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新潟県への質問、新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会への要望(草案) [原発 冷却注水の確保]

旧「畑のたより」で2013年10月13日に掲載分

新潟「県では現在、技術委員会(新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会)における福島第一原子力発電所事故の検証に関する議論について、県民の皆様からご質問・ご意見を受付けています。」 受付窓口
それで、下記の意見書を作ってみました。まだ草案段階です。

福島第一原発で、消防車の高圧送水・放水機能が使われて無い理由を明らかにしてください。

東京電力は柏崎刈羽原発に「消防車8台(AⅠ級2台,AⅡ級6台)をT.P.約35mの高台に分散配置。」という対策をとった。そして「AⅠ級のポンプ仕様:高圧放水圧力1.4MPa,高圧放水量120m3/h以上、AⅡ級のポンプ仕様:高圧放水圧力1.4MPa,高圧放水量84m3/h以上」「消防車により建屋に設けた注水口等から注水可能。」と説明しています。

しかし、東京電力福島第一原発の事故・核災害では、この高圧放水圧力1.4MPaで使われていません。その理由を解明して下さい。

解明して欲しい点

(A)消火系・FPの運転可能な原子炉圧力上限が事故時運転操作手順書(徴候ベース)では0.98MPaと書かれた根拠、事故時運転操作手順書(シビアアクシデント)では0.69MPaと書かれた根拠を明らかにしてください。

(B)事故時運転操作手順書(シビアアクシデント)では、SBO・全交流電源喪失時にはRCIC(HPCI)が稼動停止する原子炉圧力1MPaより低く消火系・FPの注水可能になる0.69MPaの原子炉炉圧の間は、何を炉注水の手段としているのか明らかにして下さい。

(C)仮に3号機で、12日19時から消防車が利用可能であったら、消防車による高圧放水圧力1.4MPaでの注水は可能だったでしょうか?配管や継手などを壊すことなく原子炉に届き、注水できたでしょうか。

(D)2002年には、既設の消火系・FPでは代替注水系として不十分である、運転可能な原子炉圧範囲が0~0.98MPaまたは0.69MPa以下とSBO条件での低圧の代替注水系として能力不足なことは明白でした。福島第一原発では、これを是正する改善するためにとられた対策を解明して下さい。

詳細

東京電力は、柏崎刈羽原発の制御系の弁の開閉や計測機器用の直流電源や圧縮ガスの補強対策を行っています。それで、非常時にもこれらは操作可能、計測可能である可能性が高いので、福島第一原発でこれらが可能であった3号機を例に、私の疑問を詳しく述べます。

資料01
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3号機の事故時運転操作手順書(事象ベース)の12-4-12(添付の資料01)によればSBO・全交流電源喪失時には、原子炉圧力容器から崩壊熱で発生する水蒸気で蒸気駆動のRCIC・原子炉隔離時冷却系かHPCI・高圧注水系を起動します。そして交流電源回復操作を行います。

電源回復に成功したら、RHR・残留熱除去系を起動します。RHRによるCS・炉心スプレイ系を作動させます。つまり原子炉圧力容器への冷却水注水は、蒸気駆動のRCIC・HPCIと電動ポンプのCS(RHR)系の二つの系統で行われている状態を作ります。

手順書(事象ベース)の12-4-25(添付の資料02)によれば冷温停止までの手順は、原子炉圧力が1.04MPa以下になったら、RCIC(HPSI)の流量を徐々に下げ、CS(RHR)系で原子炉水位「維持可能」を確認します。

その確認の後に原子炉の減圧を行い、原子炉圧力が0.98MPa以下でRCIC(HPCI)を停止します。

停止してもCS(RHR)系で注水は継続し水位は維持されています。

その状態で減圧操作を行います。

原子炉圧力が0.517MPa以下でRHRを原子炉停止時冷却モード・SHCモードで運転を行います。原子炉で発生する崩壊熱は、RHR・残留熱除去系の熱交換器を経て海水に移行します。そして原子炉が冷温停止する。

