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東京電力から回答が来ました。 [原発 冷却注水の確保]

 旧「畑のたより」で2013年10月28日に掲載したものの再録
 
東京電力に9月26日に出した問い合わせに、10月24日付で回答がありました。

質問書とあわせた形で公表します。


東京電力㈱ お客様相談室 〇間 様 

2013年9月26日

案件

「《参考資料1》福島第一原子力発電所事故の教訓と対策」の問合せ


お手数をかけますが、下記の点にお答えください。(全2枚)

(1) 24、25ページの下記の数字は、柏崎刈羽原発六、7号機の数字でしょうか?

CRD 約30㎥/h ⇒原子炉停止16時間後の崩壊熱に相当

RCIC 約140㎥/h ⇒ 原子炉停止15分後の崩壊熱に相当

SLC 約10㎥/h

解説 東電・柏崎刈羽原発 1~5号機の電気出力110万kw.、6、7号機は137万kw。当然熱出力や崩壊熱の発生量が違います。

CRD・・制御棒駆動水ポンプ

SLC ・・ホウ酸水注入系ポンプ

RCIC・・原子炉隔離時冷却系 ABWRの定格流量は約180㎥/時との資料もあります。

回答

当該資料は柏崎刈羽1号機のデータです。 

6/7号機の数字は下記の通りです。(6号機、7号機ともに同じ) 

CRD約30㎥/h⇒原子炉停止16時間後の崩壊熱に相当(※) 

RCIC約180㎥/h⇒原子炉停止15分後の崩壊熱による蒸気量

相当に余裕を持たせた値 

SLC約10㎥/h

(※)CRD流量は1号機より6/7号機の方が若干大きいですが、有効数字一桁で表記すると30㎥/hとなります。崩壊熱相当の値は対数グラフからの読み取り値です。 
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(2)原子炉隔離時冷却系(RCIC)と代替高圧注水設備(TWL)について

(a)この二つの高圧注水設備は共に蒸気駆動なので、その駆動する蒸気圧の範囲、

(b)注水可能な原子炉圧力容器の炉圧の範囲

(c)注水可能量

(d)両者の性能的違い

解説 
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回答

(a)RCIC、HPACは共に蒸気タービン駆動ポンプによる高圧注水設備であり、いずれも、ポンプが定格運転できる蒸気圧範囲は、原子炉圧力が高圧状態(約 8MPa)から低圧状態(約 1MPa)である。 

[虹屋注 この質問は2012年12月14日付の東京電力の資料に基づいているが、2013年に入って代替高圧注水設備(TWL)を高圧代替注水系(HPAC)と呼称を変えている。 http://www.tepco.co.jp/cc/direct/images/130125a.pdf の13ページ]

(b)上記(a)の通り、原子炉圧力が約 8~1MPaで、定格流量を注水することが可能。なお原子炉圧力が1MPa以下であっても、注水できないわけではなく、定格流量以下にはなるが注水することは可能である。 

(c)RCIC、HPACともに、注水可能量は同じになるよう設計しており、上記(a)、(b)の蒸気範囲で、注水量は約 180㎥/hである 

(d)RCIC,HPACは前述の通り注水能力等の注水性能はほとんど同じである。大きな違いとしては、ポンプ駆動に必要な電源容量でありHPACポンプの方が必要電源容量が少なくて済むことである。(RCICポンプは電気制御、グランドシール装置のような電気設備が必要であるが、HPACポンプはそれらが不要な構造であり、必要電気容量が少なくて済む)。 

従って、HPACは電源にあまり頼らずに高圧注水が期待できる設備である。 

また、HPACポンプは運転に電気制御が不要なため、ポンプ自体が水没してもポンプが停止しない設計になっている。従ってRCICよりも耐浸水性に優れたポンプとも言える。 

以上 
 
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(3) 6、7号機のRHR(LPFL機能)について 26ページ、39ページ 

(a)注水可能な原子炉圧力容器の炉圧の上限と下限、上限まで減圧することになるがその炉圧は、どれくらいか。

(b)注水可能量

(c)「1号機の場合、津波等による全電源停止から24時間以内に代替海水熱交換器設備のインサービスを完了することにより、48時間以内に冷温停止が可能」とあるが、6、7号機では冷温停止到達時間は? 

6、7号機はABWRであり、ABWRのRHRは設計基準事故である冷却材喪失事故時に、炉心及び原子炉格納容器の冷却に必要とされる除熱量に対して、1系統で50%の冷却能力である。BWRの1号機は100%であるから、当然に到達時刻は違うと思われるが、全電源停止から24時間以内に代替海水熱交換器設備のインサービスを完了した場合の冷温停止の到達時刻は48時間以内か?

解説
 
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回答

(a)RHR(LPFL系)の注水可能圧力の範囲は、下記の通り。 

6号機: 0~2.07 MPa[gage]

7号機: 0~2.16 MPa[gage]

(b)6/7号機ともに下記の通り 

注水可能量:定格流量 954[m3/h] 

(定格揚程 125[m]) 

(c)6/7号機の場合も1号機同様に、全電源停止から24時間以内に代替海水熱交換器設備のインサービスを完了することにより、48時間以内の冷温停止が可能となるよう設計しております。

(RHR系1系統での除熱) 

なお、1号機のものと比較すると、代替熱交換器設備の交換熱量が大きなものとなっています。 

以上 
 
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(4) 6、7号機のMUWCについて 26ページ

「早期の原子炉注水に必要な注水量が不足しており不可、約1時間後の崩壊熱除去には有効」との記載がある。

(a)MUWCで注水可能量と吐水圧力はどれくらいか?

