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柏崎刈羽原発に非常用デーゼルポンプ・消火用を2台しか設置してない東電。 [原発 冷却注水の確保]

 旧「畑の便り」で2013年9月30日掲載
 
原発の消火系・FP(Fire Protection System)は、メルトダウンのような過酷事故対策・AMでは原子炉への注水に利用されます。柏崎刈羽原発への発電所外部からの交流送電が途絶え、各号機に3台ある非常用発電機が稼動しない場合には、電動のポンプが動きません。この状態を全交流電源喪失・SBO(ステーション・ブラックアウト)といいますが、その時に消火系・FPの非常用デーゼルポンプで原子炉に冷却水を注水する手順に2002年からなっています。ですから、重要なデーゼルポンプです。消火系・FPの非常用デーゼルポンプの略号は、D/DFP、D/D-FP。

東京電力の資料、《参考資料1》福島第一原子力発電所事故の教訓と対策(平成24年12月14日)を見つけ読んでいたら魂消ました。東電は柏崎刈羽の7つの原子炉用に2台しか設置してないのです。柏崎側(荒浜側)の1~4号機共用で1台、刈羽側(大湊側)に5~7号機共用で1台です。全交流電源喪失・SBOの炉への注水で重要なのに、たった2台。



東電は「同時に被災及び火災が発生した場合を想定し、D/D-FP以外の低圧注入手段が喪失した場合に備え、D/D ポンプを新設し、全号機への低圧注水対応が可能となるよう強化する。」ことを検討中と記してあります。それは、1~4号機共用の予備に1台、5~7号機共用で1台で、それも送水能力は今よりも小さい。各号機に専用の1台を新たに設置し、今の共用を予備に回すなら話の筋「強化する」と言えますが、能力の劣ったものを2台新設しても、・・
 
 全交流電源喪失・SBOの炉への注水方法

原子炉は運転時には約70気圧・70Mpa(メガパスカル)あります。全交流電源喪失・SBOで緊急停止後の炉圧が高い場合は、RCIC・原子炉隔離時冷却系で炉に注水します。これは核燃料の崩壊熱により原子炉で発生する水蒸気でタービンを廻し、その力でポンプを駆動する注水システムです。定格流量は約180㎥/時、注水圧力は約20~90気圧(揚程は200~900m)です。柏崎刈羽6、7号機には各1台が設置されています。東電はさらにもう1台、米国製の代替高圧注水設備(TWL)という水蒸気駆動のシステムを6、7号に付けるそうです。
 
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この二つの高圧注水システムは、初期は復水貯蔵槽(タンク)から、最終的には格納容器の圧力抑制室プールの水、柏崎刈羽6、7号機では各3600トンのプール水が水源です。またプールには原子炉で発生する水蒸気が出されます。つまり崩壊熱で熱水化する水が水源です。圧力抑制室のプール水温が上がると、熱気で格納容器の圧力が上昇します。復水貯蔵タンクを使わない場合に最高使用圧力到達が約16時間後です。

また、崩壊熱により原子炉からの水蒸気がエネルギー源です。水蒸気圧力の作動最低圧があります。水蒸気圧力は原子炉圧力と同じです。柏崎刈羽原発6、7号機のRCIC・原子炉隔離時冷却系の作動圧範囲は東電に問合せていますが、他のBWRは7.86~1.04MPa(約78~10気圧)です。この下限の約10気圧以下になるとRCIC・原子炉隔離時冷却系で炉に注水できなくなります。

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原子炉の炉圧が高いと水の沸点は高いのは、圧力釜と同じです。約16気圧では200℃で、約10気圧で180℃です。炉を100℃以下の低温停止にするには、炉の圧力=水蒸気圧力を下げなくてはなりません。そして約10気圧以下になるとRCIC・原子炉隔離時冷却系で炉に注水できなくなります。交流電源があると電動ポンプでの注水、低圧注水のシステムがあります。BWRの低圧炉心スプレイ系(LPCS)が2.03MPaから、低圧注水系(LPCI)は1.55MPaから注水が可能になります。ABWRの柏崎刈羽原発6、7号機の低圧注水系の圧力値は東電に問合せていますが、ほぼ同じだと見られます。

事故対応の手順書のやり方では、RCICで注水を継続しながら炉圧が下がって、下げて低圧注水システムでの注水が可能になったら、RCIC注水と平行して同時に低圧システムを作動させます。配管などに損傷が無く、弁の開閉も間違えなく注水が順調に始まったことを確認します。中央制御室で弁の開閉状態を示す表示の多くは、操作盤から出ている指令信号が開信号か閉信号を示しています。実物の弁が開いているか閉じているかを示していません。重要な弁にはモニター装置が付いていますが、これも誤作動があります。従って、注水が順調に行える確認は欠かせません。