事故時運転操作手順書(シビアアクシデント)の3-4-2(添付の資料03)をみると、RHRの原子炉圧力容器からの吸入(水)配管にある吸入隔離弁が原子炉圧力0.517MPa以上で自動で働きます。それで、RHRの原子炉停止時冷却モード運転が原子炉圧力が0.517MPa以下となっていると思われます。

資料02、03
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さて、電源を回復できない場合、蒸気駆動のRCIC・HPCIによる注水を制限する条件は(1)制御する直流電力・蓄電池容量で設計では合わせて8時間、

(2)ポンプのメカニカルシール及び軸受の温度条件の上限が60℃であり、復水貯蔵タンク・CSTなど外部水源を使えず、S/Pのみが水源である場合は、S/P(圧力抑制プール)水温度が制限条件になります。「事故後約1時間で発生するSRV(逃がし安全弁)からの蒸気放出により、S/P(圧力抑制プール)水温度が上昇し、60℃を越えると、S/P水源とした場合、RCIC・HPCIの油冷却ができなくなる。」[手順書(事象ベース)の12-4-22]。

(3)原子炉圧力の低下。RCICとHPCIの定格流量維持最低圧力は1.03MPa、0.98MPa以下で停止。

柏崎刈羽原発6、7号機では、直流電源や圧縮ガスの補強対策を行っているので、(1)は制限条件でないと想定できます。(2)は代替高圧注水設備(TWL)の新設するとしています。このTWLのメーカーカタログには使用温度の上限を120℃とあります。S/Pのみが水源である場合は、約6~7時間後に120℃なると思います。RCICの60℃には約1時間後です。この(2)と(3)の原子炉圧力の低下が、電源を回復できない場合の高圧注水機能の制限条件になると考えます。

資料05
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さて、福島第一原発3号機の手順書では、電源を回復できないで原子炉圧力が1MPa以下の場合の原子炉への注水手段は、消火系・FPのデーゼル駆動消火ポンプだけです。

東電は「今回の事象では、電源がなかったことから電動駆動消火ポンプが使えない状況であった。」と総括しています。事故時運転操作手順書(徴候ベース)の5-7(c1)・(添付の資料05)に記載されている原子炉圧力が1.03MPa(RCICとHPCIの定格流量維持最低圧力)以下の低圧域での低圧注水可能系統は、下記の4系統を挙げています。

LPCP・低圧復水系(0~1.18MPaが運転可能な原子炉圧範囲)、

HPCP・高圧復水系(0~5.20MPa)、

CS・炉心スプレイ系(0~2.26MPa)、

LPCI・低圧注水系(0~1.86MPa)です。

この低圧注水可能系統の代替注水系は、

MUW(MUWC)・復水補給水系(0~0.98MPa)、

CRD・制御棒駆動機構(0~10.30MPa)、

SLC・ほう酸水注入系、

FP・消火系(0~0.98MPa)、

RHR海水系(0~2.84MPa)です。

FP・消火系のデーゼル駆動消火ポンプ・D/DFPを除いて、あとは全て電気駆動、交流電源が必要です。ですから「今回の事象では、電源がなかったことから低圧注水はFP・消火系のデーゼル駆動消火ポンプ・D/DFPだけが使える状況であった。」との総括が適切です。

その消火系・FPの代替注水の操作順序を手順書(シビアアクシデント)の2-2-1-1(添付の資料03)でみると、実施条件として「原子炉圧力が0.69MPa以下であること。」と記載されてます。そしてRCIC(HPCI)が稼動できる原子炉圧力1MPaから0.69MPaの時の原子炉への注水手段が不明です。

事故時運転操作手順書(徴候ベース)の5-7(c1)・(添付の資料05)をみると、消火系・FPの運転可能な原子炉圧力とは「0~0.98MPa」と記載されています。この記載の上限は、手順書(シビアアクシデント)の記載よりも0.29MPa高いものになっています。仮に原子炉圧力1MPaより低い低圧の間は消火系・FPを原子炉への注水手段とする、0.98MPa以下で使用可能なら、手順書(シビアアクシデント)の「原子炉圧力が0.69MPa以下であること。」制限条件は使用可能な炉圧時に使わないようにさせていることになります。

