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消防車で炉注水できない、今の柏崎刈羽原発 [原発 冷却注水の確保]

既設の消火系・FPのデーゼルポンプ・D/D-FPが使えないのなら、消防車を使って送水、炉へ注水することはできるでしょうか?

1380582230.jpg東電は「消防車8台(AⅠ級2台,AⅡ級6台)をT.P.約35mの高台に分散配置。消防車により建屋に設けた注水口等から注水可能。」「AⅠ級のポンプ仕様:高圧放水圧力1.4MPa,高圧放水量120m3/h以上、AⅡ級のポンプ仕様:高圧放水圧力1.4MPa,高圧放水量84m3/h以上」としています。

この高圧放水なら注水圧力としては十分可能です。RCIC・原子炉隔離時冷却系を水蒸気圧=炉圧が1.3MPa約13気圧で稼動し注水を行いながら、外から消防車の高圧放水機能・約14気圧でで注水を試みる。消防車で注水ができることを確認してから、炉圧を下げていく。注水が出来なければ、配管や弁を点検する時間は、RCIC注水が継続しているの十分に取れます。炉圧が下がればRCICは停止するが、原子炉の沸点=温度も下がっていきます。

東電の資料では、そのような運用が可能であると読み取れます。しかし、それは無理です。消火系の配管や接続継手が1.4MPa約14気圧に耐えられない、接続部から水が吹き出る、配管が破れるからです。


 消火系・ファイヤープロテクションですから、消防法の規則で設備に求められる性能が規定されています。消防法施行規則の第12条、第15条には、配管や管継手の「耐圧力は、当該配管の設計送水圧力の一・五倍以上の水圧を加えた場合において当該水圧に耐えるものであること。」という原則と、設計送水圧力が1MPa・約10気圧以上ではそれ用の日本工業規格適合し肉厚が厚い管・継手を使うよう求めています。

 1MPa・約10気圧は、約100mの高さまで地上の消防車から送水できます。つまり高層ビルなどでは、それ用の特別な消火設備を作るよう求めています。配管に詳しい人に尋ねたら、5kg/㎠約0.5MPa用、10kg/㎠約1.0MPa用、15kg、20kgと分かれていて、5kg、10kgは汎用品で15kg、20kgは特注品で高価だそうです。

1380583516.jpg柏崎刈羽原発の消火系の既設のポンプは、0.75Mpaが設計送水圧力です。つまり既設の配管・継手の対圧力は約1.1MPaが上限です。そこに1.4MPaの圧力で送水したら、破れてしまいます。10階建ての建物に20階建て用の圧力で送水したら、配管は破れてしまいます。

 消防車は普通使いの規格放水圧力0.85Mpaという二つの性能を持っています。0.85Mpaなら使える可能性があります。しかし地震の後なら、配管が動いている可能性があります。中越沖地震後に柏崎刈羽原発では消火系配管が壁からはずれ落ちたり、継手の破損が見つかっています。
 できたら使いたくないし、使うとしても設計圧力になります。つまり、さきほどの状況と変わりません。原子炉の炉圧が、RCICが停止する約10気圧から消防車で注水が可能になる約6.8気圧の間は原子炉に注水できるシステムが今はありません。注水が順調に行える確認もできません。一か八かの度胸勝負で使うしかないのです。

東電福島第一原発の3号機はメルトダウン

この状況が、東電福島第一原発の3号機の運転員が3月11日から12日に置かれた状況です。
3号機は弁を開閉するための電力などは地震・津波で損傷しませんでした。消火系からの炉注水のための弁操作はできました。しかし、1.4MPaで注水は出来ませんから、確実に炉注水できるかは確かめようがありません。一か八かの度胸勝負です。
 もし、注水が出来なかったら、自分が運転してる炉から放射能を撒き散らすことになります。一方、電力の回復、電源車の繋ぎ込み作業が行われています。電気が電力が回復すれば、本来の低圧注水系での炉注水を確認してから、切り替えられます。高圧系が止らないように工夫した弁操作をして時間を稼ぎ、電力回復を待ちます。ズルズルと時間が過ぎていきます。
 いよいよ高圧注水系がゴロゴロと音を立て始め、何時壊れるか、止るかという状態になりました。そこでエイヤと止めて、消火系での注水に切り替える一か八かの度胸勝負にでました。結果は、負けて炉への注水が途絶え、メルトダウン、メルトスルーとなりました。

対策・・消火系・FPの耐圧力強化

これを避ける策は、単純です。消火系・FPが1.4MPaでも使えるように耐圧力を強化する。単純ですが、お金がかかります。東電も認めているように「同時に被災及び火災が発生した場合を想定」しなければなりません。火災が同時発生すれば1.4Mpaで、本来の消火系へも送水です。既設のスプリンクラーや消火栓、配管・継手は、1.4MPa送水で壊れます。

 消防関係者が、これまでの火災経験などから割り出した基準に沿って設計送水圧力が1MPa・約10気圧以上の場合の特別な特注品の管や継手などに全て取り替える必要があります。多分、途中に通るMUWC系も強化が必要です。また消火系は、格納容器への冷却水の送水も、SBO時には担っていますから、そちらの格納容器への送水なども取り替える必要があります。高額で工事時間もかかります。しかし、行わなければ福島第一3号機の悲劇を繰り返すことになります。

 このように消火系・FPの耐圧力を強化するのですから、予め設置しておく非常用デーゼルポンプも強化する。東電は「D/D ポンプを新設し、全号機への低圧注水対応が可能となるよう強化する。」ことを検討中だそうですから、各号機に消防車に積んであるA-1、A-2規格のポンプを設置するのです。
そうすれば、消防車の到着を待たずに原子炉の炉圧が13気圧程度から、D/D-FPのデーゼルポンプで炉に注水を試みられます。注水ができることを確認できれば、切り替えて10気圧以下でも注水が可能になります。
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 1気圧までに下げれば、冷却水の沸点は100℃です。そして注水量を多くすれば、沸騰せず90℃、80℃、50℃の熱水、温水になります。炉が冷温停止します。東電は電動ポンプの低圧注水系を使えば、スクラムから約1.5時間で冷温停止できるとしています。恐らく同様の時間で冷温停止できます。
 ところが、東電は消火系にはポンプの2台の新設で、それも現在よりも性能が劣ったポンプ新設で済まそうとしています。そして、今年1月には消防車などを可搬設備を使う対策は発災・スクラムから12時間後以降とする基本方針を発表しています。恐らく人員の確保(消防車1台に運転手1人・作業員1人×8台を24時間・365日確保)の経費関係でしょうが、消防車すら12時間後以降しか使えない、使わないような基本方針を発表しています。
資料・・東京電力の「安全確保に関する考え方」
 そして、フィルターベント設備を設置です。ベントする=放射能を撒き散らす方が、消火系・FPの耐圧力強化より東京電力には好ましい対策ということなのでしょうか?

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