまり高層ビルなどでは、それ用の特別な消火設備を作るよう求めています。配管に詳しい人に尋ねたら、5kg/㎠約0.5MPa用、10kg/㎠約1.0MPa用、15kg、20kgと分かれていて、5kg、10kgは汎用品で15kg、20kgは特注品で高価だそうです。

1380583516.jpg柏崎刈羽原発の消火系の既設のポンプは、0.75Mpaが設計送水圧力です。つまり既設の配管・継手の対圧力は約1.1MPaが上限です。そこに1.4MPaの圧力で送水したら、破れてしまいます。10階建ての建物に20階建て用の圧力で送水したら、配管は破れてしまいます。

 消防車は普通使いの規格放水圧力0.85Mpaという二つの性能を持っています。0.85Mpaなら使える可能性があります。しかし地震の後なら、配管が動いている可能性があります。中越沖地震後に柏崎刈羽原発では消火系配管が壁からはずれ落ちたり、継手の破損が見つかっています。
 できたら使いたくないし、使うとしても設計圧力になります。つまり、さきほどの状況と変わりません。原子炉の炉圧が、RCICが停止する約10気圧から消防車で注水が可能になる約6.8気圧の間は原子炉に注水できるシステムが今はありません。注水が順調に行える確認もできません。一か八かの度胸勝負で使うしかないのです。

東電福島第一原発の3号機はメルトダウン

この状況が、東電福島第一原発の3号機の運転員が3月11日から12日に置かれた状況です。
3号機は弁を開閉するための電力などは地震・津波で損傷しませんでした。消火系からの炉注水のための弁操作はできました。しかし、1.4MPaで注水は出来ませんから、確実に炉注水できるかは確かめようがありません。一か八かの度胸勝負です。
 もし、注水が出来なかったら、自分が運転してる炉から放射能を撒き散らすことになります。一方、電力の回復、電源車の繋ぎ込み作業が行われています。電気が電力が回復すれば、本来の低圧注水系での炉注水を確認してから、切り替えられます。高圧系が止らないように工夫した弁操作をして時間を稼ぎ、電力回復を待ちます。ズルズルと時間が過ぎていきます。
 いよいよ高圧注水系がゴロゴロと音を立て始め、何時壊れるか、止るかという状態になりました。そこでエイヤと止めて、消火系での注水に切り替える一か八かの度胸勝負にでました。結果は、負けて炉への注水が途絶え、メルトダウン、メルトスルーとなりました。

対策・・消火系・FPの耐圧力強化

これを避ける策は、単純です。消火系・FPが1.4MPaでも使えるように耐圧力を強化する。単純ですが、お金がかかります。東電も認めているように「同時に被災及び火災が発生した場合を想定」しなければなりません。火災が同時発生すれば1.4Mpaで、本来の消火系へも送水です。既設のスプリンクラーや消火栓、配管・継手は、1.4MPa送水で壊れます。

 消防関係者が、これまでの火災経験などから割り出した基準に沿って設計送水圧力が1MPa・約10気圧以上の場合の特別な特注品の管や継手などに全て取り替える必要があります。多分、途中に通るMUWC系も強化が必要です。また消火系は、格納容器への冷却水の送水も、SBO時には担っていますから、そちらの格納容器への送水なども取り替える必要があります。高額で工事時間もかかります。しかし、行わなければ福島第一3号機の悲劇を繰り返すことになります。

 このように消火系・FPの耐圧力を強化するのですから、予め設置しておく非常用デーゼルポンプも強化する。東電は「D/D ポンプを新設し、全号機への低圧注水対応が可能となるよう強化する。」ことを検討中だそうですから、各号機に消防車に積んであるA-1、A-2規格のポンプを設置するのです。
そうすれば、消防車の到着を待たずに原子炉の炉圧が13気圧程度から、D/D-FPのデーゼルポンプで炉に注水を試みられます。注水ができることを確認できれば、切り替えて10気圧以下でも注水が可能になります。
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 1気圧までに下げれば、冷却水の沸点は100℃です。そして注水量を多くすれば、沸騰せず90℃、80℃、50℃の熱水、温水になります。炉が冷温停止します。東電は電動ポンプの低圧注水系を使えば、スクラムから約1.5時間で冷温停止できるとしています。恐らく同様の時間で冷温停止できます。
 ところが、東電は消火系にはポンプの2台の新設で、それも現在よりも性能が劣ったポンプ新設で済まそうとしています。そして、今年1月には消防車などを可搬設備を使う対策は発災・スクラムから12時間後以降とする基本方針を発表しています。恐らく人員の確保(消防車1台に運転手1人・作業員1人×8台を24時間・365日確保)の経費関係でしょうが、消防車すら12時間後以降しか使えない、使わないような基本方針を発表しています。
資料・・東京電力の「安全確保に関する考え方」
 そして、フィルターベント設備を設置です。ベントする=放射能を撒き散らす方が、消火系・FPの耐圧力強化より東京電力には好ましい対策ということなのでしょうか?

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