資料06
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資料06は3号機の2011年3月12日17時から13日17時までの原子炉圧力と水位です。消火系・FPの運転可能な原子炉圧力上限が手順書(徴候ベース)の0.98MPaなら、12日の19時から13日2時44分までは、消火系・FPによる炉注水が可能な炉圧領域です。注水ラインを構成し、試みられると思います。この時間帯はHPCIも稼動しており、HPCIとFPの2本立てて炉注水の可能性が十分にあります。

特に12日19時42分は炉圧が0.82、20時15分は0.8、21時は0.72、13日2時以降は炉圧が0.85、0.58と下がっていますから可能性が高い。HPCIは13日2時42分で停止していますが、HPCIとFPの2本立てて炉注水が実現していれば、HPCI停止後も消火系・FPで炉注水が継続したと思われます。そして原子炉炉圧を下げれれば、炉水の沸点が下がります。0.1MPa・約1気圧にすれば沸点100℃で、原子炉冷却水100℃です。

実際には、「原子炉圧力が0.69MPa以下であること。」と制限条件が記載されている手順書(シビアアクシデント)に従い、原子炉圧力が0.69以下になる13日2時42分以降に消火系・FPによる炉注水が試みられています。HPCI停止により注水途絶、原子炉水位の低下、核燃料被覆の損傷により発生する水素ガスによると考えられる炉圧の急上昇がおこります。SRV・逃がし安全弁を開けられず、炉圧減圧をできず、炉注水に失敗しています。

消火系・FPの運転可能な原子炉圧力上限が手順書(徴候ベース)では0.98MPaと書かれた根拠、手順書(シビアアクシデント)では0.69MPaと書かれた根拠を明らかにしてください。そして手順書(シビアアクシデント)では、SBO・全交流電源喪失時にはRCIC(HPCI)が稼動停止する原子炉圧力1MPaより低く消火系・FPの注水可能になる0.69MPaの原子炉炉圧の間は、何を炉注水の手段としているのか明らかにして下さい。

(C)仮に3号機で、12日19時から消防車が利用可能であったら、消防車による高圧放水圧力1.4MPaでの注水は可能だったでしょうか?配管や継手などを壊すことなく原子炉に届き、注水できたでしょうか。

また、消火系・FPの炉注水に使用可能な原子炉圧力上限が0.98MPaにしろ0.69MPaで有るにしろ、どちらもRCIC(HPCI)と同時に炉注水を行えません。使えるのは停止後の想定です。ですからRCIC(HPSI)の流量を徐々に下げ、消火系・FP系で原子炉水位「維持可能」を確認することができません。消火系・FP系で原子炉水位維持ができないならば、核燃料損傷にいたります。電源を回復できない場合、蒸気駆動のRCIC・HPCIによる注水を制限する条件に該当して、RCIC・HPCIが停止せざるを得ない状況なら、メルトダウンへ真っ逆さまです。

3号機では13日9時25分から消防車による炉注水が開始されています。消防車に組み込まれる消防用ポンプは、性能規格のAⅠ級、AⅡ級です。ともに1.4MPaも高圧放水圧力を有します。この高圧放水圧力ならRCIC(HPCI)と同時に炉注水を行えます。消火系・FP系で原子炉水位「維持可能」を確認できます。12日の19時から13日2時44分までは炉圧が最高で0.97ですから、消火系・FPによる炉注水で原子炉水位「維持可能」を確認し炉注水は実行できたと思います。

手順書(徴候ベース)の消火系・FPの運転可能な原子炉圧力は「0~0.98MPa」との記載からは、現状では高圧放水圧力での運転は出来ないとも考えられます。また、ビル火事などで消防車による消火系への送水はよく見られますし、そのための送水口がビルには付いています。東京電力は2010平成22年に消防・消火設備拡充を目的に消火系につながる送水口を増設しています。

消防法施行規則の第12条、第15条には、消火系の配管や管継手の「耐圧力は、当該配管の設計送水圧力の一・五倍以上の水圧を加えた場合において当該水圧に耐えるものであること。」という原則と、設計送水圧力が1MPa・約10気圧以上ではそれ用の日本工業規格適合し肉厚が厚い管・継手を使うよう求めています。