ところが、全交流電源喪失・SBO(ステーション・ブラックアウト)の時に使える低圧注水システムは、消火系・FPのデーゼルポンプ・D/D-FPだけですが、D/D-FPは注水が順調に行える確認はできません。

一か八かの度胸勝負を強いる手順

東電の資料では「全揚程75m」となっています。これは水を75mの高さまであげられる圧力が出せる性能ということです。水は
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10mで約1気圧ですから、約7.5気圧・0.75MPaの水圧で水を出せるということです。これは消火栓、スプリンクラーなどに送水する本来の場合です。原子炉に注水するには、MUWC系とRHR系と復水給水系を通らなければなりません。その曲がりくねった配管や弁(MUWC系で2ヶ、RHR系で5ヶ、復水給水系で3ヶ)を通過する際に圧力損失が発生します。大概は1気圧程度を見込みますので、原子炉に到達時には約6.8気圧・0.68MPa程度です。つまり原子炉の炉圧が、RCICが停止する約10気圧から消火系・FPのデーゼルポンプ・D/D-FPで注水が可能になる約6.8気圧の間は原子炉に注水できるシステムが今はありません。炉の冷却水は減るだけです。
約6.8気圧に下がった、下げてから、消火系・FPのデーゼルポンプ・D/D-FPで注水を行うとします。その際には水が通る弁だけでなく、水が他所へ行かないように開閉する弁が20ヶあります。この弁が正しく開閉されていなければ、炉に冷却水が届かない、他所に行ってしまって不足することになります。しかし、それを事前に確かめる術はありません。一か八かの度胸勝負です。負けてD/D-FP注水が上手くいかなかった場合に配管損傷や弁の開閉を直すのに使える時間は45分から70分と限られています。6.8気圧までに下げる間に失われる水量、下がっている水面高を考慮するともっと短いと考えられます。東電核災害での福島第一でのベント配管の構成にかかった時間を思うと、私は45分から70分では点検すら終わらない、メルトダウンの可能性が高いと思います。

さて、D/D-FPで炉への注水を行わないで高圧系を使い続けるとします。まずベントを避ける遅らせるには、どのような手があるでしょうか。D/D-FPでRCIC・原子炉隔離時冷却系の水源となっている圧力抑制室プールに冷水を注水すると崩壊熱での熱水化を抑制できます。格納容器の圧力上昇を抑えることができます。柏崎刈羽の6、7号機に今付いている消火系・FPの共用のデーゼルポンプ・D/D-FPは定格容量は1時間に177トンです。号機当り約88トンの注水が可能です。もともとのプール水量は3600トンですから、1時間に2.4%増量できます。

RCIC・原子炉隔離時冷却系は、約8時間使用で設計されています。東電核災害では2号機は100時間ほど動きましたが、そのメカニズムは不明で柏崎刈羽6、7号のRCICが100時間動くとは言えません。3号機は24時間ほどでゴロゴロという音を立てて止っています。8時間設計の3倍の24時間、それ位しか見込めません。新たに設置される米国製の代替高圧注水設備(TWL)はカタログデータには最高使用温度が120℃とあります。TWLは送水ポンプと一体化されていますから通過する圧力抑制室プール水で冷されて機器全体で120℃以下であればよいわけです。13気圧ほどの水蒸気圧の蒸気温度は約190℃、10気圧で約180℃、1時間に2.4%プール水量が増量しても熱容量的にみると約1日後にはプール水が120~100℃近くまで上がりますから、代替高圧注水設備(TWL)も1日位しか稼動できません。つまり、高圧系の注水は約1日くらいしか出来ないと想定されます。

それでは、既設の消火系・FPのデーゼルポンプ・D/D-FPが使えないのなら、消防車を使って送水することはできるでしょうか?

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東電は「消防車8台(AⅠ級2台,AⅡ級6台)をT.P.約35mの高台に分散配置。消防車により建屋に設けた注水口等から注水可能。」「AⅠ級のポンプ仕様:高圧放水圧力1.4MPa,高圧放水量120m3/h以上、AⅡ級のポンプ仕様:高圧放水圧力1.4MPa,高圧放水量84m3/h以上」としています。この高圧放水なら注水圧力としては十分可能です。RCIC・原子炉隔離時冷却系を水蒸気圧=炉圧が1.3MPa約13気圧で稼動し注水を行いながら、外から消防車の高圧放水機能・約14気圧でで注水を試みる。消防車で注水ができることを確認してから、炉圧を下げていく。注水が出来なければ、配管や弁を点検する時間は、RCIC注水が継続しているの十分に取れます。炉圧が下がればRCICは停止するが、原子炉の沸点=温度も下がっていきます。

しかし、消防法を読むと、現状では無理、高圧放水の1.4MPaでは使えないことが分かりました。

続く


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