(b)MUWCで注水が可能になる原子炉圧力は、どれくらいか? 

福島第一3号機の事故時運転操作手順書にはMUWは「原子炉圧力が0.69MPa以下であること」と記載されているが、柏崎刈羽の6、7号機では、原子炉圧力の上限、つまり減圧操作で下げる目標の原子炉圧力は、どれくらいか? 

解説
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回答

(a)MUWCの注水可能量と吐水(吐出)圧力ですが,6号機及び7号機ともに以下の通りです。 

注水可能量:定格流量 125m3/h 

定格揚程:85m(参考)台数:3台 

(b)MUWCで注水が可能になる原子炉圧力については,原子炉圧力容器の圧力が約 0.85MPa[gage]から MUWCにより注水が可能となります。 

一般的に電動ポンプによる注水は注入先の原子炉圧力が低いほど注水量は増加します。従って,MUWCを用いて注水する場合には原子炉圧力を逃し安全弁(※)により減圧する手順としておりMUWCを用いる場合には原子炉圧力はる0.49MPa[gage]以下としています。 

ただし,実際は逃し安全弁を「開」操作して下げられるまで下げ,注水量を確保することとしています。 

※:逃し安全弁は 18弁設置されており,原子炉を減圧する際には 18弁のうち,自動減圧機能(ADS)が付いている 8弁を「開」操作する手順としています。 

以上 
 
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(5)  6、7号機のD/DFPについて 26ページ、36ページ

「早期の原子炉注水に必要な注水量が不足しており不可」との記載がある。

(a) 現在設置されているD/DFPの注水能力はどれくらいか?それは、原子炉停止からどれ位の時間の崩壊熱に相当するのか? 

36ページの記載では、給水建屋(5~7号機用大湊側)に 1台あり、定格容量177 ㎥/h、全揚程75 m、締切揚程81mとある。この定格容量で6、7号機で、原子炉注水に必要な注水量が不足している原子炉停止からの時間は何時までなのか?1時間後といった具体的時間で示して欲しい。

(b) 全揚程75 m、締切揚程81 mとの性能で、注水可能な原子炉圧力はいくらか?

(c) 福島第一3号機の事故時運転操作手順書には消火系・FPの使用には「原子炉圧力が0.69MPa以下であること」と記載されているが、柏崎刈羽の6、7号機では、原子炉圧力の上限、つまり減圧操作で下げる目標の原子炉圧力は、どれくらいか? 

回答

(a)D/D FPの注水能力ですが,以下の通りです。 

注水可能量:定格流量 117m3/h 

定格揚程:75m(参考)台数:1台 

崩壊熱による原子炉の冷却材の蒸発が約 117m3/hとなるまでの時間は,燃焼時間等によって影響するため一意には定まりませんが,停止数十分後の崩壊熱による蒸発量に相当します。 

ただし,原子炉を減圧する際に逃し安全弁を「開」操作するため,冷却材が原子炉圧力容器からサプレッション・プールに流出します。従って,実際には崩壊熱による蒸発分に加え,減圧時に冷却材がサプレッション・プールに流出する分も加えて注水する必要があります。 

(b)揚程が 75mのときは原子炉圧力容器の圧力が約 0.75MPa[gage]から注水可能となります。 

(c)基本的には Q(4)の(b)と同様で,原子炉圧力は 0.49 MPa [gage]以下を確認します。 

以上 
 
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本文

From:〇●◎@tepco.co.jp 

Sent: Thursday, October 24, 2013 10:50 AM 

To: nijiya@sky.plala.or.jp 

Subject: 【東京電力】お問い合わせへの回答 

弦巻 英市 様

私どもの福島第一原子力発電所の事故により、今なお、発電所周辺地域をはじめとした福島県のみなさま、広く社会のみなさまに大変なご迷惑とご心配をおかけしておりますことを、改めて心より深くお詫び申し上げます。

さてこのたび、弦巻様よりFAXにてお問い合わせいただきましたご質問に対しまして、当該メールにて別添の資料のとおりご回答させていただきます。ご査収くださいますようお願い申し上げます。何かご不明な点がございましたら、恐れ入りますが当該メールへお問い合わせくださいますようお願いいたします。

なお、ご回答に際しまして、大変お時間が掛かりましたことをお詫び申し上げます。

弊社といたしましては、引き続き、原子力事故の早期収束・安定化、被災者のみなさま方に対する賠償、あわせて電気の安定供給の確保などの重要課題に、全社一丸となって取り組んで参ります。ご理解を賜れれば幸いでございます。

**********

東京電力株式会社

お客さま相談室

電話:050-3066-3033

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岩見

初めて投稿します。

小生も小規模ですがブログをやっており、原発事故について扱っています。

さて、原発事故の経緯について9問程東電に問い合わせしたところ、2週間ほど経過して「東電事故調報告書に書いた内容が全て」という一文だけの、不誠実な回答を貰ったことがありました。糾弾調という訳では無かったのですが、管理人様の質問の場合は再稼働絡みということでそれなりに詳細な回答になったようですね。

今度、小生も聞き方を変えて質問してみようと思います。
by 岩見 (2014-02-13 05:35) 

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