AⅠ級、AⅡ級の消防ポンプは、規格放水圧力は0.85MPa、高圧放水圧力は1.4MPaです。0.85MPaを配管の設計送水圧力とするなら消火系の配管などの耐圧力は1.275MPa以上、1.4MPaなら耐圧力は2.1MPa以上なければなりません。送水口から原子炉までに管の抵抗などで失われる圧力を通例どおり0.05MPa程度と見込むと、注水・送水可能な原子炉圧力上限は1.2~2MPaとなります。手順書(徴候ベース)の記載よりも大きく高圧になります。1.4MPaを設計送水圧力としていれば、CS・炉心スプレイ系(0~2.26MPa)、LPCI・低圧注水系(0~1.86MPa)と同様の低圧炉注水機能を持つと思われます。

消防車から原発の消火系への送水は送水口が後付けされたように、もともと設計段階では考えられていません。「原子炉への注水手段として手順書にはないが、消防車を使って原子炉への注水を行った。」と東電は記しています。ですから、消火系・FPの配管や継手などの耐圧力は、もともとの設計で設置されているデーゼル駆動消火ポンプ・D/DFPに見合ったものと考えられます。3号機のD/DFPが、柏崎刈羽6、7号機と同程度の「全揚程75m」0.73MPa程度なら、消火系の耐圧力は1.09程度になります。そこに1.4MPa、約3気圧も高い圧力で水を送り込んだら、壊れてしまうのではないでしょうか。

仮に3号機で、12日19時から消防車が利用可能であったら、消防車による注水、高圧放水圧力1.4MPaでの注水は可能だったでしょうか?配管や継手などを壊すことなく原子炉に届き、注水できたでしょうか。

(D)2002年には、既設の消火系・FPでは代替注水系として不十分である、運転可能な原子炉圧範囲が0~0.98MPaまたは0.69MPa以下とSBO条件での低圧の代替注水系として能力不足なことは明白でした。福島第一原発で、これを是正する改善するためにとられた対策を解明して下さい。

全交流電源喪失・SBOの場合に原発の消火系・FPは、2002年からメルトダウンのような過酷事故対策・AMでの手順に入れられています。それまで設計で既設の消火系・FPの送水・放水圧力ではRCIC(HPCI)と同時に炉注水を行えないこと、消火系・FP系で原子炉水位「維持可能」を確認してから切り替えることができないことは2002年から自明でした。ですから、2002年以降に消火系・FPにAⅠ級、AⅡ級の性能、送水・放水圧力を消防車の高圧放水圧力1.4MPaに合わせて変えていれば、消防車を待たずに消火系・FPに切替られます。

3号機はRCIC・原子炉隔離時冷却系が稼動していた12日の昼までは、SRV・逃がし安全弁を開ける直流電源があり、炉圧減圧をできたと見られています。RCIC稼働中にSRVで1.4MPa以下まで原子炉炉圧を下げて、消火系・FPのデーゼル駆動消火ポンプを起動し、消火系・FP系で原子炉水位「維持可能」を確認してから切り替え、炉圧減圧=炉水沸点低下=水温低下で冷温停止まで行けたと思います。

原子炉炉圧1.4MPa以下で消火系・FPでの炉注水が可能であったら、1号機は12日の2時半に0.8MPaを記録していますから、この頃には原子炉注水が再開できたと見られます。2号機は弁を開閉する直流電源は失われ、14日18時から電源を調達して蒸気逃し弁の開操作し減圧が始まっています。19時3分に0.63、20時3分には0.54を記録しています。その時の水位はBAF(有効燃料下端部)まで水面が下がりきらない、核燃料の下部が水に漬かっている時間帯です。その時間帯に炉注水が再開できたと思われます。

2002年には、既設の消火系・FPでは代替注水系として不十分である、運転可能な原子炉圧範囲が0~0.98MPaまたは0.69MPa以下とSBO条件での低圧の代替注水系として能力不足なことは明白でした。福島第一原発で、これを是正する改善するためにとられた対策を解明して下さい。

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